問題児達と時の人が異世界から来るそうですよ?   作:ガイドライン

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黒ウサギとノーネームと作戦会議

―――境界壁・舞台区画。

大祭運営本陣営、大広間。

 

黄昏時の夕陽に染まる舞台区画の歩廊は

今や人一人いない。

赤いガラスの歩廊も閑古鳥が鳴き、

一週間前までの賑わいがうそのようだ。

尖塔群の影も傾き、陰る宮殿の大広間に

集まった人員の数は僅か500程

 

一週間前に屈服を強制された者や、

ジャックなどの『出展物枠』には

参戦資格がない事が判明し

病魔に冒されていないメンバーを集めたのだが

それでも全体の一割未満である

 

ざわつく衆人の前に現れたサンドラは、

不安を掻き消すような凜然とした声で話す

 

 

 

「今回のゲームの行動方針が決まりました。

動ける参加者にはそれぞれ

重要な役割を果たしていただきます。

ご清聴ください……マンドラ兄様。お願いします」

 

 

 

傍に控えていたマンドラは軍服を正し、

参加者側の行動方針を決める書状を読み上げた

 

 

 

「其の一。

三体の悪魔ばサラマンドラ゙と

ジン=ラッセル率いる゙ノーネーム゙が戦う

其の二。

その他の者は、各所に配置された130枚の

ステンドグラスの捜索。

其の三。

発見した者は指揮者に指示を仰ぎ、

ルールに従って破壊、もしくは保護すること」

 

 

「ありがとうございます。

―――以上が、参加者側の方針です。

魔王とのラストゲーム、

気を引き締めて戦いに臨んで下さい」

 

 

 

おおと雄叫びが上がる。

ゲーム再開の間際ではあったが、

クリアに向けて明確な方針が

出来たことで士気が上がったのだろう

 

病魔に蝕まれている者もいるが、

そんな事はいってられない。

魔王のゲームに勝つために、

参加者は一斉に行動を開始する。

 

 

 

 

 

一方、黒ウサギは宮殿の上から舞台区画を憤慨していた

街のシンボルでもあった

巨大なペンダントランプの破片が散乱し、

まだ片付けられていない屋上から

尖塔群を独り見つめ、両手を胸に当てる。

その手は、微かだが震えていた。

 

 

「………………っ、」

「どうしたんだ黒ウサギ?」

 

 

 

ひゃっ!

と不意の声にウサ耳と尻尾を跳ねさせて驚く。

そして胸元を見て二度驚く。

気が付けば十六夜の手が背後から、

脇の下を通って胸に伸びていたのだ。

 

 

 

「な、何をやっているのですかこのお馬鹿様ッ!」

「胸を揉もうとしてるんだぜ、黒ウサギさん」

 

 

伸びる魔の手。大急ぎで逃げる黒ウサギ。

 

 

「も、もう!

十六夜さんのそういうエッチなところは

宜しくないと思いますっ!」

 

「ハッ、何を言う。

古来、『前屈みのむっつりスケベより、

胸を張ったオープンエロであれ!』という格言が」

 

 

「ありませんッ!」

「あります」

「断固ありませんッ!!!」

 

 

「なにやってるんだお前ら……」

 

 

 

この二人をやり取りを遠い目で見ている大助

これからギフトゲームが始まるというのに

本当になにやってるんだか……

 

はぁ、とため息をつき屋根の上に腰を下ろすと

十六夜は少し離れた場所に座り黒ウサギに問う

 

 

 

「………それで?

何を思いつめたような顔をしてたんだ?」

 

 

 

へ?っと質問に一転、黒ウサギの言葉が詰まる

見られていた事を気恥ずかしく思った黒ウサギは

ウサ耳をほんのり赤くしてそっぽを向く

 

 

「べ、別に何でもありませんっ

ゲーム開始を前に、武者震いしていただけでございます」

 

「ふぅん?

俺はてっきり、人生初の大舞台に緊張で

震えていたんだと思ったが?」

 

 

 

ニヤニヤと笑いながら十六夜が指摘すると、

ぐぬぬと黙りこむ黒ウサギ。

彼女達゙箱庭の貴族゙は、゙審判権限゙によって

ギフトゲームの参加に制限がある

余程の機会に恵まれない限り、

ギフトゲームに参戦するという事はありえないだろう

 

十六夜の指摘は的を射てはいたが……

黒ウサギが気鬱な理由は其処になかった

 

 

 

「た、確かに緊張していないと言えば嘘になります。

しかし我々゙月の兎゙は帝釈天の眷属

いざ戦いになれば、後はこの身に流れる

血脈が自然と戦いに順応するでしょう」

 

「ほう? じゃ手が震えていたのは別の事だと?」

 

 

茶化す十六夜だが、黒ウサギの表情は硬い

瞳とウサ耳を伏せ、黒ウサギは思いつめた様に

胸の内を吐露する。

 

 

「実は、コミュニティのことと……

捕まっている飛鳥さんのことを、考えてました。」

 

「そうか……そうだよね

……黒ウサギも不安だよね…」

 

 

「はい、負ければコミュニティは事実上の壊滅

あの地に子供達だけ残されることになります

それを思うとどうしても不安なのです。

 

ですがこの箱庭では珍しい話ではありません

それはそれで諦めのつく話なのです。

 

…むしろ黒ウサギが申し訳なく思っているのは、

飛鳥さんと耀さんの事でございます」

 

 

 

何処か冷めた声音の黒ウサギは、

ふっと遠い目をして問う

 

 

「十六夜さんは、白夜叉様の忠告を覚えていますか?」

 

「忠告?」

 

「飛鳥さんと耀さんに向けられた言葉です。

『魔王のゲームの前に、力を付けろ。

お前達の力では――魔王のゲームを生き残れない』と

 

黒ウサギは今日までその忠告を軽んじ、

皆さんの溢れる可能性に眼が眩んでいたのです

 

 

……゙打倒魔王゙を掲げると聞いた時

黒ウサギは皆さんの頼もしさに胸が震えました。

しかしだからこそ!

先の先まで見据えた計画を立てねばいけなかったのに!

この神仏が集う箱庭で生まれ育った黒ウサギだからこそ

教えられることがもっとあったはず!

なのに、魔王と対峙するまで

計画も立てずに安穏と過ごし、その結果……!」

 

 

不意に、情けなさで泣きそうになった。

コミュニティの中心は黒ウサギだと

いってくれた彼らの心を

蔑ろにしたと言っても過言ではない

 

それを見て聞いていた大助は

ポケットからハンカチを取り出して黒ウサギに渡す

 

 

 

「もういいよ黒ウサギ

君だけのせいでもない、春日部さんと久遠さんもだ

それにそれを知っていた僕や十六夜だって同じ

一人で背負わなくてもいいんだよ」

 

 

「………大助さん…」

 

 

 

涙を拭き黒ウサギは顔を上げ、

ウサ耳を伸ばし、真っ直ぐに十六夜に向き合う

 

 

「………十六夜さん。

一つ、お願いがございます。聞いてもらえますか?」

 

「聞くだけなら自由だな。……何だ?」

 

「魔王の相手は、この黒ウサギに任せては

いただけないでしょうか?」

 

 

真摯さに、静かな怒りを込めて

黒ウサギは十六夜に頭を下げる

 

 

「十六夜さんが魔王とのゲームを

心待ちにしていたことは承知しております

しかしどうしても……黒ウサギは、

魔王に一矢報いてやらねば気が済みません」

 

 

ザワッと黒ウサギの髪が闘志で戦慄く

黒い髪は淡い緋色の光に包まれ、

軍神の眷属に相応しいオーラが全身を包む

十六夜はそんな黒ウサギを一瞥し――クッと喉で笑った

 

 

 

「勝算は?」

 

「あります。

いえ、むしろ最高の相性とも言えるギフトを

黒ウサギは所持しております。

たとえ相打つ事になろうとも、

必ずや魔王の首を―――」

 

 

「なら却下だ」

 

 

即決を出す十六夜

慌てて言い返そうとする黒ウサギの唇を指で押さえ

呆れたように笑う

 

 

 

「悲観しすぎだ黒ウサギ。

お前が考えているほど状況は悪くない

連中の目的を忘れたか?

『優秀な人材を出来るだけ多く手に入れたい』

それが奴等の狙い。

なら必然的に奴等の行動は

タイムオーバー狙いの消極的な時間稼ぎになる

………そして、それが奴等の隙になる」

 

 

 

ハッと黒ウサギも気が付いた様に息を呑む

 

 

「連中は自分が倒されないようにしつつ、

ステンドグラスも守らなきゃいけない。

しかし防戦ってのは必然的に数が必要になる

なら連中は自然と、バラけて行動するはず」

 

「そこを各個撃破……でございますか?」

 

「そう。ハハッ、聡いのはポイント高いぜ黒ウサギ」

 

 

笑って黒ウサギのウサ耳を引き寄せ

 

 

「まず、サンドラと黒ウサギで

゙黒死斑の魔王゙を確実に抑えて

風の精霊シルフは大助が倒すか良ければ奪い取る」

 

「間違ってはないけど他に言い方ないのか…」

 

 

「その間に俺とレティシアが

ヴェーザーとラッテンを倒す

主力が集結したと同時に、

黒ウサギの切り札でトドメを刺す

――――必勝策としてはこれが最良だろ」

 

 

 

十六夜の具体的な作戦に感嘆する黒ウサギは

同時に驚いたように瞳を瞬かせた

 

 

「た、確かに、必勝の布石でしょう。

しかし十六夜さんは……それでいいのですか?」

 

「別に構わねえよ。

魔王と戦う機会はまた別に来る

今回は特別に譲ってやる。

 

それにだ、゙黒死斑の魔王゙と同化しているシルフを

どうにかして切り離さないといけない。

それは俺がやってみたいと思ったが

大助の方がうまくやれるようだからな

時間をかけるわけにはいかない

精霊には精霊にやってもらう方がいいわけだ」

 

 

「とうとう精霊枠に入ったのかよ僕は…」

 

 

ニヤリと黒ウサギに笑いかけながら十六夜は

 

 

「帝釈天の眷属の力って奴を、

今回は楽しませてもらうさ」

 

 

その言葉に黒ウサギも力強く返す

 

 

「了解です。

帝釈天様によって月に導かれだ月の兎゙の力

とくと御覧くださいまし」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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