VD廃人inマブラヴ 作:重カラサワカラサワ8スナCE盾増弾アウト
どうも。作者です。
VDが好きすぎてついに小説まで書き始ました。ままままま。
最初の一週間のみ連日投稿しますので、どうかよろしく願います。
では本編どうぞ。
インしたお
その日、人類は夢を見た。
星降る大宇宙に垣間見た小さな
自分たち以外にも違う種の、生命体がいたことを。
その日、人類は現実を呪った。
豊かな母星に攻め込む異星人がいることを。
自分たちの楽観的思考を。
自分たちの不甲斐なさを。
その日、人類は再び夢を見た。
強力な兵器を得て。
人類勝利の希望を見て。
敵拠点が堕ちるのを見て。
その日……男は愕然とした。
自分たちが全力を尽くして攻略に掛けた拠点が相手勢力の1%に満たないのを知り。
恋人が、仲間が、自分が。全て消えてなくなってしまうことに。
だから神様は、人間を救ってあげることにした。
”古き聖母”を使って世界に”穴”を作り、その穴から新たな”ちから”を送り込む。
”ちから”は世界で動き、人間を助けた。そして利用された。
本当はいけないこと。だけどそれでも、神様は人間を救ってあげたかった。
例えそれが原因で、【楽園】を追い出されるのだとしても。
これは本当のはなし。【あいとゆうきのおとぎばなし】を夢見た、神様のおはなし。
*****
——おはようございます。
——マスターデータの登録を確認しました。
——これより、サブデータと生体端末の作製を行います。
——完了。
——生体端末へのマスターデータ登録……確認。
——デバック端末への登録……確認。
——各ブロックとの同期……確認。
——全システム オールグリーン。
——これより、時空システム【デザイア】を再始動。
貴方の帰還と活躍を、歓迎します。
****
暗闇。
深い深淵の中、ポツリと黄色の光が力なく灯され、揺れている。
光は何処にもない口で呟く。
「なんだか、ぽかぽかする……」
やる気の無い声質で、心ここに在らずと言った様子で呟かれたその一言は、男の声だった。
若干低く、深みのあるその声の主は元は、人間だ。故あって今はこんな姿になっているようだが、やる事は不明。
というか彼自身自分が何故こんな場所にいるかも分からないようだ。
「……んー、なんだろなぁ……んー?」
ぽわぁん、と言う効果音と共に、目の前に文字と画面が出た。
光はそれを見て、和むように呟く。
またお前か、と。
「夢にまでVD出てくるとか、相当末期だよなぁ、俺」
呟きながら目の前の画面を見つめる。
すると不思議な事に男には、この画面の操作方法が脳内にインプットされていた。
視線を動かし、ある文字列を見つめ、念じる。
--アセンブル
お前が見ていた画面はACVDのガレージだった。
それは数時間前も見ていた、お前の愛機の姿。
太く重厚感のある『重量二脚』に一定の防御性能を求めた軽量フレームと、狙撃戦に適した頭部パーツ。
紫と青で塗装された重機に搭載されている武装は超高出力レーザーライフルが三丁と、スナイパーライフルが一本。
全ての弾数は2.6倍に増弾済み。
それでも決して多くはない弾数だった。
お前はこれを見て、ふぅむと思考する。
この機体は超高主力レーザーライフル、通称『カラサワ』を撃つ為当てる為だけに特化された機体だ。
レーザー系統の武装は撃つ為にはチャージをし続けるという特徴があるが、このチャージ中にエネルギーが一でも足りなければチャージ容量がマックスでなくとも自動発射される。
軽量高EN回復ジェネレーター通称『バイタル』では撃った後の回復時間が早いとのことと、ジェネレーターの容量全部使い切れば両手でのフルチャージが丁度完了するとの特性からこれが主に使われるのだが、フルチャージでの保持が出来ないため、チャージ中撃つまで敵を捕捉する必要がある。
此方の射線を切られれば壁に当たるのは間違いない。ただでさえ少ない弾数が無駄に消費されるのだ。
これを解消する為に本機では容量と回復速度がある一定のバランスを保っているジェネレーター、通称『最重』を採用している。
これならばカラサワ一発分のEN回復の誤差は約1秒で、両手分なら2秒。
更にENを回復すればその容量を生かして数秒間、チャージ保持と移動に使えるENに余裕が出来る。
これで壁に隠れている敵に対し、壁を股がって撃つことが出来るのだ。
しかし、これを採用するプレイヤーは少ない。
理由は単純で、PSを磨けば『バイタル』でも余裕でフルチャージを当てれるし、最重よりEN回復が高い為DPSに優れ、かつジェネレーター重量が軽くなるため、装備の幅が広がる故がある。
そう、総合的に見れば『バイタル』の方が強いのだ。
しかし、この機体のコンセプトはそれとは異なる。
チャージと回復で弾を撃たない時間が多い為、一発当たらないだけでも相当なDPS欠損になる『カラサワ機』では、何よりも命中が大切だと感じた自分は敢えて『最重』を採用した。
これならば若干のDPSを犠牲にPSがそこそこでもある程度の弾数撃てるし、何より攻撃を当てに行ける移動が可能になっている為、棒立ち状態で撃つこと前提の『バイタル』とは命中率が違う。
『バイタル』で当てに行く動きをしようとするとチャージ容量が減り、ダメージと弾速が減少する為、そうそうできない。
そう。
つまり本機の目的はそこなのだ。
”カラサワを撃つ為当てる為だけに特化した機体”
DPSより確実性を取った機体だという訳だ。
そんな機体を設計した彼は少しの遊び心により色々な機体ーー実用性が皆無に等しい機体すら試して遊ぶことがある。
VACが苦手とする高高度で高速移動しながらチクチクと遠距離で攻撃する軽量機体や、
VDの前作に当たるVの看板機体、UCR-10系列の内の一体【ヴェンジェンス】が装備する【スナイパーキャノン】でACを撃破しようとしたり、
外見がカッコイイと言う理由でスナキャを二本担いだ腕レザキャ中二を使ったり。
俗にいう『産廃機体』に類するモノばかり好んで使っている。
そして今回、新たなに組み立てる機体のコンセプトは”現環境下のメタ防御値を大きく確保したインファイント機”の組み立て。
現在のACVD環境ではレーザーの衝撃で相手の防御値を低下させ、命中率とダメージがそれなりに高いハイスピードミサイルを強引に貫通させる機体通称『レザスピ』が流行している。
また、バトルライフルと言う近距離高火力武装も高い貫通率とDPSを持っている為、インファイントするなら正面から殴り合える防御値くらいの防御値は欲しい。
”相手の武装のダメージより防御値が1でも上回っていればダメージを激減出来る”というこのゲームの性質から、防御値調整は重要だ。
これらを考慮した上で男は少しだけ考え、直ぐに機体作成に取り掛かる。
--HEAD Hd-G-A88
--CORE CB-209(改造)
--ARMS AC-129(改造)
--LEGS LRHA-123
--BOOSTER BA-309
--GENERATOR Ge-D-G23
--F.C.S. FA-303
--RECON ASATORI mdl.1
--R ARM UNIT BATTLE RIFLE:ARAGANE mdl.2
--L ARM UNIT BATTLE RIFLE:ARAGANE mdl.2
--R HANGAR SHIELD:AMAGOROMO mdl.2
--R HANGAR RIFLE:AM/RFA-130
ーーSHOULDER UNIT KE MISSILE:SAZANAMI mdl.2
DATA:AP 32601
KE 1900
CE 2776
TE292
B 112(133)
HB 262(312)
GB 209(247)
重量機らしい速度と重量機らしからぬAP、全バトルライフル完封とレザスピ対策を施した対インファ用機体。
TE防御などいらぬ。
そんな構想のアセンブルだ。
基本的にCEに強くTEに弱い重量逆関節を使用する事で大きくCE防御値を稼ぎ、頭部と腕部にもCE防御型を選択する事でこれを更に強化。
コアは基本的二者一択で、レザスピ対策かTE対策か迷ったが、TE対策するには流行パルガンライン(TE1065)まではどう足掻いても足らない為レザスピ対策で妥協。
お陰でACVDでのオンライン対戦の基本、『勢力戦』にも出せる防御値を稼いだ。
……TE以外は。
武装面に関して対インファらしく、マッチアップ前提のインファイント仕様。
主に重二を狩る事を目的としてバトルライフルを両手に装備し、高い連射力で相手を一方的にタコ殴りにする。
このバトルライフルは現在の環境で普及している重量二脚で弾くには中々にキツイ攻撃力であり、対策しようものなら機動性かKE防御が犠牲になるという問題を抱えている為、4on4の戦場が舞台である勢力戦では出しにくくなる。
高い連射力の為、威力の高いヒートマシンガンとしても使えるかもしれない。
ハンガーにはバトルライフルを防ぐ盾があった場合の破壊用のライフルと、低TE防御を補う為の高TE盾。
FCSも各武装の威力保障距離やロック速度と嚙み合っており、機体速度が速すぎて敵を捕らえられないという問題もない。
自分が得意とする状況ならば何戦か行っても弾が余るくらい弾持ちが良い為、長期戦にも対応。
唯一不安なのはある一定のラインの武装しか持ってないが故の場合であり、軽量機やガチタンが出てきた場合は勝てる確率は薄い。
領地戦だからこそ出来る連携で倒すべきだろう。
「んじゃテストでもしましょうかねぇ……」
未だに払えない眠気と共に男はACテストを選択……しない。
ACテストは数日前に既に、実行済みだ。本来ならば二度三度と繰り返し行うべきだが、さっさと新しいものを求める性格のため男は勢力戦とは全く無縁な、ストーリーミッション(以下ST)へと出向く。
勿論、STに関しても男は挑戦済みだ。
しかし、未だに男は全STをクリアできていない。
原因はごく単純。
この機体の欠点が目立ちすぎている為だ。
具体的にはCE武装に寄り過ぎていることと低いAP、TE装甲である。
これのせいでST09と10が未だにクリア出来ていない。
前中の欠点は10で、中後の欠点は09で大きく響いている。
ST09のミッションはAC一機の撃破(二回)と特殊兵器の撃破だ。
問題なのはAC機が高出力レーザーライフル(以下レザライ)である通称『カルサワ』を装備していること、特殊兵器の全てがレーザー兵器を所持しているためだ。
対AC戦では身を隠すか回避するか、盾を展開するかで対策出来るが、身を隠せばその分DPSが落ち結果として被弾が増えるし、回避に関しては当てる動き主軸の為事実上不可能。盾を展開すれば前半戦ではヒトマシで割られてしまうし、DPSも落ちる。
また地形も厄介だ。
そこら中に生えている建造物のせいで射線を何度も切られ再二次ロックまでの時間待たなくてはならないし、偶に姿を見失う。
しかも倒したら倒したらでレーザーの大群が襲ってくる。
泣きっ面に蹴りだ。
ST10のミッションは更に単純明快。
弾とAPが足りない。
まず、敵は一体しかいないため回避に関しては比較的楽なのだが、肝心の攻撃手段が皆無に等しい。
何故なら相手は此方のメイン武装であるバトライをジャンルごと弾いており、更にVACのHBを超強化したような瞬間移動『QB』を連発する為だ。しかも通常移動も早い。
こんな化け物が相手ではメイン武装は丸ごと腐ってしまう。ならばとライフルで対抗するが、前半後半で使えば弾が足りなくなり、前半蹴りでやり過ごし後半フルバーストしようとすると常時AP減少の追加ダメージと攻撃中のミサイル掠りが嵩んでピーボボボ。
男はこの瞬間、無言でゲームの電源を落とした。
だが不思議な事に、男は何故かこの二つを今ならば余裕でクリアできる気がしていた。
謎の余裕である。恐らく余裕が無さ過ぎて逆に余裕という奴だろう。テストと同じだ。
見ずとも慣れた手つきと地味に歪んでふらつく視界を制御して男は手ごろなSTを選択する。
良く見えないが、上から一二番目にあるエリアにストミの9と10があったはず。
ならばこれだろうという経験からなる推測によってそれを選択する。
ぴっ、と画面選択の音声がなる。
男は意識もせずに出撃、ブリーフィング画面を読まずに飛ばして早速出撃する。
さあ、やってやるぞ。
見えない目でくらくらとつぶやき、そして。
ついに意識はブラックアウトした。
深い眠りの中、ぴぴぴという電子音が良く頭に響いてくる。
それは小鳥のさえずりのような優しいものではなく、ただただ業務行動を繰り返す役人のよう。
単純な機械音と自身を包み込む堅い寄り掛かり式ベッドに包まれたお前は初めて、目が覚める。
--ここは……?
目の前に広がるのはお前の見知らぬ密閉空間。
視界に映る中ど真ん中で大きく自己主張する液晶は黄色い画面にただ一文、
『NO DATA』
と映すのみで、他には何もない。
その左右にも液晶ディスプレイが一枚ずつつけられているが、機能してないようだ。
お前は首を傾げて視界をまた違う場所へと向ける。
ここは自分が先ほどいた、東京都内の自室ではないらしい。
と言うよりはもはや、安全安心を表面上謡っている日本とはかけ離れている気がする。
なんだ、このトリガースイッチっぽいもの付き操縦桿(仮)は。
なんだ、今自分が身に着けているこの宇宙服もどきは。
なんだ、この腰元あたりにフィットしているアサルトライフルのようなものは。
正直言ってこれは夢であり、数日前から続いている二日酔いならぬ5日酔いが未だに治ってないための弊害だと言われても不思議でないと自分の理性が言ってる。
と言うよりも夢であってほしい。
「なんだこの状態……マジで夢なんじゃないか?」
頭を押さえ、くらっとした拍子に右側の操縦桿に手を掛ける。
そして目を瞑り、一端落ち着こうとして………それは起動する。
——おはようございます。
——パイロットデータが承認されました。
——これより、作戦行動を開始します。
--ようこそ、戦場へ。
それは数時間前にも聞いた、淡々とした機械音声。
定形文を発するだけのソレにお前はいつの間にか、強張った表情を和らげられる。
これはまさか。
お前の中で確証に近い仮定が生まれ、まるで本能に従う獣のように震えた手で周囲をべたべたと触りまくる。
その結果として、あるシステムが起動する。
--シークエンスコードを確認。
--メインシステム 通常モードを起動します。
瞬間、今まで黄色の背景に文字を映すだけのディスプレイが晴れ、ほぼ白に近い青色の画面が現れる。
そこに映されているのはディスプレイ周りに展開する幾つかのバーや、APと表示された横に並ぶ数字列。
間違いない。
これはどう見ても、VACのゲーム画面だ。
その証拠に、画面中央には両手両肩に武装を積んだ鋼鉄の鳥足人形が映っている。
この機体は見た事がある。数日前にお前が対インファ用にと組んだ試験機だ。
恐らく、スキャンモードと類するモードだからだろう、消費EN低減の為か画面の色情報が削減されている。
そんな状況でもクッキリとその姿が確認できる当たり、本当にV技術で作られている可能性が高くなってきた。
「まさか俺は……VACに乗っているのか……?」
それを理解した瞬間、抑えきれない歓喜と疑問、耐えきれない恐怖がお前を襲った。
お前は確かに、今までの日常生活に飽き飽きしていた。
仕事や友人関係などは良好なレベルを保ってはいたが、それでもお前を虜にしたのは二次元。
ここじゃない世界を舞台にした、創作の世界だった。
ロボット、ファンタジー、RPG、恋愛シミュレーション、ソシャゲ。
現実では起こりえない現象が当たり前だった、あの世界の事が離れてやまなかった。
特にお前を虜にしたのはロボットで、その中でも【アーマード・コア】は”特別”だった。
自分だけの機体を組み立てれ、戦闘も高いテクニックが無ければクリアは難しく、しかもストーリーが良い。
確かに始めた頃はそのあまりの操作性と敵と自分の動きの差を見た時の絶望感から、何度か投げて積みゲーと化した事があった。
だがそれでも諦めずに練習し、実際に敵を倒せるようになった瞬間。
その瞬間の快感は、とてつもなく気持ちのよいものだった。
しかもテクニックだけ磨くのでなく、機体を組むことで色々な戦い方で遊ぶことができる。近距離、遠距離、近接。大きく分けても3種類の攻撃方法だ。
そして、決して全てを語らないストーリー。これのおかげでその時その時何が起こったか想像するハメになり、結果としてこうに違いない、という妄想が掻き立てられる。
プレイしていた時は正に、至高の快感が得られていた。
が、同時に思う所がある。
これは本当に現実なのか、なぜ現実なのか、と。
普通ならば夢で終わる筈である。いや、夢であるべきなのだ。
いくら日常の世界より創作の世界に興味があったとして、本当にその世界に行ける事が可能だろうか。
否、常識的に考えればどう考えても不可能である。
次元を跨ぐなどという話は世間一般では与太話として遊ばれるくらい、冷めている。
大体は夢落ちか妄想だと手を振られて終わりだろう、
実際に、自分自身でも思っている為、それはあながち間違ってはいないと思うが。
だがもしも。
もしもこれが現実で、夢でないとしたら、
それはそれで最高にうれしい事で、最悪に恐ろしい事だ。
確かに、アーマードコアに乗る事をお前は望んでいた。
あの地上を這う最強の機動兵器で無双出来たらどれだけ楽しいだろうかと。
だが、同時に恐怖もしていた。
お前は知っている。
アーマードコアはそれほど甘い兵器では、世界ではないと。
そもそもただの一般人に過ぎないお前がアーマードコアに乗って、どうやって動かすというのか。
アーマードコアを駆る傭兵であるレイヴン達はパイロットとしてエース級だと、何処かの記事で読んだことがある。
時速何百キロというスピードで三次元機動出来る人材は少ない。普通ならばそんなことは難しく、MTに乗れればいい方のパイロットだという人もいた。
そう。
一般人であるお前はアーマードコアは愚か、MTの操縦も難しいはずなのだ。
そんな奴が訓練もせずにアーマードコアに乗ればどうなるか、考えなくとも分かる。
しかも恐ろしいの個人の技量元々の話だけでなく、その世界全体もそうだ。
あの世界では裏切り、奇襲、闇討ち、裏取引、小競り合いなど闇の深い行為が平気で行われている。
特にV世界では戦争は日常茶飯事。休戦と言う名の一時間の休憩を挟んでまた大戦争を繰り返すVD世界など世紀末でしかない。
なんで200回以上戦争出来るのか、理解に困る。
そして今自分が乗っているアーマードコアはV仕様。
しかも画面に映る周囲の映像は雪の降り積もる廃墟のような世界。
つまり。
この世界はV系列の世界である可能性がとんでもなく高いのだ。
「……どうしようか」
どうもできないのである。
V系の世界へと降り立ってしまった可能性が高い以上、生き残る事すら難しいかもしれない。
それは戦闘面でもそうだが、それ以上に食糧問題が深刻過ぎる。
あんな排気ガスとコジマ粒子(仮)で汚染されまくった世界では朝昼晩の食事をとる事すら難しい筈。
だからVではミグラントによる食料供給が各地の住民のライフラインを担っていると見たことがある。
現地では食物など育たないらしい。
「逃げる……か?」
それでは食料など手に入れる事は無理だろう。
少なくともコックピットには食料が見当たらない為、何処かの基地へ行かなくてはならない。
となるとこの機体を動かすハメになるのだが。
正直言って無理な気しかしない。
「でも、やるしかない……よな」
不思議とお前はやれそうな気がしていた。
なぜかは分からない。だから不思議だと感じている。
恐らくは覚えた記憶のないこの機体の操作方法と、VDをやっていた経験から来る自信のせいなのだろう。
理性では難しいと分かっていても妙な自信が湧くのを感じてお前は少し、ほっとした。
どうやら世界が変わっても、自分自身は変わらなかったらしい。
「……っよし。いくぞ!」
お前はブースターを起動した。
****
「……おかしい」
揺れるコックピットの中、お前はつい耐えきれなくて呟く。
通常モードでACを走らせる事数時間。
戦闘モードではなく通常モードの為特に激しい運動もしてはいないが、それでも時速100kmは超えている為、キツくない訳ではない。
が、スーツのお陰でそれが軽減出来ているのは素晴らしい。
個人的にはジェットコースターみたいに相当な負荷が掛かるものだと思っていた。まあ、その位の圧力は現在進行形で感じている訳だが。
因みにGB、HBは吹けないため、本当に時速百数キロどまりだ。現実ではすごい負荷が掛かっているのにディスプレイ映像の中ではのろのろ動いているのに驚きを隠せない。
だが、本当にお前が疑問を感じているのはそこではない。
お前の意識はディスプレイの中、そこに映る景色にあった。
相も変わらず、今自分が走っているのは雪が降り積もる平野の廃墟。
壊れたレンガ造りの建物残骸が散らばり、山が出来ているのは先ほどから変わらない。
が、ここ十数分前から変わったものがある。
機動兵器の残骸だ。
これに関してはV世界ならば当たり前だと言う理性がいる。
実はV世界にはACのありとあらゆるパーツが地面に埋まっており、その幾つかは地上に半分姿を見せていたり、そこら辺に転がっていたりする。
ACV時点での世界よりも前の時代の戦争時に壊れた物がそのまま放置されたものだそうだ。
ならば適当なパーツが転がっていても不思議ではない……のだが。
不思議な事にV、VD本編には登場していないパーツばかり転がっている。
やけにデカい肩パーツに、太ももだけ重量二脚のような足。FAの大佐脚に似ているかも知れない。
また、VACより大きい長さの実体剣も見かけた。『ムラクモ』とはまた違った武器だ。
更に驚きなのが、VD本編に登場したパーツが一切見当たらず、これらのパーツばかり転がっている事。
まさか地域によって普及しているパーツの種類が違うのだろうか……?
なお、これらの機械系パーツの他に、もう一種類ヘンテコ兵器が転がっている。
それを一言で表すならば、生物兵器。
VACより少し小さめの、赤色多脚でデカい口の奴の死体が大量に山積みにされてたり、VACの倍はある目玉模様の甲殻が並ぶように列をなしている。
不気味の文字しか見えない。
AMIDAの方がよっぽど可愛げがあるぞとお前は愚痴を漏らしていた。
--何か銃声のようなモノが聞こえる。
気付けば機体のマイクが何か、マシンガンのような音声を拾っていた。
それはV世界ではあり得ない程に軽い感じの連射音。
ガトリングのズガガ音ではなく、普通のマシンガンのダダダ音だ。
お前の頭の中に新たな疑問が生まれる。
なんだ、この感覚は。
「何かが、おかしい……?」
機体の進行方向を銃声のあった方角へと転換。
少しの不安を漢感じながら操縦桿を強く握り締め、モード切替のトリガーに手を掛ける。
音源発生地点まであと、2キロ。
1.5キロ。
1キロ。
700メーター。
600。
500。
「--!!」
思わず画面を凝視し、息を呑む。
信じられない程の過呼吸と鼓動の響きがアドレナリンの分泌を意識させ、とてつもない吐き気を催す。
ディスプレイに映るのは青い人型兵器の小隊がマシンガン両手に担ぎ赤の波に乱射している姿で、赤の波は陸地だというのにとんでもないスピードで彼ら目指して突き進んでいる。
よく見れば赤の波は液体でない事が分かる。そもそも陸で波が出来るはずもないが、この光景を見れば波だと錯覚するのも無理はない。
それらは大群だった。
赤い体色の、地を這う恐怖生物。
先ほど生物兵器だと思っていた奴らの生存体だった。
「う、うそだろーーッ!?」
瞬間、朧気だった記憶が一部戻る。
ひどい頭痛だ。
視界が歪み、腹が煮えたぎるような感覚と共にお前の脳内にある記憶が埋め込まれていく。
マブラヴ オルタナティブ。
日本でひと昔前大流行したノベルゲームだ。
舞台は地球で、ただただ地球を滅ぼすように資源を貪る宇宙人との戦争を描いたゲームだったと記憶している。
「って、事はまさかこの世界はーー!!」
お前は再度絶望に叩き落とされた。
それと同時に先ほどまで絶望していた世界が急に、優しいものだと錯覚し始めた。
ACV世界はまだ平和だ。相手はあくまで人間で、確かに戦争屋ばかりだがまだ話が通じる奴らばかり。
その証拠に一時間だけ、休戦協定を結んだりしている。
だがマブラヴ世界は違う。
あり得ない物量で人間に襲い掛かり、民間人に対して容赦ない殺戮を行い、話し合いにも応じない。
ある意味で最も危険な戦争屋だ。
そして、そんな世界にお前は舞い降りた。
どう考えても死ぬまで奴ら、【BETA】と戦うハメになる、この地獄に。
「なんだよ、それ………クソが」
もう、この呪縛から逃れる事は出来ない。
お前は死ぬまで戦い続けるのだ。
「--いいさ。やってやる。やってやるよ、お前らの望むがままに!」
誰に対するでもない、精一杯の抵抗の声を上げる。
それはある意味、怒りの象徴でもあった。
「システム、戦闘モード起動!!」
--メインシステム 戦闘モードを起動します
破滅の対する反抗の狼煙が上がった。
パルマシいたいお(qwq)