名探偵コナン〜Small private eye〜   作:桂ヒナギク

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4.西から来た男

 阿笠邸の地下室で阿笠博士が麗奈用の腕時計型麻酔銃を作っている頃、麗奈は毛利探偵事務所に来ていた。

 ガチャリ、とドアが開き、服部 平次(はっとり へいじ)が入ってくる。

「いらっしゃい、服部くん」

 笑顔で出迎えるのは毛利 蘭だ。

「数葉ちゃんはどうしたの?」

「数葉は風邪や言うて家で寝込んどるわ」

 麗奈と平次の目が合う。

「何や自分?」

「黒崎 麗奈、探偵です」

「黒崎 麗奈って北海道で有名なあの!?」

「へえ、麗奈ちゃんって有名人なんだ。お父さんみたい」

「ところでコナンくんはどこですか? 彼に呼ばれて来たんだけど……」

「コナンくんなら上に居るわ。呼んでくるわね」

 蘭が事務所を出て行く。

「自分、今までにどれくらい事件解決しとるんや?」

「そんなのいちいち数えてないです」

 ドアが開き、蘭とコナンが入ってくる。

「よう、久し振りやな」

「久し振り、平次兄ちゃん」

「で、用事って何や?」

 コナンは一枚の封筒を取り出した。それには〈江戸川 コナン 様〉と書かれている。

 その封筒の中から手紙を取り出す。

「はい、これ読んで」

 コナンは服部に手紙を渡す。

「なるほどな。そういうことなら付きおうてやる」

「服部くん、何て書いてあるの?」

「あ、いや、何でもあらへんで。なあ、コナン?」

「う、うん」

 麗奈は服部から半ば強引に手紙を奪い取って読んだ。

「なるほど。そういうことなら私も」

「ありがとう、黒崎さん、平次兄ちゃん」

「ちょっと、何なのよ?」

「じゃ、僕たち出かけるね」

 麗奈、コナン、平次は事務所を出て行った。

 阿笠邸に麗奈がやってきた。

「阿笠博士、麻酔銃は出来てますか?」

「ああ、さっき出来上がったところじゃ。ほれ」

 阿笠博士は麗奈に腕時計型麻酔銃を渡した。

 麗奈は腕時計型麻酔銃を腕にはめた。

「ありがとうございます」

 麗奈は阿笠邸を出た。

 表にはコナンと平次が。

「行きましょうか」

 三人は杯戸ホテルへと向かった。

 

 

 杯戸ホテルのロビーに麗奈たちはやってきた。

 受付で服部がスタッフに訊ねる。

赤城 義彦(あかぎ よしひこ)っちゅう者が泊まってるゆうて来たんやけど、その名の者はおるか?」

「赤城 義彦様ですね? 少々お待ち下さい」

 スタッフが宿泊客名簿を調べる。

「赤城様なら三一〇五号室にお泊まりになられてますね」

「おおきに」

 麗奈一行は三一〇五号室に向かう。

「ここだ」

 と、コナン。

 服部は扉をノックした。

 扉が開き、二十代の男性、元い赤城が出て来る。

「赤城 義彦はんやな?」

「貴方は?」

「探偵の服部 平次や」

「僕、江戸川 コナン」

「私が黒崎 麗奈です」

「お待ちしておりました。中へどうぞ」

 三人を室内へ案内する赤城。

「どうぞ、おかけ下さい」

 三人はソファに腰掛ける。

「赤城さん、僕たちを呼んだのって、ある殺人事件を調査してほしいからってことでいいんだよね?」

「はい、そうです」

「でも何で僕たちなの? 探偵なら小五郎のおじさんがいるじゃない」

「それはあなた方が優秀な探偵だからですよ、工藤 新一(くどう しんいち)くん?」

「なっ!?」

 コナンは驚いた。

「あ、申し遅れました。私、こういう者でございます」

 赤城はコナンに名刺を渡した。

 名刺にはFBI捜査官と書かれている。なるほど、FBIならコナンの正体を知っていてもおかしくはないか。

「工藤くん、君のことはジョディから聞いてますよ」

「あの、コナンくんって偽名なんですか?」

「ああ。俺、本当は高校生探偵の工藤 新一なんだ」

「高校生にしては小さいけど?」

「アポトキシンっていう毒薬を飲まされたんだよ」

「背が縮むの?」

「ああ」

「へえ」

 おっほん、と咳払いをする赤城。

「本題に入ってもよろしいでしょうか」

「あ、どうぞ」

「さて、君たちに調べてもらいたいのは、私の知人女性の死の真相なんです。亡くなったのは今から半月前。警察は心臓発作という判断で捜査を打ち切りました。しかし、私は彼女が殺されたのではないかと考えているんです。真相を探っていただけますね?」

「赤城さん、その女性って、恋人ですか?」

 麗奈の問いに赤城は頬を赤らめた。

 コナンは問う。

「第一発見者は誰か分かりますか?」

「ああ、それは私です」

 赤城は暗い表情でそう答えた。

「因みに、彼女のお名前は?」

倉沢 皐(くらさわ さつき)です」

「遺体の発見現場は?」

「彼女の自宅です。日本へ来た時、久し振りに彼女へ会いに行ったら……。こんなことになるんなら一緒に連れてってあげるんだった……」

 赤城は涙をぽとりとこぼした。

「では倉沢さんの自宅の住所を教えて下さい」

 赤城は倉沢 皐の住所を紙に書いてコナンに渡した。

「では、これから調査させていただきます」

「あのー、報酬の方はいくらお支払いすればいいでしょうか?」

「そんなもんいらへんで。なあ?」

「「うん」」

「そうですか。ではよろしくお願いします」

 麗奈たち三人は、席を立って部屋を出た。その直後、赤城も部屋から出て来た。

「やはり私も一緒に行きます。鍵を持ってないと彼女の部屋には入れませんからね」

 赤城が部屋に鍵をかける。

「では行きましょう」

 四人は倉沢の家に向かった。

 倉沢家に着いた一行。赤城が鍵を開け、ドアを開いた。

 中に入る四人。

「亡くなってたのはどの部屋ですか?」

 と、コナン。

「リビングです」

 玄関からリビングに移動する四人。

 赤城は勉強机の椅子に座り、(うつぶ)せになった。

「彼女はここにこういう形で亡くなっていました」

 麗奈はリビングを観察した。

「あら?」

 麗奈はタンスの角の下の床に何かを引きずった痕跡を見つけた。

「コナンくん、ちょっと来て」

「何?」

 コナンが麗奈の下へ移動する。

「この傷、何かしら?」

「タンスを引きずった痕じゃねえか?」

服部──と、コナンは服部を呼んだ。

「何や?」

「このタンス、少し動かしてくれねえか?」

 服部はタンスを動かした。

 麗奈とコナンはタンスに隠れていた部分の床を調べた。

「シミ?」

 麗奈とコナンが床にあるオレンジの丸いシミを見つけた。

 コナンは携帯電話を出し、目暮警部の携帯にかけた。

「目暮だ」

「目暮警部、コナンです」

「おお! コナンくんか。何か用かな?」

「僕ね、今、半月前に心臓発作で亡くなった倉沢 皐さんの家に居るんだ。それでね、ちょっと妙なものを見つけたから、鑑識のトメさんを呼びたいんだ。お願いしていいかな?」

「コナンくん、今、一人かい?」

「ううん。平次兄ちゃんと第一発見者の赤城さん、それから麗奈ちゃんと一緒だよ」

「そうか。じゃあトメさんに向かうよう頼んでおくよ」

「ありがとう、目暮警部」

 コナンは電話を切ってポケットにしまった。

 それから暫くして、鑑識のトメがやってきた。

「目暮警部に頼まれて来たけど、何を調べればいいのかな?」

「これだよ」

 コナンが丸いシミを指差した。

 トメは早速、鑑識グッズでシミの採取をした。

「じゃあ本庁へ戻って分析してくるからね」

「うん」

 トメは倉沢の家を出て行った。

「どうする?」

「分析結果が出るまでポアロでお茶でもしてようよ」

「それ賛成やわ」

「私も構いませんよ」

「私も」

 四人は毛利探偵事務所の下にあるポアロへと向かった。

 

 

 ポアロに入店する麗奈一行。

「いらっしゃいませ。四名様でよろしいでしょうか?」

「そうやで」

 店員が四人を席に案内し、メニューを用意した。

「ご注文がお決まりになりましたら、そちらのボタンでお呼び下さい」

 店員が去っていく。

「工藤、おまえ何にするんや?」

「俺? コーヒー」

「私は烏龍茶にしましょう」

「私は紅茶がいいわ」

「俺もコーヒーや」

 服部は呼び出しボタンを押した。

 店員がやってくる。

「ご注文はお決まりでしょうか?」

「コーヒー二つに、紅茶と烏龍茶を一つずつや」

(かしこ)まりました」

 店員が去っていく。そして、注文の品が運ばれてきた。

 四人はそれぞれ品を飲んだ。

プルルルルル──コナンの携帯が鳴る。

 コナンは携帯を取り出した。

「目暮警部からだ」

 コナンは応答した。

「もしもし?」

「コナンくん、鑑識の結果が出たよ。倉沢家にあった丸いシミの成分はオレンジジュースで、その中からアコニチンという毒物が検出されたよ。よく気付いてくれたね、ありがとう。それじゃあ」

 電話が切れる。

 コナンは携帯をしまった。

「服部、丸いシミからアコニチンが検出されたって」

「ああ、聞こえたで」

「赤城さん、倉沢さんの職業って何です?」

「東都新聞の編集長です」

「職場へは何で?」

「バスですね。ここからだと、岩田ですね」

 麗奈一行は飲み物の代金を払い、岩田のバス停へ向かった。

 岩田へ行く途中、麗奈は自販機の前で立ち止まった。

「どうしたの、黒崎さん?」

 と、コナン。

「コナンくん、好きなの選んでいいよ」

 麗奈は自販機にお金を入れた。

「さっき飲んだばかりだけど?」

「いや、ちょっと実験をしたいのよ」

「そう」

 コナンはコーヒーのボタンを押した。

「私はこれ」

 麗奈はオレンジジュースを購入した。

「コナンくん、コーヒーを後ろのポケットに入れておいて」

「うん」

 コナンはコーヒーを後ろのポケットに入れた。

「じゃあ行きましょう」

 麗奈たちは岩田のバス停へ移動し、停留所表を見た。

「通勤路に東都大学があるわね」

「大学ならアコニチンもあるかも知れへんな」

「調べてみるか」

 麗奈たちはやってきたバスに乗り、東都大学の前で降りた。

「コナンくん、缶コーヒーを」

 コナンは缶をポケットから出した。

「あれ?」

 コナンの缶コーヒーはいつの間にかオレンジジュースにすり替わっていた。

「何で?」

「さっきバスの中ですり替えたの」

「全然気付かなかったな」

「そんなことより、行きましょう?」

「そうだね」

 麗奈たちは校内に入った。

 四人は校内の学生さんに話を聞いて回った。その結果、最近、科学の実験でアコニチンが二回使われたこと、年輩の教授がアコニチンによる心臓発作で亡くなっていることが判明した。また、後者の事件で小柴 英二(こしば えいじ)という若い教授が犯人として逮捕され、現在も服役中である。

 学生さんたちの話では、実験ではアコニチンは十グラム使用されたのに対し、教授の届け出では十二グラムになっていた。不審に思った麗奈たちは科学担当の教授に話を聞いてみた。

「半月前、倉沢 皐さんという女性が心臓発作で亡くなっています。我々はその女性がジュースに混入されたアコニチンで亡くなったことを突き止めました。そしてそのアコニチンがこの学校のものではないかと考えました。倉沢 皐さんのジュースにアコニチンを入れたのは、あなたですね?」

「私がその女性のオレンジジュースに毒を混入したと? ばかばかしい。名誉毀損で訴えるぞ?」

 四人はにやりと笑みを浮かべた。

「何がおかしいんだ?」

「なぜオレンジジュースだとお分かりに?」

「え? だって今、オレンジジュースって」

「私はジュースと言っただけです。オレンジジュースとは一言も言ってませんよ」

「なっ!」

「年輩の教授を殺したのもあなたですね?」

 教授はその場に膝をついた。

「あいつが悪いんだ。私が発表しようとした論文をあいつが自分のものと偽って発表したから……!」

「倉沢さん殺害の動機は何ですか?」

「彼女を殺ったのは、私の愛を受け入れなかったからだ」

 コナンは携帯を取り出し、目暮警部に報告した。

 警察が到着し、教授は連続殺人の容疑で逮捕され、服役中の若い教授は釈放された。

 

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