妖精と呼ばれた傭兵   作:vitman

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予約投稿の日時で、設定年が間違ってたアルヨ
一月どころか一年投稿予約してたアルヨ
皆も投稿するとき気を付けるアルヨ




不穏

 足下を見れば、今朝方の大雨の名残である池のように巨大な水溜まりがある。そこに映る黄金色の満月は、私の思いを代弁しているようにも感じられる。

 改めて前を見れば、ブリーフィング通りのものがある。それは、レイレナードの前線基地。GAの拠点のすぐ近くに存在するそれの内部には、彼らの新型ネクストがあるということで、それの撃破が今回の目標というわけだ。

 

 元々GAはそのネクストの情報を持っていた訳ではなかったようで、ノーマルを中心とした通常兵器のみのものと予想していたらしい。そこで、調査及び攻略に自社のリンクスを向かわせた。が、そのリンクス『ユナイト・モス』は所謂粗製リンクスで、施設内で目撃された新型ネクストに呆気なく撃破されてしまったらしい。

 自社のリンクスを引き換えにGAが入手できたのは、そこに新型のネクストがいて、今自分達が動かせるリンクスでそれを撃破できる者がいないということ。ただそれだけだ。

 でもこの時代は便利なもので、自分達でなんとかできない時は他の誰かに依頼をすればいいのだ。しかもそれが戦闘関連ならまず頼む相手に困ることはない。私もその頼まれる側の人間。それで食べてきた。

 それに、今回の依頼は断る理由がなかった。なにしろ相手取るのはレイレナード社。つまりは彼女が所属する企業だ。上手く事が進めば、もしかしたら情報が掴めるかもしれない。

 

「さぁ、行くとしようか」

 

 今回はオペレーターがいない……フィオナさんとオーエンがGA本社にいるからだ。向こうは向こうで仲良くやってる事だろう。オペレーター無しでの戦闘は何気に久しぶりだ。状況判断が余計に必要になるのはしょうがないが、敵の接近情報まで自分で確認する必要があるのは面倒だ。

 だけど一つだけ嬉しい、と言える事だってある。恥ずかしながら、アンジェを狙っているというのはあまり他人に知られたい事ではないのだ。

 他の皆がアナトリアを守るために奔走している中、私は心の底で戦場を求めている。それも、アマジークの言う聖戦のように神聖なものではなく、ボリスビッチの祖国を守ろうとする気高いものでもない。ただ、あの時の感情を味わいたい。ただそれだけを追い求めているのだから。

 だめだな。どうも私は悲観的ないし否定的に考える癖がある。そうだ、私は決めたじゃないか。あの時の決着はまだ着いていないと。その決着を着けるため、それまで生きるため、それまでに力をつけるために戦うのだと。

 

 息を吸い込み呼吸を整える。パイロットスーツとヘルメットの中だが、機能的なそれのお陰で吸う空気が淀んでいるなんて事はない。むしろ、考え方如何によっては大気よりもずっと澄んでいる。

 機体の状態はバッチリ。整備長から私の機体の修理を任されたメノは、良い仕事をしてくれたようだ。これなら万全の態勢で戦える。

 ネクストのOSを戦闘モードに切り替え、いやに静かな今回の戦場へと足を踏み入れる。

 

 

 

 おかしい。何が、と聞かれれば即答できる。本当に静かなのだ。ここはGA領に程近い、いわば最前線の筈。だとすれば、戦力がそこそこ以上に存在するのは当たり前で、レーダーに検知された瞬間にミサイルや機銃やレーザーの大群が、雨霰と降ってくるのが当たり前ってものだ。

 それなのに、この基地は歩哨はおろか監視カメラの一つだって見当たらない。人がいる気配も、キャタピラの駆動音も、サーチライトの光もない。こんなのは、GAが用意した報告書にはなかった。

 

(また貧乏くじを引かされたか?)

 

 今更ながらそう感じつつ、開きっぱなしの正面入り口の中に入る。当然のように明かりがないため、頭部とコアに標準搭載されているライトだけが頼りになる。

 本当に、使いどころが少なかったとはいえある程度は需要があった、ノーマルACのサーマルはどこへ消えたのか。というか何故取り外されたのか、未だに分からない。

 一応、月明かりもあるからと思って進もうとした瞬間、真後ろから妙な金属音がした。

 何事かと思い、振り返るとあの非常に分厚い金属製の扉が閉まっているじゃないか。罠だと発覚した時には既に遅かった。扉の閉じる速度から察するに、逃げるにはもう遅い。

 閉じたなら開ければいい。そう思ったが、ネクストの力ではうんともすんとも言わないし、マシンガン程度ではかすり傷すらつかない。最後の手段として……希望としてとっておいた月光を振るうも、流石は製造元というもので、表面が少々焼き付くレベルだ。

 

 こうなってしまったら、もう操作元を破壊ないし操作するしかない。つまり、罠だと知っていながらも進むしかないって事だ。

 まんまと手の平で転がされるのは癪だが、ここから抜けるにはそれしか道はない。

 

(結局は進むしかないなんて、まるで、あの時みたいだ)

 

 場違いな感情まで浮かんでくるのは何故だろうか。私はこの暗い中、小さなライトを頼りに進んでいくというシチュエーションを幼き日、そう、そんなある日の出来事と重ねてしまう。

 あの時は、結局どうなったんだったか。あの子は無事見つかったんだっけ。暗い、灯りの一つだってない、夜中の山中を歩いて探し回ったあの日の記憶。

 知り合いの女の子を探すために、たった一人で一つの懐中電灯を持って馬鹿みたいに歩き回り、山の中に投棄されていた一機のACの残骸……待てよ。本当にあれは残骸だったか?あの日俺は知らない男と出会った気がする。

 ……駄目だ思い出せない。いや、違う。思い出しちゃ『いけない』気がする。

 

 

 その私の思考を遮ったのは、一筋の光。青白く、それでいて少しばかり緑っぽいコジマ粒子特有の光。しかもあれは相当の濃度のものだ。どっちみち引き返してもしょうがない私は、進むしかないのだが。

 進んだ先は、中々に広いドーム状の部屋。ナニカの残骸が所々存在する以外は何にも異常はない。逆に言えば、その残骸だけは異常だ。弾痕はなく、焼き切られているような断面。細かい損傷は一切ない、ただ一撃で残骸へと変貌したという紛れもない証拠が揃っている。そして、こんな高火力の武装を使うためのエネルギーを供給できるのは、コジマ技術以外ない。つまり、これはネクストの仕業だろう。

 いざ満を持して部屋の中に入る。中には何もいない。この残骸の創造者らしき物体はなく、この不気味な空間があるだけ……いや、違った。微かだが四隅に一機ずつ動いている物体がある。あれは……ネクストだ。

 

 アリーヤタイプの見た目こそしているが、それらの形は異様なものだ。元々ケーブルに繋がっているのが普通なのだろうか、背中には大きな接続部がある。右腕は通常のものと比べ物にならないくらい長大なライフル。

 だが、何より私を驚かせたのは左腕のブレードだ。月光に似たデザインのブレードが、そのまま大きさだけ変わったような見た目で、当然のようにその威力は高いだろう。恐らく、このブレードこそがこの残骸を作った張本人だ。

 そんな4機のネクストだが、妙な点がある。それは、人間味が欠片ほどもないことだ。

 AMSを通して動かしてる割には、まるでコンピューターが動かしているかのようなわざとらしさがあるし、なによりこんなコジマ粒子の温床のような場所で敵を待つなんておかしい。食虫植物が別の食虫植物に食べられながら獲物を待つようなものだ。あり得ない。

 これで何が分かるかって?こいつらが遠隔操作されているか、高性能なAIを使った実験兵器って事だ。察するにレイレナードはこんなアホみたいなネクストを量産しようと企んでいるわけだ。

 面白い。レイレナードの連中には、量より質だって事を教えてやろう。

 

 

 

 

 

 

 _______________________________

 

 

 

 

 

 

 

『ハァッ……ハァッ……終了……』

 

「みたいだな。初任務でこれだけやれれば上出来だ、真改」

 

 私と真改は、二人セットで遊撃部隊に任命された。任務内容は割とフリーで、適当に敵対陣営の工場やら倉庫やらを破壊して回ったり、ネクストを追いかけ回したりするのが主な目的だ。

 私としては願ったり叶ったりなもので、今までやらせることができなかった実戦を真改に経験させつつ、シャルルを探す事ができるのだ。

 だが、私としてはそうも言ってられない事柄がある。どうも、レイレナードの上層部とベルリオーズの動きがきな臭いのだ。今までもそうだったが、最近は特にこそこそと隠れて話していたり、目的不明の出撃が相次いでいたりする。

 

(一体、何をしようとしているんだ……)

 

 彼らがやろうとしていることは分からない。だけどそれは、「成功さえすれば」この戦争の行方どころか、この世界の未来さえ変えられるモノ。それに違いはないだろう。

 例えば、この空を覆い尽くす塵の排除だとか、コジマ粒子ジャマーだとか。そういったものだ。

 そんな風に考えている間に、大分時間が経ってしまったのだろうか。真改から通信が届く。

 

『……!アンジェ、敵機だ……!』

 

 レーダーを見れば、なるほど確かに敵反応が一つある。しかもそれは単騎。その速度から察するに、恐らくネクスト。

 

 《こちらは、オーメルのパルメットだ。貴様は我々の領内に侵入している。後ろを向いて離脱をしないようなら、容赦なく撃たせてもらう》

 

 ………やっと来たか。ここらのGAの戦力をあらかた片付けたというのに、いつまで経っても増援すらこないから、怖気づいたのかと思った。

 真改に初のネクスト戦をやらせようかとも思ったが、相手はパルメット。一応オリジナルのリンクスで、セロに次ぐAMS適性を持つとも言われている。少々荷が重いだろう。

 

「ふん、遅かったじゃないか。真改、よく見ていろ」

 

 相手はレーザー兵装主体だ。貫通力に優れているそれは、PAに防御の全てを懸けているアリーヤにとっては、まさに天敵とも呼べる武装といえる。

 連射力も高く、実弾兵器並とはいかないが火力もそこそこにはある。非常に強力だ。

 だが、それでも弱点はある。そこにつけこむ為に私がすべきなのは、そう前に出ることだ。

 

 《なるほど、引かない気か。ならばこちらも本気でいかせてもらう》

 

 交戦開始と共にパルメットはオリジナルらしい、お手本通りの引き撃ちをし始める。ピョコピョコと小刻みに小ジャンプをしながら、後ろに下がるというレイヴン御用達のスタイルは、何処かで習ったのだろうか。

 まぁ、そんな小細工などどうでもいい。私にとってそんなものは、羊を遮る柵にも縄張りを守る犬の鳴き声にも劣る。

 確かに強いレーザーライフルだが、それにも欠点はある。それを突くのがこの作戦。

 私がQBで近づけば、パルメットはそれを怖がって後方へQBをしつつ弾幕を張る。私は無理に避けず、致命傷にならないものは甘んじて受ける。

 

 この繰り返しである。だがその繰り返しこそが重要だ。

 レーザーはエネルギーを使う。そして、エネルギーの回復には時間がかかる。QBにもエネルギーは使う。つまり、私がじりじりと近づく毎にパルメットが使うQB分のエネルギー量は増加し、レーザーライフルに使う分のエネルギー量は減るのだ。そうなれば、左腕の実弾ライフル一本となったネクストなど怖くはない。

 逆に、回避の分のエネルギーを削ってもらっても構わない。そうなってくれれば、私は右腕の月光の名を冠する刀をもって切り捨てるだけだ。

 

 オルレアには、左腕に牽制用のマシンガンが装備してある。ミサイルの迎撃から、遠すぎる相手に対する射撃まで用途は広い。そして何より、連射力の高さによってPAを削る事に特化している事が特徴なのだ。そのため、大抵のリンクスはマシンガンの弾を被弾する事を嫌う。ワントリガーで喰らうダメージが他の武器とは大違いなのだ。

 だからこそ、私はそれを使う。マシンガンを相手の進行方向に向けて放つのだ。するとパルメットはこちらの思う通りの方向に進んでいくのだから、これ以上素晴らしい事はない。

 

 相手の回避方向を真後ろに限定し、それが決まった時、私はオルレアのOBを起動して一気に距離を詰める。最早勝負は決まったのだ。多少の犠牲は厭わない。コアだけ、私さえ無事であればオルレアは戦えるのだから。

 散布ミサイル……被弾しないから無視。ライフル……PAが守ってくれるから心配要らない。案の定、回避に忙しいらしくレーザーライフルの射撃頻度は高くない。

 自分で分かるほどにニヤリと笑ってしまった私は、それをやめようとは思わなかったし、しなかった。それくらい自分の技が決まるのは嬉しいものなのだ。

 

 迫る私のオルレアに対して、パルメットの回避は間に合わない。数秒と経たぬ間に距離は詰められ、見事なまでのブレードによる近接戦闘距離になってしまう。

 

 《速い……!くそっ!》

 

 パルメットは自身の両腕武装を放棄し、格納されていたのだろう小型ブレードで対抗してくる。が、彼の放棄、装備、攻撃の三動作より、私の起動、攻撃の二動作の方が速い。

 真横に振ったオルレアの手によって、パルメットは呆気なくこの世を去った。

 

「……オーメルのリンクスもこの程度か」

 

 私の脳に浮かんだ感想は、ただそれだけ。

 通信越しに真改が称賛の言葉を掛けてくるが、それすら無味なものに感じられるくらい、今の私の心は乾いていた。

 

「お前は……今何処にいる?このあおいろの空の下にいるのか?」

 

 私は、彼を殺さなくちゃいけない。……なんでだ?別に殺すことはないじゃないか。

 企業に言われたからでも、私が鴉殺しだからでもない。よく分からない理由で、私は彼を……シャルルを殺したがっている。

 

 なんでだろう。分からない。でも、私はやらなきゃいけない。可能性が……そう、この世界を壊す可能性があるもの全てを。




という訳で設定年を間違っていたり、書き直しまくったりで散々でした。
ACE COMBAT7が出るんだから、ARMORED CORE6も出るよね!ね!
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