構成は決まってるのに、疲れたまま書いてちゃ、そりゃダメですな(笑)
みんなも肺炎には気を付けようね!
閃光と妖精の最初の出会いは、どちらにとっても急で、予想外の事であった。
彼らが後にリンクス戦争を動かしていくなんて、微塵も思っていなかっただろう。
さて、どちらが勝利したかまでは記録は残っていないが…俺は妖精だと思うぜ。あんたもそう思うだろ?
___歴史研究家 ダン・モロ
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オーエンの戦場に近づく、ネクストらしき反応があるとフィオナに言われたため、輸送機から降り、待ち構えてみれば、確かにいる。純白のネクストが。
《こちら、ジョシュア・オブライエンだ。そこのネクスト機、どいてくれ》
ジョシュアと名乗った男が乗るネクストは、OBで高速移動中であり、細かな機動ができない。だから、正面に立つ私に「どけ」と言ったのだ。
だが、それでどく義理も意味もない。まして、それがオーエンの戦闘を邪魔するものであれば尚更だ。
「断る」
《………》
そう言った途端、純白のネクストは減速し始め、私の目の前にて止まった。そして、ロレーヌをまじまじと見つめた後に、ライフルをこちらに向けてきた。
《成程、そのエンブレムはマグリブではないな?》
「それがどうした」
《敵意があると見た。悪いが、死んでもらう…こちらの邪魔をされては困るのでな》
「それはこっちの台詞だ。ここは通す訳にはいかないんだ」
不思議な事に、敵―しかも相当な手慣れ―を相手しようというのに、いや、だからこそだろうか。私の気分は高揚していた。
レイヴン時代には日常茶飯事であった、お互いの任務の内容や、事情が悲劇的にも正反対のもので、戦闘になってしまう事。そう、統制された企業の下、リンクスとして行われる任務では、こんな事絶対に起こり得ない。つまりは彼もまた、同じ傭兵だ。
企業に首輪を付けられていない、独立した、孤独な傭兵。
お互いにそれが分かった途端、武器を構え、両者ともに射撃をしながら、距離を一度とった。それから、互いに相手の武器を見た途端、それと自分の距離の取り合いに戦場は変化した。
私はマシンガンを撃ちまくり、相手の移動方向を限定させながら近づき、ジョシュアはその逆で、レーザーキャノンとライフルで私の接近を許さない。ブレードを使いたい私としては、是非とも接近したいところだが、ジョシュアは、思った通りの強敵のようで、しかも中距離戦が得意なようだ。
このままでは、ブレードを振るう事すら叶わぬまま死ぬ。そう感じるほどに強い。
だが、それにしてもおかしい。何故、追いつけない?ジョシュアの機体は、確かに軽量機だ。だが、さっき戦闘したボリスビッチが乗っていた機体も同じ軽量機だった。なのに、何故だ。何故近づけない?
位置取り?地形?いや、そうではない。さっきは砂嵐があっただけで、ここと同じ砂漠だ。地理的条件は一緒。後考えられるのは、QB等の性能面だが…噴射時間などを見ても、別に特別おかしい訳でもないし、何かしらのテクニックによるものだろう。
どこかで聞いたことがあるが、アスピナ機関には、最初期のAMS被験者である『ジョシュア・オブライエン』なる人物がいるらしい。そんな変わった名前の人物がそう何人もいるとは考えにくいから、きっと私が対面している人物こそが、その『ジョシュア・オブライエン』なのだろう。だとすれば、その研究の過程で私の知らない操作方法が分かってもおかしくない。
私は僅かに唇を噛みながら、今までと同じ様に牽制を行いながら、じりじりと近づく事しかできなかった。
⑨
シャルルがイライラしながら、ジョシュアの機動の種明かしを探っている一方、ジョシュアの方はというと、こちらはこちらで焦っていた。
そもそも、ジョシュアの受けた依頼はアマジークの救援であって、こんな所で道草を食ってる場合ではないのである。しかも、そこらへんのリンクスでは手も足も出ない彼であったが、今目の前にいる相手は違った。
(近づかせたら…死ぬ)
そんな気持ちにジョシュアをさせる程に、それほどまで恐ろしいものがシャルルにはあったのだ。
戦闘行動を見て分かったが、彼の戦闘スタイルは使用している機体の特性にマッチしすぎているのだ。動きに迷いがある事から、まだネクストに慣れておらず、尚且つ自分の戦闘スタイルがまともに通じる相手と戦闘していないのだろうが、もしも自分が重量機体乗りであった時の事を考えると、背筋が凍るようであった。
アリーヤは息切れの速さの代わりに、瞬間的に軽量機をも上回る速度を持っているのだ。軽量機であるホワイトグリントに乗っていなかったら、彼の技量なら即接近、即斬であっただろう。
「近づかせはしないっ!…だが…やれるか?」
近づかせない事だけに集中する余り、ジョシュアもジョシュアで攻めきれないままだった。
ホワイトグリントは、その速度を余すことなく利用するため、できるだけ武装も軽量なものを選んでいる。つまりは、弾数が少ないのだ。このペースであれば、シャルルを撃破する前に弾切れになるのは明らかだった。
もし弾切れを起こせば、当然、左手に装備したレーザーブレードで戦わなくてはならない。それは、何が何でも避けたい。いや、避けたかった。
⑨
レーザーキャノンの砲弾が機体の横すれすれを通る最中、私は機体の残りAPを見て、余り余裕がない事に気づいた。先の戦闘から引き続きだったために、修理などがなかったためだ。
更に問題なのが、マシンガンの残弾数で、こちらはあと2マガジン分しかない。HITMANの発射レートを考えれば、ものの1分とかからずに無くなってもなんらおかしくはない。
であれば、どうにかして接近戦に持ち込みたいのだが…相手の武装を見るに、明らかに接近戦をロレーヌとし合う必要性がない。
「いや…まてよ…相手はあの武装だから、接近戦をする必要がないんだよな?」
ジョシュアの機体も、左腕にはブレードが装備されている。となれば、射撃武装を全て破壊するか、弾切れにさせれば、こちらの土俵に引きずり込む事ができるんじゃないか?わざわざ相手に有利な状態で、接近戦をしかける必要なんてなかったのだ。
なぜ今まで気づかなかったのだろうとは思うが、まぁ、ここで生きれば十分だ。
ならば、と、まずは避けるのが面倒なレーザーキャノンに目標を定める。パラパラと心地よい音が銃身から発せられ、その大半がPAによって阻まれたが、レイヴン時代は射撃メインであったシャルルならではの、マシンガンによる精密射撃をやってみせ、全弾命中をしてのけた。
しっかりと展開中のレーザーキャノンに着弾したために、それは今にも誘爆しそうなほどにバチバチと火花を散らす。
それに気が付いたジョシュアは、流石の決断の速さを見せ、素早くパージをした。その瞬間、レーザーキャノンは激しい光と共に爆発し、跡形も残らなかった。
最早私の突撃を止められる程の威力のある兵装は、ジョシュアの機体には残っていない。ライフルのダメージ程度なら、まだ耐えられるAPもPAもある。それを確認した途端、私はすぐさまOBとQBを使って、一瞬で間合いを詰めた。これに反応が出来なかったジョシュアは、私の接近を容易に許してしまう。
勿論、相手はやられないために自衛として、ブレードを装備した左腕を横なぎにしようと構える。それに対し、私もブレードを構え、こちらは縦に振り下ろす。
プラズマ波同士が干渉し合い、紫と橙色の光が視界に飛び散る。一瞬干渉し、鍔迫り合いのような状態になったが、それは僅か1秒にも満たない時間のみに留まり、程なくしてジョシュアの機体が弾かれる。レーザーブレードの出力と威力は、こちらの月光が、遥かに上だったのだ。
その隙を逃す訳もなく、そのままマシンガンを至近距離で連射し、PAを減衰、更には機体へのダメージも与える。
《くっ…強い…侮ったのは、私の方か》
体当たりのように機体をぶつけ、地面に叩き付ける。中量機の重さと速さを両立したものだからこそできる技だ。軽量機はなすすべなく倒れ、ロレーヌがマウントを取った状態になった。
右腕の月光を再び展開させ、出力を最大に。そして、そのままコックピット目がけて振り下ろし
「ゴフッ」
血を吐いた。それも、少しではない量の。次に、鼻血が出た。止まらない。止まる気配すら少しもない。
頭痛も酷い。まるでハンマーか何かで殴られているようだ。呼吸をするのもやっとな状況で、正直、息をする度に肺が痛くなる。
おまけに、頭がなんだかボンヤリして、ネクストとの接続が上手くいかないようだ。情報は送られてくるが、それの処理が脳内で追い付かない。
《…よく分からんが、好機と受け取らせてもらう》
動かない私のロレーヌを見て、チャンスと見たジョシュアは、ロレーヌのコア部分を蹴飛ばして引き剥がし、直ぐにQBで距離を取った。
私は動かないならと、半分自棄になって、自分からネクストとのAMS接続を切ると、フィオナとの通信をすぐに再開させた。
「フィオナ、機体が動かない!」
『なんですって?分かった。すぐにオーエンを向かわせます…って、シャルル…あなた』
後半になるにつれて、震えるような声でフィオナは告げた。
『今すぐにでも死にそうな程、バイタルが不安定よ…』
分かってる。自分の事だ。
「それはいい!早くオーエンに連絡してくれ。後何分持つかわからない」
オーエンの救援に来たのに、その彼に助けてもらうなんて、なんとも滑稽な話だ。たが、まぁ、それを今から言ったってしょうがない。
確か、AMS無しのネクストで戦闘行動をするには、熟練した3人以上の統率の取れたチームが必要なんだったか。
なら、一人で三人分働けば、問題ないだろう。
しっかりと操縦桿を握り、ある程度は動くことを確認する。ロックオン等は出来るようで、最低限の戦闘ならこなせそうだ。
問題は、ブレードが振れるかだが。
ペダルを踏み、操縦桿を倒せば、その方向にQBする。AMSの恩恵を全く受けられないため、全ての情報と操作は自ら管理しないといけない。辛いし、動きも鈍いが、さっきの痛みを堪えながら戦闘するのは無理だ。諦めよう。
フィオナによれば、オーエンが到着するまでに約4分かかるとのことだ。精々頑張るとしよう。
幸い、相手はレーザーキャノンがないし、さっきのごたごたでライフルのマガジンも少ない。ロレーヌのPA性能なら耐えてくれるだろう。
《どうした、動きが悪いようだが》
「気のせいじゃないか?それよりも…」
手を緩めず、見事な引き撃ちでPAごとAPを削っていくジョシュアに向け、距離を詰めるべくQBを行う。
いつもはAMS頼みだから、ペダルで直接行うのは初めてだ。グッと踏み込む。
「…ん?なかなか固いな」
全く動かしてなかったからか、ペダルを踏んでも半分位しか押せない。構うものかと、さらに踏み込んで漸く全部押し込めた。
ドヒャア!
待っていたのは、衝撃的なほどの超加速。いつものQBでさえ、耐Gスーツ越しにGを感じる程なのが、これはその1.7倍位に感じる。
速度計を見ればそれは明らかで、普段よりも確実に速かった。勿論、それによって距離もすぐに詰めることができ、ジョシュアの機体『ホワイト・グリント』は目の前だ。
そして、理解した。さっきからジョシュアが行っていた、明らかにおかしいほど素早いQBは、これだったのだと。
《お前っ…まさか、戦闘中に学習したというのか》
やはり秘伝の技だったのだろう。私の機動を見て、ジョシュアは驚きの声を上げる。
私はニヤリと笑い、やはり右手の月光を展開する。あまり凝った動きはできないため、やりやすい振り下ろしを繰り出す。が、やはりと言うべきか、それは無駄のない動きで避けられてしまう。いつもの剣技は使えないらしい。
ふらつく機体をどうにか保ち、向こうのブレードの光が微かに見えたために下がる。その一瞬後には、元居た位置に光の線が走る。
逃げて、着地の制御にも神経が磨り減るほどに苦労する。
接地圧や、重心、態勢、その他諸々のおびただしい程の量の情報が、モニターに雪崩れ込んでくる。それを必死に読みながら、上手い事何とかして動かす。
確かに、脳が三つあっても足りなさそうだ。
《そろそろ、やらせてもらう》
その不吉な言葉を聞いて、私はちらと時計を見る。まだ、あの通信から3分しか経っていない。あと、最低でも一分は待たないといけないというのだ。
彼が来るまで待てるか?かなり、いや、無理かもしれない。
「それでもっ…」
勝たなくていい。負けなければいいのだ。
守りに入れば、姿勢制御が上手くいかないこちらが確実に負ける。受け流しに失敗して、転んだら終わりだ。
「守ったら負ける!攻めねば、負ける!」
歯を食い縛り、操縦桿を倒して、ネクストに腕を振るわせる。
《無駄なことを…!》
何度振っても、簡単に避けられ、こちらはライフルでじわじわと、そしてブレードで装甲の一部が切り裂かれる。それでも、それでも私は、ロレーヌにブレードを振り続けさせる。止まれば、一瞬で終わるからだ。
だが、その悪足掻きもここまで。操作を一つ、間違えてしまったのだ。結局は、自らを蝕む苦痛に負けてしまったのだ。
避けられなかったライフルの弾が装甲を貫き、追撃として喰らった蹴りが、フレームをひしゃげさせた。もはやAPは少しも残っていない。ちょっとした衝撃で、システムが停止してもおかしくはなかった。
《終わりだな》
ライフルを向けられ、恐怖が身をかき混ぜる。
死にたくない。まだ、死にたくない。そんな思いで一杯になる。
なるほど、私が殺めてきた敵も、同じ事を思っていたのかと、少し納得する。
《…!?なんだ、新手か!?》
ジョシュアの焦ったような声。そのすぐ後に、ホワイト・グリントが私の前からいなくなったかと思うと、周囲に無数の小型ミサイルが降ってきた。
まるで、私まで巻き込むかのような攻撃は、しかし確かに私を救った。
《イクバール型……アナトリアのレイヴンか!?》
《まぁ、そういうことだ。どうする?やるなら容赦はしない》
そう言いながらも、既オーエンは攻撃をしていた。まるで、虐めにあった弟を守る兄のように。
(あぁ、もう、大丈夫だ…)
彼が負けるなんて事は、万が一にもないだろう。彼が負けるのは、あの一回を除いて、決してないはずなのだから。
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目を開ければ、また、あの天井だった。染み一つない、真っ白な天井。いかにも病室といったような見た目だ。
腕にチューブが刺さっているのも、やはり、あの時と同じだ。
ただ一つ、違うのは、今回は数時間ほどで目覚め、目の前に既にフィオナさんや、オーエン、エミールがいることだろう。
皆心配そうに私を見ているから、それを払拭するために、腕を動かしたり、自分の力で立ち上がったりとしてみた。全く問題なく動けることから、やはり、AMSが原因なのだろう。
そう思い、よいしょ、と再びベッドに腰かけた後、躊躇うように、しかし決して弱々しくはなく、エミールが私に衝撃的な事を告げた。
「シャルル、君は15分以上のネクスト戦闘はできない」
オーエンとジョシュアは、ちょっと戦闘して、お互いの弾薬が尽きて撤退しました。
そして、二段QBの条件は分かった人いるかな?