妖精と呼ばれた傭兵   作:vitman

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遅くなってすまない…課題テストが強敵でした

とりあえず、AC4編の構成とFa編への導入は8割決まったのでガンガンいけると思います


最初の発表

 とある街へ向かう輸送機が二機、上空を飛ぶ。両方ともに同じ造りではあるが、それぞれに描かれているエンブレムが異なり、中身が企業のものでないという事も明らかだった。

 片方は、聖職者をモチーフにした、清らかなイメージのエンブレム。彼自身を救った、フィオナ・イェルネフェルトを意識したのだろうか。鴉だった時代の、血に飢えた目をした鴉のエンブレムの面影はどこにもない。

 そしてもう一つの輸送機の胴にも、やはりエンブレムがあった。そのエンブレムには、旗を持った少女が描かれていた。その旗には、赤い十字架と刀が描かれていた。ジャンヌダルクを思わせるそれは、同時に、格闘戦を主体とする、彼の戦闘スタイルも見えるものだった。

 

 そんな機内には、その輸送機のものと同じエンブレムが右肩に描かれたネクストが、隔離される形で、輸送コンテナ内に格納されていた。

 レイレナード社の標準機『03-AALIYAH』をベースに、()()()()()()()()()に適合するようにカスタマイズされたその機体は、元の濃紺から、黒ベースに赤のアクセントが加えられたカラーリングに変わっていた。

 ジャンヌダルクとは真逆のイメージの漆黒と、燃えるように赤い色は、復讐と、なにより鴉を思わせるカラーだった。

 武装は、左腕に突撃ライフル。右腕にレーザーブレードという、一般的なネクストの装備の仕方と真逆であった。

 ネクストは設計思想上は、ノーマルACの延長線上にあるため、それと同じく左腕にブレードを装備するのが一般的であり、常識でもある。

 

 そんな、少し、いやかなり変わった機体に搭乗しているリンクス『シャルル』は、コックピット内で、今回の依頼内容を説明されていた。

 

 

 

 ____________

 

 

 

 

 ネクストのコックピットは、だいぶ変わった造りになっている。

 まずノーマルACと大きく異なるものとして、モニターがないのだ。比喩表現等ではなく、本当に全く無い。ではどうやって視認するのかというと、これまたビックリ。AMSを通じて網膜投影するのだ。

 だから、シミュレーションを使って訓練をする機器にも、スクリーンはない。最初こそ戸惑いがあったが、使えば分かる。これは便利だ。

 そしてもうひとつだが、シートにプラグのようなものがある。

 これこそがAMSである。事前に手術を受け、うなじ付近にそれの差し込み口を設ける。そこにプラグを差し込むことで、機体と脳とでデータのやり取りを行う、らしい。細かい事はわからなかった。

 

 勿論、音声を発するスピーカーも設置されておらず、脳に音声データを直接流し込む事で聞き取るらしい。

 

『ミッション内容を説明します』

 

 フィオナさんの声が、SF小説のテレパシーのように、脳内で響くように聞こえてくる。ノイズ等が一切ない、透き通った音声だ。聞き間違える事がないだけでも、戦場では嬉しい。

 

『今回のミッションは、開発都市グリフォンを占領している、武装組織の排除です。敵は複数のノーマルを含めた中規模の部隊で、依頼主側からは、『殲滅』を目標に設定されています。』

『ですが、相手がいくら通常兵器とはいえ、その数は多く、流石に一機のネクストによる殲滅は困難です。よって、第一陣として、正面からの突破をオーエン機が行い、敵の後方より第二陣として、シャルル機が殲滅を行ってください』

 

 実際には、一機でも全滅させることは可能なのだろうが、私の機体も、彼の機体も継戦能力に優れたものではないため、それに配慮した作戦なのだろう。

 しかも、このミッションは私達がリンクスとなってからの初依頼であり、試金石である。失敗は許されないのだ。

 

『作戦内容は以上です。気を付けて』

 

 隣を飛行している輸送機のハッチが開く音が聞こえ、スラスターを噴かす音が聞こえた。オーエンが降下したのだろう。私も準備(主に心の)をする。

 レイヴンの時の初任務もこんな気持ちだっただろうか?

 敵と相対するのに緊張し、自分の機体の調子が気になって仕方がなかった。任務中もひたすら、撃破した敵の安否を気にしていたし、途中で敵対するACが来ない事を祈っていた。

 それを思い出し、少し緊張がほぐれた。自分の情けない過去を思い出し、笑いがこみあげてきたのだ。

 

『作戦領域に到着した。投下カウントダウンに入る』

 

 だが、今は戦う理由も、持っている力も、共に戦う者も違う。だから、私は負けない。負けられない。

 彼女に追いつくため。彼女と再び剣を交えるために。

 

『降下』

 

 輸送機のハッチが開かれた。機体の中にいるというのに、ノーマルの時とは違う雰囲気に私は呑まれた。

 風が吹くのを感じ、街並みの風景が鮮明に見える。まるで、自分の目で見ているかのように。

 

「これが…ネクスト」

 

 機体が地球の重力に引かれ、落下していく。下には街が広がり、コンクリートで作られたビルがいくつも地上から生えている。向こうの方では爆発による光が微かに見え、オーエンがもう戦闘を開始している事がよく分かる。

 そんな風に、戦場を眺めている時だった。真下から光が見え、機体を光が掠った。

 

『敵、対空砲火です。プライマルアーマーを展開し、防御しつつ降下してください』

 

 フィオナさんからの通信にあるように、敵の対空射撃である事は確かだった。だが、思っていたよりも数が多い。これではPAを展開しても、すぐに削りきられてしまうのが明らかだ。

 いかに優秀な防御力を発揮するPAでも、継続して攻撃を浴び続ければそれは破られてしまう。しかも、ネクストの基礎的な防御力はノーマルACよりも下手すれば下回るので、PAが無ければただの紙装甲である。

 

 といって、むざむざ撃破されるつもりはない。別に、ネクストが攻撃から身を守る方法はPAだけではない。

 戦闘モードに移行したネクストに、AMSからイメージを送る。送りながら、ペダルと操縦桿を用いて姿勢制御等を行う。大まかな操作を手動で、細かい動きをAMSから送ったイメージで補正する感じで操縦するのがいいらしい。

 ネクストがノーマルACに対して大きく上回っているのは、PAの有無だけではなく、その機動性だ。聞いた話では、重量機でさえ、ノーマルの高機動機に勝るとも劣らない運動性を有しているという。

 その機動力を持って、レーザー等の当たると痛いものは避けるのだ。

 そして、もう一つ。

 

 右腕に装備したレーザーブレード『07-MOONLIGHT』を展開する。極厚の刀身がその姿を現し、紫色の光の塊となって、機体の表面を照らす。

 スラスターで避けるのと同時に、ブレードの刃で、できる限り銃弾を溶かして消そうという魂胆だ。エネルギーの消費量は馬鹿にならないし、そもそも効果があるのか分からない策ではあるが、しないのとでは、明らかに被弾率に差が生まれるだろう。事実、少数ではあるが、ブレードに当たり、消滅している弾が視認できている。

 そうこうしているうちに、高度は下がりマシンガンの射程圏内に入った。右腕のレーザーブレードを閉じ、左腕に装備しているレイレナード製マシンガン『HITMAN』を構える。目標は対空砲を装備した地上車輌。

 トリガーを引く。と、驚異的な連射速度で銃口から弾が発射され、瞬く間に地上車輌部隊が蜂の巣になった。が、同時に私は驚いた。

 AMSによるバックアップがある事を予想してか、ノーマルACのそれよりも連射速度はかなり高く、しかも反動もこの連射速度に対してかなり小さめだ。これは運用の幅が大きく広がる。

 

 着地をスムーズに終え、目の前を確認する。敵地のど真ん中に入り込んだので、当たり前といってはあれだが、周りを見る限り、どこもかしこも敵だらけだ。

 

『フェイズ1の終了を確認しました。敵の殲滅に移ってください』

 

「了解」

 

 まずは対処がめんどくさい戦闘ヘリからだ。またしてもマシンガンを使い、弾を横なぎにばら撒いていく。FCSによるロックオンと合わさり、すぐに周りにいたヘリは撃破されていく。

 そして同時にブレードを展開、地上部隊への攻撃に移る。戦車等はマシンガンで、ぽつぽつと見えるノーマルACにはブレードをお見舞いしていく。いかにマシンガンと言えど、戦車はほぼ真上から攻撃をうけるために自慢の装甲を活かせず、ノーマルACは、こちらの機動力に対処ができずに懐に入られ、胴体を溶かされ撃破されていく。

 

(ぬるい…)

 

 この機体の元の持ち主に追いつきたいと思っている私にしてみれば、こんなチマチマとした作業感のある戦闘は退屈といっていいもので、正直言って、三機目のノーマルを撃破した時点でだいぶ飽きがきていた。

 依頼なので最後までやり遂げる気ではいるが、兎に角、次の依頼では是非ともネクストと一戦交えてみたいものだ。

 

『敵戦力残り40%。良いペースです。このまま削りきって』

 

 前方に爆発が見えてきたところを見ると、だいぶオーエンに近づいてきたらしい。いよいよ本格的に挟み撃ちの形になってきたようで、まだまだここからが本番だ。

 残り40%の戦力ではあるが、相手が隠し玉を持っている可能性もある。油断はできない。

 ビルを盾に回り込んできたノーマルをマシンガンでいなし、同時に別のノーマルに接近し、ブレードで切り裂く。そして、いざ次の敵に向かおうと思ったその時だ。目の前にどうみても只のノーマルではない敵機を発見した。

 見た目は...そう。私達が乗っていたような、ハイエンドノーマルだ。ローゼンタール製のコアを中心に、アルドラの頭部、レオーネメカニカの腕部、レイレナードの脚部と、中々の混ぜこぜだ。武装は高衝撃の武器を腕部に装備し、背部のカルテットキャノンで一気に沈める構成か。というか、カルテットキャノンなんて使ってる奴初めて見たな。

 

 《まさか山猫が来るとは…引くわけにはいかん。我々には、なすべき事があるのだ》

 

 どうやら、ネクストの電子機器はかなり優秀なようで、相手のACの無線程度なら、楽に傍受ができるらしい。相手の話し方に覚えがない。という事は、レイヴン時代に知らない相手だという事で、やはりレイヴンは絶滅したという事なのだろう。

 

『敵、ハイエンドノーマルを確認。撃破対象です。破壊してください』

 

 ネクストではないため、あまり乗り気はしないが、依頼なら仕方ない。この機体のテストになってもらおう。

 私が向かって行くやいなや、相手は右腕のショットガンと左腕のハンドガンを構えた。どちらも高衝撃の武器で、格闘戦を仕掛けてくる相手に対しては、それで引き撃ちを仕掛ければ十中八九勝てるような構成だ。

 だが、それは相手が同じノーマルならという話。ネクストには通用しない。

 

 相手が放ったショットガンは、左にQBする事によって80%回避し、ハンドガンは完全に避ける。攻撃が当たらず、向かってくる相手が止まらない事を理解した敵のノーマルは、完全にビビった。

 

 《これがネクストの動きなのか!?くそっ、くそっ!》

 

 OBを使ってもすぐに距離を詰められる彼は、恐慌状態に陥り、エネルギーを大幅に消費するカルテットキャノンを連射してくるだけだった。それも、ショットガン等の武装による牽制すらないために、簡単に回避する事ができてしまう。

 しっかり距離を詰めたところでブレードを展開し、右腕を大きく振り上げる。カルテットキャノンを弾薬限界まで撃っていた彼は、逃げるためのエネルギーも残っておらず、避ける事すら不可能のようだった。

 

 《嘘だろ。これが、俺の最期だって言うのか!?》

 

 右腕を振り下ろし、ACの頭部を溶かす。そのまま下に持って行き、コアを切り裂く。コックピットもしっかりと通過し、パイロットを殺す。恐らく彼は、痛みを感じる間もなく死ぬことができただろう。聞いた話では、中途半端に生き残っても、戦場に残ったコジマ粒子の汚染で死んでしまう者が多いらしい。

 だから、私は無駄な容赦はせず、しっかりと無くなるまで、斬る。

 機体を両断し終わった時には、すでにレーダーに敵を表す赤色のマーカーは存在せず、オーエンが殲滅し終えた事がすぐに分かった。彼の機体には多少の掠り傷がある程度で、無駄な被弾は一切していない事が明らかであった。

 対して私は、この目の前のノーマルACを撃破する事に目がいってしまい、PAで防ぎきれなかった分のダメージをまぁ、そこそこに貰っていた。目の前の事だけに向かっているだけでは、この先生きのこれないので、反省しないといけない。

 

『敵全滅を確認。任務完了よ。お疲れ様』

 

 フィオナさんからもそう言われ、私達二人は予定されていた回収ポイントへと足を運んだ。場所は、ビルの少ない街の郊外で、輸送機が着陸しやすい場所を選んだようだ。

 兎に角、初の任務は楽に終えたようだ。エミールからも、初戦にしては中々と言われたので、問題はないのだろう。

 これで、傭兵稼業がしっかりできるだけの地盤ができてくれればいいのだが...いや、私が言ってもそれは仕方のない事だ。果報は寝て待てとも言うし、次の依頼が来るまではとりあえず、のんびりとシミュレーターで訓練をしておくとしよう。

 

 

 

 ____________

 

 

 

 ~GA本社《ビックボックス内会議室~

 

 

「見たかね?あの戦闘記録を」

 

 広い部屋で、モニターを見ていた何人かの人物の一人が口を開いた。彼はネクスト開発部門の重鎮で、他企業に比べて大きく戦力拡充が遅れているGAに、若干どころか、かなりの不満を抱いていた。

 

「あぁ、見たとも。流石、ネクストと言うべきだな。あの程度の戦力ならば、二機どころか一機でも十分そうじゃないか」

 

 最初に口を開いた男に対し、丁度反対側に座っている男が皮肉っぷりに言葉を発する。この男がこうまで皮肉を込めるのは、彼が通常兵器部門を担当している責任者であるからで、ネクストが開発されてからというもの、企業内での権力が著しく低下しているためであった。

 

「そんな事言われないでも分かっている!問題は、他の企業のネクストが、ここまでの高いポテンシャルを秘めているということなのだ」

 

 ネクスト開発部門は重要視されながらも、他企業と比べ、GAが安価で誰でも扱えるノーマルACを未だに信頼している事もあり、予算が少ないのであった。具体的に言えば、アクアビットやレイレナードと比べるとおよそ40%ほど少ない予算でGAは研究している。

 勿論、そんな低予算で素晴らしく画期的なものができるはずもなく、現状GAが開発できたものは、旧世代のノーマルACの意思を継いだかのような、ガチガチの重装甲型であり、打たれ強いとはいえ、ネクスト本来の強みである機動性はかなり低いもので、しかも、コジマ技術でも遅れを取っている事が原因で、PAもあまり強固なものとは言えないのだった。

 

「では、予算をどうぞ計画的に使って、他企業を上回る兵器を作ってくれたまえ」

 

「今のような低予算でだと!?データすら殆ど無いというのにか!?」

 

 そう、GAには機体を作るための予算も、技術力も足りなかったが、それよりも圧倒的に不足しているものとして、パイロットであるリンクスの不足があった。ネクストは歩かせるなどの単純な動きだけなら、AMS適正が無くてもできるために、()()()ネクストの開発は可能だが、複雑な動作―特に戦闘時のデータ量が圧倒的に不足していた。

 これは、国家解体戦争時にGAが投入していたリンクスが、メノ・ルーというリンクスだけであったという事実からよく分かる。

 

「とはいえ、適当な者をリンクスに持ち上げても、わが社の顔を潰すだけなのだよ」

 

 その後も何人もがネクスト開発部門の男の意見に難色を示した。何を隠そう、この会議には保守派の人間ばかりが集まっており、男と、もう一人を除き、ネクストの事を快く思っていなかった。そして、とうとう男の心が折れ、会議が終了しようとした、その時であった。

 この会議で唯一、GA本社に勤めていない人物が、手をまっすぐに挙げた。それはもう、定規で固定したかのような真っ直ぐな挙手だった。

 

「なんだね?…君は…確か…」

 

 名前を言い出せずにいた、この会議の司会役をしていた者に対して、手を挙げた中々に若い男性は、かなり低めの声で返事をした。

 

「有澤重工の有澤隆文です。今回は会議に出席できた事を光栄に思っています」

 

 丁寧な物言いだった。

 周りからは、「有澤重工というと…」「あの島国の子会社ですよ」「装甲と爆破については我々以上と自負しているあそこですか」などと、小声であったがよく分かる声で囁く声が聞こえていた。

 

「で、その有澤重工が、この重要な会議で何を言いたいのだね?」

 

「率直に言わせてもらえば、GAは、いえ、GAグループはもっとネクスト戦力の拡充をするべきです」

 

 そして、有澤隆文はネクストの重要性について約20分間熱心に語った。その話の中には、意地を捨て、リンクスを積極的に育てるべきという話も、自分もリンクスとなり戦場に出るという話もあった。

 この会議後、GA社ではAMS適正の低い者もリンクスとして育成する事が決定し、有澤重工では、ネクスト専用のパーツを開発する事が決定したとか。




GA社の会議シーンはただの私の妄想です。こんなのあってもいいかなって。

ちなみに、本作主人公のネクストには、架空の装備が付く事が決まりました。
イメージ的には現地改修型みたいなものですが
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