妖精と呼ばれた傭兵   作:vitman

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さぁ!次はメノ・ルーさんでも書こうかな…いや、待てまだこいつが残ってたぞって感じの話です

原作と少しづつ展開がずれてきてますね。必要なら独自展開タグを付けようかと思います



討つべきは敵

 もしも仮に、だ。君は巨大で、かつたった数分足らずで街を灰に変えられる、恐ろしい程の武装を持った、頑強な飛行要塞に乗っていて、そのパイロットの一人だとする。

 自分は輸送部隊の護衛―にしてはこの飛行要塞は中々派手―で、守らなくてはいけない輸送ヘリが幾つも近くを飛んでいる。通信はしっかりと行ってはいるが、流石にいくら何でも、レーザーキャノンを周囲に撃ちまくれば不慮の事故に繋がるだろう。

 そんな状況だ。

 君を除けば、武装を施してあるのは軍用ヘリだけで、それの火力はこの飛行要塞に傷一つつけられないようなもの。つまりはあってないようなものだ。

 

 突然だが、そんな状況下で、レーダーの範囲外である遥か上空から、音速に近い速度で落下してくる人型兵器がいて、右腕に持った、光の塊をさらに凝縮させたような刀で、要塞の装甲を氷のように溶かしていくとする。そして、そのまま周囲の輸送部隊が壊滅させたとして、何もできなかった飛行要塞『フェルミ』の搭乗員たちを責めることができるだろうか?

 君がよくよく考えた上で対処法があったとして、だからといって彼らを責めないで欲しい。おそらく彼らは、君が考えるのに使った時間のたぶん数万分の一の量で、やれるだけの事はやったのだから。

 

 

 

 

 ____________

 

 

 

 

 

 速く、もっと速く、更に速く。時間は有限である。特に、私にとっては。

 一番の懸念材料であった飛行要塞フェルミはとっくの昔に葬り去り、あとはターゲットの輸送機と、あってないような武装ヘリのみが戦場に浮かぶ。それらをマシンガンで消し飛ばし、そこそこ大きい輸送機は、乗っかる事でそのまま撃破する。

 無駄は一切ない。弾も、エネルギーも、装甲も、速度も、粒子残量も、負担も。

 ただ効率化の一点のみに固執したような動きで、それは仕事を片付けていく。

 

 それの仕事は最初の被害者が生まれてから、たったの1分4秒で終わった。

 

 

 

 

 

 ふぅ、と一息ついたのは、1分ちょっとぶりに乗ったネクスト用輸送機の内部にてだ。ジョシュアとマーシュがアナトリアを訪れ、そして帰ってから丁度一週間が経とうとしている。

 ジョシュアに対する私のリベンジマッチは、見事に私の勝利によって終了し、相手の方は、この間と全く違う動きに対して苦笑いしながらも、「強いな、君は」と言った。そして、同じ傭兵どうなるかは分からないけれども、君達とは敵対したくないなと、そうも言っていた。

 

 この間のオーエンの言葉…「他人を遥かに上回る速さで片を付ければいい」というものを聞いてから、私はそれが気になってしょうがなかった。

 AMS適正が低い者は、ネクストを扱う際の負担が大きく、短時間しか動かせないというが、私はそうではない。ただ、15分以上ネクストという兵器を扱えない身体なだけ。でも、その代わりといってはなんだが、デメリットを補って余りあるアドバンテージもこの身体は秘めていた。

 

 最近分かったのだが、妙に、戦闘中に限って頭が冴えるのだ。別に、危ない薬なんかを使ってはいないし、以前はこんな感覚はなかったはずだ。でも今は違う。

 何故だか分かるのだ。どこにいれば敵がどうするとか、そこにいれば自分はこうできるとか、あの機体は次ああするだろうとか。そういった事が手に取るようにわかる。しかも、相手が未知のモノを使う、あるいは未知のモノ自身だったとして、それが何なのか瞬時に理解できる。

 

 どういったものなのかを簡単に考えてみても、何故最近になってこんな風になったのかは全くわからない。

 AMSの影響なのか。それとも、知らぬ知らぬのうちに覚醒剤を飲まされていたのか。脳内麻薬の分泌量が若干多いだけなのか。そのいずれかでもないのか。それは分からない。全く分からない。

 手に入ったのは、どれを見ても鴉の時にも持っていたかったと思えるようなものである。

 まぁ、有用な事はあっても、この力で困る事は一つだって存在しない。だから、何か変化が起きるまでは、せいぜいこの不思議な現象を利用させてもらうとしよう。

 

 という風に、私が自分自身で結論を出し終わった丁度その時である。輸送機が物凄い揺れ方をしたのだ。まるで強い地震のように、横に縦に勢いよく揺れる。

 もちろん、空を飛んでいる輸送機が、地震の影響を受けるはずがない。とはいえ、音を聞く限り、雲の中に入ったわけでも、乱気流の中を突っ切っている訳でもないようだ。

 とすれば原因は一つしか考えられない。

 パイロットスーツに備え付けられている通信機を使い、輸送機の機長に向けて連絡を取る。案の定、向こうはとても慌てているようで、落ち着こうとしているのがバレバレな声色だった。

 

「機長、今どうなっているんですか?」

 

 《それがっ…分からない!いきなり、機体が揺れたと思ったら、左翼の1番エンジンが動かなくなって…》

 

 私も一応は慌て、焦っていたつもりだったが、人はやはり自分以上に昂っている人を見ると正気を保てるらしい。お陰でクリアな思考ができる。

 エンジンが故障するという事柄も含め、この状況になった原因は幾つか考えられる。

 一つは、整備の不良だが、それだと機体の揺れが証明できない。それも含めて整備不良なら、きっとこの機体は数分とたたずに落ちるに違いない。が、機長の様子では、特段急激に高度が下がっている訳でもなさそうだ。なら、これが原因というのはないだろう。

 二つ目は、鳥などの飛行できる生物が入ってしまったこと。エンジン内に入ってしまえば、その大きさも相まって、確実にエンジントラブルを起こすだろう。が、やはり一つ目と同じように、最初の機体の揺れが謎なままだ。

 であれば三つ目の可能性が跳ね上がる。

 最初の機体の揺れと、エンジントラブルの二つ。そのどちらも満たせるものがある。そう、敵機による狙撃攻撃だ。

 この輸送機は、そこそこ…いや、かなりの上空を飛んでいる。それこそ、地上の生半可なレーダーでは探知できないレベルの高度だ。

 しかし、逆を言えばこちら側からも敵を捕捉できないということで、それは高高度への長距離射撃が可能な機体に対しては、無防備であるという事実に繋がる。

 

 上空に対して通じるレーダーの存在と、また、その目標に対して発揮できる火力を持った兵器。それは、私が知る限り一つしかない。

 私が乗っているものと同じ、ネクストだ。

 そうと分かれば話は早い。輸送機が犠牲になる前に、自分が降りてそのネクストを撃破してしまえばいい。輸送機には一旦アナトリアに帰ってもらい、新しいもので迎えに来てもらえば十分だ。

 幸い、ここはアナトリアからそこまで離れておらず、輸送機の速度ならば片道20分といったところだ。戦闘が終わって一息つく頃に丁度来てくれるだろう。

 

「機長、敵による攻撃の可能性が高い。今すぐに俺を降ろせ」

 

『馬鹿言うな。そんな事したら、俺が教授のとこの嬢ちゃんに殺されちまう』

 

 それはオーエンの方、と言おうとすると、再び機体を強い振動が襲う。先ほどとは反対側ということは、今度は右翼のエンジンを狙ったか。それとも、狙撃に慣れておらず、位置調整をしくじったか。

 

「このままじゃ、どっちも死ぬぞ。早く俺を地上に降ろせ!そうすればこいつは軽くなるし、敵も追っては来まい」

「大丈夫、死ぬつもりはない。あんたはアナトリアに戻って、この状況を伝えて、それで新しい輸送機でここに来て、俺を回収すればいい」

 

『あぁ、分かった分かった。それじゃ、死んでも文句は言うなよ!』

 

 輸送機の下腹部にあたるハッチが開かれ、いつでも降ろせる体勢になる。

 すかさず私はロレーヌを起動させ、ロックをもう慣れた手つきで解除し、戦闘モードへと移行する。

 シートの背もたれに深く身を沈め、首もとの位置を調整する。空気を吸うような音と共に、鋭い痛みが一瞬首を襲う。いつやってもAMS接続の瞬間は慣れない。

 

『さぁ準備はいいな!?それじゃ、鳥になってこい!』

 

 機長のその言葉と同時に、輸送機とネクストを繋げていたラックが外れ、重力を頼りにロレーヌは高速で地上へと駆けていく。

 その光景は、機長から見れば、鳥というよりもさながら雷のようであった。が、ロレーヌの機体色が黒が基調であることも相まって、敵対する者から見れば、鳥でもなく、雷でもなく。ただ、自分等を殺しに来た悪魔のように見えた。

 

「さて、喧嘩を売ってきやがったのは、どこのどいつだ?」

 

 GA側の依頼ばかり受けている自分等に対し、レイレナードやアクアビット等が攻撃を仕掛けるというのが、非常に現実的な話である以上、ここに来ているリンクスは非常に強敵である可能性は高かった。

 ただ、スナイパーライフルもしくはスナイパーキャノンであろう武装を扱いきれていないところを見ると、BFFのリンクスでは、少なくともオリジナルのリンクス、メアリー・シェリーではないだろう事は確かだった。

 

 さてさて、どんな相手が待っているのか。と思い、着陸を丁寧に行い前を向く。すると

 

 シュパパパパパ

 

 無数の弾丸がPAに阻まれ消えていった。機体は無傷。PAは殆ど減衰していない。こんな攻撃はネクストのものではない。

 見れば、そこにいたのは…歩兵が中心の部隊であった。

 戦車やパワードスーツ、武装ヘリなどもいる。輸送機を攻撃した張本人であろう砲台もある。でも、この部隊の中心は、歩兵であった。

 対人としては有用なアサルトライフルや、歩兵の持てる武装としてはかなり高ランクの威力を持つロケットランチャー。それらは、確かに同じ土俵に立つ者に対しては有効だろう。その強い信念すらも武器にできるだろう。だが、彼らの前に立っている自分は、彼らとはかけ離れた存在を使用している。

 ネクストに対して、いや、ACに対してそんな武装は役に立たない。ただでさえ、ノーマルからしても蚊に刺された程度の攻撃だったのだ。ネクストに効くはずがない。だって、ノーマルの武装でさえ、大半は無力化されてしまうのだから。

 

 マシンガンを単発撃ちし、一応脅威になる《かも》しれない、戦車と砲台を撃っていく。全て一撃で爆発するほど脆い。

 歩兵は...わざわざ倒す気にもなれない。それは、私が殺戮を楽しむサイコパスなら違ったのだろうか。いや、違わないだろう。どっちみち、この者達も、コジマ粒子の汚染によって、苦しみながら死んでいくのだから。だから、もしかしたらだが、苦しまずに死ねる道を辿らせない今の自分こそが、サイコパスなのではないかという思考に陥る。

 そうでないと、信じたかった。

 

 そうして片付けていた途中、とある歩兵の口の動きが目に留まった。他の兵士は何やら叫んでいたりするのに、その男だけは妙に静かで、ネクストACの高感度集音器をもってしても聞こえないほどだ。

 読唇術は苦手な私ではあるが、齧った程度の情報を用いて、読んでみた。

 

 い ま だ や つ を か た き と れ

 

 幾らか読んだ時、意味が分かってしまった。こいつらは陽動だったのだ。

 後ろを向くことなく、敵歩兵部隊の真上を飛ぶように跳躍する。直後、後方で耳を劈くような爆発音が聞こえ、高感度集音器の感度を無意識のうちに下げる。回避時に地面にPAが掠り、その電磁波のせいで幾人もの兵士が死んでいる。が、気にする余裕はなかった。私が今さっきまでいた所が、小さなクレーターへと姿を変えていたのだ。あの男は死んでいた。

 こんな爆発を引き起こすのはネクストの持つ武装の中でも一握りしかない。グレネードランチャーか、バズーカだろう。どちらを装備しているのかは分からないが、どちらにしても私の機体とは相性が最悪だ。

 兎に角、自分を消し炭にしようとしたのがどんな奴かを見るため、振り返ってみると、予想とは全く違った形の機体がそこにはいた。

 

 さっきは、私の機体と相性が最悪だろうといったが、前言撤回。今回は楽に済みそうだ。

 現れたネクストはタンク型。ガチガチに対物理装甲に特化した、重装備型だ。それは、姿を見せるやいなや、右腕のバズーカと左腕のロケットを撃ちまくってきた。周りには彼の味方―と思われるもの―がいるというのに、迷いは微塵も感じられなかった。これは面倒…いや、まずい相手だ。

 

 《アナトリア…テキ…カタキ…》

 

 感情が感じられない、言ってしまえば棒読みのような、若い、若い男の声。どことなく中性的な高めの声で、それが更に年少ものというイメージを作り上げる。

 (かたき)という言葉を聞いて、ふと考える。最近こういった事に巻き込まれる要素がどこにあったか。上げればキリがない事は確かだが、先ほどの歩兵集団も合わせると、一つだけ思いつくものがあった。そう、マグリブ解放戦線の奴らだ。彼らは、ごく最近オーエンによってアマジークを失ったのだ。

 なるほど、確かにそう考えるとあの異常なまでの執念による攻撃も理解できるというもの。つまりは、これは仲間の無念を晴らすための戦だったのだ。

 ミサイル施設は破壊し尽され、頼みの綱のアマジークは撃破され、更にはそれによって企業からの圧力は増し、多くの基地は焼き払われ、多くの犠牲が出たというのは知っていた。

 

 彼らにしてみれば、全ての元凶はアナトリアのネクスト二機にあったのだ。

 

 だが、それ以上に私は相対するネクストを見て思う。リンクスであるススは、その感情の籠っていない声を聞く限り、高い精神負荷を受けてなんとかネクストを動かしている。しかも、それでもシミュレーターに保存されているアマジークの動きにも劣るというもの。それは、機体の性能差でも、タンク型だからというわけでもない。単純に、技術の差だ。

 彼はネクストに遊ばれている。例えるなら、子供が大きめの制服を着ているようなもの。性能はギリギリまで引き出せてないどころか、4割出せているかも微妙なところだろう。ただ、戦力としてはネクストというだけで100のノーマルよりも価値があるものだ。だから使わされているというだけに他ならない。

 でもそれだけ。アマジークの最期の言葉を私は知っている。オーエンの戦闘記録が見たくて、アマジークとの決闘の記録を見たのだ。

 

 彼は、アマジークは仲間想いであった。神、いや、自分の中の正義を信じ、それを守るために戦っていた。一人孤独に、それでも戦っていた。だが、その肝心の仲間はどうだ?

 受け入れた彼はいいとして、彼らの上に立つ者達は、そもそも人を壊すほどの負担を彼らに強いてまで、そこまでして守りたいものだったのか?マグリブ上層部の事は私は分からない。だが、アマジークとススが使っているネクストパーツから、企業との関係はなんとなく察する事ができる。

 恐らく、彼らは出来レースをさせられているに過ぎないのだ。企業側が支配するだろう地域。そこに存在する反乱分子。それを纏めて駆除するために、彼らは集められ、正義のためなどという最もらしい言葉に踊らされ、そして潰えようとしているのだ。では、上層部は?決まってる。どうせ、彼らは企業側から多額の報酬とそれ以降の地位を保証され、それのためにやっているに違いない。

 

 少々、いや、かなりムカつく話だ。反吐が出る。それは、命を賭して戦士として戦う者を愚弄する行いだ。

 私は騎士道精神など持ち合わせていないし、どちらかというとそれと対極の位置にいる人間だ。だが、目の前のリンクス、いや、戦士達に対し、私は彼らの神と正義に誓おう。この戦闘、全力でやらせてもらう。

 

 ススの攻撃は単調だ。敵に狙いを定め、撃つ。ただそれだけ。お手本通りかと言われれば、確かにそうだと言える。だが、戦場において。特に同じ土俵に立って戦う者同士にとって、お手本通りの相手は、最もやりやすい相手だ。それは、生身で殴り合う時も、ACに乗ってレイヴン同士で殺し合う時も、こうしたネクスト同士の戦闘でも変わる事はない。

 だから、ススが向けてきた銃身を見て、それから回避すれば余裕である。ただ、使ってくる武装がグレネードランチャーやバズーカ、ロケットという広範囲攻撃系のものだけに、ただただブーストするだけでは避けきれない。撃たれる度にQBで避ける。射撃間隔が長いので、エネルギーの回復がしっかりできるのが幸いだ。

 どっちかというと問題はミサイルで、こればっかりはロックオンされれば嫌でも避けるのが面倒になる。マシンガンで迎撃はしているが、残弾は残り少ない。あまり無駄はしたくない。

 更に言えば、私の避けられないものは時間だ。先ほどの戦闘が1分強で終わった事を加味しても、あと8分と戦闘は続かないだろう。これは、ススを撃破した後、追手が来た時に振り切るための時間でもある。

 

 つまりは、速攻で片を付けないと面倒という事。

 ただ、どうもネクストのタンクというのは、ノーマルとは大きく違うらしい。いつもなら、そう、今この瞬間にグレネードランチャーを撃つために一瞬だけ奴は止まった。そういう細かい隙ができた瞬間に、ノーマル同士なら接近戦に持ち込める。が、ネクストではそれはできない。それはひとえにネクストの性質が邪魔しているに他ならない。何がと言えば、QBと高火力武装の存在だ。

 近づこうと、旋回の遅さはQBで補える。それに、グレネードなどはとても広範囲に被害が及ぶのだから、軽量機殺しに違いない。

 

 でも、抜け道はある。リスクも高いが、そんな事はもう慣れた。確実にやれる方を選ぶとしよう。

 

 マシンガンと背負った装備、そして格納武装まで全てをパージする。ロレーヌに残った武装は、右手の月光ただ一振り。だが、これでいい。これで、エネルギーを機動力に振る事ができる。

 垂直ブーストとOBを一緒に発動させ、距離を詰めに行く。グレネードランチャーの爆風を喰らい、ミサイルを数発被弾する。PAが剥がれ、機体の装甲に傷ができる。でもそれが、ロレーヌを止める原因にはなることはない。もう止まれないのだから。

 ブースターだけに頼りきらず、さらに推進力を増すために、左脚で地を強く蹴る。OBの爆発的な加速と合わせ、一気に速度が上がる。対Gスーツの役割も兼ねたパイロットスーツを着ているというのに、それなのに歯を食いしばらないと吐いてしまいそうになる。臓器が押し上げられ、抉られるような強い衝撃を受けるが、そこは理論ではなく、根性で耐える。それしか方法はないからだ。

 それでも痛い事には変わらない。だが、それがなんだ?アマジークは更に辛かっただろう。身体的に辛いだけではなく、脳への負担も凄かったのだから。そういう点では、オーエンも同じ。自分だけが、その面だけでは恵まれている。だから、これくらいは耐えなければならない。

 

 機体が宙に浮き、爆風の影響を受けない状態になる。着弾時に爆発を生じるバズーカやロケットでは、空中にいる敵機に対しては影響力が低いのだ。今やススがまともに命中を望めるのは、左肩のミサイルだけである。

 それこそが私の狙い。まだエネルギーの残量が半分近くあるのを確認し、真下に機体を向けるとそのまま前方にQBを行う。地上に対し、ダーツのように突進する。至近距離で自分を爆発に巻き込むのを躊躇ったのか、ススは攻撃をしてこない。やはり、そういった面ではまだ若いのだ。

 

「もう、休め…お前達の戦争は終わったんだ」

 

 ロレーヌはススのネクストの頭上を通り過ぎ、背後に着地。それと同時にQBの応用技、QTを利用した旋回斬りを繰り出した。胴体と脚部が離れ離れになるのを見た瞬間、更にコア部分に月光を突き刺した。意図せずとも、力を入れなくても、問答無用で装甲を溶かしきった月光は、エネルギー切れと、これ以上の暴力は不要だと言わんばかりに光を閉じた。

 コックピットから僅かに逸れていたのか、ススはまた口を開く。さっきよりも少し感情の入った声で。

 

 《ファ、ファーティマ…すぐに…そっちに…》

 

 ファーティマという人物が誰かは知らない。が、最期の言葉として口に出すほどに大切な人物なのだ。きっと、恋人か、そうでなくても『仲間』以上の何かなんだろう。きっと。ススには悪いが、調べてみるとしよう。

 レーダーの反応を見て、上を見上げれば、きっと相当急いだのだろう。見覚えのある輸送機が空を飛んでいた。




ちなみに同時期にアナトリアは襲撃を受けてます。一体何リブ解放戦線の仕業なんだ...
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