問題児達と時の人が異世界から来るそうですよ?   作:ガイドライン

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ヘッドホンと"境界門"

─────翌朝。出発直前になっても、十六夜は本拠の前に現れなかった。

初日から参加する飛鳥は日傘を片手に遠出用に鞄を隣に置いている。真っ赤なドレスコートは今日も鮮やかに映え、凛とした彼女の佇まいを優雅に引き立てている。

 

 

「十六夜君、まだ見つけられないの? 夜通し探したのでしょう?」

 

「YES。子供たちも総動員して探しているのですが………うう。そろそろ出ないと間に合わないです」

 

 

いつも何時ものミニスカートにガーターソックスを着込んだら黒ウサギは、ハラハラしながら十六夜を待っている。隣で待っているジンも同様だ。

 

 

「…………あ、来ましたよ!」

 

 

ジンが声をあげる。しかし十六夜の頭上にはヘッドホンが無く、代わりに髪を押さえるためのヘアバンドが載せてあった。

黒ウサギは目を丸くして十六夜に問う。

 

 

「ど、どうしたんですそれ」

 

「頭の上に何かないと髪が落ち着かなくてな。それより話がある」

 

 

耀は十六夜の隣に立つと顔を見上げ、僅かに小首を傾げる。

 

 

「………本当にいいの?」

 

「仕方ねえさ。アレがないとどうにも髪の収まりが悪くてな。壊れたスクラップだが、ないと困るんだよ。ったく、こういう時使えねえんだからな大助は」

 

「一緒に探したのになんだよその言い種は!!!」

 

「時の精霊の後継者の割には役に立たない」

 

「出来ないものは出来ないんだよ!!!

現物もないのに『巻戻』は使えないのにどうしようというだ!!!!」

 

 

コントのようにやっているが他の"ノーネーム"も状況を把握して顔を見合わせる。つまり十六夜は、ヘッドホンを捜すために本拠へ残るというのだ。

耀は無表情のままパチパチと瞬きをしてからしばらく十六夜を見上げ────ふっと、小さな華が咲いたように柔らかい微笑みで十六夜に礼を述べた。

 

 

「ありがとう。十六夜の代わりに、頑張ってくるよ」

 

「おう、任せた。ついでに友達100匹ぐらい作ってこいよ。南側は幻獣が多くいるみたいだからな。俺としては、そっちの期待が大きいぜ?」

 

「ふふ、分かった」

 

 

耀は十六夜に向かって元気に手を降り、三毛猫と共に飛鳥たちの元へ駆け寄る。こうして春日部 耀、久遠 飛鳥 黒ウサギ、ジン=ラッセルと三毛猫、そして君塚 大助。計五人と一匹は本拠を後にした

本拠に残った十六夜とレティシアは小さく手を降ってそれを見送る。彼らの背中が見えなくなると、少し緊迫したような顔で十六夜を除き込んだ。

 

 

「十六夜………その、本当に良かったのか?外門利権証を手にいれてまで勝ち取った順番を、こんなにあっさりと手放して……ヘッドホンなら私たちが、」

 

「出てこねえよ。これだけ捜しても出てこないってことは、隠した本人しか分からない場所にあるんだろう」

 

 

レティシアの表情が一層緊迫する

く口には出さなかったが、彼女も同じことを思っていたのだろう。

十六夜は肩を竦ませて苦笑いを浮かべた

 

 

「俺が外したのは風呂に入っている時だけ。ヘッドホンが一人で何処かに行くはすがねえだろう?それとも何か?付喪神でも憑いたってのか?それならまあ、それで儲けもんだが」

 

「それは………しかし、一体誰が」

 

「さあ?状況証拠として一番怪しいのは春日部だったが……アイツはそういう事が出来る奴じゃない。そう判断したから、先に行かせたんだしな。それにだ、アイツにもそれとなく探らせてみたが屋敷にはないことだけは分かったからな」

 

「それは………大助に調べさせたのか?」

 

「ああ、空間掌握である場所以外を徹底的にな。だが見つからなかったんだ。屋敷の外にあるか「今移動しているか」だ」

 

「なっ!!!!??それは!!!!!」

 

「あぁ、仲間の部屋以外を全て調べて出てこなかったんだ。その考えを持つのは当たり前じゃねえか 。アイツはしつこく違う言っていたがな」

 

「そ、そこまで分かっていて何故……」

 

「ほっとけほっとけ。そのうち出頭するだろう。」

 

「しかし………」

 

「いいじゃねえか、仲間を信じるだからよ。ったくアイツに毒されてきたか俺も………くそが」

 

 

嫌がるように言っているが顔は嬉しそうな顔に見えた

そうだ。信じればいい。簡単なことだった。何もなくヘッドホンをただ隠すなどありえないなら、きっとそれには理由がある。なら、信じて待ってみよう。

と、そのあと十六夜の故郷の話があるのだが、それはまた別のお話で。

 

 

 

………………………………………………………………

 

 

 

 

──────二一0五三八0外門。噴水広場前。

"境界門(アストラルゲート)"の起動は定期に行われる。個人での使用は緊急の時しか出来ない為、起動時間には行商目的のコミュニティも一斉に集まってくる。一人につき"サウザンドアイズ"発行の金貨一枚というのは最下層のコミュニティにとって大きな出費だが、それでも需要が有るのはやはり、箱庭の都市の交通には欠かせないギフトだからだろう。

しばらくして門前にちらほらとそれらしい人影が見え始めたころ。

飛鳥達は門柱に刻まれた虎の彫像を凝視し、溜め息を吐いた。

 

 

「この収穫祭から帰ってきたら、いの一番にこの彫像を取り除かないと」

 

「ま、まあまあ。それはコミュニティの備蓄が十分になってからでも、」

 

「あら、何を言っているの黒ウサギ。この門はこれからジン君を売り出すために重要な拠点になるのよ。先行投資の意味でも、ます彼の全身をモチーフにした彫像と肖像画を」

 

「お願いですからやめてください!」

 

 

しジンが青くなって叫ぶ。いくらなんでもそれは恥ずかしすぎた。飛鳥は残念そうに溜め息を吐き、

 

 

「じゃあ…………黒ウサギを売り出しましょう」

 

「何で黒ウサギを売り出すんですかっ!」

 

 

スパン、と軽めにハリセンでツッコミを入れる。飛鳥はむぅっと口を尖らせた。隣で小首を傾げていた耀は、

 

 

「じゃあ…………黒ウサギを売りに出そう」

 

「何で黒ウサギを売るんですかああああああ!!!」

 

 

十六夜が欠けたところで二人が問題児であることに変わりない。万事同じ調子の二人に溜め息を吐いたとき、一人いないことに気づく黒ウサギ

いつもならこの二人を止めるか軽く乗ってくるかしてくる黒ウサギにとっても安定剤のような大助がどういうわけか会話に入ってこないのだ。キョロキョロと周りを見渡すと絶句するような事が起きていた。

 

 

「とりあえず虎の彫像は「元に戻した」から次に「黒ウサギの彫像」を作ればいいのかな?」

 

「貴方様が一番何をしているのですかああああああああああああ!!!!!!!」

 

 

いつの間にか虎の彫像があった所は元の門柱になっており、すでに黒ウサギの彫像を彫ろうと大まかな型が出来上がっている

 

 

「いや、完成図と材料と工程さえ分かれば「先送」で一気に現物が出来るんだけど……」

 

「な、なにやら物凄いギフトだと分かりましたが……そんなギフトをこんなくだらないことに使わないでください!!!!!」

 

「なるほどね。つまり黒ウサギは私たちの案に反対というわけね」

 

「仕方ないよ、黒ウサギだから」

 

「納得いかない気がしますが……理解してくれたならそれで、」

 

「「黒ウサギとリーダーの二人の彫像を作って」」

 

「はい、了解」

 

「「止めてくださいいいいいいいいぃぃぃぃ!!!!!!!」」

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