地面がゆっくりと近づいてくる。軽い衝撃を感じた後、機は少し飛行場を走り、やがて止まった。
ドアが開いたので降りる。すると、周りの景色に少し違和感がした。
大きいのである。木々も、建物も。よく考えると、今まで乗っていたこの飛行艇でさえ普通より倍ほど大きく感じる。
辺りをキョロキョロを見回しながらそんなことを思っていると、ふいに後ろから声がした。女性だ。
「そこにいるのが新しい妖精ですか?」
振り向くと、私の倍ほどもあるような大きな、若い女性がいた。いや、この女性を大きいと表現するのは間違いだろう。状況から察するに、私が死ぬ前の半分ほどに小さくなっているのだ。
その女性は、見る限り黒ずくめだった。将校のような黒い帽子、上質そうな黒い上着。赤いラインが目を引く黒の長手袋に、黒の‥おっと。
この、かなり身長差のある状況で上から順に服装を見ていたのでこうなるのは仕方が無い。というかスカートが短すぎるのが悪いのだ。
急いで起こった事故を自分の中で正当化し、頭から振り払う。すると、振り払った隙間を埋めるようにあることに気がついた。
この女は私の事を”妖精”と呼んだ。妖精。幼い頃に童話の中でくらいしか聞いた事はないが、もし今の私がそうだと言われたのなら妙に納得がいく。
確かに妖精とは小さくかわいらしいものだ。この人形のような私が動いていれば、そう呼ぶのが適しているだろう。
しかし、妖精である。ずいぶんとメルヘンチックな存在に生まれ変わったものだなあと思う。――同じ妖精であろう彼らが軍用機を飛ばしているところを見ると、少々ミスマッチに感じるが。
「――ではそこの妖精、私について来なさい。貴方たちは任務に戻ること。」
「「
彼らはピシリと敬礼をし、飛行艇へと戻っていった。女はそれを見てどこかへと歩き出したので、私も後に続いた。
女の向かった先には一台の乗用車があった。車種は見たことのない物だが、マークはフォルクスワーゲンのものである。余り詳しくない者から見てもなんだか高そうだと感じさせる造りだ。
などと考えていると、急に首元をひょい、と片手で掴まれ、放り込まれるように助手席に乗せられた。案外に力がある。
女が運転席に乗り込み、車は発進した。驚くほど静かで、乗り心地もよい。
しかし、先ほどは見上げるような形だったためよく見えなかったのだが、今になって見てみるとこの女、中々に美人である。
短く切りそろえた黒髪、整った顔立ちに大きな青い目。町を歩いていれば幾人もが振り返るだろう。表情が硬いというかツンとしていて人を寄せ付けないような雰囲気ではあるが。
だからこそ謎である。何故このような女性が軍属の服を着ている?兵士ではないだろうし、広報官あるいは諜報部?考えても分からないので彼女に直接聞くと、
「私はケルンです。ヴィルヘルムスハーフェン鎮守府提督付の秘書艦の任に着いています。」
と返ってきた。
なるほど、秘書官だったか。しかし、その答えは新たな疑問をいくつか生んだ。
”鎮守府”とは何だ?そのような組織は聞いたことがない。それに、彼女の名前も妙だ。ケルンとは、確かヴェストファーレンの都市の名前ではなかったか?
こちらが何も喋らなかったので生じた少しの沈黙の後、彼女は私にこう告げた。
「貴方は、これから鎮守府の所属となります。」
サブタイとか考えた方がいいのかな