これはますます頑張らなくては………
我が儘かもしれませんが、これからの参考にするためにも、評価をつける時はできるだけ、一言でいいのでコメントが欲しいです。
お願いします。
《さぁ、前を向け。そして剣を取れ。前を向かぬ者に、未来はない》
敵のACからその通信が入り、敵機は再びレーザーブレードを構えた。恐らく、私達を逃がそうとは思っていないだろう。
できれば逃げ出したいのは山々だが、先ほどの驚異的なブースター出力からして、背を見せて逃げようとした瞬間に斬られる事は明らかだった。もし仮に
「やるぞ、敵のレイヴン。ブレード勝負といこうじゃないか」
隣にいる彼が驚きの事を言った。まさか、あの機体に格闘戦を挑む気なのか?そんな!無謀だ!彼のACの頭部が少しこちらを向いた。『ここは合わせろ』そう言っているのが分かった。
ここまで言われたら合わせない訳にはいかない。恐らく、どちらかが無視して逃げようとした瞬間に、撃破されるのは目に見えているのだから。
《話が分かる鴉だな。だが、一つ訂正しておこう。私はレイヴンではない》
馬鹿な。ACに乗っているのにレイヴンではないのか?AC乗りは等しくレイヴンと呼ばれるのだが...どうやら話的に、企業のACだからという訳でもなさそうだ。
つまり、彼女がレイヴンでない理由はもっと根本的な所にあるということになる。
《私は
リンクス...『繋がる者』か。つなげる...機体とリンクする...何かそんな物があったはずだと、私は思考を巡らす。確かにあった...そう、AMS技術だ。
AMS技術は、元々義手などを自分の好きなように動かせるように作られたもの。だが、研究とは常に、一に医療、二に軍事、三に娯楽と発展していくものだ。このAMSも例外ではなく、企業の連中に目を付けられて軍事転用でもされたのだろう。
ともなれば、あの機体は彼女の思うがままに動かせるという事になる。そう、あの機体は彼女自身だ...文字通り。
「なるほど、では山猫、踊るとしよう」
「そういう事だ。削らせてもらうぞ」
《できるものならな!》
三者が一斉に動き出す。牽制目的で私のACは右腕に持つマシンガンの弾をばらまく。が、一瞬敵機の周りになにか、電流のようなものが走ったかと思うと...バチッバチッという、何かが弾け飛ぶような音と共に弾は無効化されてしまった。まるでバリアだ。
それならばと、ミサイルを撃てば、それはあの瞬間移動で避けられてしまう。ミサイルすら避けるという、その恐ろしい機動性に私は恐怖した。
「くっ、流石に速い...」
彼はスラッグガンを使って足止めを図るも、当たり前のようにあのバリアで無効化されてそれどころではなかった。
『これだったら、KARASAWAでも持ってくるんだったか』
二人ともがそう思った。
だが、彼女は一向に攻撃してこなかった。確かに、両腕の装備がブレードなのは分かっているのだが、背中には大きなプラズマキャノンを背負っている。あの機動性なら、簡単に後ろに回り込んで撃てただろうに。
「こいつ、俺達で遊んでいるつもりか」
全く攻撃をせず、受け身でいたのは、鴉をいたぶるためだったのか。それともなければ、『FCS』のロックレンジが異様に短いのか。どちらなのかは分からないが、どちらにしてもこれでは埒が明かない。
あのバリア、きっとだが、とてつもない高威力で破るのが正解だろう。
「もしくは、あのバリアの中に入ればいい」
気づかぬ間に声に考えが出ていたらしい。もう一つの案を言われてしまった。
確かに、彼の案は最も確実にそのバリアを貫通できるものだった。バリアの中に入れば、バリアなど関係はない。それに、その距離なら間違いなくスラッグガンも、マシンガンも、チェインガンもその瞬間火力を発揮するだろうし、それにあの機動力をもってしても至近距離ならばグレネードを当てられるだろう。しかも、ブレードだって見込める。
だが、それは諸刃の剣である。近づくという事は、彼女の持つブレードにバラバラにされる覚悟がいるという事だ。喰らえばまず助からないだろう。私には、その一歩が足りなかった。
しかし、彼にはそれがあった。恐れずに突き進む、その力が。
「俺は行く。あの山猫、潰すぞ!」
《来るか!面白い!》
山猫の機体が持つ、高出力のレーザーブレードと、伝説の鴉が使う、これまた高出力のブレード『MOONLIGHT』が交差する。光の固まり同士が交差し、同威力の粒子が合わさり、拮抗状態に陥ることで鍔迫り合いに発展...しなかった。
結果的に、山猫は肩についていたインサイド装備を失い、鴉は持っていたライフルの先半分がなくなっていた。どういうことだ?と首を傾げる。
MOONLIGHTは強い。一撃でACを撃破する事すら夢ではない程にだ。だが、欠点もあった。重い事も確かに欠点の一つではあったが、それよりも致命的な事があった。気づいた人もいるかとは思うが、そう、EN消費が馬鹿みたいに高い。一振りすれば、並みのジェネレーターの容量を6割は持って行ってしまうぐらいには燃費が悪いのだ。よって、彼はOBで緊急離脱を図ろうとするも、そのENすら微妙なところだったのだ。
「EN管理を怠るとは、初心者じゃあるまいし、くそっ」
忌々しそうな声をあげて、彼は機体を少しでも動かそうとする。だが、到底避けれそうにない。
このままでは彼は死んでしまうだろう。それは嫌だ。そう思ってしまう。折角友人になれたのだ。ここで彼が死んでしまったら意味がないのだ。死なせるわけにはいかなかった。
急いで機体のOBを起動させる。1秒ちょっとの間に機体のエネルギーをかき集め、たった一つのブースターに集中させる。電力がそこに集まり、何かを吸い上げるような特徴的な音と共に、私の身体はシートに叩き付けられた。急加速によるGの負荷は、ジェットコースターなんかの比ではなかった。
そして、速度を800㎞/h以上に保ったまま、機体にぶつかる。金属の固まり同士がぶつかり、ガリガリという嫌な音を立てて削れていく。
「なっ…お前…!」
《ほう、そう来るか。面白い。これがレイヴンか》
私がぶつかった―正確に言えばぶつかりに行った―のは、彼の、レイヴンの機体ではなかった。まさか私も、助けて自分が身代わりになんて思っていない。目標が達成できても、自分が死んだら元も子もないのだから。
だから、山猫に当たることに決めた。彼が接近戦は有効だと照明してくれたのだ。やらない手はない。だから加速を落とさずにぶつかりにいった。案の定、こちらのAPも一気に10%近く削れてしまったが、問題はそちらではなかった。
APが、徐々に削れていたのだ。
まさかと思い、熱量計に目を向けたがやはり問題はない。つまり、熱暴走によるAP減少ではない。だとしたら、このダメージはなんだ?
「これは...なるほど、あのプラズマか」
彼のACも機体のAP減少警報が出たのだろう。この異常に気が付く。しかも、原因も大体は分かったようだ。
「いいか、あの機体には長時間張り付くな。あのプラズマ波が原因だろう...いや、あの機体がまき散らしてる緑色の粒子もか。どちらにせよ、長居は無用だ。いくぞ」
音声通信なのに、頷いて返事をした。そのまま彼と私は鴉として、山猫を殺すべく踊った。
彼女が一振りすれば、私達はそれぞれがブレードを振って答え、それを見た彼女は、あのブーストを使って右に左に避けた。鍔迫り合いができないのを知ってガッカリした様子だった彼女は、この動作を繰り返しているうちに楽しそうな声に変わっていた。
《レイヴンという者は面白いな!私をこんなにも楽しませてくれる》
実に楽しそうにオープンチャンネルで会話してきた。まるで、戦場での会話ではないようだ。
《シミュレーションで社内の連中とも手合わせしたが、本物はまるで違うな。これほどまでに強いとは》
この戦場を自らのものにしようとした山猫は、もはやそこにはいなかった。ただ、彼女という戦士が鴉と踊っているにすぎない。
時も忘れ、武装やスタビライザーをお互いに少しづつ減らしながら斬り合いを行っていた時、突然それは起こった。いや、それは降ってきた。と、言うべきか。
《『オルレア』何を鴉二羽にてこずっている》
それは増援だった。それも、彼女の乗る機体―その増援の言っていたオルレアがそうらしい―と同系統の。つまり奴も山猫なのだろう。だが、問題は増援が来たことではなかった。私達が思っていた問題とは、ズバリその増援が現れた方向にあった。
敵の追加注文の配達は、味方がいる方から来たのだった。慌てて他のレイヴンと連絡を取ろうと試みるが、それは無駄に終わってしまった。その通信を受け取る者が既にいなかったのだ。
《まぁいい。まずは、そのACを撃破する。一気に畳むぞ》
真っ黒のその機体は、ブリーフィングで見た機体であった。オルレアは近接装備であったために対処法が幾らかあり、なんとかなったようなものだが、あの機体はダメだ。射撃戦とはそれほどまでに厄介なものだ。
流石にこれは不味い、逃げなければ。そう思ったその時であった。
『そこのAC、聞こえるか?対空砲を落としてくれてありがとな。じゃっ、爆撃開始する。巻き込まれるなよ!』
通信がいきなり入った。
空を見上げれば、そこには大量の爆撃機が空をわが物顔で突き進んでいた。地獄に仏。修羅場に援護射撃であった。
《ちっ。爆撃か!こちら『シュープリス』防衛に回る!運が良かったな、レイヴン。だが、次はないぞ》
増援のリンクスがそう言うと、オルレアもそれについて行ってしまった。本社が爆撃されないように防衛しに行ったのだろう。
全くもって、散々な目に合うものだ。
必要ない装備を全て棄てて、できるだけ機体を軽くする。またあの二機が戻ってこない内に、私達はOBを使って一気に脱出ポイントまで急いだ。
⑨
レイヴンというものは初めてみた。勿論、国家群に喧嘩を売る前段階として、レイレナード社が独自に用意したシミュレーションシステムに、ACとの対戦プログラムも入っていたが、所詮はCPUである。弱かった。
その弱いノーマルACとしか、手合わせをしていないアンジェからすれば、自分達リンクスが扱う新兵器『ネクストAC』からすれば、そんな旧世代の機体なんて相手にもならない筈であった。
だが、国家群が行った、AC多数による本社襲撃作戦。その時にアンジェは自分の考えを全く変える事にした。
機体の機動性も、プライマルアーマーによる防御力も、そして装備する武装の火力も。いずれもノーマルACを凌駕する性能の自分の機体『オルレア』は、たった二機のACに翻弄されそうになっていた。
何故だ?と自分に問う。実際、最初に相手―と言っていいか分からないほどに弱かった―した敵機はここまで良い動きをしていなかった。むしろ、案山子かと思うくらいには弱かったと思う。
だが、あれはなんだ?
ネクストと対等に渡り合うため、ACが持つ最も素早く移動するための力
このOBを利用した機動は、最初私から向かって左側にいる、オルレアに装備したMOONLIGHTに匹敵する強さを誇るレーザーブレードを持った機体だ。しかし、アンジェが本当に目を見張ったのは、もう片方のACだ。
《面白い。これがレイヴンか》
この言葉は、そのACに向かって言ったものだ。あの咄嗟の判断は恐ろしかった。機体をぶつけることまでなら、どんな粗製でもできるだろう。だが、こればかりはあの場所でタックルされた側でないと分からない。
あのACは、ぶつかったあの瞬間に補助ブースターでさらに加速を付け、手に持ったマシンガンを頭部に押し付けてきたのだ。
偶々かもしれない。レーザーブレードを発生させなかったのは、ただ単にENの消費をケチっただけかもしれない。だが、それでもアンジェはそのACが面白いと思ってしまった。
ネクストの機動も、装備している武装からして、本来あまり得意ではないはずのブレードを使った戦闘も、味方ACのOBを使った戦い方も。全てを戦場で見て学習し、その場でその技術を使っている。
まるで、スポンジのように…いや、まるで掃除機のように周りから技術を吸い取っていく。教えようとしなくても、無理やり技術を吸い取られる。
そんな彼が面白いと思ってしまった。
《『オルレア』何を鴉二羽にてこずっている》
ああ、邪魔が入ってしまった。
通信してきたのは、レイレナード社の中でも最も強いとされるリンクス、ベルリオーズであった。
生粋の軍人である彼の事だ。恐らく、もう彼らレイヴンと剣を交える事は不可能なのだろう。そう、アンジェは悟った。
予想通り、ベルリオーズは一気に潰す気であった。アンジェが彼ら二人と斬りあっている間に、ほかの鴉を根こそぎ撃ち落としてしまった彼は、もう終わらせる気であったのだ。
しかし、二人とも。いや、この場にいる全ての者が失念していたことがある。
ACの依頼内容は、対空設備の破壊であって、敵不明戦力の撃破ではないのだ。
社内より、緊急通信が入ったアンジェとベルリオーズは、心底驚いた。
『おい、リンクス!ACなんか構っている場合じゃない!爆撃機が来ているんだ!』
まさか!そう思い、アンジェが空を見上げたその時であった。
ベルリオーズの駆る機体『シュープリス』のすぐ横に、200kg級爆弾が二個程落ちてきたのだ。
有澤製のグレネード数個分に匹敵する、その強力な爆弾は、直撃こそしなかったものの、シュープリスのプライマルアーマーを一瞬で削り、そこそこの量のAPを削っていった。
それにベルリオーズは小さく舌打ちをし、本社へと向かうその機体を見て、アンジェへと通信を行った。
「戻らないと、本社がパーになるぞ。そのACはひとまずいい。早く戻るんだ!」
自分とてレイレナードのリンクスだ。そんな事言われなくても分かってはいる。仕方なく彼らとの戦闘を中断して、OBを起動させる。
プライマルアーマーを形成していたコジマ粒子をひとまず機体に吸収。その後、OB内にプラズマに再変換したコジマ粒子をチャージ。
プラズマの貯蔵量が一定量に達した時、一気に放出するのだ。
そうして、迎撃へと向かう彼女は、一つの誓いを立てた。
(あのACにもう一度会う。そして、その鴉を殺す)
だから、絶対に落ちるんじゃないぞと。そう願いをも込めた誓いを立てる。
それは、戦士の誓いにも、恋する乙女の願いにも聞こえた。
ちょっと短かったかな。
次回は国家解体戦争編の山場かなと。