問題児達と時の人が異世界から来るそうですよ? 作:ガイドライン
4つの不可視のギフトを手に入れた
十六夜・ジン・大助・耀は、白亜の宮殿の最奥、最上階に着く。
最奥に天井はなく、まるで闘技場のように簡素な造りだった。
「よかった…皆さん……」
最上階で待っていた黒ウサギは安堵したように
四人の姿を確かめてため息を漏らす。
眼前に開けた闘技場の上空を見上げると、
見下ろす人影があった。
「――――ふん。
ホントに使えない奴ら。
今回の一件でまとめて粛清しないと」
空に浮かぶ人影には、確かに翼があった。
膝までを覆うロングブーツから、光り輝く対の翼が。
バサッと翼が羽ばたく。
たった一度の羽ばたきでルイオスは風を追い抜き、
落下速度の数十倍の勢いで十六夜達の前に降り立った。
「なにはともあれ、ようこそ白亜の宮殿・最上階へ。
ゲームマスターとして相手をしましょう。
………あれ、この台詞をいうのってはじめてかも」
不適に笑うルイオス
その表情にイラつきを覚えた大助は
「これは僕がいうことでもないかもしれないけど
自分の仲間を使えないなんていうべきではないよ。
全ては君のために戦ったこと、それをそんな言い方…」
「うるさいよ。
本当に君のいうことじゃない、ってかバカじゃないの」
小馬鹿にする言い方をしたルイオスは
また天へ、壁の上まで飛び上がり
首にかかったチョーカーを外し、
付属している装飾を掲げた
「低俗なやつら相手に僕が直接手を出すなんてありえない。
それこそありえないが僕の敗北はそのまま
゙ペルセウズの敗北になる。
そこまでリスクを負うような決闘じゃないだろう」
ルイオスの掲げたギフトが光り始める。
星の光のようにも見間違う光の波は、
強弱を付けながら一つ一つ封印を解いていく。
光が一層強くなり、ルイオスは獰猛な表情で呼んだ
「目覚めろ―――゙アルゴールの魔王゙!!」
土煙の中からルイオスと体中に拘束具と捕縛用のベルトを巻き、
乱れた灰色の髪の女が現れる。
そして女は褐色の光を放つ。
「ra、GYAAAAAaaaaaaa!!」
「な、なんて絶叫を」
「避けろ黒ウサギ!」
えっ、と硬直する黒ウサギ
十六夜は黒ウサギとジンを抱き抱えるように飛び退いた
危険を察知した耀はすでにその場を脱し
大助は未だにその場から動かない
直後、空から巨大な岩塊が山のように落下してきたのだ
その岩塊は空に存在する雲であり、それが石化して落ちてきた
「どうした、怖くて動けないのか!!」
その場から動かない大助をルイオスは
恐怖で動かないと思っているようだ
だけど、それは違う。
「動かなくていいだけ、掌握完了。」
大助を潰そうとした岩塊は、その頭をギリギリで止まり
周りの岩塊もすべて同じタイミングで停止した
「なっ!!?」
「ほら返してあげるよ。」
そういって瞬間に岩塊はルイオスに向かって飛んでいく
飛び回るルイオスに迫る岩塊
そしてその間にアルゴールが入り
ルイオスを岩塊を素手で破壊する
そんなやり取りのなか、十六夜とジンは
「どうする?例の作戦は止めておくか?」
「十六夜さん、僕らにはまだ貴方がいます。
貴方が本当に魔王に打ち勝てる人材だというなら
―――この舞台で、僕たちにそれを証明してください」
「OK。よく見てな御チビ」
最後にぐしゃぐしゃと髪を撫でてから前に出る
「おい大助、選手交代だ。
そいつは俺がやる。」
「なら絶対に勝てよ。」
「はっ!!
誰に言ってやがる」
「十六夜様にだよ。」
大助は十六夜に近づきハイタッチを交す
ジンと黒ウサギ、そして耀達の前に大助が立つ
まるで大きな盾が、皆を守ってくれるように
「ごめんね春日部さん。
勝手に十六夜に任せちゃって」
「ううん、いいよ。
その代わりに大助に穴埋めしてもらうから」
「……それで許してくれるなら。」
「さぁ、それはどうかな。」
そんな会話をしている間に
十六夜はルイオスやアルゴールに対して
圧倒的な力の差にルイオスは
「アルゴール! 宮殿の悪魔化を許可する! やつを殺せ!」
「RaAAaaa!!! LaAAAA!!!!」
謳うような不協和音が世界に響く。
途端に白亜の宮殿は黒く染まり、
壁は生き物のように脈を打つ
宮殿全域にまで広がった黒い染みから
蛇の形を模した石柱が数多に襲う
「もう生きて帰さないッ!
この宮殿はアルゴールの力で生まれた新たな怪物だ!
貴様にはもはや足場一つ許されていない!
貴様らの相手は魔王とその宮殿の怪物そのもの!
このギフトゲームの舞台に、
貴様らの逃げ場は無いものと知れッ!!!」
変幻する魔宮は白亜の外壁を、柱を、
蛇蝎の如き姿に変えて襲い掛かり、
十六夜の体を覆う。
千の蛇に飲み込まれた十六夜は、
その中心でボソリと呟いた。
「―――――………そうかい。
つまり、この宮殿ごと壊せばいいんだな?」
「「「「え?」」」」
味方である大助達にも訳がわからず、
その言葉に嫌な予感がした。
十六夜は無造作に上げた拳を、
黒く染まった魔宮に向かって降り下ろした。
千の蛇蝎は一斉に砕け、十六夜の周囲から霧散する
直後に宮殿全域が震え、闘技場が崩壊し、
瓦礫は四階を巻き込んで三階まで落下した
「………馬鹿な………
どういう事なんだ??
奴の拳は、山河を打ち砕くほどの力があるのか!?」
上空で怒りとも恐怖ともいえる叫び上げるルイオス
だが、それはまだ足りなかった。
崩壊した場所に立っている姿を見たからだ
空中に浮くギフトがあることは知っている
だけどそれはもう空中に浮いているとは思えない
空中に立っている大助の下
落下したはずの瓦礫が全て空中で止まっている
「おい、十六夜!!!
ここには僕達以外にも人がいるんだぞ!!!!」
「ハッ、なに言ってやがる。
お前がいるからやったんだよ。」
「本当に性格悪いぞ。」
「最高の誉め言葉だ」
アハハと笑いながら十六夜は
「おい、ゲームマスター。
これでネタ切れってわけじゃないよな?」
「…………っ…………!」
もはやありえないとしかいえない。
十六夜についてもそうだが
問題はもう一人といってもいい
力ならまだ分かる、スピードならまだ分かる。
だけどこれはなんだ、何なんだあれは…
空中に立っているのは理解しても
無数の瓦礫を、大小、上下左右、
いろんな場所や大きさの違う岩塊を
全て、まるで、絵のように動かない岩塊は……
ここまで一方的に押されるなんてと
しばし悔しそうに表情を歪めていたルイオスは
――スッと真顔に戻る。
そして極めつけに凶悪な笑顔を浮かべ、
「もういい。終わらせろ、アルゴール」
星霊・アルゴールは謳うような不協和音と共に、褐色の光を放つ
まず向けられたのは大助はため息をつきながら
「どうやら停止(終わる)のは君みたいだね。」
その瞬間、ルイオスは何かを見た
ほんの一瞬だが確かに大助の背後に何かを見た
そしてその一瞬と同じ時に褐色の光が
石化のギフトが全て
「消え去った」のだ
まるでなにも最初からなかったように
放たれた褐色の光はそこには無い
ルイオスは恐怖で体が震えそうな所を必死に押さえ
その恐怖を消し去ろうと大声で叫びながら
今度は十六夜に向かって放つ
褐色の光に包まれた十六夜は、
真正面からその瞳を捉え―――
「――――――――………カッ。
ゲームマスターが、今さら狡いことしてんじゃねえ!!!」
褐色の光を、踏み潰した。
…………比喩は無い。
十六夜の一撃でガラス細工のように砕け散り、
影も形もなく吹き飛んだのだ
「ば、馬鹿な!?」
「せ、星霊のギフトを無効化――いえ、破壊した!?」
「あり得ません!
あれだけの身体能力を持ちながら、ギフトを破壊するなんて!?」
ギフトを無効化することは珍しくない
だが十六夜はギフトを一つしか持っていなかった
なのに天地を砕くギフトと、ギフトを砕く力両立するなど
そんな魂は、絶対にありえないはずなのだ。
そしてもう一つ。
十六夜の行為に驚き忘れていたが
その前の出来事は同じようにありえなかった。
十六夜のようにギフトを無効化したなら分かるが
あれはそんなものではない。
なにも触らず、何も動かさずに、その場から消えた
動きが速すぎて見えなかったとか、気づかなかったでもない
ただ褐色の光を見つめていただけ、それだけだった。
もしもそれが現実に存在するなら……
………一体どのようにして防げばいいのか……
茫然とするルイオスに対して黒ウサギは勝敗を決めようとした
だが、黒ウサギが宣言する前に十六夜は
凶悪な笑みでルイオスを追い立てた
「ああ、そうだ。
もしこのままゲームで負けたら……
お前達の旗印。どうなるか分かっているだろうな?」
「な、何?」
「旗印を盾にして即座にもう一度ゲームを申し込む、
――――そうだなぁ。次はお前達の名前を戴こうか」
ルイオスの顔から一気に血の気が引いた
「その二つを手に入れた後、ペルセウスが
箱庭で永遠に活動できないように名も、旗印も、
徹底して貶め続けてやる。
たとえお前達が怒ろうが泣こうが喚こうが、
コミュニティの存続そのものが出来ないぐらい徹底的に。徹底的にだ。
………まあ、それでも縋りついちまうのが
コミュニティってものらしいけど?
だからこそ貶めがいがあるってもんだよな?」
「や、やめろ……!」
「そうか。嫌か。
――――ならもう方法は一つしかないよな?」
「来いよ、ペルセウス。
命懸けで―――俺を楽しませろ」
自ら招いた組織の危機に直面したルイオスは、
覚悟を決めて叫んだ
「負けない……負けられない、負けてたまるか!!
やつを倒すぞ、アルゴオォォォル!!」
輝く翼と灰色の翼が羽ばたく。
コミュニティの為、敗北覚悟で二人は駆けるのだった。