9話
――ヴィルヘルムスハーフェン鎮守府 妖精宿舎
「うぅん‥。」
私は窓から差し込む光で目を覚ました。起き上がろうとした時に、体の具合に違和感を覚える。
そうだ、私は”妖精”なるものに生まれ変わったのだった。そして今は故あって空軍に所属することになっている。
「おはよー!」
「へぁっ!?」
ガチャリ、とノックも何の前触れもなく扉が開き、昨日私を案内してくれた彼が入ってきた。それに驚き、私は変な声を出してしまう。
「さあ早く着替えて!ご飯をもらいに行こう!」
朝っぱらから元気な彼に少し圧倒されつつも、衣装箪笥を開き服を取り出す。白いシャツと黒いネクタイ、そしてブルーグレーのチュニック。これはフリーガーブルーゼというのだと、彼が聞いてもいないのに教えてくれた。
その後私がパンとコーヒーの朝食を済ませた所で、彼は適性テストの話を持ち出してきた。そして気がつくと私は、碌な返事もさせてもらえぬまままた引っ張られていたのである。
――鎮守府管轄内 第三飛行場
その飛行場は、一言で言えば簡素であった。元々が工廠の実験用のようなものらしく、土をただならしただけの路面に様々な航空機が並んでいる。ほとんどが記憶にあるもの、もしくはその派生形と思われる物だったが、一つ見覚えのない単発機があった。全体的にどことなく丸っこい形をした、空冷エンジンの戦闘機。よく見るとラウンデルの描かれている部分には、一度剥がした痕があった。‥別の国の機だろうか?
「おい、貴様、何しに来た?」
私がその機を見ながら考えごとをしていると声をかけられた。振り向くと、声をかけたのは無精髭を生やした妖精だった。
「あ、ディードリヒ大尉!ここに居たんですね!」
彼がそう言いつつ敬礼をする。私も一緒に敬礼した。まだ一日とたっていないが、これは思いの外すぐに敬礼の癖はつきそうである。
「ああ貴様か。覚えているよ。今はもう小隊長になっているんだったかね?‥で、今日は何をしに来た?あとそこの奴は誰だ?」
最初話しかけられた時は少し驚いたが、もしや口調が少し荒っぽいだけの普通の妖精のようだ。彼とも面識があるらしい。
「えーっと、この人はつい昨日海で拾われてきた人で、これからどんな適性があるかどうかのテストを受けるんです!」
「そ、そうです。」
少し勢いに流される感じで答えた。すると大尉は、何かに納得したような顔になる。
「成る程分かった。あと貴様、その様子じゃ知らないようだから言っておく。妖精には2種類いてな、深海棲艦を倒した時に出て来る”反転妖精”と、どこからか沸いてくる”通常妖精”だ。ふつう、反転妖精は兵器を扱うのに長けている。本能に近い物があるらしい。だから拾われたらすぐに軍に配属されるようになっている訳だな。もちろん訓練すれば通常妖精でも反転妖精と同じレベルで戦えるようにはなる。俺もその一人だ。」
妖精にそんな分類があったとは。私が半ば強引に軍に配属されたのもそうする理由があったからだと知ると少し腑に落ちる。
「ねえ、飛行機の用意ができたみたいだよ!」
彼が言った。見ると、飛行場には1機の複葉機が待機していた。確か‥ヘンシェルHs123という機体のはずだ。
私は様々な感情を胸中に渦巻かせながら、その機へ向かった。
主人公はテストでどんな結果を出すのでしょうか?
次回をお楽しみに!
‥こんな事書いてみたけど需要が1週間で消えてしまうな