(今回は指揮官側からの○○です。)
「指揮官~?これでいいの~?」
本日の任務が全て終了し、各員が寮舎へと戻った夕暮れ時――。
白露は何故か彼と一対一で、研修室で居残りをさせられていた。
「……あぁ。」
彼の眼前では、床に手を付き、四つん這いの姿勢になった白露が居る。
顔をこちらに向けている為、彼の目線からは見えないが――後ろに回れば、その短いスカートの中が露わになっていることだろう。
「じゃあ次。両手でピースサインを作って上目遣いに俺を見てくれ。」
「んしょっ……。こう?」
律儀に四つん這いの姿勢は守ったまま、手の替わりに両肘を床に付き、ダブルピースを作って彼を見上げる白露。
「じゃあ次は立ち上がって………服を脱いでくれ。」
「は~い。よっ……とと。んしょ……。」
彼の指示に従い立ち上がった白露は、上着の裾に手を掛けそのまま捲り上げ……
「はいストップ!ストップ!ストップだ白露!脱がなくていい!」
彼の唐突な静止に、ほえ?と首を傾げて、捲りかけた上着から手を放した。
視線の先の彼は――項垂れて眉間に指を宛て、悩ましげに首を横に振っていた。
「……あのな、白露。何か変だと思わなかったか?」
彼に問われ、何かを間違ったことに気付いた白露は、
「う~~~ん………。」
たっぷり十数秒程熟考した後、
「……あ。もしかしてスカートが先だったの?」
との返答をして――彼を更にうんざり顔にさせるのだった。
「あ・の・なぁ! 俺言ったよな!? 駆逐艦としての適性検査をするって!!」
「え? うん。覚えてるよ~?」
「だったら! なんで四つん這いとかダブルピースとか服脱ぐとかって指示が出てくんだよ! おかしいだろ!? 疑えよ!?」
そう。
今日、彼が白露を呼び出したのは――白露のこの"天然っぷり"を矯正する為だ。
白露は少々度の過ぎた"天然"なのだ。
道に迷うのは日常茶飯事、出撃時には魚雷を誤発射したり、ブレーキが効かず敵陣に突っ込んだり――。
挙句に――本日の"駆逐艦適性検査"を騙った出鱈目な指示に対しても、一切の疑い無く従ってしまう始末だ。
「え~…? でも指揮官が言ったんだよ~?」
不満気な顔の白露に、彼はまた頭を抱える。
「いや、だからな…? 俺が白露を騙してたらどうすんだ? その……"そーゆー事"されちゃうぞ?」
「……? "そーゆー事"って??」
問い返された彼は、答えられず顔を赤らめる。
「と、とにかく! 白露はもうちょっと人を疑わないとだな! いつかヒドイ目に合うってことだ!」
誤魔化すように白露に告げる彼。
しかし当の白露は、彼の言葉がまだピンと来ていないような表情である。
「ん~、よくわかんないけど……でもたぶん、大丈夫だよ~?」
「……その自信はどこから来るんだよ。」
余裕顔の白露に彼が問うと、白露はいつもの柔和な笑顔で微笑む。
「えっとね。私時々迷子になるでしょ?」
時々じゃなくていつもだろ、との言葉を彼は言いかけて飲み込む。
「でもね、ひとつだけ自慢があってね。"この人について行けば大丈夫"ってヒトがわかるの。」
そう言って、白露は胸を張る。
「指揮官はね。今まで会った中でいちばん、"大丈夫"って思うヒトだから……だから大丈夫だよ~。」
ニコッと笑って告げる白露に、彼は一瞬――胸が高鳴るのを感じた。
――そうなのだ。
正直に言ってしまえば――彼は白露に惹かれていた。
最初は手のかかる白露に辟易したりもした。
だがどんなに失敗してもめげない彼女に、彼は次第に惹かれていった。
天然で、危なっかしくて、それでも呆れる程に前向きな彼女に――。
故に、白露の先程の言葉――
『指揮官について行けば大丈夫。』
それは、彼にとってこの上無く嬉しいものであった。
だが――
「……俺が道を間違えたらどうすんだよ。」
彼は白露に問う。
自分だって、完璧な人間じゃない。
白露が自分の背を頼りにしてくれて、もし自分が間違ったら――?
自分だけでなく、自分が大切に思う白露までも不幸にしてしまうのではないか――?
そんな心中の不安を、彼は言葉にせずにはいられなかった。
大切に思うからこそ――
本当に自分が、彼女を守っていけるのかとの葛藤を、彼はずっと抱えていた。
答えの出ない"葛藤"を――。
「その時は……」
だが、白露は――
「その時は……私も一緒に間違えるよ~。迷子になっても、指揮官と一緒なら平気だもん♪」
――実にあっけらかんと、
至極当然と言わんばかりに、彼の"葛藤"に――"答え"を出した。
おそらく白露自身は、そこまで考えての言葉では無いのだろう。
だが、それこそが彼が――ずっと抱えていた葛藤の、答えなのだろう。
『一緒なら平気。』
たったそれだけ。
だが、きっと彼だけでは永遠に出せなかった"答え"――。
そんな白露の言葉に、彼はもはや――
「……ぷっ、ハハハっ!」
笑う他無かった。
「え~? なんで笑うの~?」
頬を膨らませて抗議する白露。
その頭を、彼は少々乱暴に、わしわしと撫でる。
「わかったよ。そんじゃ……白露がしっかりするまでは、前を歩いてやるよ。」
そう言って背を向け、個室を出て行こうとする彼。
白露には、その言葉の深い意味までは理解出来なかったが――
「……うんっ♪」
なんだか嬉しい気持ちになって、彼の背中を追いかけ、個室を後にしたのだった。
「えへへ~♪ じゃあ私がしっかりしなかったら、ずっと一緒だね~♪」
「いや、しっかりはしてくれよ。」
「えぇ~?」
お読み頂きありがとうございます。
お久しぶりです。
年末にすっごいお気に入り登録増えててびっくりしました。
このまま更新無しじゃ流石に申し訳無いので、とりあえず一作上げます。
(復活ってわけじゃないですが、一応完結済みも取っときます。)
マイナーなコが多くなるかもですが、よろしければまた暇つぶしにでも読んで頂ければと思います。
それでは~。