『生きる』という事   作:生きねば

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※この物語において、永淋がアンチポジションにいます。
 それでも良いと言う方はお進みください




第一話『永遠亭の実態と思わぬ事故』/『夢と現実の剥離』

「うどんげ、試薬出来たから実験台頼んだわよ」

 

「……師匠、このままだと新薬完成の前に私が死んでしまいます」

 

 ここは永遠亭、幻想郷という人間と妖怪が暮らしている世界にある中でも最高の名医がいると言われている場所。

 そしてその名医、うどんげと呼ばれたこの兎の師匠こと永琳はそんな幻想郷の妖怪、人間からとても尊敬されている。

 そんな師匠の一番弟子がこの兎……

 

 と言うのは表向きだけだった。

 

「私に逆らったら、ある事無い事吹聴しまくるわよ?」

 

「そ、それは……」

 

 実態は黒も黒、真っ黒である。

 弟子として育ててると周りには言い触らしているものの実際は都合の良い試薬の実験台、兎の少女がなまじ他の妖怪よりも強すぎたが為に普通の妖怪、或いは上位に足を踏み入れているレベルの妖怪ですら命を落としかねない薬を平気で飲ませている。

 

 彼女も強いと言えど上位の妖怪にしてはそこまでと言う強さ、何度か死の瀬戸際を渡った事もある。

 

「私を誰だと思っているのかしら、ちょっと呟けば霊夢とおバカな魔法使いはともかく他の陣営はそれを信じるわ……そうなればあなたは迫害されるわよ、『あの時みたいに』ね」

 

「うっ……それだけは……」

 

 前日の実験においても死にかけている彼女だが、永琳には逆らえないでいる。

 勿論強さもそうであるが、彼女は月より逃亡し降り立った幻想郷において、降り立った直後から激しい迫害を受けていた。

 

 それも他の妖怪とは比にならない程に。

 

 そんな折彼女を匿ったのが永遠亭の永琳である。

 だからこそ兎の少女はどれだけ酷い仕打ちをされようともあの時の恩があるからと逆らえず、師匠と今でも慕い続けているのだ。

 

「じゃ、お願いね」

 

「はい……」

 

 

 

 

 

 

「頭が……割れる様に……痛い」

 

 酷く頭痛がする。

 それもこれも師匠の薬を飲んでからだ。

 これで三回連続試薬は失敗だろうか、もう副作用で死にかけるのは暫くは嫌なんだけどなあ……なんて思いながら自室で横になっている。

 

「鈴仙~、入るわよー」

 

 そうしていると、姫様が小声でそっと部屋の襖を開けてきた。

 師匠の実験後はいつもこうして入ってくるのが恒例になっているのです。

 

「……」

 

「はぁ……また永琳ね。無理させちゃダメって言ってるのに」

 

「わ、私は……」

 

「はいはい、良いから喋んないの。氷枕持ってきたから、それでちょっとはマシになるでしょ?」

 

「……申し訳ないです」

 

「良いのよ。私達家族でしょ?」

 

 姫様はこうしていつも私を気遣ってくれる、私みたいな師匠の実験台にしかなれない無能を。

 しかも家族だと言ってくれる。

 私はそれが嬉しいのに、無能だから受け取れないでいる。

 私じゃとてもじゃないけど姫様の家族になる資格が無い。

 

「……ごめんなさい、姫様」

 

「……謝んないでよ。てゐだって心配してるんだし……謝るべきは、永琳の暴走を止めらんない私達よ」

 

「私は……師匠に救われました。これくらいの恩返し、なんて事……無いです」

 

 あのまま師匠に救われなかったら私は迫害で死んでいたと思います。

 だからこそ、この命はここに住んでいる以上は師匠に捧げる、捧げるしか無い、それでしか生きる事を許されない。

 

 ワタシハシショウニスベテヲササゲルタメダケニイル……

 

「貴女って子は……」

 

「だから、大丈夫なんです。心配、しないでください、姫様」

 

「……ちゃんと安静にしてなさい、なんか作っといてあげるから」

 

「…………はい」

 

 そう言って姫様は部屋から出ていく。

 ……思えば朝からまともな食事、摂ってないっけ。

 姫様が何か食べられるものを簡単に作ってくれると言われ、そう思い出す。

 と言うかまともに食べたのっていつが最後だったか……

 

 考えるだけ虚しくなる。

 

 

「うどんげ、いるんでしょ。入るわよ」

 

 そうこうして安静にしていると、今度は師匠の声。

 ……多分、また無茶ぶりだろう。

 それでも師匠の頼みなら断る訳にはいかない。

 

「……師匠」

 

「このカフェイン剤を霊夢のところまでお願いするわ。私は研究の続き、てゐは晩御飯やってもらうから」

 

「……分かり、ました」

 

 頭を片手で抑えながら朦朧とした意識の中立ち上がる。

 姫様の氷枕のお陰ですぐに倒れる事は無いだろうし、これさえ終われば今日はもう寝るだけ。

 そう言い聞かせて師匠からカフェイン剤の包みを受け取り、博霊神社に向かう。

 

 

「…………いつもの三倍は時間掛かってるなあ」

 

 あれから約三十分、いつもの速度なら十分で着くところではあるけれどようやく神社が見えてきた。

 

「霊夢は……いるわね」

 

 何やら結界のある場所に立っているけれど、外来人の見送りかしら。

 まあともかくその場所に外来人らしき人影は無さそうだし話し掛けてみよう。

 

「れーむ……」

 

「まずいわね、今日は少し波長が安定しない……」

 

 一回呼び掛けるも、何かをブツブツ喋っていて聞こえていないみたい。

 流石に声が小さいのと遠かったのが原因かな……そう思って私は近付いていく。

 

「れーむぅー」

 

「何とかして……って鈴仙!?」

 

「あ、やっと気付いたぁ。実はね――」

 

 気付いてもらえてホッと息をつく。

 手っ取り早く済まそうとして地面に完全に降りた――その瞬間だった。

 

「鈴仙、逃げなさい! 今は結界が――」

 

「…………へ?」

 

 私は、訳も分からないまま突然現れた白い光に包まれていった――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほいじゃこのおっさんの後始末は任せたぜー」

 

「了解しやしたアニキ。んじゃとっとと観念してサツんとこ来な」

 

「ぐぞぉ……」

 

 俺の名前は榊原龍太、学校なんざ面倒だからとサボって仲間達とゲーセンに行った帰りに女を路地裏に連れ込んでいく男を発見して今に至る。

 

木馬富土(きば ふじのり)31歳、幕内戦歴127勝104敗……かつて大相撲前頭筆頭まで登り詰めるも半年前暴行事件を起こし相撲界を永久追放、現在はK1選手を目指している――その割には大した事も無かったな」

 

 その外道男が元大相撲幕内の、それも幕内の中でも実力のある力士と聞いて外道云々よりも単に戦いたいと思っていたのだが……俺は落胆した、非常に落胆した。

 弱い、いくら何でも半年前まで現役のトップ力士の一人とは思えないくらいに。

 

「……つまんねえ」

 

 仲間と遊んでいる時間は馬鹿騒ぎ出来て楽しいが、それ以上に楽しい事がここ最近無い。

 喧嘩も俺と対等になり得る奴すらいない、家に帰れば一人……

 

「帰ったら東方の動画でも見るか……」

 

 仲間達と騒いでる時並に楽しい事も全く無い訳ではない。

 暇だからと手を出した東方のゲームにいつの間にかハマり、書籍を買い漁り、幻想入り現代入りなんてのも見ている。

 

 しかし所詮はちょっとした趣味を出ない。

 現実に好きなキャラがいてくれたりすれば話は別、ではあるが。

 

「ま、そんな上手い話があるわきゃねえわな」

 

 今日は気も乗らないし帰ってすぐ寝るか……と考えていた矢先だった。

 

「…………んだァ、ありゃ」

 

 物静かな公園、誰も寄り付かない薄暗さが目立ってきた午後六時。

 その短い針が六を指している時計の真下で、女がグッタリしていた。

 

 しかもかなり奇特な格好をしながら、だ。

 

「高校の制服みたいな服に……ウサミミィ?」

 

 薄暗いせいで顔がよく見えないが、まあまともな格好で無い事は一瞬で分かった。

 どう見ても俺が東方の中で一番気に入ってる鈴仙の格好そのものなのだ。

 

「……取り敢えず連れて帰るか」

 

 顔がどうのはともかく、こんなとこでぶっ倒れていたって事は相当な理由があるもんだ。

 見て見ぬ振りと言うのも気が引けたからすぐ近くの俺の家まで運ぶ事にする。

 

「軽いな」

 

 気絶している人間は重いと良く聞くが、背負った感じはまるで綿にでも触っているかの如くの軽さだった。

 育ち盛りの高校生だろうに、ちょっと気の毒にも思える。

 

「……それこそまさかだな」

 

 この女が鈴仙と言う説も考えたが、身なりがそこそこ整っているのにも関わらず痩せ細り方が異常なのでそれは捨てておく、捨てておきたい。

 何たってあの永遠亭メンバーが鈴仙を虐待……そう言うのは考えるだけで苛立ちと罪悪感が募る。

 

「ふぅ、着いたか」

 

「アニキ、その子っすか?」

 

「ああ、悪いな崇義。後始末させた後に」

 

「良いっすよ、俺も暇なんで」

 

 ここに来るまでに仲間に連絡して事前に自宅前で知り合いの医者に待機していてもらっていた、自分で連絡して救急搬送……と言うのも良かったのだが嫌な予感がした為だ。

 

 こう言う時知り合いに医者がいて良かったものだと染々思う。

 

「おっちゃんも悪りいな」

 

「なに、敢えて私を呼んだ辺り訳ありなんだろう? 深くは聞かんから早くその子を中に」

 

「おう、サンキュ」

 

 玄関が人を抱えて通るには少々狭かった為、崇義にも手伝ってもらい自室のソファーベッドまで気絶している彼女を運んだ。

 

 まじまじと彼女の顔や服を見てみると、余計に東方projectに出てくる彼女を彷彿とさせた。

 本来なら多少なりとも喜ぶべき事だが、彼女の不健康そのものなくらいに細い体型や今にも死にそうなくらいの顔色を見るとどうにもそう思えなくなってくる。

 

「なあアニキ、この子見た事ある気がするんすけど」

 

「……ああ。お前が大好きな『姫様』を連想すればすぐにでも思い出す」

 

「……ええ……」

 

「……似てるだけの女が趣味でしたコスプレ。そう考えもしたがこんな痩せ細って死にかけの状態でのコスプレはまず考えられねえ」

 

 実はの話だが、俺の仲間……チームの全員は東方projectが好きと言う共通の趣味がある。

 その中でも俺が一番に信頼している崇義は俺と同じく永遠亭の面子が好きらしく『姫様』こと『蓬莱山輝夜』が大のお気に入りキャラだとか。

 

 ……万が一この女が鈴仙で、鈴仙を除いた永遠亭の面子がこれを引き起こしていたとしたら、間違いなく一番落ち込むのはコイツだろう。

 

「……私にはなんの話をしているかさっぱりだが、取り敢えず何か重大な病気をしていると言う事では無かった」

 

「そうか、済まねえなわざわざ」

 

「気にするな。だがあの娘、ここ半年……いや、『最低で』半年、まともな生活を受けられていない。睡眠時間の低さ、栄養失調、身長に対して約15kgも軽い体重……間違いなく虐待だろうな」

 

「ア、アニキ……」

 

「狼狽えんな、まだ決まった訳じゃねえ」

 

 診察が終わったらしく、医者のおっちゃんが俺達が話し込んでいる側まで来て話し掛けてきた。

 

 しかし話を聞く限りと、俺が見た限り。

 

 崇義にはああ言ったものの、あまりにも鈴仙に酷似し過ぎている。

 俺はふぅっと諦めた様に息を吐くと、こう問い掛けた。

 

「おっちゃん……俺は今から真面目な話をする」

 

「……なんだ」

 

「あの女の耳……いや、兎の耳は『本物』だったか?」

 

「ア、アニキ!?」

 

 真っ直ぐおっちゃんの目を見る。

 最初はただ俺を見ていた目がすっと閉じ、ゆっくりと開かれる。

 

 そしてどうにも困った様にこう答えた

 

「私も最初は目を疑ったが……少し見た結論から言おう」

 

 

 

 

「あれは、間違いなく彼女を構成している身体の一部だ、血さえ通っている」

 

 その瞬間、崇義は崩れ落ち、俺は天を見上げる事しか出来なかった。

 

 

 ――ここに、東方projectキャラの現代入りがほぼ確定したのだ……俺達が夢見ていたものとは180度真逆の、現代入りが。




キャラ紹介


名前:榊原龍太(サカキバラ リュウタ)
ポジ:本作主人公
年齢:17歳
身体:金色のメッシュがある黒髪、高身長、中背
特徴:仲間内と尊敬している人物、自分が好きな物以外には何も興味の無い男。
 特にこと一般人間に関してはほぼ興味を示さないが、幻想郷のキャラクター達にはそれを感じさせないくらいの興味を示す。好きなキャラはうどんげ。
 名前の元ネタはプロ野球選手・オリックスの『榊原翼』と同じく元プロ野球選手・オリックスの『角屋龍太』


名前:西村崇義
ポジ:龍太を慕う一番舎弟
年齢:17歳
身体:茶髪、中身長、かなりガッシリした肉体
特徴:中学時代、今まで誰も倒せなかった大男を瞬殺した龍太に男として一目惚れし龍太の初めて持った舎弟になり今の体格へ。因みに大男は二番目に舎弟となった。
 勉学は苦手だが龍太以上に仲間想いで可愛いもの好き。
 東方projectも龍太の影響で興味を持ち、姫様こと蓬莱山輝夜に一目惚れ。
 名前の元ネタは今年ドラフト入団したオリックスの新人『西村凌』と今年引退した元オリックス『川端崇義』


名前:増井優
ポジ:知り合いの医者
年齢:33歳
身体:黒髪、高身長、痩せ型
特徴:優秀な町医者。黒い眼鏡と少し長めの黒髪、無愛想な表情と口調が通常で顔見知り以外とあまり喋らない為に少し怖がられているが、実態は言う程怖くは無い。
 龍太はともかく龍太の仲間が良く無茶をする為にここ数年で龍太達が常連に。
 東方projectは知らない。
 名前の元ネタは先日オリックスへFA入団が決まった『増井浩俊』とオリックスの『鈴木優』
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