ハミエーアたちが話し合っている頃、テラスの上のレドは刃物で武装した兵士達に囲まれながらもチェインバーの足にもたれかかる格好で時が過ぎるのにただ身をゆだねていた。
特に意味はないがヒディアーズの爪をレイガンの出力を絞って削っていく。
チェインバー『貴官の行動に論理性を見出せない。膠着状態を維持する理由を問う。当機は現状の打破に必要充分な兵装を有している』
レド「今はこれが最善だ」
チェインバー『有意提言、1武装勢力を圧倒し制圧する、2中枢を制圧し反抗を封じる』
レド「チェインバー、現状の最優先事項は友軍との連絡、現在位置の確認だ」
レド「お前が解析不能ならここの連中の歴史資料に期待するのも手だ」
チェインバー『条件付き同意する』
レドはテラスの向こう側に広がる海を眺める。
レド「……重要なのはこの星が惑星として生きている事だ。居住可能な惑星の確保は同盟のひがんだ。これだけの豊富な水と空気……ここは、アヴァロンに変わる新たな拠点になるかもしれない」
チェインバー『提言、貴官の職域を超えた判断だと推察する』
レド「フッ……そうだな」
レドは軽く笑って答えた。
レド「同盟との連絡はどうだ?」
チェインバー『救難発進を続けているが未だ応答はない。このまま単独での作戦行動を続ければ必要な兵站を得られず貴官の新陳代謝に支障をきたす。有意提言3この状況を脱し人工冬眠に戻る事も考慮すべきである』
レド「…………」
レドはチェインバーの質問には答えなかった。
レド「……ここは、生活物資が豊富で原住民の脅威度も低い。協力関係を探るのが得策だと思う」
チェインバー『条件付き同意する』
レド「そういえば……チェインバー、滑落した装備の探索の方はどうなっている?」
レドは思い出したように言った。
滑落した装備とはそのままの意味でチェインバーの再起動時には行方不明になった装備の事だ。
チェインバー『既に滑落した装備については落下地点の算出はある程度、完了している』
そう言うとチェインバーはコミュニケーターでホログラムを表示した。
ホログラムにはこの惑星の衛星軌道が映し出されチェインバーの軌跡を現した白いラインが惑星の衛星軌道を何回天か周回を行いそして、白いラインが衛星軌道から惑星へと落ちていく。
白いラインが落ちた地点を中心に半径十数キロの範囲が円で囲まれた。
そしてホログラムにチェインバーがブロッサムセイルとの戦闘時に装備が映し出された。
チェインバー『外部兵装であるビームファランクス及びシールドは当機の落下地点からおよそ半径18キロ圏内に落下しているものと推測される』
レド「そうか……まぁ、そっちの捜索は余裕ができた時だな」
レドは城の兵士達の方を見る。
レド(戦線……友軍……そんな単語はもしかしたらこの星に暮らす人々には関係ないのかもしれない……ヒディアーズとの死闘はこことは無縁なのか……)
◇
レドとチェインバーが朝からこのテラスに篭城を開始して数時間がたち恒星の光もすっかり上方に上り時刻はマリースアの時間でいう正午をまわっていた。
レドは相変わらずチェインバーのかかとの部分に背中をつけヒディアーズの爪を削っている。
すると、ついに状況に異変が起きた。
チェインバー『接近者あり』
レドはすぐにヒディアーズの爪をポケットにしまいレイガンをショックモードに切り替え機体の影から様子を伺った。
すると、チェインバーを包囲している兵士達の中から先ほど人質としてとった褐色肌の少女とカルダと名を名乗った人物が前に進み出てきた。
レドは警戒態勢を取る。
チェインバー『交渉を任とする特使の可能性もある』
レド「特使?子供だぞ?」
チェインバー『迎撃するか』
レド「いや、必要ない。だが、何かあったときはすぐに援護しろ」
チェインバー『了解』
そう言うとレドはチェインバーの影から出て少女らの前に立った。
レドと褐色肌の少女とカルダは若干チェインバーよりでテラスの中ほどで向かい合った。
レド「チェインバー、目的を問いただせ」
チェインバー『(来訪の目的は何か)』
チェインバーが現地語で問いかける。
カルダ「(陛下がお前達と話したいと言っておられる!)」
チェインバー『対話を要求している』
レド「よし……ん?ちょっと待てチェインバー、陛下とは誰なんだ?」
チェインバー『(陛下とは誰か)』
チェインバーの質問に褐色肌の少女、ハミエーアが一歩を踏み出して口を開いた。
ハミエーア「妾の事じゃ」
チェインバー『貴君は何者か』
ハミエーア「妾はハミエーア、この国、マリースア南海王国連合の王であるぞ」
レドは翻訳テキストを見て首を傾げる。
レド「チェインバー、やつは何を言っている?それにオウとは何だ?」
チェインバー『一種の独裁政治体制である。彼らのこれまでの言動から推測するに彼女はこの地域一帯の政治、軍事を統括している人物の可能性が高い』
レド「こんな子供がか!?」
レドはチェインバーの推測に驚愕する。
何故ならレドの目には明らかに今、ハミエーアと名乗った少女は自分よりも明らかに年下に見えていたからだ。
一方、そんなレドの様子を見ていたハミエーアは苦笑いを浮かべる。
ハミエーア「(なんだか失礼な事を言われている気がするが……まぁよい。お主らは何処から来たのじゃ?そのゴーレムはお主の持ち物なのか?)」
チェインバー『貴官がどこから来たのか尋ねている。また、当機が貴官の物かと聞いている』
レドはチェインバーの事はともかく何処から来たのかという質問にどう説明したものかと言葉に詰まった。
とりあえずレドは片腕を伸ばすと人差し指を立てて空を指差した。
ハミエーアはそれにあわせて空を見上げた。
ハミエーア「……空?」
ハミエーアはその時、何故か胸が高鳴るのを感じた。
◇
ハミエーア「……では……お主らは、そのヒディアーズとか言う化物と戦う戦士という訳じゃな?」
チェインバー『そうだ』
3人が話し始めて3時間がたとうとしていた。
ハミエーアはレドに幾つも質問を繰り返しチェインバーの翻訳で会話を続けていた。
レドとチェインバーの話は聞けば聞くほどむちゃくちゃな話だった。
レドは人類銀河同盟とか言う国の戦士でチェインバーはその銀河同盟が長きに渡って戦っているヒディアーズとか言う化け物と戦う為の武器らしいのだ。
レドは仲間達と沢山のチェインバーの様なゴーレムと共に天の海を進む船に乗って戦っている途中に翼の生えた謎の少女が起こした謎の現象に巻き込まれてこの星に流れ着いたらしい。
正直言ってハミエーアはこの話をむちゃくちゅな話だと思った。
普通ならばとても信用できる話ではない。
だが、レドの話の筋は通っており何よりも……。
ハミエーアとカルダはレドの胸元から光るホログラムの映像を見ていた。
レドは同盟と比べて文明度の劣るハミエーアとカルダにも分かりやすく説明するようにホログラムを使って分かりやすく図や三次元マップを駆使して説明していたのだ。
ハミエーアとカルダはこの様な魔法は見たことも聞いた事もなかった。
ホログラムに映し出されているのはレドがここに来るまでの経緯を簡単に動画として動く図で紹介した物だった。
ハミエーアとカルダは口には出さないが圧倒されていた。
このレドという少年とチェインバーに。
そこでハミエーアは本題に入る事にした。
ハミエーア「天の海……そのウチュウ?とやらで戦うのならもちろん強いのじゃな?」
チェインバー『超、つよい』
ハミエーア「……一応もう一度確認させてくれ。お主らはフィルボルグ継承帝国とは一切関係ないのだな?」
チェインバー『肯定、レド少尉と当機の所属は人類銀河同盟でありフィルボルグ継承帝国なる組織とは一切関係ない』
ハミエーアはカルダの方を見る。
ハミエーア「カルダよ、やはりこの者達は帝国の者ではないようじゃな」
カルダ「はぁ……それはそうかも知れませんが……」
ハミエーア「そもそも、妾がこうして無防備で目の前におるというのに、ここで話し始めてからかなりの時がたったが何の敵意もこの者達は見せぬ。少なくとも今は我らが手を出さぬ限り敵ではないと思う」
チェインバー『貴君の認識に同意する』
カルダはまだ疑っているようだがハミエーアには彼らが言う事の全てがデタラメには思えなかった。
すると、ハミエーアは少し思う事がありチェインバーを見上げた。
ハミエーア「そう言えば……お主は言葉がどんどん上手くなるの。通訳も大変じゃろうが顔ぐらい見せたらどうじゃ?」
チェインバー『顔を見せろとは何か?』
ハミエーア「中に人が居るのじゃろ?」
チェインバー『中に人などいない』
ハミエーア「……?」
するとチェインバーがレドの指示でコックピットを開きハミエーア達を左手に乗せ自分の頭の側に持っていった。
そしてチェインバーのコックピットの中を覗いたハミエーアとカルダは仰天した。
ハミエーア「本当じゃ……誰もおらぬな……魔術か?」
カルダ「私もそうとしか……」
ハミエーアもカルダもてっきりゴーレムのどこかに人が隠れていてレドの通訳をしているのかと思っていたのだ。
チェインバー『私はパイロット支援啓発インターフェイスシステム』
ハミエーア「パイロットシエン……」
カルダ「システム……?新しい魔術か何かか?」
二人が理解していないと分かるとレドは助け舟の説明をする。
レド「チェインバー、チェリストカンエイド、プフカム、ネイエティズターベンレ、ジッターウン……」
チェインバー『チェインバーは戦闘、生命維持を支援する人工知能だ。簡略化し説明すると喋る機械である』
カルダ「機械!?風車や船と同じ物だというのか!?」
ハミエーア「ふっ……ますますおぬしらに興味が出てきたぞ」
二人がレドとこんな事を話していると後ろの方では兵士達が「陛下!こいつらきっと帝国軍の暗魔兵団だ!」「騙されちゃいけません!」と声を上げている。
するとそんな時だった。
チェインバー『海上より多数の飛行物体が接近中』
突然、レドに向かってチェインバーが報告してきた。
その報告にレドはレイガンをいつでも撃てる状態にして警戒した様子で海上の方を見た。
ハミエーア「(どうしたのじゃ?)」
レドの異変にハミエーアが気がつく。
レド「確かめろ!」
チェインバー『海上に多数の大型鳥類種の集団を確認。多くは当機の周辺を飛行している大型鳥類と類似している。また、搭乗者も確認』
レド「大型鳥類種?あれの事か……」
レドは頭の上を飛んでいるマリースア軍のアルゲンタビスを見た。
レド「生物に乗っているという事は……恐らくこいつ等の仲間だろう」
レドは人が生物に乗るという行為が理解できていなかった。
その為、原住民であるハミエーアの手の者と考えてた。
ハーミエアはレドの見た方向を眺めたが特に何も異常は見られない。
それもその筈、チェインバーは自身に搭載されているセンサーに反応があった事をレドに伝えたのであって人間の目で目視できる距離とは限らないのだ。
その後、レドは大型鳥類種の接近に関しては特に何も思わずハミエーアとカルダの質問に答えていった。
◇
異常事態はすぐにやってきた。
今までレドに対して好奇心からか質問をしていたハミエーアとカルダがふと海の方向を見てその方向に釘付けになる。
レドは二人の顔を見た。
すると、ハミエーアとカルダは海の方角を見て驚愕していた。
ハミエーア「馬鹿な!早すぎる!宣戦布告してきてからまだ2日だぞ!?」
カルダ「帝国軍!!」
ハミエーアとカルダは突然、驚愕し戦慄した声を上げる。
それに対してレドは二人の豹変振りに異常を察してチェインバーを通して質問させた。
チェインバー『テイコクグンとは何か』
チェインバーがハミエーアとカルダに問いかける。
ハミエーア「敵じゃ!フィルボルグ継承帝国の軍勢がこの国に攻めてきたのじゃ!!」
ハミエーアがそう言ったその時だった。
突如として襲来した帝国軍の第一陣が城下町と城の上空に到達した。
大型鳥類は一斉に急降下攻撃を仕掛けてくる。
そしてハミエーアが驚いた事にその一団にはアルゲンタビスだけでなく黒い鱗を纏った巨大な生物が複数含まれていた。
レド「チェインバー!何が起きている!?」
レドはあまりにも突然の事態にすぐにチェインバーに状況の確認を求めた。
そしてレドは攻撃を仕掛けてきている黒い鱗を纏った大型生物を見た。
その姿はレドがまだ小さい頃に幼年学校で読んだ地球時代の神話の登場する竜そっくりだった。
キヤシャアアアアアアアアアアアアア!!
襲来してきた竜は旋回をしながら城壁の上から弓矢で応戦するマリースアの兵士達を口から吐いた炎で簡単になぎ払う。
その焦げた匂いが照らすまで漂ってきた。
ハミエーア「こんな小国を相手に竜騎士団を投入したというのか!?」
カルダ「陛下!あれは黒竜です!急いで避難を」
カルダがハミエーアに避難を呼びかける。
だが避難を呼びかけたその時、2匹の黒竜と呼ばれた大型生物がハミエーア達のいるテラスに迫ってきた。
帝国兵「あそこだ!」
帝国兵「マリースアの女王がいるぞ!」
帝国軍の兵士達がチェインバーの左手の上にいるハミエーア達に気がつき突撃していく。
そして黒竜がその凶悪な口から炎を吐こうと口を開いた。
カルダ「陛下!!」
ハミエーア「くっ……ここまでか」
ハミエーアが自分の死を確信する。
だが、その瞬間、それは起こった。
チェインバーの肩についている羽のような構造体の先が青白い閃光を放ったのだ。
その閃光が光ったかと思うと羽のような構造体の先端から光の針が放たれた。
そして、二匹の黒竜はその光の針の直撃を受ける
帝国兵「なっ……」
帝国兵「うおっ……!?」
恐らく黒竜に乗っていた帝国兵は自分のみに何が起こったのか分からなかったのであろう。
なぜなら帝国兵は光の針の直撃を受けた国竜と共に塵も残さずに原子まで分解され消滅したのだ。
ハミエーアとカルダ、それにテラスに居た兵士達は困惑する。
ハミエーア「いったい何が……」
カルダ「こ、黒竜は……」
ハミエーアもカルダもテラスに居た兵士達も自分の目の前で何が起きたのか理解できなかった。
分かるのはチェインバーの羽から青白い二本の閃光が放たれ光の針が一直線に接近してきた黒竜を貫き次の瞬間には2匹の黒竜消滅していたという事だけだ。
チェインバーはこの間一切、微動だにしていない。
ハミエーアがレドの方を見る。
レドはいたって冷静だった。
ハミエーア「お主らが……やったのか?」
チェインバー『肯定する。少尉に危険が及ぶ可能性が高かった為、危険対象生物を排除した』
いたって普通の事を言うように語るチェインバー。
ハミエーア「どうやら……強いと言ったのは本当のようじゃのう……」
チェインバーがすぐに翻訳しレドに伝える。
するとレドは良い考えを思いついた。
膠着状態を脱する方法が。
レド「そうだ……この状況を利用すれば……チェインバー翻訳を頼むぞ」
チェインバー『当機には貴君らを支援する用意がある』
ハミエーア「何じゃと!?本当か!?」
チェインバー『取引がしたい』
ハミエーア「取引?なんじゃ?」
チェインバー『少尉と当機の無期限の駐留、及びレド少尉が必要とする兵站を要求する』
ハミエーア「よし……この状況を乗り切った暁には必ずお主らの要求をのもう。今は非常時じゃ、お主らの力を貸してくれ」
するとレドは声を発することなく頷いた。
◇
レドはハミエーアとカルダをテラスへとおろすとチェインバーのコックピットに乗り込んだ。
レドが乗り込んだ瞬間、全天球モニターが起動する。
レド「フローター作動」
レドの指示でチェインバーが頭上に不可視の質量球体を発生させエネルギーリングが光り始める。
そしてチェインバーはテラスからゆっくりと浮かび上がった。
ハミエーアやカルダ、テラスの兵士達がその様子を固唾をのんで見守る。
レド「いいかチェインバー、今後の為にもこの地域一帯を攻撃している敵勢力を撃破する」
チェインバーは城の屋根の高さを超えた段階で空中で静止した。
レドはチェインバーを臨戦態勢に移行する。
レド「発進」
レドがそう言うとチェインバーは空高く飛び上がり帝国軍に向けて加速した。
帝国兵「何だあれは!?」
帝国兵「ゴーレムが飛んでるぞ!?」
帝国兵「うろたえるな!叩き落すのだ!」
帝国兵「りょ、了解!」
城下町を攻撃していた時にチェインバーに気がついた帝国兵達は黒竜を急旋回させ一気にチェインバーの方へと向かっていく。
そしてチェインバーはその黒竜や周囲の敵のアルゲンタビスの部隊と帝国軍に抵抗しているマリースア軍のアルゲンタビスを赤と青で識別した帝国軍が赤でマリースア軍が青だ。
チェインバー『目標の敵味方識別を完了。ディフレクタービーム、スタンバイ』
レド「殲滅」
レドは特に深くは考えずいつもやっている事を実行した。
瞬間、チェインバーの全身から無数の光の針が放たれた。
一方、城のテラスの上からその様子を目撃していたハミエーアとカルダたちは目の前で起きた事が未だに信じられずにいた。
チェインバーが宙に浮かび上がり少したつと全身から先程よりも遥かに多くの閃光が全身から全方位に向かって放たれその閃光の一発、一発が正確に黒竜を人間ごと撃ち抜き蒸発させたのだ。
その光景を見たハミエーアはある事を思い出した。
異世界から来た魔法戦士。
ハミエーアはこの異常な光景を、あのレドという少年も、あの人型のチェインバーも、レドの奇妙な服装も、あの全身から放たれている閃光もそれで納得できた。
そしてそれはハミエーアだけではなかった。
カルダ「ルーントルーパー……!」
カルダはこの時、なぜハミエーアがあの少年にこだわったのかを理解した。
ハミエーア「カルダよ……」
ハミエーアがカルダを呼ぶ。
するとハミエーアは不敵な笑みを浮かべた。
ハミエーア「この戦い……どうなるか分からんぞ」
◇
一方で城下町の上空。
相棒のアルゲンタビス、テールに乗り帝国軍の突然の襲来に対応していたラロナはレドの乗るチェインバーが一瞬で竜を消滅させていくその光景を他の兵士達のように呆然と見ていた。
ラロナ「なんなんだ……あれ……」
◇
マリースア沖合い上空。
フィルボルグ帝国南伐混成軍のセイロード攻略は突如現れた謎の空を飛ぶゴーレムによって第一陣が全滅するという事態に陥っていた。
作戦は完璧なはずだった。
氷結竜を主力とする氷雪竜騎士団と火炎竜を主力とした黒竜騎士団の二個竜騎士団によるマリースアの首都、セイロード奇襲。
この戦力はマリースアのような弱諸国相手には過剰ともいえる戦力だった。
しかし、状況は混迷を深めていた。
帝国最強の黒竜騎士団がゴーレム一体にほぼ全滅。
この情報を聞いた第四階位将軍の姫将軍、リヒャルダ・フォン・アードラーは驚きのあまり頻発の髪を振り乱していた。
リヒャルダ「馬鹿な!?全滅だと!?」
リヒャルダの知っている戦争の常識ではゴーレムごときで竜を倒すなど不可能のはずだ。
いかなる魔法も剣撃も弾く鱗を貫くなど容易な事ではない。
過去に一騎倒された事があるがそれは敵軍三個騎士団と魔法兵団による待ち伏せ攻撃でだ。
正面からの戦闘ではない。
リヒャルダは何が起きているのか分からなかった。
リヒャルダ「見間違いではないのか……」
到底信じられなかったリヒャルダはもう一度部下に聞きなおす。
帝国兵「密偵からの交信では……ま、間違いありません……」
リヒャルダ「……それで?竜を失ったとして、その後の戦況は?」
帝国兵「城や城下の町に向かった第一陣はその謎の空飛ぶゴーレムによって壊滅し敵は態勢を立て直しています」
リヒャルダ「馬鹿な……ありえない……」
するとその時だった。
キイイイイイイイイイイイイン……。
今まで聞いた事のない奇妙な音がマリースナの首都、セイロードの方向から響いてきた。
奇妙な音はまるで近づいてくるかのように音が大きくなっていく。
リヒャルダ「な、何の音だ?」
リヒャルダは音のする方向を見つめた。
するとある事に気がつく。
何かがことらに向かって飛んできていた。
見たこののない何かだ。
その瞬間。
二本の青白い閃光が放たれた。
そして、その閃光が自分の周りを飛んでいた竜に命中し貫通したように見えたその瞬間、青白い閃光が命中した竜は消滅する。
リヒャルダは突然の事に驚愕した。
リヒャルダ「一体何が!?」
リヒャルダはもう一度前方のこちらに向かってきている物体を見た。
そしてそれが何なのかようやく理解する。
リヒャルダ「ゴーレム!!」
そのゴーレムは異常な速度でこちらに迫ってきていた。
最初は豆粒程度の大きさに見えていたのに今では既に人型のゴーレムの姿がくっきりと見えた。
リヒャルダ「まさか……まさかあいつが!?っ!?」
リヒャルダがそういった瞬間、そのゴーレムはリヒャルダの乗る竜よりも高い高度に高度を上げ再び青白い閃光を放った。
だが、今度は2本ではなくゴーレムの全身から無数に放たれていた。
帝国兵「な、なんだ!?」
帝国兵「ひっ!?」
帝国兵「うわああああ!?」
リヒャルダの周りの兵士達が次々とゴーレムの放つ光の閃光に竜ごと貫かれ消滅していく。
リヒャルダ「こんなもの……こんなもの認めんぞ!!こんなものは戦ではない!!戦ではな――――」
その先の言葉がリヒャルダの口から語られることはその後二度となかった。
何が起きているのかまったく分からない状況で最後にリヒャルダが目にしたその光景は空を飛ぶゴーレムが無数に放った青白い閃光の雨とそれに貫かれ消滅していく帝国軍の兵士達と竜達。
そして、自分の胸を貫いていた青白い閃光だった……。
◇
フィルボルグ継承帝国の突然の奇襲攻撃による戦いから三日後。
マリースア南海連合王国は謎の少年レドとチェインバーの活躍によって攻撃による損害は竜騎士が攻めて来たにしては非常に軽微ともいえる被害のみに留まった。
マリースア側の被害は兵士、一般人を含めて死者、負傷者の数は僅か200名未満で収まり破壊された家屋もあったが軍団規模の敵に対してこれだけの被害は異常ともいえた。
一方でフィルボルグ継承帝国軍の被害はというと……。
飛行軽甲戦士団・駐屯地
ラロナ「全滅!?帝国軍が!?」
同僚兵士「うん。そうらしいよ。あの変な空とぶゴーレムの攻撃で……それに街に降りてきた帝国兵もあのゴーレムにやられたんだって」
ラロナ「なんか……すごすぎるな……」
ラロナは駐屯地の鳥建屋で相棒のアルゲンタビスのテールの世話をしながら隣に居る同僚の兵士と話をしていた。
話の内容はもっぱら三日前の帝国軍侵攻の際に出てきた空飛ぶゴーレムの事だった。
同僚兵士「ラロナは空から見てたんでしょ?」
ラロナ「う、うん……見てたよ」
同僚兵士「どうだったの?」
ラロナ「なんか……何て言うんだろうな……上手くいえないけど、あの変なゴーレムが城の方から飛んできて、私らの周りに居た帝国軍を……光の槍?みたいなものでどんどん消していって……それからそのまま海の方に向かって、なんかピカッて光ってた。そしたら、ゴーレムが戻ってきて、それからはもう帝国軍の姿はまったく見えなかったな……」
同僚兵士「良くわかんないんだけど」
ラロナ「私も自分で何言ってんのか分からないよ」苦笑い
同僚兵士「でも……あれって、なんなんだろうね……」
ラロナ「さぁな……私らに下りて来てる情報は空から落ちてきたって事だけだし」
同僚兵士「知ってると思うけど噂じゃあ、あのゴーレムは異世界から召喚された魔法戦士って話もあるよね」
ラロナ「そんな話は嘘……とは言えないよなぁ……」
同僚兵士「あんな物を見せられたらねぇ……」
ラロナ「少なくとも王都にいた帝国軍があのゴーレムにやられたのは本当だろうけどな……」
ラロナは王都の上空で見たあの光景を思い出す。
するとその時だった。
戦隊長「非番の者は総員、広場に整列!!」
上官の声が聞こえてきた。
ラロナと同僚の兵士はその声にハッとして広場の方に走り出す。
駐屯地に居た非番の兵士達は続々と駐屯地内の広場へと集まっていった。
兵士達の数は見た目的に50数人程度の数だ。
三日前の帝国軍の侵攻以降、王都守備隊は帝国軍に警戒網の隙を狙われた事から厳戒態勢が組まれており殆どの者が駐屯地を出払っていた。
ラロナ達は全員、上官の前で綺麗に並び整列する。
戦隊長「よし……とりあえず揃ったな」
上官はそう呟くと兵士たちにそのまま待機するように言い渡しそのまま駐屯地の建物の方へと走っていった。
しばらくすると上官が戦士団長と一緒に建物から出てきた。
カルダだ。
カルダはラロナ達、整列した兵士達の前に立つ。
戦隊長「もうしわけありません。現在、非番の兵士はこれだけでして……」
上官がカルダに頭を下げる。
カルダ「問題ありません。むしろこの人数の方が混乱が起こらずに良いでしょう」
カルダは上官に対してそう言った。
そしてカルダは兵士達の方を見る。
カルダ「諸君、今集まってもらったのは諸君らに重要な伝達事項があるからだ」
カルダの声が広場に響く。
カルダ「今日、我が部隊に新たな兵士が配属される」
カルダのその言葉にその場の兵士達は口には出さないが皆、頭の中に疑問を浮かべた。
わざわざ戦士団長自らが言う内容には思えなかったからだ。
ラロナも同様の疑問を浮かべる。
カルダ「だが、その兵士について重要な注意事項がある。我が兵の中には居ないとは思うが間違えてもその兵士に対しておかしな言動を言ったり暴力を振るったりしてはならない。その兵士の事は我が王国の同盟を結んでいる国の将校だと考えろ」
ラロナや他の兵士はカルダのその言葉にさらに困惑した。
一体誰が来るというのだ?友好国から兵が派遣されたのかと疑問は次々と浮かぶ。
そんな兵士達の表情を見ながらカルダは何かを言おうとするが止めて一歩下がると王城の方を見始めた。
カルダ「……話では、もうそろそろ来るはずだが……」
カルダはそう呟いた。
広場に沈黙の時が流れる。
すると、その時だった。
キイイイイイイイイイイイイン……。
聞き覚えのある音がラロナやその場に居た全ての兵士達の耳に入った。
兵士達は一同に音のする方角を見る。
その方角は先にカルダが見ていた王城の方角だった。
ラロナ「この音って……まさか」
ラロナはつい呟いてしまう。
そしてラロナの感は当たる事になった。
兵士「あ、あれは!?」
誰かがそう声を上げる。
だが誰もその者を咎めようとする者はいない。
ラロナを含めてその場に居たカルダ以外の誰もが目を見開いて驚愕していたのだ。
ラロナ達の目に入った物。
それは、重厚な大きな人型の物体。
その体は黒、白、オレンジ色に塗られ所何処が鮮やかな水色に光りその顔にある目は翠色の光っている。
そう、それは見間違えるはずも無かった。
一度見ればもう忘れられない程の絶対的な力。
絶対的な暴力。
ラロナ「空とぶゴーレム……」
ラロナは瞬時に三日前の王都上空の戦いを思い出す。
王都守備隊の駐屯地に飛んできたのは見間違えるはずも無いあの、帝国軍を瞬時に殲滅した王城に空から落ちてきたあの空とぶゴーレムだったのだ。
空飛ぶゴーレムは速度を落としながら徐々に広場へと近づくとカルダの居る後ろのスペースへと方膝をまげて着地した。
突然のその光景に兵士達はどよめきを上げる。
カルダ「落ち着け!!敵ではない!!」
カルダは兵士達の方を見ると叱責した。
カルダの叱責によって兵士達は表面上は一旦、落ち着きを取り戻す。
だが内面ではラロナを含めて驚愕していた。
カルダはどよめく兵士達を叱責すると自らゴーレムの方へと歩いていく。
兵士「か、カルダ様!?」
兵士「戦士団長!危険です!」
兵士達の中から誰かがそんな声を上げる。
だがカルダはゴーレムへ向かう足を止めなかった。
そして、ゴーレムの近くへと寄るとゴーレムを見上げる。
カルダ「レド殿、問題ない。降りてきてくれ」
カルダはゴーレムへそう声をかけた。
すると……。
プシューという空気が抜けるような音が聞こえるとゴーレムの頭の部分が開き始めた。
ラロナ「……人だ」
ゴーレムの頭から奇妙な服を身にまとった人物が降りてきた。
その人物は体に張り付くような黒か紺色の服を着て頭に顔を覆う奇妙な兜の様なものを被っている。
その表情は兜によってラロナの居る所からはよく見えない。
その人物はゴーレムの右手の手のひらに乗るとゴーレムがその人物を地面へと降ろされた。
その人物にカルダは近づいていく。
するとカルダとゴーレムから降りてきた謎の人物は少し軽く会話をすると謎の人物はカルダの隣に立ちラロナ達、兵士達の前へと立った。
ラロナ達兵士達に緊張が走る。
そしてカルダが口を開き始めた。
カルダ「諸君らも知っているとは思うがこのゴーレムは三日前の帝国軍の侵攻軍を撃破した空とぶゴーレムだ。そしてこの者はそのゴーレムの操者であり、今日から我が部隊に配属される事になった。女王陛下との契約によりこの者の扱いは同盟軍の兵士という扱いになっている。くれぐれも無礼が無い様にしろ。ではレド殿、自己紹介を」
カルダにレドと呼ばれた謎の人物はカルダに対して頷く。
そして一歩前に出ると兜の様なものを外した。
ラロナは少し意外に思う。
兜を取って露になったその人物は見るからにラロナと同じような年齢に見える少年だったのだ。
少年の肌は隣に居るカルダよりも異常に白く、髪も白色、一方で目の色は紫色だった。
少年は動揺を隠せない兵士達の前に立つ。
レド「フェアウイング、スティニバー、インエ、ヒディアーズ――」
ラロナ「?」兵士達「?」
少年はラロナ達が聞いた事もない謎の言語で話し始めた。
だがその瞬間、別の声が少年の言葉を翻訳する。
???『人類銀河同盟軍、対ヒディアーズ殲滅兵器、マシンキャリバー‐K6821チェインバー操縦者のレド少尉。本日よりハミエーア女王陛下との契約によって暫定的に当部隊の指揮下に入る』
男性の声が広場に響き渡った。
その声はとても無機質なものでその場に居た兵士達はラロナも含めて誰の声だか分からずに声の正体を探ろうと正体を目で探した。
するとカルダが前に出てきて補足を始める。
カルダ「聞いての通り、レド少尉殿は我々の言葉を話せない。その為、彼の言葉の翻訳はそこに居るゴーレム……チェインバー殿が行う」
カルダがゴーレムを指してそう言うと流石に誰かが疑問の声を上げた。
兵士「カルダ戦士団長!その者が王都守備隊に入るのだとしても翻訳をゴーレムが行うとはどういう意味でありますか!」
兵士「そうです!どうか説明してください!」
戦隊長「き、貴様ら!戦士団長の前であるぞ!言葉を慎め!」
カルダ「戦隊長いいのです。兵達の疑問は仕方ない事です」
カルダは兵士達を叱責する戦隊長を止めた。
カルダは説明を始める。
カルダ「諸君、このゴーレムは……信じられないかもしれないがこのゴーレムは人と同じように言葉を交わし考える事が出来るゴーレムなのだ」
カルダが説明するがそれでも兵士達の疑問の声はやまない。
するとゴーレムが動き出した。
兵士「う、動いた!?」
再び兵士達がどよめく。
ゴーレムは二、三歩、ズシン、ズシンと地響きを鳴らせながら前へ進むと兵士達を見下げるように声を出す。
チェインバー『カルダ戦士団長、貴君の認識に誤りが認められる。私はマシンキャリバーK‐6821でありゴーレムなる物ではない。マシンキャリバー、もしくはチェインバーと呼称されたし』
兵士「しゃ、喋った……」
自分で名乗り喋ったゴーレムに対して兵士達はついに困惑からその後、誰一人喋らなくなった。
その様子を見ていたカルダは恐らくこうなる事を予測していたのだろう。
カルダはため息を一回つくと疲れた様子で口を開いた。
カルダ「えー……とにかく、これからレド少尉殿とゴーレ……チェインバー殿は我が王都守備隊の配属となる。配備する部隊は飛行軽甲戦士団だ。そうだな……」
カルダは兵士達を見回した。
その目はまるで品定めをするかのようにラロナは感じた。
するとそのカルダとラロナの目が合ってしまう。
カルダ「よし、ラロナ錬戦士!」
ラロナ「は、はい!」
突然、名前を呼ばれたラロナは少し慌てながらも返事をした。
カルダ「レド少尉殿の部隊での世話は貴様に任せる事にしよう」
ラロナ「わ、私がですか!?」
カルダ「そうだ。レド少尉殿がこの国に慣れるまで貴様にはレド少尉殿の側について……レド少尉殿に対して言い方が悪いが教育係となってもらう。不満か?」
ラロナ「い、いえ!そんな事は……」
カルダ「ならばよろしく頼む。それでは諸君、ラロナ錬戦士以外の者は解散!」
こうして、波乱に満ちた集会は終わった。
兵士達が続々と建物へと戻る中、ラロナは気が進まなかったが命令に逆らうわけにも行かずレドの居るところに向かった。
レドと名乗った少年はラロナを見た後にカルダから何かを説明されたようでその後、レドはラロナの元へと自ら歩いて寄ってきた。
ラロナ「え、えっと……」
ラロナは何か言葉をかけようとしたが上手く言葉に出来ない。
するとレドが最初に話しかけてきた。
レド「レ、レド、少尉ダ。ヨロシク、頼ム」
レドは慣れないと思われるマリースア語でラロナに挨拶をした。
その様子を見てラロナは急に今までの緊張が嘘みたいに切れるような感じがした。
ラロナ(こ、こわくない……?)
少しだけ安心しながらも極度に緊張しながらラロナはレドに対して作り笑いを向ける。
ラロナ「わ、私はラロナ。飛行軽甲戦士団錬戦士。こ、これからよろしくなレド」
レド「アア」
ラロナ「えっと、レドの階級って……」
ラロナがレドの階級を聞こうとするとレドとラロナの会話を見ていたカルダが近づいてきた。
カルダ「レド殿の階級は少尉つまりは下士官・兵を率いて最前線で直接戦闘を行う尉官。聞きなれないだろうがこの国で言うなら戦士、もしくは戦隊長くらいの階級だ。つまり貴様よりも上の階級だぞ」
ラロナ「え?……ええ!?」
ラロナはカルダからの助言を聞いて素直に驚いた。
自分と同じような年齢の少年が。
正直言って見た目、そこまで強そうでも無く筋肉もついてなさそうな自分と同じ年齢くらいの少年が自分よりも上の階級である事に驚いた。
そしてラロナは我に返るとレドに対して慌てて頭を下げる。
ラロナ「か、階級が私よりも上とは思わず大変ご無礼を……!」
するとレドは手でジェスチャーを出してラロナに頭を下げるのを止めるように言った。
レド「モンダイナイ」
ラロナ「で、ですが……」
レド「――――」
レドはラロナに対して銀河同盟語で語りかける。
そしてそれをチェインバーが翻訳して伝えた。
チェインバー『問題ない謝罪は不要だ。レド少尉はこの星に漂着してより、情報を収集中である。当惑星の文化習慣は銀河同盟とは大きく異なっており階級に関しては意味をなさない。よって会話に関しては現状のままでも問題は無い』
ラロナ「い、言ってる事はよく分からないけど……つまり?」
カルダ「レド少尉殿とチェインバー殿は貴様に階級に関係なく接するように言っているんだ」
カルダがチェインバーの言っている事を要訳する。
それを聞いて変わっているなと思いつつもラロナはなるほどと納得した。
ラロナ「そ、それじゃあ、分かりました。では遠慮なく……」
カルダ「それではラロナ錬戦士、後の事は頼んだぞ。チェインバー殿にはこの広場を使用してもらいなさい」
ラロナ「は、はい!」
カルダ「それではレド少尉殿、チェインバー殿、後ほど王城にて、またお会いしましょう」
カルダはレドにそう言うと建物の方へと歩いていった。
広場にはレドとチェインバーそれとラロナだけが残される。
レド「……」
チェインバー『……』
ラロナ「あーえっと、それじゃあ……レドと……チェインバーだっけ?とりあえず……」
レドが頷くとラロナはレドに笑みを再び向けた。
だが今度の笑みは作り笑いではない。
ラロナは両手を軽く広げる。
「ようこそ、マリースア南海連合王国へ!」
これがラロナにとってレドとチェインバーとの最初の出会いだった。
この奇妙な出会いが今後、この国に、この世界に何をもたらすのか。
レドもラロナも、まだ、誰も知らない。
ハミエーアとの交渉によって飛行軽甲戦士団に配属されたレド。
レドとチェインバーの異世界冒険が今、始まる。
◇
王都セイロードの北部、人気の無い漁村の海岸。
その浜辺にずぶ濡れになった黒いローブを身にまとった一人の男が横たわっていた。
???「ゴホッ!ゴホッ!」
男は激しく咳き込み口から飲んでしまった海水を吐き出す。
???「まさかここまでとは……」
男は笑いながらそう呟く。
???「惨めな最期でしたな、リヒャルダ将軍」
男はよろめきながら立ち上がると心底嬉しそうな笑みを浮かべる。
???「異界の化物め、やりおるわ……ククク……だが、貴女の死は無駄にはしませんよ」
男は懐から古びた水晶玉を取り出す。
???「私が身を置いている教団はですな、将軍。プロミア陥落の際にあの国の馬鹿共がとんだ置き土産をしてくれたのを発見したのですよ。玉座を奪う事に固執して、宮廷魔術師達を丸々取り逃がした騎士団のおかげですな」
???「奴らは、自分達が世界の中心であると思っていましたからな。自らが滅びるならば世界が滅んでもかまわないと考えたのでしょう。古文書通りに有翼の民の魔法を使いあの怪物をこの世界へと呼び寄せた……」
男は水晶玉を眺める。
???「そう、あやつはこの世界の存在ではないのですよ将軍。私は貴女方、南伐混成軍が壊滅した場合、その後始末を命じられているのです」
???「我らは、この世界の均衡を保たねばなりませぬ。この世界に、あやつは在ってはならぬ存在。この世界を歪ませ、混沌を呼ぶ存在なのです。貴女では結局、奴を止める事はできなかった。だから私が決着をつけて差し上げましょう……ですが、今はその時ではない。残念ながら、流石の私も長い漂流で今の魔力ではこれを扱う事はできませぬ。ですから、魔力が回復しだい、この私が奴を葬って差し上げましょうぞ……この流星の目で……ククク……」
そう一通りまるでリヒャルダがこの場に居るかのように一人で語るとその男は水晶を懐に入れて狂気に満ちたその笑顔のまま浜辺の向こう側の森へと姿を消したのだった。
えーっと……。
これで一応、今回のルーントルーパーズ・翠星のマリースナはお終いです。
なんかこんな所で終わりかよ感がいなめないですが……お許し下さい。
もしかしたら、気が向いた時に続きを投降するかもしれませんが今回はこれで終わりです。
なにせかなり前に書いた作品ですから……。
あと、もしこれを面白いと思って下った人が居て続きを書きたいという人が居たら教えてください!書いてくださってもかまいません!
ガルガンティアを絶やさない為にもガルガンティアのSSは今後も増えて欲しいです!!
とりあえずは今回の作品はこれにて一旦終わりという事ですが2月中にもう一作クロスオーバーの短編小説を投降する予定です!!
もしよかったらそちらも見てみてください。
それでは皆さん!またお会いしましょう!(* ̄ー ̄*)
それでは今年一年も皆様、お元気でお過ごしください!!