問題児達と時の人が異世界から来るそうですよ?   作:ガイドライン

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アンダーウッドとグリフォン

「わ、…………!」

「きゃ……………!」

 

 

ビュゥ、と丘陸に吹き込んだ冷たい風に悲鳴を上げる耀と飛鳥。多分に水を含んだ風に驚きながらも、吹き抜けた先に風景に息を呑んだ。

 

 

「す…………凄い! なんて巨大な水樹………!?」

 

 

丘陸に立つ外門を出た耀達は、すぐに眼下を覗き込む。彼女達の瞳に飛び込んだのは、樹の根が網目模様に張り巡らされた地下都市と、清涼とした飛沫の舞う水舞台だった。

遠目でも確認出来る程に巨軀(きょく)の水樹は、トリトニスの滝に通じる河川を跨ぐ形で聳え、数多に枝分かれした太い幹から滝のような水を放出している。

水を生む大樹。"ノーネーム"の水樹は此処で生まれた苗木なのだ。

 

 

「飛鳥、下! 水樹から流れた滝の先に。水晶の水路がある!」

 

 

耀は今まで出したことが無い様な歓声で飛鳥の袖を引く。

巨軀の水樹から溢れた水は幹を通して都市へ落下し、水晶で彩られた水路を通過して街中を勢い良く駆け廻っている。大樹の根は地下都市を覆うように網目模様で伸びており、その隙間を縫うようにして作られた水路は、加工された翠色の水晶でできている。

巨軀の水樹と、河川の隣を掘り下げて作られた地下都市。これらの二つを総じて"アンダーウッド"と呼ぶのだ。

 

 

(…………あら、あの水路の水晶………?)

 

 

飛鳥は水晶の輝きを見て首を傾げる。記憶違いでなければ、北側でも同じようなものを見た気がした。

 

 

(あの水晶………翠色のガラス? 確か北側でも、)

 

「飛鳥、上!」

 

 

えっ、と今度は上を見上げる。上下に忙しないとも思ったが、直ぐに考えが変わった。遥か空の上に、何十羽という角の生えた鳥が飛んでいたからだ。唖然と見上げる飛鳥とは対照的に、耀は熱っぽい声を上げながら鳥の群れを見つめている。

 

 

「角が生えた鳥………しかもあれ、鹿の角だ。聞いたことも見たこともない鳥だよ。やっぱり幻獣なのかな? 黒ウサギは知っている?」

 

「え? え、ええまあ…………」

 

「ホント? 何て言う幻獣なの? ちょっと見て来てもいい?」

 

 

珍しく熱い視線を向ける耀。黒ウサギが困ったようにしていると、旋風と共に懐かしい声が掛かった。

 

 

『友よ、待っていたぞ。ようこそ我が故郷へ』

 

 

巨大な翼で激しい旋風を巻き上げて現れたのは、"サウザンドアイズ"のグリフォンだった。嘴のある巨大な頭を寄せると、耀も応えたようにグリフォンの喉仏を優しく撫で上げた。

 

 

「久しぶり。此処が故郷だったんだ」

 

『ああ。収穫祭で行われるバザーには"サウザンドアイズ"も参加するらしい。私も護衛の戦車(チャリオット)を引いてやってきたのだ』

 

 

見れば彼の背中には以前より立派な鋼の鞍と手綱が装備されている。契約している騎手と共にきたのだろう。

グリフォンは黒ウサギ建ちにも視線を向け、翼を畳み前足を折る。

 

 

『"箱庭の貴族"と友の友よ。お前達も久しいな』

 

「YES! おお久しぶりなのです!」

 

「お、お久しぶり………でいいのかしら、ジン君?」

 

「き、きっと合ってますよ」

 

 

言葉の分からない飛鳥とジンはその場の空気でとりあえずお辞儀をする。

しかしもう一人この場にいる大助の声が聞こえない。耀達が大助の方に視線を向けると大助は未だに巨軀の水樹をじっと眺めていた。グリフォンとの出会いの時も世界が変わったとき感動で笑っていたが、まさか周りの声も聞こえなくなるほど感動しているなんて……

 

 

「えぇーと……大助さん?」

 

「………………………」

 

「うわっ。今まで見たことの無い笑顔!!?」

 

 

すると大助の影からシルフが現れて風を纏った右手で大助の頭を思いっきり叩いた。もちろん一時停止でダメージはないのだがその主に対する振るまいにレイが現れて

 

 

「何してるのシルフ!!!」

 

「だってアスカ姉様、こうしないと気づかないと思って……」

 

「貴女は昔から思い付きでやるんだから……」

 

「……性格は……変わらない……」

 

 

いつの間にかカルマも姿を現して三体の精霊が大助を取り囲んで会話している。この光景には流石のグリフォンも驚き

 

 

『なっ!!!? 上位精霊のアスカ様にシャドウ様!!!それに四大のシルフ様まで!!!!??一体あの小僧は何者なんだ‼!!!』

 

「あぁ……あまり気にしない方がいいと思います。大助さんは規格外ですので」

 

「うん、気にしたら負け」

 

 

二人の言葉に更なる追及はしなかった。すでにあの時から不思議な者だと思っていた。しかしこんな風に見せられると無理にでも実感させられた

と、どうやら精霊が現れたことに気づいた大助は一言二言レイ達と話した後耀達の方に振り向いて

 

 

「うおっ!!グリフォン!!!!」

 

『………気にしない方がよさそうだな……』

 

「「うん。」」

 

「な、なに??なに二人で納得してるの??」

 

 

大助の問いに答えるつもりはないのだろう。直ぐ様に話題を変えた。

 

 

『此処から街までは距離がある。南側は野生区画というものが設けられているからな。東と北よりも道中は気を付けねばならん。もし良ければ、私の背で送っていこう』

 

「本当でございますか!?」

 

「あれ?もしかして無視されてる??」

 

 

喜びの声を上げる黒ウサギと、言葉が分からず首を傾げる飛鳥とジン、それと無視されて軽く凹んでいる大助。耀はグリフォンから一歩距離を置き、深々と頭を下げた。

 

 

「ありがとう。よかったら、名前を聞いていい?」

 

『無論だ。私は騎手より"グリー"と呼ばれている。友もそう呼んでくれ』

 

「うん。私も耀でいいよ。それでこっちが飛鳥とジン。それと無視されて凹んでいるのが大助」

 

『分かった。友は耀で、友の友が飛鳥とジン、凹んでいるのが大助だな』

 

「言葉は分からないけど凹んでいるのが僕で認識したのだけは分かったよ!!!!!!」

 

 

………………………………………………………………………………

 

 

飛鳥・ジン・黒ウサギ・三毛猫はグリーの背中に乗り、自らの力で飛べる耀は大助は正体不明の鳥について質問をした

ペリュドン、人間を殺す言わば殺人種。先天的に影に呪いを持ち、己の姿とは違った影を写している。そして解呪方法が"人間を殺す"こと。生存本能以外で"人を殺す"という理由を持たされたペリュドンは典型的な"怪物(モンスター)"

 

 

『再三の警告に従わぬなら………耀には今晩、ペリュドンの串焼きを馳走することになるな』

 

 

ニヤリ、と大きな嘴で笑うグリー。

翼を羽ばたかせて旋風を巻き起こすと、巨大な鉤爪を振り上げて獅子の足で大地を蹴った。

 

 

「わ、わわ、」

 

 

"空を踏みしめて走る"と称されたグリフォンの四肢は、瞬く間に外門から遠退いて行く。耀は慌てて毛皮を掴み並列飛行をするが、彼の速度に付いていくのは生半可な苦労ではない。

それでも何とか付いてくる耀に、グリーは称賛の言葉を投げかけた。

 

 

『やるな。全力の半分ほどしか速度は出していないが、二ヶ月足らずで私に付いてくるとは』

 

「う、うん。黒ウサギが飛行を手助けするギフトをくれたから」

 

「YES! 耀さんのブーツには補助のため、風天のサンスクリットが刻まれております!」

 

 

そしてその隣ではシルフの風により悠々と空を飛び、風圧などは一時停止により何ともなく、まるでフワッと宙に浮いている状態で高速移動しているのだ

 

 

「グリーだったかしら。これが全力の半分ほどなら大したことないわね」

 

『返す言葉もありませんシルフ様』

 

「えっ、シルフってグリーの言葉分かるの??」

 

「もちろんですご主人様、精霊ですから。私ならご主人様に言葉を聞き取れるように出来ますが」

 

「本当に?じゃお願いするよ」

 

 

シルフの風によりグリーの発せられる声を、振動を、人間の言葉になるように変換させることが出来る。それにより動物の言葉が分かるようになったのだが

 

 

『お、おじゅぅうおおぉおおおッ!!!も、も少し、も少し速度落としてと旦那につたぅえてぇええええええええええ!!!』

 

 

ギニャアアアアア! と叫んでいるようしか聞こえないが、割と本気で命が危険だった。

耀は慌てて減速するように頼む

 

 

「うわぁ……始めて聞いた動物の言葉がこれか……」

 

『そんなこという前に助けろ!!!!』

 

「悪い悪い。ほら一時停止かけるから」

 

「大助、三毛猫の言葉が分かるの!?」

 

「うん、シルフが聞こえるようにしてくれて」

 

「うれしい、大助にも分かってもらえて」

 

 

耀は自分が思ったことを言葉にしただけなのだが、どんな風に受け取ったのか顔を真っ赤にして視線を外すように顔を横に向けた

耀はその行動が何故なのか分からず首を傾げ、黒ウサギ達は苦笑しながら二人を見守っていた。

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