妖精と呼ばれた傭兵   作:vitman

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前話のコックピット内部の描写は後々直すとして…とりあえず書き終わったから投稿ドーン

今回は地の文が殆どで、しかも殆ど作者の考察話になっています

それでもいい人は...じゃあ!頑張ってね!(某主任風)


仮説⦅強者の理論⦆

 傭兵に限らず、我々一般人の中にも、戦闘ということ自体が得意なタイプの人間が存在する。それを私たち学者達は『ドミナント』と呼んでいる。

 ドミナントである人間は、ひたすらに争いごとが得意で、それは別に物理的なことだけではなく、戦闘行動に関する知能に関しても適用され、敵や味方の行動を瞬時に確認、認識して、どうしたら勝てるのかなどを瞬間的に考えることが可能だという。

 学習能力も、何もかもが常人を超える人間がいるという学説である。

 

 しかし、この『ドミナント仮説』は随分と前から囁かれていたにも関わらず、表面的には否定され続けていた。

 理由としては、そもそもその実例がない。もしくは少なすぎるから。そして何より、それ自体が非人道的実験の対象になる可能性が極めて高かったからだ。

 

 だが、近年、その考えは改められつつある。ドミナントである可能性のある人間が、多く存在する職業があったからだ。

 皆さんもご存じであろう、そう、『リンクス』です。

 

                        ___CUBE氏著 『ヤマネコ理論』より抜粋

 

 

 

 

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 15分というのは、長いようで、とっても短い。

 ネクスト同士の戦闘なら、そこまで長引くことは希だろうが、レイヴンの頃は、連戦は当然。それこそ、一週間戦闘しっぱなしということだって、珍しくなかったのだ。

 それを鑑みるに、私に与えられた時間という制限は、とてもとても厳しいものであり、それを補って余りある何か特徴が必要になった。

 

 そこで、だ。オーエンが私に言ったのは、長く戦闘できないなら、別の者が1分かけて終わらせるものを数秒で終わらせればいい。ということだった。

 それを聞いたエミールは、無理だと言った。ネクスト適性が非常に高いオリジナルのリンクスでさえ、そんな事は無理だと。

 

 だが、本当にそうだろうか。確かに今の私では無理だろうが、ネクストの操縦技術の向上と、パーツ構成を変えるなどすれば、いけるかもしれない。

 

 

 

 という考えもあり、私はシミュレーターを使って色々と試した。

 まず、武器を変え、戦闘スタイルを変えてみた。レイヴン時代の中距離射撃戦を試したが、どうもアリーヤフレームの安定性能はそんなに良くないらしく、近距離向きの性能であったし、レーザーライフルなどのエネルギー兵装は、それこそ持久力の低いアリーヤに積むことは無理なものということもあり、射撃メインのスタイルは合わなかった。

 それを抜きにしても、月光を使うという前提になるので、射撃機体としての性能は中途半端なものになること間違いなしだったから、やっぱり接近戦前提のビルドになるわけだ。

 ならアリーヤを辞めればいいと言われかねないが、それははっきり言ってお断りだ。この機体にはそれだけの意味がある。

 

 次に装備品を変えた。肩装備や背中装備、ブースターなんかだ。

 でも結局、肩以外はなにも変わらなかった。

 背中装備は、下手にエネルギー消費量を増やすならやめた方がいいという結論に達した。ブースターなんかは、既に機体コンセプトに合うようにフルチューンされたものが載っかっていた。

 唯一追加装備したのは、レイレナードが裏メニューとして売っていたフラッシュロケットくらいだ。

 

 つまるところ、ロレーヌは完成し尽された機体であり、これ以上の性能向上は今のところ望めないのであった。それこそ、技術面において革新的なものが生まれない限りは。

 ともなれば、もう自分の腕を磨くしかないねっていう結論に至り、今度はフィオナさんの監督の下、オーエンに協力してもらいつつ、訓練に勤しむことになったのだった。

 

 結果的に言えば、何も変わってないってことだ!

 

 

 

 

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 アスピナ機関の研究所の一つ。その中にある、トレーニングルーム…もといアスピナの天才の研究室にて、二人の男が「ぐてー」というような擬音を発しそうなほど、ソファーにもたれながら話していた。

 一人は、これぞ渋い漢といった風貌のもので、鍛えられた身体も含め、男性にとっての理想そのものである。この漢こそが、最初期のAMS被験者であり、アスピナが誇るリンクスでもある、ジョシュア・オブライエンその人であった。

 対してもう一人はというと、こちらは細身。ジョシュアと並んでいるからそう見えるというわけではなく、おそらく一般的な同年代の同性と比べてもかなりひょろい。顔もどちらかというと中性的で、ちょっと長めの髪の毛は、後ろで短いポニーテールのように束ねており、それが一層彼をただの学生のようにも見せている。

 一見して白衣を着た学生のような彼だが、その実態はアスピナの天才と呼ばれている、アブ・マーシュであり、数多くのAMSの研究やネクスト技術の進歩に活躍しているのだ。

 

 そんな二人が何をしているかと言えば

 

「本当に、彼は君と同じ機動をしたっていうのかい?」

 

「あぁ。それも、私があのQBをする前は全くやっていなかった。あいつは、戦場で学んだんだ」

 

 先の戦闘で出会った、シャルルについての話だった。

 マーシュとジョシュアは、ネクスト研究の一環の中で、とある条件下で、QBの出力を大幅に底上げすることが可能であることを知っていた。だが、それは到底普通にネクストを運用している上では気づけない事で、事実、企業のリンクスは一人を除いて使用しているのを見たことがない。

 企業内でただ一人の例外を除けば、実戦で使用していたのは、あのアマジークのみで、その事実からもわかる通り、そもそも、その特異なQBを習得することは相当に困難である。

 だが、そんなQBをそのシャルルというリンクスはやってのけた。しかも、ジョシュアがやったのを見てから、真似するようにだ。到底普通の人間の所業ではない。

 

「だとすると、君と同じ『特別(ドミナント)』かもしれないね」

 

「マーシュ、いい加減その話はやめてくれ」

 

 アブ・マーシュは基本現実主義者で、信仰する神だっていない人間である。それは、彼が科学というものに精通しているのもあるが、神がいるというのなら、こんな世界だって無い筈だという考えからでもあった。しかし、そんな彼が唯一信じているものがあった。それは、『ドミナント仮説』である。

 人間には、数億だか数兆だかの確率で、何らかの先天的因子により戦闘適正が常人よりも遥かに高いものが生まれる可能性があるという学説である。この説は、論文が発表されてから随分―言ってしまえばもう数十年―経つのだが、未だに証明されていない。何しろ、実例が無さ過ぎたのだ。

 論文によれば、このような者は別に戦闘を行いたいというような感性を持っているわけでも、殺人衝動に駆られやすい訳でもなく、戦闘に関する『素質』が眠っているのみだというのだから、探すのだって骨が折れるという話では済まない。ただでさえ、この星には数十憶の人間がいて、一日に何万と死に、何万と生まれているのだから。

 

 でも、彼はこう考えたのだ。そんな『特別(ドミナント)』が戦闘に参加したのなら…ある種の伝説になっているのでは、と。そこから先の行動は早かった。

 まずマーシュは様々な本を読み漁った。

 もはや旧世紀のことで、おとぎ話レベルのものとなった戦争。その指揮官や活躍した兵士をはじめ、各地で英雄と呼ばれた革命家、傭兵。MT乗りやレイヴンなどなど。それらに関する知識を集めまくった結果、それらしい人物は何人かいた。それが本当にドミナントであるかはわからないが、確かに、それらは常人の戦闘力でも頭脳でもなく、こと戦に関しては非凡という域すら超えていた。

 それを発見したマーシュは興奮した。同時に、この時ばかりはこのご時世に感謝した。ACという『人の作った神(絶対的な“ちから”)』が蔓延るこの時代には、『特別(ドミナント)』がいる可能性が高かったからだ。

 

 そんなマーシュは、レイヴンの駆るノーマルACに取って代わるであろう兵器『ネクストAC』の研究に自ら志願した。理由は、やはり『特別(ドミナント)』を探すためであり、その願いは叶えられた。それが彼とジョシュアの出会いである。

 ジョシュアはどんな要望にも、期待以上の結果で応えた。無茶な話も引き受けてくれた。しまいには、企業側の最高峰リンクスたちとも互角に戦った。ジョシュア・オブライエンは、マーシュにとっての『特別(ドミナント)』になった。

 しかし、その張本人のジョシュアは、あまりその、ドミナントというものをあまり快く思っていなかった。「まるで、世界を作り変えるためにある力」と思えてしまったからというのと、このアスピナの中で唯一といっても過言ではない友人であるマーシュに、自分を特別扱いしてほしくなかったからだった。それと、そんなヤバい奴がそう何人もいてたまるかという本音も混じっていた。

 

「でも、負ける気はないんだろう?」

 

「それは勿論…と言いたいんだが」

 

 今回はそうもいかないかもな。と、冗談にしては重い口調で溜息を吐きながら、彼にしては珍しく弱音を吐いた。

 ジョシュアと共に研究、発見したあのQB。二人が《二段クイックブースト》と呼んでいるそれは、何度も試行回数を重ねて漸く実現できたものだ。

 忘れられがちで、企業は意味を履き違えがちだが、AMS適性というのは、ネクストの操縦技術面では“あまり”関係ない。勿論、多少は違いが出るが、自らの腕前次第では十分以上にカバーが可能だ。事実、カメラから送られてくる情報や、残弾数などの最重要事項は、AMSではなく、パイロットスーツに標準装備された、網膜投影システムによって表示される。というのも、元々ネクストは、AMS適性がない人間でも戦闘ができる兵器として研究が進められていたからで、研究途中に方向転換があったからだ。網膜投影システムは、その名残とも言える。

 その点を抑えた上で、AMSのイメージによる操作に頼らずに戦闘行動を行ってみるという実験があり、ジョシュアは『まともな人間には』無理だと結論付けた。実際、簡単なロジックでしか動かないノーマルACの撃破でさえ、ジョシュアは手間取っていたのだから、まず間違いないが、その実験によって、ネクストには手動動作でしか行えない動作があるという結論が出たのだ。二段クイックブーストはその一つであった。

 

 企業は「AMS適性至高主義」であるため、ひたすらに適性が高いものをリンクスにしている。適性が高ければ、確かにイメージ操作はしやすいし、負荷はかなり低いだろうから、ネクスト戦力としては一級品だろう。が、それはネクストの性能を最大限発揮しているとは言い難いのだ。

 AMSによるバックアップを受けつつ、基本的には手動で操作するのが、理想の操縦スタイルであり、ジョシュアの強みはそこにこそある。別に、AMS適性が低いから、手動操作を必要としている人物は弱いという結論には、簡単には至れないということだ。寧ろそういったリンクスは、企業の言う『AMS無しで操作するには、三人以上の極めて高度な連携ができるグループ』が必要という話からすれば、AMSによるバックアップが少なく、自らの腕前で戦闘している彼らは、素晴らしいパイロットだという事だ。

 

 話がそれてしまったが、つまるところ、それだけネクストというものは複雑で、繊細なものなのだ。

 そこで重要になってくるのが、シャルルの機体から傍受した、オペレーターとの会話の一文。「AMSから拒絶された」というもの。つまりは、シャルルは途中からジョシュアとAMSによるバックアップ無しで戦闘していたのだ。あのジョシュアでさえ、ノーマルACとの戦闘が精一杯だったというのに、ぶっつけ本番でネクスト戦を行っていた。

 正直言って、そんな化け物じみた相手に、勝てる気がしないというのがジョシュアの心のうちだった。

 

「確かに、ジョシュアの言う通りだ」

 

 マーシュもそれは理解していた。むしろ、誰よりもシャルルというリンクスは危ないと分かっているだろう。

 AMS無しでネクスト戦をしてみせた技術。そのアクシデントの中で見つけた、二段クイックブーストという技術。高い接近戦能力。どれをとっても脅威であることは確かだったし、だからこそマーシュは彼を『特別(ドミナント)』だと言った。

 

「私は、『負ける』気はない。だが、次あいつが敵になったら、『勝てる』とは思えない」

 

 実際、あのAMSからの拒絶というアクシデントがなかったら、シャルルが勝っていて、自分は死んでいたとも、そうも思えるのだ。

 そもそも、シャルルだけではなく、オーエンというリンクスだって底知れない。あのアマジークを撃破した後だというのに、あの戦闘力が残っているのだ。あの時はシャルルを助けるためだったからか、追撃はしてこなかった。が、直感で言えば、彼はシャルル以上に強敵。つまり、そんな戦力を持っているアナトリアとは、決して敵対したくない。という話だった。

 

 そんな本音をマーシュに言うと、ジョシュアの期待通りというか、なんというか、彼は予想の斜め上の発想でぶち抜いていった。

 

「じゃあ、アナトリアにいこっか。観光がてら」

 

「は?」

 

 ポーカーフェイスが得意で、トランプの勝負では中々の勝率を誇るジョシュアが、思わず間抜けな声を出してしまうほどに突飛な発言だった。

 ついこの間敵対したリンクスを、自分たちの土俵に入れるだろうか。

 

「だって、ジョシュアって、あそこの博士と仲良かったはずでしょ?」

 

「それは…そうだが…」

 

 ジョシュアは元々リンクスではなくAMS被験者であり、その経緯からイェルネフェルト教授とは仲がすこぶるよかった。ただの研究者とその被験者という関係ではなく、対等な友人として親しみがあったし、教授の家族は独り身のジョシュアを家族同然に扱ってくれた。それは、ネクストの研究が始まって、戦闘面でのデータ集めを担当していたアスピナにジョシュアが異動することになるまで続き、そんな背景があったから、教授の訃報にジョシュアは涙を流して悲しんだ。

 教授の死の原因の一つである、アナトリア襲撃事件にて、教授の妻は犠牲者の一人となっているため、今あの時の自分を知るのは、教授の一人娘だけ。しかも、もう数年間会っていないから、覚えてくれているとも限らない。

 

「ま!そんな深く考えないでさ!君だって僕だって最近働き詰めなんだから、ちょっと気休めに行ったって誰も文句は言わないさ」

 

 それどころか、文句を言うやつは僕が黙らせる。なんて、自分より年少ものに言われてしまえば、断れないのがジョシュアという男だった。

 

「分かった。じゃあ、行くとしようか」




次回「アナトリア訪問」

やっぱり物語進まねぇじゃねえか!って感じたそこの君!正解だ!
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