VD廃人inマブラヴ 作:重カラサワカラサワ8スナCE盾増弾アウト
薄暗く、緑の電光板や電子線が闇の中を流れる広い空間。
部屋の四方には巨大なスクリーンがあり、絶えず何かの情報を流している。
みればその下には幾つもの椅子があり、マイクも付いている。
それぞれが何かを担当して、共同作業をするのだろうか。
そんな中に二人の人影が見えた。
お前とイングヒルトだ。
「さて。私がお前を呼んだ理由は分かるか?」
「はい。出撃するんですよね」
「まあ、その通りなのだが……」
お前は少し困ったように呟きながら中央の机型スクリーンに情報を映す。
何処かの軍施設の航空写真だ。周りの風景は全て白で埋まっている。
「……!」
イングヒルトはこれを見て驚き、口を塞ぐ。
いくら何でも、分かったらしい。
自分が今までいた場所を忘れれる訳もなかろう。お前は少し彼女を哀れに思いながら話を続けた。
「東ドイツ陸軍基地、ベーバーゼ基地。お前が所属していた戦術機中隊が駐屯していた基地だ。覚えはあるのだろう?」
「……はい」
「これは独自のパイプラインから仕入れた情報だが、実は今から数時間後、この基地に東ドイツ国民の大好きな……おっとすまない、東ドイツ国民が従順に従っている飼い主様の国家保安省、通称『シュタージ』が訪れるとの情報を入手した」
手元のスクリーンに新たな情報を映す。
訪問するのは数体の戦術機、一台のヘリコプター。
中身はと言うとどうやら中々の高官たちがいるらしい。
「シュタージ武装警察軍、ハインツ・アクスマン中佐と、その実働部隊である『ヴェアヴォルフ大隊』指揮官、ベアトリクス・ブレーメ少佐。その他大隊員の精鋭がやって来るらしい。
御大層に大勢の戦術機を引き連れてだ。MiG-23 チボラシュカ、戦闘能力を出来る限り底上げした精鋭機だな」
情報によると引き連れている機体は全部で10。
全員完全武装で、ヘリまでが武装を積んでいる。
やはり中佐クラスが動く際にはここまでの防御力が必要なのだろうか。
いや、違う。
彼らの目的はもっと、別なものだ。
「ーーすみません、質問いいですか?」
「ん、なんだ。言ってみろ」
「シュタージはなぜベーバーゼ基地をわざわざ訪問するのでしょうか。正直言って、このクラスの武装を以て訪れる必要性を感じません」
確かに彼女の言う通りだ。
そもそもの理由、シュタージが陸軍を偵察するなら密偵からの報告で十分だし、2個中隊規模で行く意味は余りない。燃料の無駄だろう。
だが、理由はある。
「ああ、確かに不自然だな。だが、自然でもある」
「は?」
「彼らが訪れる目的は主に3つある。
一つはお前の欠損によって出来た穴の補充要員、『カティア・ヴァルトハイム』に関して釘を刺しに来たのだろう」
スクリーンの情報をまた映し変える。
画面には小柄な茶髪の、ポニーテールの少女が映っている。
そしてお前はここで彼女にとって衝撃の情報を伝える。
「まあ普通の補充ならば面白みのない所だが……ところがどっこい、コイツは西ドイツの人間なのさ」
「……ッ!?」
「コイツは先日の戦闘では国連軍機として参加していた。だが部隊は彼女を除いて全滅、ギリギリで機体が破壊される寸前に第666戦術機中隊に救われたそうだ。
で、彼女からの志願で部隊に組み込む話になったそうだ。やり方は少し強引だったらしいがな」
「な、なんで隊長たちはその志願を受け入れたんです……!? 普通なら……!」
「さあ、詳しい真意は私には分かりかねるよ。だがまあ、少なくとも人が足りないから、彼女が衛士として優秀だから、だけが理由とは思えないが」
「……」
「だからシュタージもわざわざ訪れたのだろうがな。まあ、少なくとも威圧にはなりそうだからな」
イングヒルトは少し、表情が暗い。
やはり部隊の者たちの事を思っているのだろうか。
だとしたら少し心配だが……まあ、乗り越えてもらわねば困るのはお前だ。
少なくとも敵対はせずとも、それに近しい事はするのだから。
「じゃあ次だ。
先ほども言った通り、彼らの主な目的は威圧行為だろう。補充要員に対して、だ。
だが、それだけに対する威圧とは思えない。恐らく、基地全体に、666中隊に対してのものだろう」
「……」
「あくまでシュタージ内部のデータサーバーからの情報だが、どうやら彼女らはシュタージとは独立して何か、事を起こそうと思惑しているらしい。恐らくシュタージをそこをーー」
お前は頭部に内蔵された記録デバイスからデータを参照しながら話していると、急に待ったが掛けられる。
イングヒルトは驚愕の表情だ。
彼女は頭を抱えながらお前に問いかけた。
「ちょ、ちょっと待って下さい。今一体どこのデータサーバーからって」
「何処って、さっきも言ったじゃないか。シュタージのデータサーバーからだ」
何を言っているんだという表情でお前は答える。
が、イングヒルトはそんなお前に反して、逆にお前を異常扱いしてきた。
「シュタージのデータサーバーって、そんな簡単に侵入出来る訳がないじゃないですか!!」
「いや、侵入自体は簡単だったらしいぞ。数分も掛からずに奴らの全データを回収してきていた。奴らの悪事が今は私たちの手の内だ」
「……」
「どうしたというのだね、イングヒルト……いや、傭兵『リスファー』。
お前も気付いていたのだろう? 私たちが国家の後ろ盾無しに、機動兵器を何体も所有している時点で。
はっきり言わせてもらおう。この程度の事は造作もない。人間の相手など、赤子を潰すようなものだ」
はあ、とお前はため息を漏らした。
勿論その原因は自分の彼女に対する接し方だ。
なぜこうも、彼女に対してやけに偉そうな態度を取れるのだろうか。確かにそれをお前は少し望んでいたものの、ここまでのものとは思っていなかった。
これでは救出当初のイチャイチャ妄想物語は展開出来ないではないか。いやまあ、展開する気など小心者のお前はする気がないが。
今ばかりは虚勢を張れるこの謎補正を恨むばかりだ。
「さて、それで最後の目的だ。
これは決定的なのだが、不確かな可能性だ。いいか、よく聞け。
奴らの目的は私たちだ。イングヒルト」
「……え?」
お前は説明する。
あの日、お前が仕出かした事の大部分を。
「お前を回収したあの日、私は色々な地域で戦闘をしてきた。そこで私は見られてしまったのだ、彼らが操る人類の刃『戦術機』とは根本的に異なる単騎無双の機動兵器『アーマード・コア』を」
特に、バトルライフルを見られたのはマズイだろう。
あれはV世界では戦場の主力兵器と言っても過言ではなく、どの戦場にも必ずこれを搭載した機体が一体はいると言われるほど、高性能な兵器だ。
相手の攻撃を軽々しく跳弾できるVACの装甲だというのに、それをいとも簡単に貫通する高威力。DPS、命中精度ともに悪くはなく、張り付きさえすればゴリゴリ相手のAPを削れる超優秀兵器だ。
この世界ではどうやらその高威力は弾持ち故にあまり使用されることは無さそうだが……あの面制圧力は目を見張るものがある。
戦術機にはいささか小さな武装だとしても、是非とも手に入れたい兵器だろう。
「(まあ、レーザーを見られ無かったのは不幸中の幸いだが。カラサワなんて見られた日にゃ全世界の国家が挙って技術を集りに来そうだからな)」
お前はあの時、夢のような空間で新たにインファ機をアセンしたお前を褒めてやりたくなった。
レーザー兵器は確かに強力で、この世界にとってはバランスブレイカーも良いところだ。
もしもアメリカなんぞに渡ってしまったらその技術を利用して対人兵器を造りそうだ。確かヴァイパーとか言う機体がその、対人を考慮に入れた兵器だったと記憶している。
お前は再度、お前を褒めたくなった。
重量二脚なんて知られたら、本気でヤバい事になっていただろう。
「恐らく奴らはあの戦場にいた衛士全員に事情聴取でもするのだろう。少しでも私たちに関するデータが欲しいようだからな」
「……それで、あなたはどうするんですか」
イングヒルトの表情が暗い。
お前のニヒルな笑みを見て何かを察したようだ。
ならばとお前は更なる虚勢を張って答える。
お前の予想通りだと。
「はっきり言わせてもらおう。私は彼ら、シュタージが国家をいい方向に導いているとは考えてない。逆方向に進んでいるとも思える。
ならば、ここで一旦
それを聞いてイングヒルトは考える。
確かに、シュタージが自分たちに何か尽くしてくれたという記憶はない。
それどころか、生活を圧迫していたと記憶している。
彼女の友人も何人か、シュタージに連れ去られたこともあった。
それを思い起こすとシュタージとは果たして、国家に必要な存在と言えるのか。
「……しかし、シュタージと言えどもドイツ軍です。機体数など他国に対して劣勢である以上、精鋭機を破壊するのはどうかと考えます」
イングヒルトは飽くまで共感こそするが、肯定まではしない。
まずは出方を知る事が大事だと考えたのだ。
それを事前に予測していたお前は此処で敢えて、口元を歪ませてみる。
自分がやろうとしている事のバカバカしさを、出来る限り表現したのだ。
お前ははっきりと彼女に伝える。
「ああ、確かにそうだな。それではドイツ軍全体の兵力は落ちるだろう。だが、考えてみるがいい。減ってしまったのならば、増やせばいいのだと」
「……?」
「分からないか? 私はこう言っているのだよ。”ACを彼らに与える”と」
「……ッ!?」
またしても驚愕に顔を固めるイングヒルト。
流石にこれを予想する事は出来なかったようだ。
お前は更に話を続ける。
「知っての通り、ACの戦闘能力は非常に高い。私が単騎で先の戦場を徘徊していた事からもそれは明らかだ。
ならばいっその事、これを国レベルで配備するのは、どうだろうか」
「た、確かにそれはそうですが、それを軍の上層部が悪い方に利用したら……!」
「まあ、確かに利用されるだろうな。元々対人用に設計された兵器だ。これを基にアメリカの真似事……っと、これは機密だった。まあ、BETA対戦後の世界を考え始めるだろう」
「いっ、今なんと!? アメリカがまさか……!」
目を見開くイングヒルトとははは、と笑ってごまかすお前。
まあ、別に知られてもいい情報かと思ってお前は開き直った。
「まあ、少なくともドイツの上層部は私たちを利用する事だろう。ならば此方も利用いや、飲み込んでやるとしようではないか」
「飲み込む……?」
お前はふと、ACVDの一シーンを思い出した。
3大勢力に普及するUNAC。
特定のロジックパターンによって発動する時限式のウイルス。
大量のUNACが寝返り、3大勢力に対して反旗を翻す第4勢力。
作中で【財団】と呼ばれた男が仕組んだ罠だった。
まあ、今回行うのはそんな生易しいものではないが。
どちらかと言うとバイオハザードに出てくるアンブレラ社がラクーンシティに対して行ってきたものの方が近いだろう。
要は相手を自分に寄生させるのだ。
「戦略的な話はここまでにしよう。これ以上は余計な情報でしかないだろう。
それでは今回の作戦概要を説明する」
お前はフラキシィの管制コマンドを起動。
ミッションブリーフィングを開始する。
--シークエンスコードを確認。
ーーミッションブリーフィングを開始します。
--依頼内容は、東ドイツ軍ベーバーゼ基地にて停泊中の国家保安省所属『ヴェアヴォルフ大隊』二個中隊の襲撃、一部の機体を残しての撃破となります。
--敵機体は東ドイツ軍の精鋭、MiG-23 チボラシュカ。機動性と運動性が高めの準第二世代機です。
ーーWS-16C突撃砲、で武装しており、射撃戦に特化しています。
--複数機による連携、包囲攻撃が予測されます。数を確実に減らしていってください。強襲による初動ブーストも有効です。
--撃破対象外の機体はMiG-23 チボラシュカ一番機と、三番機。また攻撃ヘリMi-24MkⅢです。どれも東ドイツの政治に関わる高官です。
--基地への輸送はAC輸送型攻撃ヘリ『SPECHT A-448/C』が担当します。投下後、戦闘行為を開始してください。
--なお、技術漏洩の観点からレーザー兵器や重量二脚、タンク等の使用を禁じます。
--説明は以上です。本ミッションを完遂した傭兵には当艦より巨額の報酬を支払う事を約束します。
ーー健闘を期待します。
「……さて。それじゃ早速出撃準備といこうか」
お前は説明を終えてガレージへと向かった。
敵の情報筒抜けってどんなチートおま(awa)