問題児達と時の人が異世界から来るそうですよ? 作:ガイドライン
「肝心の試練だがの。おんしら四人とこのグリフォンで
“力”“知恵”“勇気”の何れかを比べ合い、
背に跨って湖畔を舞うことが出来ればクリア、という事にしようか」
すると虚空から“主催者権限”にのみ許された輝く羊皮紙が現れる。
白夜叉は白い指を奔らせて羊皮紙に記述する。
四人は羊皮紙を覗き込んだ。
『ギフトゲーム名:“鷲獅子の手綱”
・プレイヤー 一覧 逆廻 十六夜 久遠 飛鳥 春日部 耀 君塚 大助
・クリア条件 グリフォンの背に跨り、湖畔を舞う。
・クリア方法 “力”“知恵”“勇気”の何れかでグリフォンに認められる。
・敗北条件 降参か、プレイヤーが上記の勝利条件を満たせなくなった場合。
宣誓 上記を尊重し、誇りと御旗とホストマスターの名の下、ギフトゲームを開催します。
“サウザンドアイズ”印』
「私がやる」
読み終わるや否やピシ!
と指先まで綺麗に挙手をしたのは耀だった。
彼女の瞳はグリフォンを羨望の眼差しで見つめている。
『お、お 嬢……大丈夫か?
なんや獅子の旦那より遥かに怖そうやしデカイけど』
「大丈夫、問題ない」
耀の瞳は真っ直ぐにグリフォンに向いている。
キラキラと光るその瞳は、探し続けていた宝物を見つけた子供のように輝いていた。
隣で呆れたように苦笑いを漏らす十六夜と飛鳥。
「OK、先手は譲ってやる。失敗するなよ」
「気を付けてね、春日部さん」
「うん、頑張る」
二人は耀に言葉をかけ、大助も応援の言葉を言おうとしたが
「よし、頑張ろう大助。」
「………あれ??」
流れ的にここは春日部さん一人のはず
確かにプレイヤーには自分の名前はあったが
「これ……僕も出るの??」
「えっ、ちょっとなにいってるの??」
「これ僕がおかしいの!!?」
「そういうことだからよろしく。」
「いや、もう…はい。」
これ以上何をいっても無理だろうな…
…………………………
グリフォンとのギフトの取り決めはこうだ
僕と春日部さんはグリフォンの背中に乗り
山脈を時計回りに迂回しこの場所に戻るまでに
一人でも振り落とされなければ僕達の勝ち
それはグリフォンにとっては誇りを、名誉が失墜する
その誇りをかけるグリフォンに対して僕達は命を懸ける
もちろんそのことに対して黒ウサギや久遠さんは反対
だけど十六夜と白夜叉によりこのままやることに決まった
「はい、春日部さん」
「ありがとう。」
僕が先にグリフォンの背に乗り春日部を引き上げる
手綱を持った僕が前へ春日部さんが後ろに座ったのだが
掴むところがないと、その腕を伸ばして僕のヘソのところで手を組んだ
つまりは僕の後ろから耀が抱きついてきたのだ
「ちょっ、ちょっと春日部さん!!!??//////」
「こうしないと掴むところがない。
だから手綱は大助に任せたから」
任せたって……
こんな状況どうも思わないのか春日部さんは!!
僕はこんなにドキドキしてるのに////
そんな状態が分かったのか、
十六夜や久遠さん白夜叉はニヤニヤと
黒ウサギはその光景にオロオロしている
「///// 春日部さん、早く始めよう!!」
「う、うん?
その前に一言だけ……
…私、あなたの背に跨がるのが夢の1つだったんだ」
『………そうか』
グリフォンは苦笑してこそばゆいとばかりに翼を三度羽ばたかせる。
前傾姿勢を取るや否や、大地を踏み抜くようにし て薄明の空に飛び出した。
「うおっ!!!!!」
思わず声が出てしまった。
覚悟はしていたけど実際に味わうとこうも違うのか…
この空を自由に駆けるグリフォンのスゴさに……
そして耀は何かに気が付き、強烈な圧力に苦しみながらも、
感嘆の声を抑えられずに漏らした。
「凄い……! 貴方は、空を踏みしめて走っている!!!」
鷲獅子の巨体を支えるのは翼ではなく、旋風を操るギフト。
この翼は彼らの生態系が、通常の進化系統樹から逸脱した種であることの証
力学を無視して空を駆けるその姿は、まさに゙幻獣゙の名を相応しいものだった。
『小娘、小僧。もうすぐ山脈に差し掛かるが……
…本当に良いのか?この速度 で山脈に向かえば』
「うん。氷点下の風が更に冷たくなって、
体感温度はマイナス数十度ってところかな」
森林を越え、山脈を跨ぐ前に、グリフォンは少し速度を緩める。
低い気温の中を疾風の如く駆けるグリフォンの背に跨れば、
衝撃と温度差の二つの壁が牙を剥き、 人間に耐えられるものではない。
これはグリフォンの良心から出た最後通牒。
耀の真っ直ぐな姿勢に思うところあっての言葉だろう。
だが、その心配を耀は微かな笑顔と挑発で返した。
「だけど、大丈夫って言ったから。
それよりいいの ?貴方こそ本気で来ないと。本当に私が勝つよ?」
『……よかろう。後悔するなよ娘!』
次の刹那、大気が揺らいだ。
今度は翼も用いて旋風を操る。
遥か彼方にあったはずの山頂が瞬く間に近づき、
下を見れば、羽ばたく衝撃で割れる氷河が見える。
衝撃は人間の身体など一瞬で拉げさせてしまいそうな衝撃の中、
耀は歯を食いしばって耐えていた。
これだけの圧力、冷気。
これらに耐えている耀の耐久力は少女を逸脱している。
(なるほど……相応の奇跡を身に宿しているという事か……!)
頂から急降下する際、グリフォンの速力は倍に近しいものまで迫る。
手心不要と悟るやいなや、グリフォンは旋回を交えて
春日部耀を振るいかける。
鞍が無い獅子の背中は縋れるような無駄は無く、
大助にしがみ付いている耀の下半身は空中に投げ出されるように泳ぐ。
「っ・・・・・・!!」
流石にもう軽口は叩けない。
耀は必死に大助にしがみ付き、
グリフォンは必死に振り落とそうと旋回を繰り返す。
が、
「『なっ!!!??』」
だけど、そこで、異変に気がつく
下半身が空に投げ出されている耀だが
どうして、こんなにも安定してしがみ付いているのか?
大助は耀に比べて手綱を握っているが
それでも座っている所は同じである
なのに、こうして、いま、
振り落とされそうになっているのは
……………耀だけなのだ。
耀が必死にしがみ付いている大助
その者は、今も、グリフォンに「跨がっている」のだ。
少しも動かずに手綱も必死に掴んでいる様子もなく
ただそこに「座っている」のだから……
グリフォンは地平ギリギリまで急降下して
大地と水平になるように振り回す。
それが最後の山場だったのだろう、
山脈からの冷風も途絶え、残るは純粋な距離のみ。
勢いもそのままに、湖畔の中心まで疾走したグリフォン。
耀と大助の勝利が決定し、飛鳥と黒ウサギが喜んだ瞬間 ――
――大助にしがみ付いていた耀の小さな体は
突風に吹き飛ばされたように舞い、慣性のまま打ち上がる。
『何!?』
「春日部さん!?」
安堵を漏らす暇も称賛をかける暇もなく、
耀の身体が打ち上げられ、グリフォンと飛鳥は息を呑んだ。
助けに行こうとした黒ウサギの手を十六夜が掴む。
「は、離し―――」
「待て!まだ終わって―――」
焦る黒ウサギと止めようとする十六夜。
すると耀の身体が突然動きを変えた。
決着がつき、慣性のまま打ち上げられたとき、
耀の脳裏からは、完全に周囲の存在が消えていた。
脳裏にあるのは只一つ、
先ほどまで空を疾走していた感動だけが残っている。
(四肢で………風を絡め、大気を踏みしめるように―――!)
ふわっと、耀の身体が翻った。
慣性を殺すような緩慢な動きはやがて
彼女の落下速度を衰えさせ、
遂には湖畔に触れることなく飛翔したのだ。
「・・・・・・なっ」
その場にいた全員が絶句した。
先ほどまでそんな素振りを見せなかった耀が、
湖畔の上で風を纏って浮いているのだ。
そして驚くことはもう1つ。
「よ、よかった…
飛ばされたときはもうヒヤヒヤしたよ……」
「大助も…浮いている……」
耀の隣にはいつのまにか大助が立っていた
風を纏い浮いている耀とは違い
大助はそこに「地面」があるように立っているのだ
「まぁ、春日部さんとは違うやり方だけどね」
「そう…なんだ…」
聞きたいことはあった
だけど下にいる仲間に心配かけたくないと降りることに
ふわふわと泳ぐように不慣れな飛翔を見せる耀に、
呆れたように笑う十六夜が近づいた。
「やっぱりな。お前のギフトって、
他の生き物の特性を手に入れる類だったんだな」
軽薄な笑みに、むっとしたような声音で耀が返す。
「………違う。これは友達になった証。
けど、いつから知ってたの?」
「ただの推測。お前黒ウサギと出会った時に
“風上に立たれたら分かる”とか言ってたろ。
そんな芸当は人間にはできない。だから春日部のギフトは
他種とコミュニケーションをとるわけじゃなく、
他種のギフトを何らかの形で手に入れたん じゃないか……
……と推察したんだが、それだけじゃなさそうだな。
あの速度で耐えられる生物は地球上にいないだろうし?」
そのやり取りの中、いまだ空中にいた大助は
いきなり足場を無くしたように重力落下し
地面にたどり着いた瞬間にピタッと止まった
まるで最初からそこにいたように
衝撃や突風やなにもかも「発生」していないのだ
何もなかったように歩いてくる大助に対して
誰もが言葉を出せずにいた。
それはそうだ、耀を追いかけるために空に浮かんだこと
グリフォンの背中に跨がりびくともしていなかったこと
それだけでも異質で異常
まぁ、仕方ないと苦笑いする大助に、
「ありがとう大助。」
「うん、なんのこと?」
「大助にしがみ付いていたとき手が暖かった。
何かしてくれたの??」
「あ、あぁ。
春日部さんの手から腕にかけて周囲の気温を「止めたんだ」。」
それはつまり気温がずっと一定で保たれるということ
性質も状態をすべてを止めて留める
そうすることにより耀の手は悴むことはなかった
「それが大助のギフトなの。」
「うんまぁね。」
「スゴいね、大助のギフト」
「春日部さんのギフトもね。」
……なんだこのラブラブな空間は……
と、全員ツッコミしたかったが
二人の貢献者には少しはと、そのままに…