妖精と呼ばれた傭兵   作:vitman

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vitmanです よろしくお願いします。

初投稿です 読んでみてください。



第0章 Nationaler Abbruchkrieg -国家解体戦争-
崩壊の始まり


 今から話す物語。それは、まだ世界に"国"があった頃、そして、彼がまだ若かった頃の話だ。

 鴉達は皆戦場を自由に駆け抜け、争いは止まず、世界は平和とは程遠かったが、それでも今と比べればかなり活気に満ちた世界だった。

 

 だが、そんな時代は突然終わる。国家に対して兵器を供給していた企業群が世界に牙を剥いたのだった。

 私も彼もそれを見て、鴉の時代は終わるのだと確信した。

 彼は伝説の(レイヴン)だった。当然、国家から依頼を受け、企業に立ち向かったさ。私?私は彼についていっただけのただの鴉だよ...。

 

 

 

 

 

 

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 私は最初余裕を持っていた。国家が自らを守るために集めたレイヴンは、誰もが知っているような腕利きばかり。非合法の鴉達の闘技場アリーナで、Aランク以上に入っている者が殆どで、作戦を聞くために集まったブリーフィングルームでは少しばかりピリピリしたような雰囲気が流れていた。

 そんな雰囲気を除けば、凄腕のレイヴンに囲まれた私は安堵していたのだ。彼らが居るのなら、自分が戦果を上げられなくとも企業を蹴散らしてくれるだろうと。自慢ではないが、私もAランク帯に入っていたものの、ランクはその中では最底辺で、実力は中の上で留まる程度であった。

 

 だが、今にして考えてみればどう考えてもおかしい依頼だった。それに、名のある傭兵はおろか、企業側に雇わせないように最底辺や、ランク外のレイヴンまで雇っていたのだ。つまり、どういう事かというと、企業側は自社の専属である、要するにアリーナランクにそもそも入っていない、非力なACしか所属していないという事だ。その時は国家が企業を叩き潰す気でいるとしか思っていなかったが、これは暗に、企業がこの戦争に際して何かしらの新兵器を持っているという事の現れだったのかもしれない。

 そのブリーフィングで出された依頼は、企業の一つであるレイレナード社の本社を強襲するため、部隊を集めている基地の防衛だった。

 誰かがその任務を鼻で笑った。

 

「これだけの戦力がいて、攻めないのか」

 

 というのが、言葉に出されなくても伝わってきた。

 

 私達はその日の内に輸送機で、防衛目標の拠点へと向かった。機内では誰もが黙々と機内食を食べながら、作戦地域のマップを熟読していた。そして、普段はライバルの私達は、この場所はここを撃てる。だとか、ここを押さえないと後々めんどくさいとかいう、情報共有を行った。普段はライバルでも、今は同じ一つのチームだという事が、改めて確認できた。

 三日間かけて移動した先の駐屯地では、既に戦闘準備が済んでいた。

 私は自分の機体を再チェックするために、自分に割り振られたガレージへと足を運んだ。

 

 私や、ランク1のあの伝説のレイヴンなどが使っているACは、少し他のと趣が違った。通常のACは、企業側が自分の会社の設計思想に合わせて作った、所謂量産機である。改めての設計は困難を極めるし、部品の組み換えどころか、武装ですら他の企業の物はアタッチメントの互換性がないため使えない。それに対して、私などが使っているのは、武装やパーツが自由に組み替えできる仕様の特殊AC。いわゆるハイ・エンド・アーマードコアであった。

 企業が不便だと感じたのか、それとも傭兵などの要望に応えてくれたのかは分からないが、兎に角、ミッションごとにパーツを組み替えて使えるという発想は新しかった。勿論、費用はノーマル・ACとは比較にならないほど高価だったが、戦場を渡り歩いて暮らす我々レイヴンは、報酬はたんまりと貰っても、その使い道がまるでなかった。だから、持ち金を殆ど使って、販売されたパーツ全てを買う者もいた。

 

 そのガレージには、あの伝説のレイヴンもいた。私と彼は、同じチームとして戦う事も多いレイヴンだった―というのも、オペレーターが双方とも同じ人だったのだ―からか、同じガレージに割り振られていたのだ。彼の機体は軽装甲高機動で、出力が最大まで強化されたレーザーブレードを装備していた。所謂近接戦闘機である。対して私は、中量二脚の中距離戦闘機であった。まさしく、コンビを組むにはうってつけの機体である。

 この依頼について、私は彼がどう思っているかが気になっていた。だから、普段はあまり話さない彼につい、話しかけてしまった。

 

「あなたは、この依頼についてどう思っているんですか?」

 

 余りにも説明不足な問いだった。もしも彼が高貴な貴族のような性格をしていたなら、この問いは無視して立ち去っていただろう。だが、彼は傭兵にしてはかなり優しい性格の持ち主であった。

 

「そうだな…怪しい、としか言いようがない。」

 

 やっぱりかぁ。と私は呟く。これまでも訳アリの依頼はいくつもあった。勿論私も、彼も両方だ。罠のような依頼もあった。だが、そういう場合は大体、「雇い主側で修理費、弾薬費は受け持ちます」だとか、「報酬は前払いです」だとか「一生遊んで暮らせるだけの報酬額です」なんていう決まり文句が並んでいる。

 なのだが、今回はそのどれもが当てはまらない。依頼主が国家だからなのか?いやいや、そんな筈がない。なにせ、これは世界の主導権が企業に移るかどうかの瀬戸際なのだ。国家群にそんな余裕はないはずである。

 

「だが、俺は今回の依頼はまだ安心できるし、安全だと確証を得られる」

 

 彼の話は続いた。彼が言うには、ここに低ランクレイヴンがいないのはなぜかという話であった。

 

「普通に考えれば、基地の防衛なんてそこらへんのレイヴンでもできる。大きな声では言えないが、俺や君なんかの強いレイヴンは普通、最前線に立たされたり、この駐屯地にいる部隊が襲撃する前に行う、所謂掃除をさせられるのがセオリーだ」

 

「確かに、少し考えてみれば、そうですね。いつもはそうだ」

 

「だが今回俺達はここの防衛。ということは、俺達の代わりに掃除に行った連中がいるって事だ」

 

 話を纏めると、さっきのブリーフィングでみんながピリピリしていたのは、ライバル達と協力しなければならないことではなく、先に基地を強襲する連中に手柄を取られるという事に腹を立てていたという事だった。

 だが、彼は腹を立てるどころか、むしろ行きたいと思う方が恐ろしいと言っていた。

 

「連中、低ランクの傭兵達を捨て駒にして、敵の新兵器を調査させる気だ」

 

 私は、自分とはまた異なった意見を聞き、なるほどと思った。だが、それを認めるのが空恐ろしくて、それ以降の話を聞く気はすっかり消え去ってしまった。私は興味深い話をしてくれた彼に礼を言い、基地内にある食堂へと足を運んだ。この恐怖は、なぜだか我慢できなくなったのだ。今まで感じたことがない、死の恐怖だろう。

 

 もし仮に、真実に辿り着いたとしても、意味はないだろう。答えが分かろうとも、彼も私も20を過ぎたぐらいのまだ若造で、いくら伝説のレイヴンと恐れられた彼も、政治的な力には無力だから、どうする事もできないのだから。

 

 

 

 

 

 ●  ⑨  ●

 

 

 

 

 

 あれから三日間経った。敵の襲撃はなく、大きな事件と言えば食堂に一匹のゴキブリが見つかり、基地内の全職員でゴキブリを基地から駆除した事くらいだ。なんにせよ、戦争状態とは思えないほどに、平和的だった。

 だが、敵とは異なる問題は幾つも転がっていた。

 

「おい、聞いたか?欧州の方にいた部隊なんだが…全滅したって噂だ」

 

「欧州?そこって元々企業の力が強いから、置いてた部隊は少ないんじゃなかったのか?」

 

「だとしても三個師団はあったはずだ。それがものの3機のACに、それもたった数十分で片付けられたって話なんだ」

 

「おいおい、冗談はよせよ。仮に、だ。もしできたとしても、相手はAC。確かに強いが、相手は三個師団。ブレードを左武装にしてるとしても、そこまでの継戦能力はないはず。それに、ダメージの蓄積だってあるはずだ。それはどう説明する」

 

「知らねぇよ。だけど、そんな話が広まってる。結構有名な話だぜ。西アジアも、ロシアでも同じような事が起きているらしいしな」

 

 それは、噂という名の伝染病だった。多少誇張はあるだろうが、世界各地で―特に企業の本社付近で―起きた戦闘で、国連軍の部隊が立て続けに全滅しているというものだった。奇妙なことに、その噂にはどれも共通しているものがあった。

 曰く、敵は少数のACを用いている。曰く、敵ACは恐ろしい程の強さである。曰く、部隊はACによって短時間で全滅している。というものだ。

 確かに、ACなら同じような事は可能だ。だが、数個師団を相手にとって、数機だけで可能かと言われると少し厳しいものがある。特に弾薬が切れる。おまけに燃料もだ。そもそも、チマチマと装甲を削られ続け、撃破されるかもしれないのだ。そう考えると、相手は余程の手慣れか、ACを超える新兵器という事になる。

 

 

 その四日後の事だった。この基地に集められた低ランクレイヴンが出撃した。目標は北に600kmほど進んだ場所にある、レイレナード社の本社である。隣のガレージにいたレイヴンは「俺の分も取っとけよ!」と、ACを積んだ輸送機が次々と離陸していくのを見上げながら叫んでいた。

 彼らは戻ってこなかった。あの時彼から聞いた通り、幼き鴉達は捨て駒にされたのだろう。

 

 

 

 ●  ⑨  ●

 

 

 

「ミッションの内容を説明する。目標は、レイレナード社本社エグザウィルだ。だが、君達が直接エグザウィルを破壊する必要は全くない。傭兵諸君には、このエグザウィルにある対空設備、そして防衛戦力のAC部隊を撃破してもらいたい」

 

 低ランクレイヴン達が散っていった僅か二日後にブリーフィングは行われた。余りにも無茶な作戦だった。

 輸送機により高高度からACを投下。パラシュート降下をした後は防衛戦力を撃破。対空設備を8割以上破壊し、脱出ポイントまで退避。その後、国連軍所属の航空部隊により爆撃を行うとの事だった。

 勿論、質問タイムは荒れた。

 

「一つ、質問をよろしいか?」

 

「はい、なんでしょうか」

 

 荒れに荒れた質問タイムを終わらせるため、作戦を告げた国連軍の対応者に対し立ち上がったのは、独立傭兵の一人、ソラールだった。ローゼンタール製のパーツを多く使ったACを使う彼は、普段の冷静さを少し欠いた様子で質問を行った。

 

「一昨日敵の基地を強襲したあの部隊。それらが撃破された原因はなんだ?それが分からない限り出撃は断らせてもらう」

 

「そうですね。説明を怠っていました。彼らが撃破されたのは、新型のACによるものと思われます。写真だけですが、どうぞ」

 

 そういって、担当者は写真をプロジェクターで正面に写した。見えたのは、確かにACの形をしたものだった。だが、見た目はどのパーツを使ったACにも当てはまらない。

 鋭いとがった形が特徴の頭部、排熱機構を兼ねているのだろうか、肩は大型で、細身の胴体と見比べるとアンバランスだった。腕も足もなんだか華奢で、機動戦特化機であるのは明らかだった。

 

「一機だけだったのか?」

 

「いいえ、もう一機いました。こちらです」

 

 出されたのは同系統の機体であった。ただ違うのは武装。あちらは両手にライフルを持ったタイプであった―その武装構成もレイヴンからすればありえない―のだが、こちらはレーザーブレードを両手に装備していた。それですらおかしいというのに、見る限り射撃武装と呼べるものは背中に背負ったレーザーキャノンらしきものだけだ。肩武装もなにか付けてはいるが、恐らくジャマーの類だろう。やはりこちらも高機動機であった。

 それまで文句を言っていたレイヴンも、こう現物を見せられてはなにも言えなかった。

 

 

 ○

 

 

 ブリーフィングが終わり、食堂へと向かった私だったが、今にも逃げ出したい気持ちになっていた。多分顔は青くなっていることだろう。

 敵機の情報は、あの噂話と酷似していた。たった数機で師団を壊滅もしくは全滅させられる戦力を持ったAC。それは勿論、所要時間まで恐ろしいものだった。全てのACが撃破されるまで10分はかからなかったというのだ。あの写真を撮影した偵察機が、上空で見ていたというのだからそうなのだろう。

 ここまで聞いた私は、あの噂が噂ではないように思えて仕方がなかったのだ。ここまで必死に生きてきたのに、こんな所で死ぬのはいやだという気持ちでいっぱいだった。

 だが、依頼を受けてしまったからには出撃しないわけにはいかない。もし逃げ出せば、生き残れはするだろうが、この後の信頼がないからだ。食欲は湧かなかったが、エネルギーを摂取すべく出された食事を全て食べた。心なしか、料理がいつもよりも豪勢な気がした。

 

 

 次の日の朝。私はガレージにいた。といっても、この間のようにACの確認ではなく、今回は装備変更のために来た。今回の任務は基地強襲と捉えていいだろう。だとしたら、できるだけ瞬間火力が高く、かつ弾薬が多い方がいい。GA製の大型マシンガンを右武装に選択。左手には予備武装としてブレードを装備。例の新型対策として、燃費が良く、ブレードレンジが長いものにしておいた。背中武装は定番のミサイルを左に、拠点破壊用にグレネードランチャーを右に乗せる。そして、肩にはエクステンション装備として、緊急時用の近接散弾兵器を積んだ。イクバール製のこの武装は、普段は外付け装甲のように肩についているが、いざ機動させれば機体前方に向けて多量の散弾をばらまくというものだった。射程が短すぎて、普段は使わないし使えないが、直感で載せたほうがいいという風に感じた。鴉の直感だ。

 機体自体は変えず、FCSだけ変えておいた。普段より少しだけロックオン範囲が広いものだ。できる限り新型に対抗する策は用意した。あとは運と腕に任せるのみ、だ。

 

 間もなくして、装備変更を終えた私の機体が輸送機に運ばれた。ACを輸送するために特化したこの輸送機も、そして私の機体も、そのいずれもが企業によって作られ、今まさにその企業に向けて飛び立とうとしていると思うと、中々感慨深いものがあった。

 輸送機の割り振りはガレージによってわけられていたらしい。私と彼は同じ輸送機で、ACのコックピットに座りながら時間の経過を待っていた。

 超高高度での移動だ。ACを密かにセーブモードで起動して防弾ガラスから外を見たってつまらないだろう。一時間の間を待つのが彼もつまらなかったのか、通信で話しかけてきた。

 

「君は、あの新型をどう思う」

 

 かなり抽象的な質問だった。まだ全容も分かっていない相手についての質問。こちらもなんと答えていいか少し困り、結局微妙な返答になってしまった。

 

「どう思うって言われても、そうですね、恐ろしい相手、とか?」

 

「そうか、君もそうか。それと、お互いもっと気楽に話さないか?歳もいくつも離れていないし、君とはもっと親しい、戦友ではなく友人として話したい」

 

 きっと、彼が本当に言いたかったのはこっちだったのだろう。私の返答に対し、半笑い気味に答え、そして私の言葉遣いについて言ってきた。彼よりもレイヴンランクは8つも下で、なおかつ年齢も2つばかし低かった私は、半分条件反射のように敬語ないし丁寧語を使っていた。彼も私も東洋人で、日本語と英語が共通言語だったのも大きいだろう。

 かれこれ4年間同じ戦場を飛び回っていた私達は、この大きな死を覚悟した戦場で、初めて友人として話したのだ。

 

 短い一時間が過ぎ、輸送機が少し高度を下げたと感じた時、出撃を知らせる無線が機内に響いた。

 

「これより、作戦を開始する。各機、降下を開始せよ」

 

 これに続き、オペレーターから降下指示が来る。それを合図に、まず彼が降下し、続いて私の(AC)が宙へと身を躍らせた。

 月明りに照らされた雲を抜けた先にあるのは、雪が降る神秘的な、そして、鴉を撃ち落とそうとする、青色のレーザー光に満ちた世界であった。




反省はしている。後悔はしていない。

ついでに皆さん。伝説のレイヴンって、もう誰だかお分かりですよね…?
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