27話
――グレーター・ロンドン
どうしてこうなった?
その一言が彼女、シェリルの薄い胸中のほぼ全てを表していた。
今、この会議室は老若男女、人間、妖精を問わずまさに侃々諤々といった様子で怒鳴り愛もとい論争を繰り広げていた。
「そんな意見は現実的じゃないッ!」「黙れ小僧!多少の無理を通してこその‥」「出来ない物はできないと言っているでしょう!?」
自分の発言が発端と言えば発端であるのだが、まさかここまで酷くなるとは。
ちらりと目を向けると、秘書艦プリンス・オブ・ウェールズは「やれやれ」のジェスチャーを返すだけ。他国から会議に参加した面々も、触らぬ神に祟りなしとばかりに押し黙っている。
シェリルは深いため息を吐くと、何故こうなってしまったのかをもう一度思い返す事にした。
先日、ドーバー海峡を終撃し多大なる被害を与えた新出の”姫”級深海棲艦―その外見、特性より「北海棲戦姫」と名付けられた―を、今後の事を考え、撃沈するための作戦会議。
最初は至極マトモだったその会議は、ドイツ、キール鎮守府提督のカロラの報告から始まった。
「‥まず、目標の所在地についてです。英独両潜水艦隊のデータ、大型飛行艇を用いた高高度偵察の結果、奴はここに居ることが分かりました。」
ここ、と言ったタイミングに合わせ、彼女は壁に映し出された地図の1点を指した。
「旧ノルウェー北方、ナルヴィク。そこより少し北のフィヨルド地帯の最深部です。」
さらに提示された荒い空撮写真に海上がざわつく。雪と氷の世界の中に、それは確かに佇んでいた。
続いてアルフレート提督が口を開く。
「我らがドイツ打撃艦隊、旗艦ビスマルク以下、装甲艦リュッツォウ、重巡プリンツ・オイゲン、軽巡ケーニヒスベルク、駆逐艦
機雷のせいで出撃出来なかったのがよほど悔しいのか、いつも以上に気合いの入った口調で報告する。
次は私の番だったが、実情報告といえ少し言いづらい。
「‥我々からは、戦艦レパルス、レナウン、ネルソン、ジブラルタルより回航中の重巡ドーセットシャー、空母イラストリアスが参加します。」
途中までは普通に聞いていたイギリスの高官達だが、私が言葉を進めるにつれ額にしわが寄り始めた。
そして私が言い終わって座った時、特にしわが深くなっていた海軍卿が荒々しく立ち上がる。
「ちょっと待ちたまえ!空母が1隻しかいないではないか!?帰還させた本国艦隊にはあと2隻の空母が居るはずだぞ。機動部隊を投入すると言った話はどこに行ったのだ!?」
まるで闘犬が吠えるように私に怒号を浴びせる海軍卿。私はうつむいて続けた。