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暗黒の年と呼ばれた一年から数ヶ月。
艦娘と呼ばれる少女達や、各地で出現した妖精達による軍隊。それら深海棲艦に対抗できる戦力が揃い始め、人類側はようやく深海棲艦の攻撃をくい止められるようになっていた。
ライン川東岸 リーメス要塞線:通称”
ライン川。ドイツの西を流れる大河である。ベネルクス諸国が相次いで陥落した一種の恐慌状態の中、ドイツ参謀本部はここを最終防衛ラインとして立案。総力を以て要塞線を構築した。人間の力で深海棲艦に対抗できる数少ない事、その一つが妖精兵の為の陣地構築であった。いくらこちらの攻撃が意味をなさない深海棲艦とはいえ、地面をすり抜けられる訳ではないのである。
幸か不幸か、深海棲艦はベネルクス諸国を制圧後南進を開始。フランスの抵抗をものともせずパリを陥落させ、フランスを降伏させた。しかしフランスは、残党軍の高官を元首とするレジスタンス政府”ナシオン・フランセーズ”を南部ヴィシーにて成立させ、妖精軍も加わっての抵抗を継続していた。
こうしてフランスの稼いだ時間により、要塞線は完成。深海棲艦の攻勢をどうにか止める事に成功したのである。
――20XY年 12月 ベルリン 対深海総司令部
「攻勢計画‥ラインにか?」
「はっ、私としましては、今こそが好機かと。」
紙束を差し出され少し困惑しているのは、アルフレート准将。対深海においての最大戦力、艦娘達をとりまとめる司令官である。
差し出した妖精は、ハインツ大佐。現在唯一と言える完全充足の戦車連隊の指揮官だ。
「現在我らがドイツは、ライン戦線、
「ドーバー海峡への打通、および戦略的余白の確保、そしてラインラントの奪還か。筋は通っている。‥しかしそれをなぜ私に?君達はもう私の指揮下にいる訳ではないんだぞ?」
妖精軍は初め、艦娘と一緒くたにされ、唯一だと思われていた”妖精と話せる人間”であったアルフレート中佐(当時)の下へ配属されていた。が、両方とも数が増えた事(それによる指揮官の昇進も起こっている)により、妖精陸軍は元々存在した人間の陸軍組織へ編入、ヴィルヘルム元帥の指揮下となっていた。
「本部の方にも一応打診はしたんですが、敵陣地を突き破るには戦力、とりわけ砲兵が足りない、と。空軍の精密爆撃機に頼れないかとも思いましたが、まだ生産が始まったばかりなので無理という事でした。」
「ライン戦線か‥確かこちらは要塞、あちらは陣地だったか。エルザスとは逆だな。そして大河を挟んでいる。防衛には向くが、攻勢となると本部が渋るのも分かるな‥。」
さらに敵はトーチカのようなものもいくつか作っているらしい。その上こちらの要塞は急造品であり拡張性が乏しく、大型の要塞砲等は配備できずにいた。もし配備したとしても弾薬の生産が追いつかないだろう。
「ウーン‥野戦砲レベルでもいいので、ある程度の制圧射撃支援が受けられれば‥。あと贅沢を言えば旅団規模の歩兵部隊。それだけあればアントワープまで突っ走るだけの軍の橋頭堡を確保できるはずなんです。‥はずなのに。」
悔しそうな顔をするハインツ大佐。もしかすると打診を却下されたその足でここまで来たのかもしれない。
「君、上は断る時に他に何か言っていなかったか?」
ふと、何かを思いついたような顔でアルフレート准将が質問する。
「ええと、橋頭堡さえ確保できればドーバーへの打通そのものはギリギリ可能だと言っていました。‥チェコ方面からの引き抜きや、例の民間徴用で新編中の自動車化師団の繰り上げ配備など、きわどい手を使う事になりますが。」
その表情を感じ取ったのか、端々から期待を感じさせる声でハインツ大佐が答える。すると、アルフレート准将はニヤリとした顔になる。
「歩兵については、私直轄の海兵隊1個連隊を貸そう。数は少ないが、強襲揚陸や渡河ならば通常の歩兵以上の働きはする。そして砲列だが、私にいい考えがある。」
そして、説明を始めるアルフレート准将。それを聞いて、ハインツ大佐の表情は次々と変わっていった。
「え、えぇ‥?確かにそれならば条件を満たす事は出来ますが・・・大丈夫なんですか‥?」
後編へ続く
もう週1更新(だいたい日曜日)っていう事で良いですかね
ちなみに今回の話は本編のだいたい3年くらい前です