ツバメ   作:シロヴィ

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パリジスカヤ・コミューナはガングート級4姉妹の末っ子です。


21話

 ――フランス ブルターニュ鎮守府沖

 

 戦艦パリジスカヤ・コミューナの元に、1隻の巡洋艦と4隻の大型駆逐艦が合流した。

 

 「貴女が例のロシアの戦艦ね?提督から話は聞いているわ。ワタシは軽巡洋艦エミール・ベルタン。一応本国艦隊の旗艦よ。で、こっちから駆逐艦のル・ファンタスク、ル・トリオンファン、ル・マラン、ローダシューよ。」

 

 三連装砲塔を構えたエミールは、スカートの両端をつまみ上げた上品な挨拶をした。

 

 「ふむ。私は弩級戦艦、セヴァストポリ改めパリジスカヤ・コミューナだ。よろしく頼むぞ。」

 

 青いシャツに緩く白のネクタイを締め、灰色のコートを羽織った彼女はそう名乗ると、そのコートの中から取りだした缶を呷った。

 

 「‥でも、よりにもよってパリジスカヤ・コミューナ(パリ・コミューン)なんて名前の艦と組む事になるなんて、何が起こるか分からないものね。」

 

 エミールがそう零すと、あちらも少し気になっていたのか「嫌ならば指揮権は返上するが‥。」と言うが、エミールは「必要ないわ。」と断った。

 

 「‥ところで、さっき飲んでいたのは何かしら?」

 

 そうエミールが聞くと、コミューナは悪びれもせず答えた。

 

 「ん?водка(ウォッカ)だが?ああ、君たちも飲むか?」

 

 あげく駆逐艦達にすら勧めようとしていた。これには流石のエミールも堪忍袋の緒が切れたようで、

 

 「飲んでる場合じゃないでしょう!?」

 

 と、先ほどまでの上品さは何処へやら、声を荒げ缶にピンポイントで回し蹴りを放った。カコーン、という音とともにウォッカの缶は放物線を描いて飛び、海に落ちる。

 

 「あぁ‥あれ、ウクライナで最近評判のちょっと高いやつだったのに‥。」

 

 思い切り落ち込むコミューナであったが、フランス艦達が出航しつつあるのを見ると、渋々出撃した。

 

 

 ――オランダ アイントホーフェン仮設飛行場

 

 「諸君、傾注(Achtong)!」

 

 中隊長の号令を受け、私達は整列する。

 

 「これより作戦内容を説明する。まず現在の状況だが、これは先ほど伝えたとおりだ。フランス・ロシア連合艦隊の艦隊決戦を援護すべく、独仏英3国の航空隊による波状攻撃を行う。我々ドイツ空軍は第3波だ。決して遅れを取るなよ!」

 

 「「了解(ヤヴォール)!!」」

 

 この通り、私達の隊はいつも以上に士気が高かった。理由を説明するがてら、これまでの経緯について少し話しておこう。

 

 雷撃型スツーカの配備から、例の激突しかける事件にもめげず日々訓練に明け暮れていた。Ju87E-4と名付けられたその機も隊の半数を占めるまでになった。

 

 そしてつい1週間前、私達の中隊は名称を「第957実験中隊」から「第541混成対艦攻撃中隊」へと変えていた。

 

 これが何を意味するかというと、今回の出撃は本格的な実戦配備がされてから最初の作戦行動なのである。

 




主人公はこのシーンが終わったらしばらく出番がなくなります。
仕方ない。

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