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端的に言うなら、オーエンは強敵である。
彼は、AMS適正の低さをもって余りある程、高い技術を駆使し、戦闘を行う。
地の利、機体特性、射程、俯角、視認範囲等々、使える全ての情報を用いて戦場を操る。しかも、自分の機体特性だけではなく、相手の素早さ等から内装までも予測して戦闘をするのだという。
正直言おう。私にはそんな事無理。できない。ていうか、この短期間の間に殆ど全てのパーツの数値を覚えきった事が驚きだ。
でも、そんな事は関係ない。今は訓練。しかも、彼は味方である。だとすれば、このシミュレーターで彼と戦い、その技術を取る勢いでぶち当たるだけだ。
別に、負けてもいい。でも、負ける前に諦めるのはダメだ。
「まずは、前を向かないとな」
何事もそこからだ。そうしないと、いつまで経っても勝てない。
メインブースターにAMSから信号を送り、巡航速度での移動を開始させる。周囲に反応は...あった。しかも、上から多数。それも、2、3個の反応ではなく、10…いや、20以上はある。
思わず上を見上げると、幾つものマイクロミサイルがこちらに向けて殺到していた。左腕のマシンガンを乱射し、自分の進路上にあるそれを破壊していく。が、流石に全てを叩き落すことは叶わず、数発を被弾するが、PAの存在もあって、支障をきたす程のものにはならない。
「弱ったなぁ」
あちこちからミサイルの着弾による爆発音がするところから察するに、私の反応を伺うために、無差別にミサイルを射出しているのだろう。彼の装備している、散布ミサイルならではの戦術だ。
ミサイルの弾道から、彼の位置も大体把握できたが、逆に、私の迎撃した方向、射撃音も彼に届いている筈。つまり、お互いがお互いの位置を知ったという事になる。
なら、どうする?出方を伺うか?そんな訳がないだろう。ビルを盾にできるルートをミニマップから予測。そして、オーエンの予想地点を算出。
この機体のFCSは、他のどんなものよりも射撃兵装のロックオン距離が短い。そして、ブレード使用時のロックオン距離が長い。だから、相手のペースになる前に、自分の得意な距離、有利な状況にする必要性がある。
それは、要するに奇襲戦法の有用性を示している。勿論、私が現在進行形で練習しているものだ。
だが、それをオーエン相手に成功したことがあるかと言われれば、答えは"No"である。
今回だって、成功する確率は低い。だが
ブースターの出力を若干上げ、作り上げたルートを走り抜ける。私がルートの半分を過ぎるまで、全く私の機体以外が発する音が無かったのが、とても不気味だった。
そしてとうとう、レーダーが彼の反応をキャッチした。距離は...そう遠くない。この機体のFCS性能を考えると、彼はもう私の事が見えているに違いない。それを前提として、それでも突撃はやめない。
更にブースターの出力を上げ、通常出力での限界の速さに到達する。ざっと、極限まで軽量高速化した、ノーマルACのOB並か、それ以上の速さ。
目の前の砂丘を一つ越え、オーエンを視認する。予想通り、彼はこちらを向いている。マシンガンとライフルを構え、迎撃態勢は整っていると言わんばかりに。
そして、距離900を切ったところで、彼が仕掛けてきた。これまでと同じように、素早く後退しながら、マシンガンとライフルを連射してくる。こちらも追いかけるが、いかにブースターの出力が高く、そこそこ軽いアリーヤタイプとはいえ、完全なる軽量機であるサラーフに追いつくのは厳しい。事実、先ほどからあまり距離は縮まっていない。
私のFCSのロックオン距離は720。対して、彼の持つFCSは900ある。つまり、今だに800近くある距離の状態では、私はロックオンが行えずに一方的に射撃されっぱなしという事だ。
『どうした、近づかないなら、そのまま撃破するが』
彼から若干挑発的な言葉が入る。近づきたいが、このまま行っても蜂の巣だ。まずは、その引き撃ちを止めさせないといけない。
別に、ロックオンしないと撃てないわけではない。ただ、当てにくいだけ。つまり、乱射して牽制に使う程度には全然使えるという事。そして、私が右背中に担いでいるプラズマキャノンは、着弾地点に一時的な電波障害を引き起こし、FCSの性能を数瞬だけ低下させられる。
これを使えば、その一瞬で近づけるはずだ。
まずはプラズマキャノンを展開。折りたたまれた銃身が展開され、元の2倍程の長さに変貌する。そして、若干ではあるが、空中に機体を浮かせる。これにより、地上を高速移動するオーエンを撃ちおろす形になった。
別に、機体に当てなくても、その周囲に当てれば効果はある。それを狙っていく。
ロックオンをしないまま、マシンガンを構え、牽制と誘導を兼ねて射撃する。ばら撒くのではなく、できるだけ私から見て右側に機体を寄らせるように。勿論、反撃も飛んできているため、そう悠長にやってはいられない。PAが分厚い機体だからといっても、ここまで長い期間喰らっているのだ。そう長くは持たない。だが、機会はしっかりと窺う。
相手はオーエン。二度同じ手が通用する相手だとは思えない。チャンスは一回だ。
マシンガンを2弾倉分丁度撃ち切った、その時。彼の機体が、丁度良くプラズマキャノンの砲身の正面にズレた。今ならやれる。
「当たれぇ!」
レーザーよりも少しばかり遅い、エネルギーの塊が、ネクストに向けて一直線に発射される。そして、私はその着弾を見るまで待機、などと生温い事はしていられず、その一発だけ撃ったプラズマキャノンをパージ、左肩のオーメル製レーダーもパージ。
ENを大量に消費していたパーツ二つを放棄した事によって、機体のエネルギーに余裕が生まれる。そのエネルギーと、貴重なPA用のコジマ粒子を使用したOBで、一気に加速、接近する。
プラズマキャノンをQBによって、直撃こそしなかったが、僅かに掠ったらしい彼の機体は、予想通りFCSに障害が発生したらしく、射撃をしてこない。恐らく、もう1秒とない間に射撃をしてくるだろうが、そんな事を気にしている場合ではない。
OB中に、適正ロックオン距離に届いた私の機体は、マシンガンを撃ちまくり、その幾つかを命中させる。その際、PAを貫通していたのを見るに、もうPAが無いのだろう。
しかし、こちらも問題が発生した。コジマ粒子が底を尽き、OBが中断されたのだ。確かに、距離は300とブレードロックオン距離にはなっている。が、相手はただの案山子ではないため、この距離で振ってもまず当たらない。が、ネクストというのは、ノーマルと違って簡単に近づくための便利な機能がある。そう、QBだ。
前方に向けQBを使用し、瞬間的に時速1000㎞/hまで加速する。一瞬とかからず目の前まで接近するこちらを見て、思わずオーエンも後ろへとQBする。だが、前方にQBするのと、後方へと下がるQBのどちらが速いかと言われれば、勿論前者だ。
私とオーエンの機体間には、OBの分も合わさって、もう100もない。ならば、あとは斬るだけだ。
『見せてみろ...お前の力を』
「届けぇぇぇ!」
機体を前傾姿勢に、ブースターと右腕に月光を最大出力にして、横に振りぬく――――が
「...躱された...?」
オーエンは、自らの機体のバランスをわざと崩し、更にバックブースターを使用して地に寝そべったのだ。そのため、斬れる面積を横にできるだけ広くしようとした真一文字斬りでは、グレイゴーストを斬る事は叶わなかったのだ。
私の機体がブレードを振りぬくまでのごく短い時間で、彼は機体を立ち上がらせ、更には硬直の間にライフルを格納していたレーザーブレードに持ち替えた。
『では、こちらの番だな』
グレイゴーストが至近距離だというのに、全速力で近づいてくる。格納できるブレードは、月光と比べれば刀身は短く、出力も弱め...だが、この至近距離で使うのなら、大した問題にはなり得ない。
(完全じゃなくていい。何かを犠牲にしてもいいから、動けるだけには、なっていてくれ)
そう念じ、右へとQBをする。機体のすぐ左にグレイゴーストは突きの要領でブレードを使い、視界を焼く。そして、同時に私の機体を…溶かさなかった。紙一重でコアまで届かなかったらしい。左腕のHITMANは破壊されたが、それでも攻撃する手段はある。
右腕の月光を再び展開し、もう一度、今度はあまり大振りにならないように逆袈裟を。それは、グレイゴーストの左腕を斬り落としたが、致命傷にはならない。
月光は再展開までの時間が少々遅い。このままでは、相手が仕掛ける間に何もできない。だが幸いにも、ロレーヌの左腕はやられていない。マシンガンは既にパージした。そして、私の機体もブレードを格納している。
左腕に格納されていたブレードが装備され、ブレードを展開する。月光よりも細く、短い、鮮やかなブルーの刀身が姿を見せる。グレイゴーストの突きに合わせて、私も同じタイミングでグレイゴーストの
お互い、左腕と右腕のそれが交差し、私のネクストは左肩が溶かされて崩れ落ち、彼は右腕を二の腕から先を失った。そして、彼はミサイル以外の武装が無くなってしまった。
私は、この戦闘三回目の月光の展開を行い、目の前のグレイゴーストに向けて振り下ろした。
『見事だな』
____________
《you win》と表示された画面の前で、私は大きく深呼吸をし、それから外に出た。
シミュレーターマシンの前で待ち構えていたのは、私より早くマシンから出て、一足先に休憩に入っているオーエン…ではなく、フィオナさんだった。ちなみにオーエンは何故か正座していた。私もすぐさま正座した。
「二人共、訓練お疲れ様」
これまで、ここまで笑顔が怖いと思った事があっただろうか。いや、ないだろう。確かに、顔はニッコリしている。が、聞けば分かる。全く声が笑っていない。素晴らしく冷淡な声で、こんな事を言うのだから恐ろしい。私達二人は何も言えない。
次いつフィオナさんが口を開くのかが恐ろしくてたまらない。
「で、私が何を言いたいか分かる?」
正直言おう。全く分からん。
私達は訓練をしていただけで、何もおかしいことはしていない。確かに、依頼が今日明日は全くないと言われたから、二人して8時間ほど(休憩や昼食は勿論摂ったが)ぶっ続けで訓練していたが…それは別にレイヴン時代でも似たような事してたから、何も問題はない…と思う。となると、全く心当たりがない。
隣のオーエンも同じ様子で、あのレイヴンの王が蒼ざめた表情でプルプルと横に首を振っていた。
「まずは一つ目!あなた達シミュレーターマシンがやっと導入できたからって、やりすぎ!いくら何でも8時間はおかしいわ」
「…レイヴン時代はこれくらい普通だったが」
「あなたねぇ…このシミュレーターは、ノーマルのと全く違うの。AMSを忘れたの?」
溜息交じりに言われたのは、AMSの負荷。確かに、ネクストで戦闘するのにAMSが必要なのに、シミュレーターにだけないのは不自然。現に、さっきまでAMSは接続してたし、AMSを通じてネクストを動かす事ができた。
でも、依頼を受けてネクストに乗った時と比べても、『脳が疲れた』という変な感覚には襲われないし、Gもかからないのだから、身体は大して疲れてない。強いて言うなら、集中してちょっと精神的に疲れたかなぁとか、目が疲れたなって思うぐらいで、任務後の倒れたくなる疲れではない。
それを告げると
「当たり前でしょ。そんな訓練なんかで実際に乗ったのと同じ疲労がでてたら、まともに訓練なんてできないじゃない」
オーエンと私は顔を見合わせて『じゃあ、大丈夫だな』というアイコンタクトで会話した。が、それを打ち砕くように、フィオナさんがまた口調を強める。
「でも、実際のネクストの40分の1程度には負荷がかかるわ。あなた達は感じてないかもしれないけど、しっかり脳は疲れてるの。それでなくても、AMSは接続するだけで精神に負荷がかかるんだから、あまり長い時間やらないの」
40分の1...つまり私達は、ネクスト戦を12分間していたっていうのか。休憩を挟みながらだったから、身体的にも精神的にも疲れをあまり認識できていないだけで、実際にはとても疲れている、と。
「以後気を付けるように。それとも、私が管理しようかしら。…とりあえず、明日は訓練ナシね。私の買い物に付き合ってもらおうかしら」
「「ハイ…」」
次の日、アナトリアコロニー内のショッピングセンターにて、一人の少女の荷物持ちをしている傭兵が目撃されたとかされてないとか。
____________
「違う、こんなものではない」
シミュレーターマシンの中で、そう怒鳴る自らの師匠を見て、真改は少々、いや、かなり動揺していた。
ネクストに搭乗して任務に向かう時も、自分の訓練に付き合い、叱ってくれる時も。いつだって彼女がこんなにも声を荒げていた事はなかった。
いや、同じレイレナード社のリンクスであるベルリオーズと、夕食のプリンを賭けてシミュレーターで勝負をして敗けた時も感情を露わにしていたが、それもここまでのものではないはずだと記憶していた。
不器用な真改は、師匠に何と言ったらいいか、分からないでいた。
時は少し前まで遡る。
上層部から、企業連合へと新しいリンクスの登録願が提出されたとの話をされ、シミュレーターマシンにそのデータを入れたと聞かされたのだ。しかも、同僚のベルリオーズは、直接話されてはいないという。つまり、何かしらアンジェに対して言うメリットがあった。という事だ。
それが気になって気になってしょうがなかったアンジェは、真改の様子を見に行くついでに、その新しいデータを見てみようと思ったのだった。
そしたらどうだ?二つある新しいリンクスのデータの中には、ピンとくるものがあるではないか。
アリーヤフレームで、月光を装備していて、メインブースターは出力特化、FCSはブレード特化なんてアセンブルは、アンジェは一機…いや、今は二機しかないのを知っている。
一機は現在彼女が乗っている『オルレア』で、もう一機は、『元オルレア』だ。その元オルレアは、世界中を任務で周っている途中、様々な地域の人々から得た情報を集めて、それでも賭けとしてだが、上層部を説得してアナトリアに送った。丁寧に、月光とFCSの使用にはパスワードも設けて。
その元オルレア-としか思えない機体-が、今このシミュレーターマシンに入っている。企業に所属はしておらず、独立傭兵として活動しているようだが、確かにアナトリアコロニーで活動しているらしい。
リンクスネームは『シャルル』機体名は『ロレーヌ』と、どちらもフランス由来らしい名前。『アンジェ』と『オルレア』という、やはりこちらもフランス由来。ここまでくると、もはや偶然とは思えない。
アンジェは、確実な証拠がない中で、この『シャルル』というリンクスが、あのレイヴンの『八咫烏』だと確信した。
そして、シミュレーターの機能を使い、このネクストとシミュレーションバトルを行った。が、結果は酷いものだった。
彼女が想像していた結果とは真逆に、何度やっても、CPU相手に簡単に勝ててしまうのだ。そう、一瞬で、早ければ30秒とかからずに。
確かに、CPUは実際の人間と比べれば弱いとは前々から言われていたし、アンジェ自身確かにそうだ。と思っていた。でもそれの範囲を遥かに超えるほどに弱かったのだ。
実際、原因と言えるものはざっくり言うと二つ程あった。
一つは、シャルルの乗るロレーヌというネクストは、お世辞にも使いやすいとは言えない。燃費が元から悪いアリーヤに、EN消費量が大変多いパーツばかり使っていれば当たり前だ。それを使えているのは、シャルルの技量あってこそなのだ。
もう一つは、データ不足が挙げられる。現在、シャルルが受けた依頼は全部で3つ。しかも、どれも簡単なものばかりで、ノーマルとしか戦闘していない。
企業にも所属していないため、企業間の親交を深めるために行う、リンクス同士のシミュレーターを用いた模擬戦行っていないため、圧倒的に彼の戦闘スタイル等のデータが足りないのだった。
そんな事が分かっていても、アンジェとしては我慢ならなかった。
自分の追い求める相手が、自分の認めた相手が、シミュレーションとはいえ、こんなに弱いのが許せなかった。
彼女は泣いた。満足した結果が得られなくて。自分の事を師匠と仰ぐ真改がそばにいるのに、それを忘れて泣いた。
そして誓った。彼に、シャルルに会おうと。
不器用な真改君は、この後アンジェの気が済むまで傍にいて、その後一杯シミュレーターバトルしてもらったんだって。ヤサシイセカイダナー
シャルル=サンはあの後プラズマキャノンを外したようです