ルーントルーパーズ・翠星のマリースア   作:エウロパ

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皆様!新年、明けましておめでとうございます!

この作品は全3話で完結する短編作品です。
私が2013年、つまりガルガンティアの放送が終わった直後に書いた小説で当時読んでいたルーントルーパーズとのクロス作品でそれを少し修正して投稿しました。
私がはじめて書いた小説でもありますのでお見苦しい点があるとは思いますがご了承下さい。


翠星のマリースア【上】同盟の戦い、大いなる聖戦

 

 

 

 

 

朽ちかけた神殿の内部にある円形の洞窟広場にその入り口である扉を破ろうとする重音が響いていた。

 

そんな音の中、洞窟広場には傷つき疲れきった騎士達や排月神に仕える高位の神官や魔道士達がもうじき自分達の元にやってくる破滅の時をただただ待っていた。

皇都が敵の手に落ち敗残兵をまとめてこの神殿に立てこもってすでに6日にはなるが正門は今にも敵の手によって破壊されようとしている。

 

そうなればこの中に居る者は皆殺しだ。

 

五百年に渡って栄華を誇っていた神聖プロミア帝国も今や無残な最期を待つばかりなのだ。

 

「ここが堕ちるのも時間の問題か……」

 

「やはり計画を実行に移さねばなるまい」

 

ランプの僅かな光に照らされた広場では老若男女が狂気に支配された表情で話し合っている。

 

彼らは既に皆、死を覚悟していた。

 

だが、彼らはただ滅びるつもりは無かった。

 

一人の男が広場の祭壇へと顔を向ける。

 

「よいな?ヒュムナ」

 

「はい……」

 

祭壇には依巫が座っている。

その少女はまだ幼い年頃の少女だった。かすかに体のラインが透けて見える羽衣を身にまとい深く祈るように手を合わせている。

 

少女の背中には有翼の民の末裔の証である白い翼があり美しさを持っていた。

 

ここに集う者達が今から行おうとしているのはまさに外道の行いである。

だが、これから滅びる彼らにとってはそんな事はもうどうでも良かった。

 

何せ彼らは遅かれ早かれ確実に死ぬのだから。

 

黒いローブを着た魔術師達が少女の居る祭壇を囲むように並び全員が同じ言葉を唱えた。

 

「「虚空の狭間にたゆたう光よ」」

 

依巫を着た少女の体に刻まれた文様から血が滲む。

 

「「現世と冥界を繋ぐ番兵に問いかけん」」

 

少女は苦悶の表情を浮かべた。

 

「「有翼の民の血を対価としてここに願わん」」

 

少女の真下にある魔方陣は少女の体から溢れる血をすっていく。

 

「「この世界に異空の代償を示したまえ!」」

 

詠唱の完了。

 

だが、ちょうどその瞬間、広場の門が敵によって突破された。

門から流れるように突入してくる人外の軍団によって殆どの者が無抵抗のまま惨殺された。

 

だが、殺された者達の表情はとてもこれから死んでいく者のものではなかった。

彼らの歪んだ希望がにじみ出ていたのだ。

そんな彼らの死体が見つめる祭壇には少女の姿は跡形も無く消えていた……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

少年の頭の中に漆黒の宇宙空間の映像が流れている。

宇宙にきらめく無数の光点。

遥か遠くの恒星のきらめきが人にとっては永遠とも思える時を越え小さく無数に光り輝いている。

 

 

 

  

 

 

 

 

 

 

《永きに及んだ漂泊の時代は終わり我ら人類はあまねく銀河に繁栄の世界を手にいれた》

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

これは夢。

教導レム睡眠とよばれる機械を使った人工夢だ。

本物の少年は今頃、一人分のコックピットで眠りについている。

少年は……同盟の兵士達はこの啓発映像によって自らの意識を高めるのだ。

 

そんな夢の宇宙空間にもう何度も何度も聞いてすっかり脳裏にすっかり焼きついてしまったアジテーターの男の声が流れていた。

 

アジテーターの声が流れるのと同時に漆黒の宇宙空間の映像が下に向かってゆっくりとスクロールしてゆき突如として宇宙空間に視界いっぱいに広がるほどの巨大な輝く建造物が映し出される。

 

 

 

《それがアヴァロン》

 

 

 

宇宙空間に浮かぶ一つの輝く巨大な宇宙ステーション。

皿を逆さまのような形をした電磁シールド下の超密度回転球が真空の宇宙空間から膨大なエネルギーを抽出し、そこから両極一直線にプラズマの光軸を放つ。

 

その光軸を囲うように直径15キロにも及ぶ一枚の花弁のような居住区画が円になるように12基ほどが連なりそれが2つでプラズマ光軸の回りをゆっくりと回転している。

 

《麗しき理想郷、科学の叡智と開拓の意思が築き上げた楽園の輝きをみよ》

 

アヴァロン……宇宙に進出した人類が造り出した理想郷。

その正体は遥か昔に寒冷化によって滅びた地球を脱出した人類がコツコツと造った巨大移民用コロニーだ。

安定した重力、豊かな自然、正常な空気、自然繁殖した動植物を加工して作り出された非合成食品、そしてそのコロニーを守る透明な防壁が恐ろしい宇宙線や放射線を防ぐ。

まさに同盟に暮らす人ならば誰もが憧れる理想郷だ。

 

《これこそが諸君の故郷、四億七千万の全市民が諸君の勇気ある献身を称え栄誉ある兵士の名をその胸に刻んでいる》

 

《称えよ人類銀河同盟に約束されたくおんの未来を、ここより人類の躍進は始まってゆくのだ》

 

《だが、諸君、忘れてはならない》

 

壊れ穴だらけに喰い尽くされた宇宙ステーションの残骸が現れる。

ステーションには無数の巨大な醜い生物が群がっていた。

 

《この非情なる宇宙の深淵には時に容赦ない悪意が潜むことを……》

 

そして醜い生物がアップで現れた。

昔、図鑑で見た巻き貝のような形の強靭な外骨格。

そして憎悪さえ覚える醜い触手。

 

《我ら人類の前途を脅かすヒディアーズの跳梁を断固として阻止すべし!》

 

ヒディアーズ、人類の敵だ。

奴等はその進化の果てに絶対零度の宇宙空間の真空にまで適応し、さらには強力なグレイザー(ガンマ線レーザー)の発射機関まで自らの肉体に手にした。

 

《かような下等生物に人類の躍進を阻まれてはならない!》

 

人類銀河同盟の誇る全長数キロはある航宙艦の艦隊が現れる。

艦隊はただちに加速重粒子砲を発射しいくつもの青い閃光がヒディアーズの群体に直撃する。

 

いくら進化しても奴等は所詮、欲望のままに動く下等生物。

知性と統制の取れた我ら人類の敵ではない。

 

ヒディアーズからも無数の薔薇色のグレイザーが次々と発射され人類銀河同盟の艦艇が次々と破壊されていく……。

 

だが、奴等は手強い。

人類銀河同盟は発足時から奴等との戦いを続けてきた。

奴等に対抗するために巨大な航宙艦を幾つも造り強力な兵器を開発しそれを使うために少年のような兵士が同盟の計画的な子作りで産み落とされ戦場に送られる……。

 

 

ヒディアーズさえ居なければ!!レドの中に怒りと憎しみが溢れてくる。

 

 

《英雄達よ大いなる試練の時に奮起せよ無念のうちに散った幾多の犠牲を!今なお危機に瀕している未来の同胞達を忘れるな!》

 

ここでレドに対する教導レム睡眠は終わった――――。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェインバー『総員教導レム睡眠を中断。機体ナンバーK‐6821搭乗員レド少尉は速やかに覚醒されたし』

 

レド「ん……」

 

チェインバー『脳波計測、基礎律動異常なし血中乳酸値、アドレナリン分泌量に変化なし覚醒プロセス終了』

 

レド「……っ!敵は!?」

 

レドはチェインバーのコックピット内で教導レム睡眠から目覚めた。

するとそれとほぼ同時にコックピットの全天球モニターに通信ウィンドウが開かれ自分の所属する部隊の隊長であるクーゲルから通信が入った。

 

クーゲル<クーゲル隊、各機に告ぐ。睡眠啓発の時間はおしまいだ。まだ寝ぼけてる奴はいないだろうな?>

 

レド「はぁ……まだか」

 

全天球モニターの映像が切り替わり作戦宙域と予定航路図の三次元マップが表示された。

 

クーゲル<これより300秒後に全艦隊はワームホール、エルゴ領域に突入。スイングアウトした先はヒディアーズの巣と目と鼻の先だ。本作戦は人類銀河同盟の総力を結集した奇襲作戦である。ここでしくじれば後は無いものと思え>

 

作戦の簡易的な説明が終わると同時に目の前の台座に設置されているコミュニケーターがレドの目の前にホログラムを投射し機体チェックの進行状況が次々と表示され同時にチェインバーの声が響いた。

 

チェインバー『告知、現時刻を持ってレド少尉の軍務機関は14万5千時間を経過した。本作戦終了後、貴官には限定市民権とアヴェロンへの4週間の渡航滞在を申請する資格が与えられる』

 

レド「へぇ、そうだったか」

 

チェインバー『アドレナリン分泌量に変化なし。貴官の反応は期待値を満たしていない』

 

レド「アヴァロンか……一度この目で見てみたいとは思っていたが……いざ行けるとなるとよく分からない。故郷ってなんなんだ」

 

チェインバー『市民の権利が保障される場所である。貴官には自由睡眠、自由飲食、並びに生殖の自由が与えられる』

 

レド「何だかな……どれも俺には難しすぎる」

 

チェインバー『貴官は生存し繁殖するに相応しい優秀な人類である事が証明された。栄誉であり歓喜すべき成果である』

 

レド「お前は嬉しいのか?チェインバー」

 

チェンバー『私はパイロット支援啓発インターフェイスシステム。貴官がより多くの成果を獲得する事で存在意義を獲得する』

 

対ヒディアーズ殲滅兵器マシンキャリバー、レドが乗っている機体はその中でも一般的な汎用型の量産機だ。

マシンキャリバーはパイロット支援啓発インターフェイスシステムと呼ばれる人工知能を搭載して対話と支援によって専属パイロットの支援、啓発を行うシステムだ。

先ほどから喋っているチェインバーはレドの愛機チェインバーの声だ。

 

レド「ああ、ご苦労さん。確かにお前は良く頑張ってる」

 

クーゲル<無駄話はそこまでだレド少尉。まずは目の前の任務だ>

 

レド「了解です中佐」

 

レドはクーゲルに諭されて気合を入れる。

 

クーゲル<総員、対ショック体勢!ティレモシースイング完了と同時に全機発進。健闘を祈る>

 

レド「……」

 

レドは静かに目を瞑る。

オープン通信ウィンドウからはワームホールへの突入、ティレモシースイングの開始準備を行う人類銀河同盟軍の艦隊の通信が幾つも入る。

 

 

<通過回廊接続維持>

<全部隊突入準備完了>

<艦隊各班、順次突入>

<ティレモシースイング開始、スイングイン!>

 

人類銀河同盟の大艦隊がワームホールへと突入して行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<全艦、ワームホール通過確認>

<空母各班へ戦域突入支援艇、発進せよ!>

<戦域突入支援艇、展開予定座標へ進行>

 

宇宙空間にワームホール通過の損傷の有無を報告する通信が飛び交い、全長20キロメートルを超える人類銀河同盟が誇る6隻の巨大空母からはマシンキャリバー120機を搭載した戦域突入支援艇が無数に次々と発進する。

 

<量子次元反応弾クローザーパス設置部隊発艦せよ>

 

そして最後に空母から今回の作戦の要の一つである量子次元反応弾クローザーパスを運搬する部隊が次々と発艦した。

 

<先方の突撃艦隊はブロッサムセイルを確認しだい敵要塞特殊砲に対し艦砲射撃を開始>

 

艦隊旗艦からは司令の通信が先方の突撃艦隊に伝わる。

レドたちが抜けてきたワームホールはヒディアーズの巣のある惑星の隣にある惑星の裏側にあるため艦隊は今、全速力で惑星の影側を抜けてヒディアーズの巣へと向かう。

 

<こちら突撃艦隊、ブロッサムセイルを確認!>

 

チェインバーの全天球モニターには戦域突入支援艇の外部の映像が映し出されているがそこには恒星を背にグロテスクな花の様な外見をした全長40万キロの途方もない大きさを誇るブロサムセイルが映し出された。

それに挑むのは人類銀河同盟軍の全長数キロの大きさの航宙艦だ。

 

<ブロッサムセイル要塞特殊砲に急激なエネルギー増大を確認>

<艦砲射撃用意……撃てぇ!>

 

司令の命令でブロッサムセイルを確認した先方の突撃艦隊が一斉に加速重粒子砲を発射し無数の青白い閃光の針がブロッサムセイルのソーラーセイルの花弁に直撃し紅蓮の炎が次々と上がった。

 

<着弾を確認!目標の砲口部に命中!>

 

しかし、次の瞬間だった。

ブロッサムセイルの要塞特殊砲は一門がまだ撃てる状態であったようで次の瞬間にはその砲口から紫色の強力な閃光がはしりグレイザー(ビーム)が放たれ先方の突撃艦隊を容赦なく飲み込んだ。

宇宙空間に無数の爆発と衝撃波が発生する。

その一つ一つが先方の突撃艦隊の兵士達の叫びだった。

 

<先行艦列壊滅>

<残存艦艇も被害甚大>

<次弾撃てぇ!>

 

重苦しい報告にもかかわらず司令はすかさず指示を出し後続の艦隊から加速重粒子砲が一斉に放たれ仲間の仇だと言わんばかりにブロッサムセイルの要塞特殊砲の砲口を無力化した。

 

<後続の艦砲射撃……着弾!目標の砲口部を破壊!>

<敵要塞特殊砲全て沈黙>

<よし!ヘクサエレナ艦隊ディメンストリューム発射準備!>

 

ディメンストリューム、これは人類銀河同盟軍が開発した最新鋭兵器で女神級と呼ばれる6隻の特務艦が正6角形の陣形となり連携して空間の歪みの渦を発生させてそれを直接発射して敵にぶつけるという強力な兵器だ。

 

クーゲル<マシンキャリバー隊、出撃!>

 

クーゲル中佐の命令でレド達のマシンキャリバーが乗る戦域突入支援艇のハッチが開き格納されていたマシンキャリバー隊がビームファランクス砲とシールドを持ち続々と出撃し数百機ものマシンキャリバーが互いのシールドを接続、正方陣を幾重にも重ね幾何学模様を描いた陣形を展開する。

 

クーゲル<ヒディアーズの巣は、ホットジュピター型惑星の裏側直上に位置、恒星の高圧に支持された防衛プラットホーム、ブロッサムセイルに守られた難攻不落の要塞だ。恒星の強力な輻射熱により日向側からの接近はままららない惑星裏側より接近し巣を攻略する>

 

<ディメンストリューム発射!>

 

クーゲル中佐の説明が終わるのとほぼ同時にディメンストリュームが発射された。

ディメンストリュームは渦を巻きながらブロッサムセイルに直撃しディメンストリュームの次元断層がブロッサムセイルの忌まわしき花弁を引き千切り消滅させる。

そしてその背後にヒディアーズの巣が姿を現した。

 

クーゲル<裏側を堅固に守っているブロッサムセイルの要塞特殊砲を新兵器ディメンストリュームで無力化、巣を完全に露出させ攻略を可能とする。我々マシンキャリバー隊の任務は量子次元反応弾クローザーパスを巣に設置する部隊の護衛。阻害する全ての敵戦力を排除する事だ!>

 

クーゲル<第一砲列……撃て!>

 

陣形を組んだマシンキャリバー隊が一斉にビームファランクスを発射。

光の針が巣より侵入しようとするレドたちを迎撃しようと無数に現れたヒディアーズを次々と貫き蒸発させた。

 

だが、ヒディアーズもやられっぱなしではない。

マシンキャリバー隊の攻撃後、すぐにグレイザーを放ち反撃を開始し陣形を組んだマシンキャリバーを次々と破壊した。

 

ここはレドたちマシンキャリバー乗りがこれまで嫌というほど経験してきた戦い通りであり陣形はすぐさま接続を切り各機がちりじりになり攻撃を開始する。

 

ヒディアーズのグレイザーによる攻撃と喰らい着こうとする突進。

マシンキャリバーによるビームファランクスの攻撃。

 

両者のビームは一発でも命中すればそれでお終いとも言える威力だ。

 

互いの攻撃が無数の行きかう。

 

その光景を見ながらレドは考えた。

 

レド(最後に恐怖を感じたのはいつだろう?余計な事を捨て去る事で俺は兵士として完成した。成し遂げるべき勝利のありか。何もかもが明らかで迷う必要など一切ない。俺が求めるものの全てがここにある)

 

<クローザーパス設置部隊前進!ヒディアーズの巣に取り付け!>

<マルチコアキャノン部隊、攻撃態勢に接続>

 

後方のマルチコアキャノン部隊が二機のマシンキャリバーが一組となり大型のマルチコアキャノンを放ちクローザーパスの前に立ちふさがる母艦型ヒディアーズを粉砕する。

 

レドは直ぐ横の同じ隊の機体がヒディアーズのグレイザーによって破壊されても表情の一つも変えることなく集中し冷め切った表情でチェインバーを操縦。

距離をつめてきたヒディアーズをビームファランクス砲で攻撃、粉砕した。

 

だが、その時、レドの知っている戦場で異様な事が起きようとしていた。

そしてそれはその後のレドの同盟兵士としての運命を大きく変えるものだった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

???(そう……あなた達なのですね……)

 

レド「ん?」

 

突然、レドの耳に少女の声の様なものが聞こえた。

しかもそれは直ぐ耳元で聞こえるかのように、まるで頭の中に直接語りかけてきているように聞こえた。

レドは一瞬、空耳かと思ったが直ぐにそれは異常である事が分かった。

 

<今の声はなんだ?>

 

クーゲル隊のメンバーの誰かがそう呟いたのだ。

どうやらクーゲル隊のメンバーの機体の多くパイロットが先ほどの声を聞いたようだった。

 

<おい!あれはなんだ!?>

<人……なのか?>

<中佐!あれは一体……>

クーゲル<新種のヒディアーズ……なのか?>

 

クーゲル中佐もレドもその場にいたクーゲル隊の各機はその光景を見て驚愕した。

絶対零度の真空の宇宙空間に薄い白い衣を身にまとい長い銀髪の髪をなびかせ背中に大きな翼と思われる物をもつ少女が宇宙服も着ずに突然、クーゲル隊の進路の前に現れたのだ。

 

しかも少女の背後にはヒディアーズが迫ってきているのだが不思議な事にヒディアーズは少女を避けるように行動しグレイザーすら撃たないという奇怪な行動を見せた。

 

戦場が停止したのだ。

 

その異常な光景にこの場にいた兵士達は攻撃すら停止する。

 

???(あなた達に託すしかないのです)

 

また少女の声が頭に響いた。

 

レド「……託す?何を……」

 

レドはついそう呟いた。

すると少女はまるでレドが呟いた事に気がついたかの様に優しい目でレドのチェインバーを見つめた。

そして次の瞬間には少女はまるで瞬間移動でもしたかの様にチェインバーの目の前に現れその姿が全天球モニターに大きく映る。

 

レド「……っ!」

 

突然の事にレドは驚いたが少女の表情を見て困惑した。

少女は悲しげな目でチェインバーを……レドを見つめていたのだ。

 

???(ごめんなさい……)

 

少女がそう呟いた、その瞬間だった。

チェインバーのコックピットに警報が鳴り響いた。

 

チェンバー『警告。未知の空間歪曲現象を観測』

 

少女周辺の空間がまるで歪み、まるでワームホールが作り出されたかのように空間の歪みと漆黒の闇が少女を中心に広がりレドとチェインバーを飲み込んでいく。

 

レドは何が起きているのか分からなかった。

機体を動かそうとするが何故か操縦が効かない。

 

レド「うわあああああああああああああああああああ!?」

 

クーゲル<レド!?>

<回避だ!回避しろ!!>

<巻き込まれるぞ!!>

<全機緊急回避!空間の歪みに捕まるな!!クローザーパスを守れ!!>

 

レドの意識はそこで完全に途切れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

彼女は風を切って飛ぶのが好きだった。

ゴーグルの向こうの眼下には蒼い海原がどこまでもどこまでも広がっている。

彼女、ラロナは肩にかからない程度の長さの自身の紅い髪をかき上げた。

 

ラロナ「はっ!」

 

ラロナは15歳になったばかりにも関わらず慣れた手つきで手綱を操り彼女は晴れ渡った空を飛んでいる。

彼女が乗っているのは巨大な鳥だ。

 

アルゲンタビス、外見はハヤブサに似ていて知性もある程度備えている巨鳥だ。

竜と比べれば価格は安く世界中で軍や商業用に飼われている種だ。

一般では巨鳥と呼ばれ親しまれている。

人一人を乗せて長時間飛行していられるその体力はたいしたものだ。

 

ラロナはまーリースア南海連合王国の飛行軽甲戦士団の一人だ。

マリースア南海連合王国はデメテル大陸の一部と周囲に点在する島々を領土とする連合国家でラロナの母国だ。

ラロナは内陸部の出身だったが海が好きだったため、哨戒任務という地味な仕事も嫌ではなかった。

 

ラロナ「気持ちいな!テール!」

 

巨鳥の背中にまたがりながら相棒に話しかけキュエと甲高い鳴き声でテールと呼ばれた巨鳥が答える。

 

ラロナ「うんうん。そうだろー」

 

ラロナは笑いながら言った。

テールと入隊時から組んでいる為、鳴き声や表情からある程度この巨鳥が言っている事がラロナには分かるのだがこの能力のおかげで彼女は鳥騎手に選抜されていた。

 

マリースアは海洋国家だがデメテル大陸の国境には山脈が広がっていてそこの山岳民であるラロナは鳥と共に育った。

険しい山岳地帯では昔から重要な連絡手段として巨鳥は利用されていた。

しかもラロナにとって鳥は家族も同然の存在でありそれは10年前に紛争で家族を失った事が原因だった。

 

すると、ふと、ラロナの表情が険しくなった。

 

ラロナ「なんだろう……あれ?流れ星?」

 

ラロナが空を見上げるとはるか上空から流れ星の様なものがラロナの真上を通り過ぎるのが見えた。

様な物とはどこか普通の流れ星とは違って見えたからだ。

 

ラロナ「あの流れ星……王都にむかってない?」

 

流れ星は普通なら直ぐに消える。

だがその流れ星はいつまでたっても消えるそぶりを見せなかった。

そしてそれは真直ぐと王都の方向に落ちていった。

 

ラロナ「テール!王都が心配だ!直ぐに戻ろう!」

 

ラロナとテールは哨戒任務を中断して王都に引き返した。

 

マリースア南海連合王国の王都セイロード。

この街は城下町としても通う貿易都市としても活気に満ちた都市だ。

王都の沿岸部は大きな三日月形を描いており両側は岬となって2つの岬は高低差がありその一方の高い方に王城が作られていた。

王城は大陸横断経由でしか手に入らない白い大理石の城壁と5本の天を抜く斜塔、金や真珠などをふんだんと使った姿が印象的だった。

 

ラロナの駐屯地は対岸の王城を望める灯台の下にある。

ラロナは急いで戻ると駐屯地内は酷く混乱していた。

近くにいた同僚に聞くとついさっき王城に空から何かが落ちてきたとの話だった。

 

ラロナ「やっぱりあれが落ちたんだ……」

 

ラロナが王城の方角を見ると城の上空には王都守備隊のアルゲンタビスがほぼ全て飛び回りいつもよりも城の警戒が厳しくなっていた。

この時はまだ、ラロナも何が落ちてきたのか知る由も無かった。

そして、この一件がラロナの人生をも変えることだという事もこの時はまだ何も分からなかったのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

めちゃくちゃに壊れ浅いクレーターと化した庭園の真ん中付近に金髪を二つに束ね褐色肌に薄い生地でできた南国風のドレスを纏い紅い瞳を持った少女が数人の大人たちを引き連れ空から落ちてきた〝それ〟を見つめていた。

 

少女はクレーターの中央に横たわるそれに近寄る。

少女の名はハミエーア。

このマリースアをすべる女王。

まだ彼女は13を超えていない年齢ではあったが彼女には女王の威厳があった。

 

ハミエーア「カルダよ……これは何じゃと思う?」

 

カルダ「一見すると人型のゴーレムの類のようにも見えますが……これはゴーレムではありません」

 

ハミエーアの質問に白い肌をした袖なしの通気性の良い軍服を着た草色の長髪を持つ妙齢の女性が答えた。

彼女、カルダは王都守備隊の戦士団長で王都守備隊は王都セイロードを守る為の軍団だ。

今回の事件でカルダはこの落下物の調査を命じられていた。

 

ハミエーア「ほう……それでは石像か何かか?」

 

カルダ「いえ……魔道士によるとこれは魔術によって作られたものではないようです。使われている材質も石ではありません。我々の知らない素材だそうです」

 

ハミエーア「要するに……これが何じゃかは分からぬという事じゃな?」

 

カルダ「……はい」

 

ハミエーア「そうか……ん?このゴーレムモドキ、良く見るとあちこちに見たことのない文字が書かれておるが……」

 

カルダ「そちらもまだ解読はできておりません……」

 

ハミエーア「全てが謎……というわけじゃの……」

 

カルダ「申し訳ございません」

 

ハミエーア「それにしても今日は不運続きじゃの……フィルブルグ帝国が宣戦布告したと思ったら……次は謎のゴーレムモドキか……」

 

カルダ「……申し訳ありません」

 

ハミエーア「よい。おぬしが悪いわけではない……それでこれは運び出させそうか?」

 

カルダ「まだ重さは分かりませんし大きさが大きさですので……すぐにとは……」

 

ハミエーアとカルダはクレーターと化した庭園に横たわるゴーレム?を見ながら「はぁ……」とため息をついたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

チェインバー『脳波計測、基礎律動異常なし』

 

レドのまだ意識がはっきりとしない頭にチェインバーの声が響いた。

 

レド「ん……」

 

チェインバー『レド少尉の覚醒を確認、蘇生成功。緊急プログラムに元づき貴官の生体機能を人工冬眠によって保管した。経過時間は26万6千815分、当機も全システムを凍結していたが外部刺激に伴い12分前に再起動した』

 

レド「半年も寝てたのか俺達!?」

 

どうやらあの空間の歪みに巻き込まれてからレドは半年間もの間、チェンバーの中で人工冬眠で眠っていた様だった。

 

チェインバー『事態はパイロットの状況判断を必要とするものである。よって貴官の覚醒プロセスを遂行した』

 

すると、チェインバーは幾つも開かれていたレドの脳波や心電図のウィンドウを閉じコックピットの全天球モニターを起動させ機外の映像を映し出した。

そしてその光景を見た瞬間、レドは目を見開き驚愕した。

 

レド「っ!?何だこれは!?」

 

機外の光景はレドの想像をはるかに超えるものだった。

そこに映っていたのは……何処までも広がる青い空、謎の人工物そしてチェンバーの周りに群がる妙な格好をした人間達だった。

 

レド「こ、こいつらは何者だ?何を喋っている?見たところは同じ人類の眷属の様だが……」

 

チェインバー『未知の言語である。当機を損壊しようとする意図が観察されるが実行手段がない模様』

 

外にいる者達はつるはし等の原始的な器具で同盟の技術の粋を結晶して作られたマシンキャリバーの装甲に挑んでいる。

 

チェンバー『極めて文明度の低い集団であると推測される』

 

レド「……放っておけ。この様子なら外装に傷一つつけられまい……それより……ここはどこなんだ?チェンバー」

 

チェンバー『貴官と当機は呼吸可能な大気を備えた惑星の地表に居るものと推測される』

 

レド「そんな……馬鹿な……」

 

宇宙で暮らしていたレドにとって空気や水は貴重な資源である。

同盟ではコロニー以外での空気も水も配給という形でまかなわれている。

そんな環境で暮らしていたレドは今、自分が置かれている状況を把握することはできなかった。

 

チェインバー『観測可能な天体を照合検索したが類似する惑星は確認できない』

 

レド「……つまり、ここは」

 

チェインバー『未知の惑星である』

 

レド「じゃ、じゃあなぜ未知の惑星に人類が住んでいるんだ……?」

 

チェインバー『不明』

 

レド「はぁ……座標はどうだ?」

 

レドはため息をつき気を落ち着けてからチェインバーに聞いた。

コミュニケーターから銀河系のホログラムが投影されチェインバーが説明した。

 

チェインバー『座標の特定は不可能。計測基準点を喪失している』

 

レド「何?」

 

レドはチェインバーの答えに眉を細めた。

 

チェインバー『推測、当機は先の戦闘中に未知の空間の歪みに飲み込まれた後、この惑星の衛星軌道上の通常空間に同期し26万6千803分間の惑星の周回後、この地点に落下したものと思われる』

 

レド「なんてこった……」

 

レドはチェインバーの報告を受けて頭を抱えたくなった。

チェインバーの言いたい事はこうだ。

つまりレドとチェンバーはこの広大な宇宙のでたらめな場所に放り出されたという事なのだ。

 

チェンバー『救難信号を発信しつつ貴官の人工冬眠を継続していたが事態は静観しがたい方向に推移しつつある。方針を検討されたし』

 

レド「そうは言ってもな……見た目は人類の眷属の様だが……連中の正体が分からない内は決めようがない。とにかく状況の確認が必要だ。外の様子を調べたい所だが……」

 

 




私を知っている人はお前『クーゲルのガルガンティア』書かかずに何やってんだよ!
と言いたい人も多いと思います……。
ですが、完全にいいわけですがスランプから未だに抜ける事が出来ていないのです……。
そこで、お待たせしている皆様にはお詫びの気持ちをこめてこの短編を贈らせていただきます。
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