その方が真改と絡ませやすいですし。
もうちょっとでリンクス戦争編突入ですね。
今回の話は、起承転結でいう『転』になりますので、少し話の雰囲気が変わります。
今歴史の教科書に載っている、国家解体戦争だが…あれ、戦争が起こってから終わるまで、どれくらいかかったと思う?
一年?いいや、違う。二年!?増やしてどうすんだよ!...もっと短い。
いいか、一ヶ月だ。いや、正しく言うなら一ヶ月足らずってところか。まぁ、これも別に正しい期間じゃないがね。
戦争の勝者が決まったのは、三週目の木曜日だ。どうだ?これは教科書では教わらないだろう?
俺や、その当時からの生き残り達は、その戦闘が行われた場所を『円卓』と呼んでいる。
その理由を教えてやろう。その日、我々に何が起きたのかを。
⑧
~戦争勃発から15日目~
この戦争の結末は、もう既に決まっているようなものだった。国家がそれぞれ保有していた戦力は、企業の持つ戦力『ネクストAC』によって壊滅的な被害を受け、既に企業に屈した国がいくつもあった。
それでも、私たちの仕事が無くなる事はないのだ。もはやこの地上にいる鴉は26人となり、その生き残ったレイヴン達も、これから山猫の狩りによって数を減らしていくだろう。
だが、私達鴉の時代はいよいよもって終わりに近づいているらしく、戦場を転々とする中、企業の部隊による奇襲攻撃も目立ってきた。そのせいで、私達はこれまで頑張ってくれた輸送機を失い、それに乗っていた整備士達も死んでしまった。
「約束されていた、軍からの弾薬補給はナシ。燃料は敵ACやMTから奪えてはいるが、大規模な修理は望めない。こりゃ詰んだか」
「そもそも依頼してくる国家が減っているのもあるしなぁ。企業が俺達を雇ってくれるとも思えん。だが、どうにかして生き残る方法を探さなくては。」
私達は、いなくなってしまった整備士の代わりに、自分のACを修理し、弾薬を入れとかなくてはならなかった。こんな風に自分のACを整備するのは、レイヴンになりたての頃以来であり、なんとも懐かしい感覚におちいっていた。そんな中、こういった世間話をするのである。
あの三機を撃破した後、一週間が経った今日までに、私達は様々な依頼を受けてきた。
一つ目は補給基地の防衛。これは中々楽だった。想定外の事が、敵のMTが地中進攻してきた事ぐらいだったからで、そのMT自体はそこまで強くもなく、一瞬で片付いた。私達がいなくなった後で、その基地が再び攻撃されようが知った事ではないので、報酬だけ貰ってあとは逃げた。
二つ目は敵爆撃部隊の撃破。空を埋め尽くすほど多い爆撃機まではなんとか撃破する事ができたのだが、その後に出てきたもう一つの物体が問題だった。
それは、あえて言うならUFOのようなもので、プカプカと空を浮かんでいると思ったら、いきなり極太のレーザー砲で攻撃してきたのだ。後から聞いたところ、あれは『フェルミ』というレオーネメカニカ製の飛行要塞らしく、あのネクストと同じバリアを展開し、高威力のミサイルやレーザーで砲撃してくるという恐ろしい兵器だった。
その任務は弾薬の関係で撤退せざるをえなかったが、あのまま戦闘を続行していたとして、撃破できたかと言われれば、かなり厳しいと言わざるを得ない。
他にも色々とあったが、最も印象に残ったのは、やはりネクストとの戦闘だろう。
戦場に取り残された、二個戦車大隊の撤退支援に行ったところ、なんと戦車部隊を攻撃していたのがネクストだったのだ。戦車の砲弾も、ACの射撃武装も効果がないように見えた時、一週間前、企業のAC相手に二対一の状況で、余裕の勝利を見せた彼が全兵士にむけて通信を行った。
「あのバリア...プライマルアーマーは射撃をしていればすぐに剥がれる。当てることだけに集中しろ!プライマルアーマーさえなければ、俺達の攻撃でも通る!」
その言葉を聞いて、戦車部隊は一発の火力ではなく、当たりやすい近接信管機能が付いた、対装甲散弾へと弾種変更を行い、私達もそれぞれガトリングとチェインガンを中心に、プライマルアーマー-以下PA-を剥がしに向かった。だが、そのネクストはPAを剥がすように戦った瞬間、戦車を数両撃破したら逃げるように去っていった。
____________
そして今日。再び依頼が秘密通信によって送られてきた。
輸送機に乗っていたのは、整備士達だけでなく、オペレーターもそうだったので、もはや依頼を整理してくれる者すらいなくなっていた。
『今回の目標は、敵部隊の殲滅となっています。こちら側の戦力は、今その時点で生き残っているレイヴン全員。相手の戦力は、ネクスト一機以上となっています』
『本作戦において、こちらから詳細な説明はございません。そちらに戦闘は任せます』
いかにも馬鹿にしたような説明。またか、と言いたげな彼に、私も賛同しない訳がなかった。
恐らくだが、私達レイヴンを全滅させられる状況を作る代わりに、国家側の重鎮達は、保身の約束でもしたのだろう。最も、その約束も守られるのかは知らないが。
「だが、今日行かなくとも、じきに俺達は世界から姿を消す事になる。文字通りな」
「今行って死にに行っても、後から殺されに来られても、どちらにせよ、変わらない。かぁ」
ネクストの参加した戦場での、レイヴンの死亡率は異常だ。軽く90%を超えている。ただでさえ、この間の戦闘で死にかけ、なんとか生き残ったのである。その命をわざわざ無くすなんて、そんな無駄な事はしたくない。
しかし、時代がそれを望んでいる。私はロマンチストではないが、どの道私達の時代は終わった。それだけの事だ。
「なぁ、知っているか?」
彼が口を開く。
考えている間に、スープを作ってくれたらしい。冷える夜には嬉しい一杯だ。
「『In The Myth,God Is Force.』という言葉」
「英語か?…『神話において、神とは力の事である』ねぇ。どこかの哲学者の言葉か?」
「俺も人から聞いた言葉なんだが、そいつが言うには、昔、俺達と同じ様な傭兵が言った言葉らしい。だが、どこの神話から引っ張ってきたのかも、分からないらしいがね」
「へぇー。ACがない時代の傭兵なのかね」
「たぶんな。だが、その言葉を言った傭兵は戦車兵だったらしいが、MTが登場した時に、時代からその名を消したって話だ」
その話の流れからするに、MT乗りでも、そんな事を言った奴がいたに違いないって言いたいのだろう。そして、そいつも俺達レイヴンによって消された。
つまり、今度は俺達の番だと。そう言いたいらしい。
「だけどな。そいつはこうも言っていたらしいんだ。『好きなように生き、好きなように死ぬ』とな」
「『誰にも縛られず、誰にも指図されずに』か」
まさに傭兵、と言うべき言葉。だが、それは今の私達にピッタリの言葉であった。
昔の傭兵はこんな毎日だったのだろうか。
そんな風に考えていたら、同じスープを持って隣に座った彼が、まるで少年のように笑いながらこちらに聞いてきた。
「どうだ?どうせ最後なんだ。昔の傭兵みたいに、暴れて、足掻いてみないか?」
その言葉に吸い込まれるように、私はついていく事に決めた。彼のその言葉は、強制力はないはずなのに、まるで誘蛾灯のように人を引き寄せる力を持っていた。
「好きなように、な」
依頼主が指定した日にちまで、あと4日ある。その間に準備を整えなければならない。
⑨
翌日、私達は最も必要としていたものである、弾薬を入手するために、とある場所にある物資集積所へとACを動かしていた。
この集積所は企業のものではない。そう、国家側の軍の物資集積所なのだ。私達は、あの依頼をよこしてきた彼らを味方扱いする気はもうなかった。
《そこのAC、止まれ!レイヴンネーム、登録ナンバー、を答えよ》
「言うのか?」
「まさか。じゃ、行こうか」
問いかけてきた兵士の言葉を無視し、私達は進む。繰り返し通信が入るが、それも無視する。煩かったので、チャンネルを切ってしまった。
すると、通信設備が故障していると捉えたのだろうか。兵士は、拡声器を持って、私達に叫んでくる。
《とまれ!止まらないのなら、こちらも行動を起こさないといけない》
その叫びは、確かにACの集音機能によって聞こえていたが、それでも返事はせず、ただひたすらに集積所に進む。
兵士は、こちらが応答しないのを見て、無線機にむかって怒鳴り始めた。
「流石にこちらから仕掛けるのはナシだ。まずは相手に一発撃たせる。その後は」
「自由、ね」
「そういう事」
集積所の倉庫から、二脚型のMTが数機出てきた。そして、120㎜対戦車砲を積んだ、軍隊の最新鋭戦車まで出てくる。空にはヘリコプターがわんさかと浮かび、こちらが完全に包囲されていると言わんばかりだ。
MTが積んでいる機関砲が、こちらに向く。戦車の砲塔がこちらを捉え、コックピットがあるコアを狙っているのが分かる。
殺意を向けられる。恐らく、こんな時に企業以外と戦闘は極力避けたい。もしくは、レイヴンはこちらの味方ではなかったのかと、そう思っている事だろう。
張り詰めた緊張感の中、全く話に応じない私達に、完全に敵意を向けたのかどうか知らないが、相手の部隊長が声を張り上げた。
《全機、一斉射撃開始!正体不明機への攻撃を開始せよ!》
その声と共に、私と彼は、それぞれ別の方向に、OBを使って逃げ始めた。
一瞬のチャージ時間の後に、元いた場所に砲弾が次々と着弾し、岩と地面を抉る。後ろをちょっと見れば、そこだけ不自然に地形が変わっていた。
MTや戦車は確かに火力は高い。ACも火力はあるが、一発の威力であれば戦車に劣るし、射撃の安定性であればMTが勝るに違いない。勿論、一部の例外を除いてではあるが。
では、ACが他の兵器よりも優れている点は何か。それは、機動性の高さである。
ネクストの機動性には流石に及ばないとしても、通常のブーストでさえ、機動性特化機体であれば最高で時速500㎞以上でるものもあるし、OBを使用すれば800kmは平気で出るのだ。
そんな機動性は、戦車は勿論、元が作業用重機であったMTにも不可能なもので、戦場では未だにその機動力は通常戦力にとって脅威である。
《くそっ、当たっているのか!?》
《散弾だ!まずは散弾で動きを止めるんだ!》
近接信管は、流石に避けるのが難しくなってくるので、そろそろ仕掛け時かと判断する。右腕に持っていたリニアライフルと、左肩に装備したマイクロミサイルを起動させ、ロックオンを開始する。
恐らく、戦車の中ではロックオンアラートが鳴り響いている事だろう。
リニアライフルから、高速でHEAT弾が発射される。二次ロックをしてから発射されたその弾は、戦車に吸い込まれるように直撃し、一発で大破まで持っていった。
戦車は、正面装甲こそ分厚いが、天板は装甲が薄くなっており、どれだけ分厚くても80㎜の鉄板を貫通できる砲なら撃破が容易だ。その点、ACはその10mほどある全高を生かして、殆ど真上から攻撃ができる。
ミサイルを攻撃ヘリに向けて照準し、6機をロックオンしたところで発射する。ヘリは回避運動を試みたようだが、当然避けられる訳もなく、全てが直撃し撃破する。
MTは、別のもう一機のAC、彼の機体によって撃破されていた。
小さくブーストし、ピョンピョンと跳ねるようにして移動しながら、MTを一機づつ丁寧に破壊していく。
高い衝撃力を持つ弾薬を発射するハンドガンと、レーザーブレードを主体にした近接戦闘で、敵を翻弄し、撃破数を伸ばしていく。
二分後には、駐屯地内の全ての部隊を撃破し終わり、物資を回収しようとした時。その時であった。
《救難信号が出たもんだから、何事かと思って来てみれば。なんと、こういう事だったか》
自分達から見て西に400mほどの所に、ACが立っていた。いや、佇んでいたと言うべきか。
そのACには脚はなく、戦車と同じ、キャタピラを装備したもので、いずれのパーツも重装甲のものであった。武装も大型の強力なものばかりで、バズーカやプラズマキャノン、グレネードキャノンなど、かなりの重武装だ。
こんなACを乗るレイヴンは一人しかいない。Aランク6位のレイヴン、クレイトンだ。
人探しを数年間続けている彼は、傭兵の中でも比較的常識的な人物で、人情溢れる…まではいかないまでも、少なくとも非情なものではなかった。
《今は企業を落とすために協力する。そういう話ではなかったか?》
彼もネクストとの戦闘を2回行い、見事に生還しているのだ。これだけでもかなりの腕前だという事が分かる。だが、それでも私達は怯む事はない。
「先に補給の約束を破ったのは国家だ」
「それに、俺達を捨て駒のように扱っている。というのも気に食わん。あの依頼、見ただろう?」
補給の話については唸ったクレイトンであったが、続いて私が口にした、『依頼』の話を聞いて、彼は急に声色を変えて聞いてきた。
《依頼?なんだ、それは。わしはここ三日間何も依頼らしいものは来ていないが…》
それは、怒っている声ではなく、ただただ困惑している声であった。そんな彼の言葉に、私と彼は、話をしてみようという気になり、昨日来た依頼の内容について話してみた。
生き残っている全レイヴンを投入し、企業の新兵器『ネクスト』を撃破するという作戦が伝えられた事。
作戦の詳細は決められておらず、全て傭兵である私達に委ねられているということ。
お決まりの如く、報酬金が莫大であった事。
《なんと、そんなものがあったとは…だが、わしの所にはそんな通信なかったな。いや、違う依頼はあった!駐屯地を順に周りながら、適当に暴れている連中を撃破しろ。だとか…》
「全部お見通しだったってことか」
《成程な。どうやらこの戦闘、どちらにとってもいい事はないと見える。どうだ、ここは一つ、矛を収めるとしようじゃないか》
戦闘モードを終了させ、巡航モードへと移行した事を通信越しにわざわざ証明したクレイトンは、そのまま私達の下へとACを走らせてきた。
そして、せっかくだから。と、燃料や弾薬を駐屯地で補給した後、三人で現状の確認をする事にした。
クレイトンは如何にも老兵といった出で立ちで、剥げてはいないものの、その白髪が年齢をよく表していた。髭はボサボサで、少し顔がいかつい事さえクリアすれば、赤と白色の服を身にまとい、プレゼント一杯の袋を担いでサンタの真似事ができそうだった。
そんなクレイトンを前にして、私達が言ったのは、企業の思惑についての考察であった。
「あの連中は、きっと、俺達を生贄にして生き延びるつもりなんだ」
「ふむふむ」
「だが、俺達もむざむざ奴らのために死ぬつもりはない。だから」
「だから、手始めに彼らが君達に送るのを渋った物資、それを得るために、この駐屯地を襲った。そうだろう?」
その言葉に私達二人は首を縦に振った。いかに私達が20を超えた大人だとしても、クレイトンにとっては、子供とも言えるくらいには歳が離れていたため、妙に貫禄があった。
クレイトンは決して私達を否定せず、頷き、時には共感してくれた。
「なるほどな。別の奴も妙な依頼が多いとは言っていたが...まさか、本当に、国家の連中は我々鴉を盾にするという訳か」
「散々レイヴンのお陰で甘い汁を吸ってきたってのにな」
「だが、確かにそりゃ、奴らがやりそうな事ではあるな。それに、わしが聞いた依頼はどれも...どうも、ネクストとかいうのに、鴉をぶつけようとしているようにしか思えん」
米神を押さえ、「うぅむ」と、クレイトンは唸った。どうも、心当たりがあるらしい。
そして、沈んでいく太陽と、自身のAC、そして、私達二人をそれぞれ見た後、暫く目を瞑って一人黙って考えたような恰好をした。いや、まぁ、実際深く考えていたのだろう。
だが、その後の行動は早かった。
「よし!じゃあ、お前たちの事を信じるとしようか!」
「え!?それでいいのか?」
流石に耳を疑う話であろうに、彼は清々しい程ににっこりと笑って、私達の肩をそれぞれ掴んで、背中をバシバシと叩いて言った。
「わしも何者かの陰謀で死にたくはないんでな。どれ、お前たちのその依頼、いつに行われるんだ?それまでに準備をしようじゃないか」
クレイトンの異様なまでのノリと、その調子に、少し違和感を抱き、調子が狂うような気になりながらも、私は心の底で少し喜んでいたのかもしれない。
その話し方は、私の死んだ祖父にそっくりだったのだ。
前回拾ったパーツは、まだ使えません。まともに修復ができていないのでね。
リンクス戦争編に入ってから、使う予定です。
あと、最初に溜めてたストックが、切れちゃいました。
これからは少しペースが落ちるかもしれません。