ハイスクール・DM   作:龍牙

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4話

「そう」

 

 ブルースからの忠告を受けた後、木場はリアスへと報告を行っていた。当然ながら、四季の事だけでは無く……堕天使に狙われた詩乃の事についてもだ。

 

(……奴には今の僕じゃ……いや、全員で戦っても勝てない)

 

 ふと、その事について報告した時……ブルースからの忠告を思い出して、『これでよかったのか?』と言う考えを浮べるが、それは直ぐに振り払う。彼にとってグレモリー眷属の騎士としても、個人としても王であり恩の有るリアスに偽りを言うと言う選択肢は選べなかった。……最悪、これが原因で四季と敵対した場合……そう考えるとブルースと対峙した時の事を思い出してしまう。当然だろう、未だにブルース性質の実力は四季よりも高い位置に有る。格下の四季にさえ負けるのだから、勝てないのは当然の事だ。

 

 圧倒的な格上とでも言うべき威圧……ブルースの実力を木場は辛うじて判断できた。……圧倒的過ぎて差を感じることが出来ないほどでは無いことに喜ぶべきか判断に迷う。そして、想像出来るのは全員で向かって行った結果、ブルースに返り討ちにされる自分達の姿だ

 

(……戦っても勝てない。二天龍を敵にした戦う感覚……とでも言うのかな、あれが)

 

 ぶっちゃけ、あの段階でブルースも人間態の為に力を抑えていた。……正しく評価を与えるならば、最低ラインは全盛期の二天龍……カツキングを含めて四季が用意していたアウトレイジの戦力である。

 

 ……付け加えると、二天龍を纏めて倒したカツキングには更に上が有ったりするが……。知らない方が幸せだろう。マックスとか、ギャングとか、マスターとか、ムゲンとか。一応、基本形態でさえその実力だ。

 

 ……今更ながら万が一詩乃に何か有ったら、全盛期の二天龍レベルの戦力率いて堕天使殲滅に動いていたことだろう……四季が。間違いなくそうなったら堕天使と言う堕天使を皆殺しにするまで四季は止まれなかった事だろう。下手したらそれでも止まれずに天使にまで怒りをぶつけていた可能性も有る。ぶっちゃけ、存在していた記録まで消していたら最早どれだけアザゼル辺りが懇願した所で一切の問答は無用で堕天使と言う最大勢力の一部が最低でも致命傷、最悪は消滅と言う憂き目に遭う所だった。

 そう考えると、迂闊なマネをした過去の上級悪魔とドーナシーク……寧ろ殺された方が悪魔と堕天使達にとっては良かったのかもしれない。下手すればこいつ等のせいで自分達の種族が滅んでたかもしれないのだし。

 

 その後、リアスから持っていた契約のチラシから死の間際に自分を呼び出した一誠を悪魔として『 兵士ポーン』の駒で悪魔に転生させた事を教えられ、明日の放課後にでも四季と詩乃の二人と一緒に此処に連れてくる様に頼まれた。

 

 本来ならばそれは一日ほどずれる筈だが。本来の歴史において何も知らない一誠を襲撃するはずのドーナシークは四季の逆鱗に触れて羽さえも残らず灰にされている。同時に四季の事も有り、リアスは早い段階で新しく眷族になった一誠に事情を説明するべきと判断したのだ。

 

 婚約者との件までの期日はそれなりに近付いている。まだ時間が有ると言っても、未だに残りの戦車、僧侶、騎士の駒は見つからず、僧侶の駒の転生悪魔は彼女では扱えないと判断されているのだ。……婚約破棄の為にも少しでも早く眷属は見つけたいが、未だに三つも駒が余っている。

 既に候補として考えていた四季と新たに見つかった詩乃の二人……二人が眷族に加わってくれれば、

 

(私達眷属は強くなれる)

 

 そう思う。この時、詩乃まで巻き込んだ事で余計に四季の怒りを買う事になるのだが……当然ながら、この時の彼らは知る由もなかったりする。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その日、四季は朝から心此処に有らずと言った様子だった。まあ、昨日の堕天使の一件で何だかんだで告白して受容れられて……晴れて詩乃と恋人と同士になった訳だ。

 

「な、なあ、四季は覚えてるよな? 夕麻ちゃんはちゃんと居たよな!?」

 

 四季の姿を確認した一誠がそう問いかけてくるが……聞いちゃいなかった。

 

「お、おい、四季!!!」

 

「? 居たのか、イッセー」

 

「居ただろ、さっきから!」

 

 今まで一誠の存在にさえ気付いて居なかった四季だった。縋り付く様に四季の肩を掴んで聞いてくるが……此処で一誠は大事な事を忘れている。

 

「誰だよ、夕麻ちゃんって?」

 

 四季は夕麻ちゃんと言う相手の事は最初から知っていない。

 

「そんな……四季までそうなのかよ?」

 

 彼の質問の意味が分からずに聞き返しただけなのだが、一誠は震えながら何処か絶望にも似た色を表情に浮かべていた。そんな彼を一瞥しつつ『何だったんだ、あいつ?』と疑問を浮べながら背中を見送っていた。

 

(……もしかして、昨日言ってた彼女の事か?)

 

 昨日は詩乃を助けた事や詩乃に告白した事で頭が一杯で先程まで思いつかなかったが、もう一箇所堕天使の気配が在った事を思い出した。恐らくは何らかの目的で一誠に近付いたのだろう。

 そして、『夕麻=堕天使』とするならば、パルサーのアドバイスを元にしたデートの最後で一誠に対して何かをして、最後には目的を果たしたので己の存在に繋がる記憶や記録を消したと言う事だろう。何故一誠の記憶だけ消えていないかは疑問だが、状況から考えてそうである可能性が高い。

 

(もしくは彼女の方が神器持ち……って線は薄そうだな。相手もバカじゃないなら、目撃者が居ない時……一人の時を狙うはずだ。それにしても、あいつ忘れてるだろ……オレは彼女が出来たって言われても、名前は聞いてないからな)

 

 周囲との語弊に焦っているのか、一誠は四季に夕麻と言う名前を言っていないと言う事をすっかり忘れている様子だ。態々指摘するのも面倒と四季は四季で放置しているが。

 

 別に一誠の事は嫌っていないが一誠の問題と斬り捨てる事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 放課後……

 

 素早く帰り支度をしていると教室のドアが開く。

 

「やあ、どうも」

 

「はぁ」

 

 内心『またか』と思いたくなる相手の登場に思わず溜息を吐いてしまう。今日は詩乃と一緒に帰る予定なので相手にしている暇は無い、と無視して帰ろうとするが、

 

「君が兵藤くんかい?」

 

「ああ。それでオレに何の御用ですかね」

 

「リアス・グレモリー先輩の使いできたんだ」

 

 イケメンに対して睨みつつも面白く無さそうにしている一誠の姿を一瞥する。

 

(オレから他に興味が移ってくれたって事か? まあ、面倒が無くなって助かったな)

 

「すまない、待ってくれるかな。君にも用が有るんだ」

 

「先約が有る」

 

 木場の言葉をその一言で斬り捨てて帰ろうとするが、木場は四季の肩を掴んで呼び止める。

 

「待ってくれるかな? 悪いけど、生徒会の方にも君に用が無いかは確認しておいたんだ」

 

「離せよ、色男。だいたい、何で生徒会限定なんだ? 他の相手との約束だからってお前等の方を優先させる義理も無いだろ?」

 

 肩を掴む腕を払いながら帰ろうとするが、

 

「君にも来て欲しいって部長が呼んでるんだ」

 

「断る」

 

「お前、三年のリアス・グレモリー先輩の呼び出しだぞ! それを断るって、それでも男か!? 普通優先するだろう!?」

 

「オレはあの先輩の事は嫌いなんだよ」

 

 興奮気味に怒鳴ってくる一誠を呆れた目で見ながら、内心で『他の生徒の記憶から消えた彼女の事は良いのか?』と思ってしまうがそっちは口には出さない。

 

「ったく、詩乃を待たせたくないんだ、邪魔するな」

 

「な!? なんで、あんな“人殺し”がグレモリー先輩より優先なんだよ、お前」

 

 一誠の言葉が聞こえた瞬間、四季の足が止まり次の瞬間、

 

「っ!?」

 

 四季の拳が一誠を殴り飛ばしていた。ドアの所から窓際まで殴り飛ばされ、進路上に有った机や椅子にぶつかりながら一誠の体が吹っ飛ばされた。それに教室中から悲鳴が上がるが、四季はそれを無視して一誠を見下ろしながら、

 

「おい、変態。次ぎ詩乃を悪く言ってみろ……本気で」

 

 

―殺すぞ―

 

 

 殴り飛ばした一誠を睨みつけながら本気で殺意の篭った言葉、それに対して脅えながら慌てて一誠は首を縦に振る。

 

「いや、彼女にも一緒に来て欲しいって言ってるんだ。……昨日の事でね」

 

「へぇ」

 

 四季のまとっていた殺気の矛先がその言葉によって今度は木場へと向く。冷や汗を流しながらも表情には出さず、木場は言葉を続ける。

 

「だから、ぼくと一緒に来てくれないかな」

 

「……良いだろう。行ってやるよ……」

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