妖精と呼ばれた傭兵   作:vitman

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反動で短くなっちゃったけど投下じゃーい

クレイトンさんの戦闘はカットに決定しました。
まぁ、元々あっても、タンクだから動きがね...ないの...書きずらいの...

ところで皆さんはAC4・faの初期機体何にします?
私は速攻でアリーヤに決めて、速攻で後悔しながらアンジェと決闘する人です。
真面目にやりたい人は、イクバールかローゼンタールがオススメです。


強さと願いと

 作戦開始前の事だ。

 いつもは私と全く口を利かないアンジェが、私に話しかけてきた。あまりに珍しい事だったので、柄にもなく二つ返事でその相談に乗った。

 彼女は私に一枚の写真を見せてきた。それは、ノーマルACの写真で、残っているレイヴンの中で、ランク1のレイヴンと共に行動をしているという事で、私達リンクスの中でもそこそこ有名な者だった。

 そして、私はそのレイヴンを知っているし、見たこともある。以前、レイレナード本社を襲撃しにきた大規模AC部隊の一機だ。その時、二機だけ撃破できなかったACのうちの一機である。

 

 どうも、アンジェはそのACが気に入っているようで、「そのレイヴンが戦場にいたら、私に彼と一騎討ちをさせて欲しい」と言っているのだった。

 彼女は以前あのACを仕留めなかったという、とんでもない前科があるのだが、私は私で、鴉のトップに興味がないとは言えなかったし、彼女の言う事が分からない訳ではなかった。

 私達は企業のリンクスである前に、一人の戦士なのだ。

 

 だから、私は彼女の頼みを受け入れた。BFFのリンクスである、メアリー・シェリーにも伝えた。プライドの塊である彼女に話が通じるかはだいぶ不安だったが、予想外なほどに簡単に承諾してくれた。

 なんでも、彼女も過去に殺し損ねたレイヴンがいるのだそうだ。

 

 私は今回参加する作戦で、この戦争の終わりが一気に近づくと思っていたが、これはまた、一波乱ありそうだ。

 

 

 

 

 ____________

 

 

 

 

 

 目の前にいるのは鴉の王。今まで屠ってきた鴉達とは、確かに覇気が違う。たかがノーマルと言って侮れないということらしい。

 相手は高機動近接機で、私の機体、アリーヤと似たコンセプトらしい。つくづく私とは、戦士として似ていると感じる。ただ、彼は企業に属さず、戦場を飛び回る鴉で、私は山猫として生きている。

 その違いは、大きい。それを証明するのだ。

 ただの企業の飼い猫ではない事を。戦い、データを取る事しか価値がない実験体ではない事を知らしめるのだ。

 

「鴉の王、その実力見せてもらうぞ!」

 

 QBを使用し、地を高速で移動する。そして、両手のライフルをロックオンした鴉に向けて連射する。瞬間火力に優れた左腕のライフルと、精度に優れた右腕のライフルを秒間2発づつのペースで撃ち続ける。

 が、当たらない。

 夜間と吹雪による、視界の悪さと、森林という、障害物の多さを駆使し、上手い事躱しているのだ。

 

 設計上、アリーヤの頭部のカメラ性能は悪い上に、夜間戦闘に有用なサーマル機能はついていなかった。対してACのカメラには、標準装備として、暗視カメラが装備されている。

 結果、私はあの鴉の位置をブースターの噴出炎と、射撃装備のマズルフラッシュだけで割り出している状態になっており、これが相手が有利な状況を作り出していた。

 

 しかし、どれだけ中身の人間が優れていても、機体の性能差ではこちらが数段上なのだ。

 今この瞬間ですら、鴉の攻撃は全てプライマルアーマーが防いでいる。鴉の装備はショットガンとマシンガン。単発は低い。少し距離を放して撃ち合えば余裕で勝てる。

 

「悪いが...潰すぞ!」

 

 レーダーに映るマーカーと、相手のブースターの光を見て、マニュアル照準でライフルを連射し、装甲を削る。当たった時は着弾音がしっかりとするため、すぐに分かる。

 だが、このままやれると思った時は大抵、面倒な事が起こるものだ。

 

 鴉が消えた。文字通りにだ。

 レーダーからも、ブースター炎も消えた。これではこちらは何も見えない。唯一音が頼りだが、すぐ近くで戦闘している、BFFの女帝とタンクACの戦闘音で細かい音が聞こえない。装甲を削る着弾音はしても、ACの足音まではマイクが拾ってくれない。

 

「この感じ、マズい」

 

 そう思った瞬間、ロックオン警報がコックピット内で反響する。方向は背後だ。鴉はブースターを切って、歩いて移動したのだ。しかも、ご丁寧にインサイド装備のECMまで使ってだ。

 後方を取られれば、AC同士の戦闘では、ほぼ負けを意味するという。確かに、真後ろに旋回するより、後ろにずっとつけるように移動する方が楽だろう。

 

 鴉のショットガンとマシンガンが火を噴く。先ほどよりも近い場所での射撃のため、かなり多くの弾を喰らう。PAを展開する性能がかなり優秀なこの機体なら、そう易々と致命傷を喰らう事はまずないだろうが、このまま背後を取られっぱなしなのは、私のプライドが許さない。

 山猫としても、戦士としても、軍人としても、だ。

 

 左右のサイドブースターの出力を瞬間的に最大まで上昇させる特殊機動、QB(クイックブースト)をそれぞれ逆の方向に噴射し、180度機体を高速旋回させる。ACではとても無理なその動きは、QT(クイックターン)と呼ばれている。

 そんな急旋回で後方へと視線を向けると同時に、射撃するも、そこにも鴉はいない。

 

「どこだ!?...上か!」

 

 AMSを介し、機体に上を向くように命令を送る。手で操縦するよりも、素早い動きでカメラを上空に向けると、吹雪の中に確かに鴉がいた。対処がしにくいトップアタックだ。回避をするも、被弾が生じ、PAの減衰が進む。かなりペースが早い。

 ライフルを連射するも、鴉はすぐにECMを発動させ、ロックを解除されてしまい、その隙に暗闇と吹雪の中に消えてしまい、姿が見えなくなる。最悪だ。

 

 完全に相手の策に嵌っている。アリーヤの弱点である、カメラ性能の不足を突いてきているばかりか、夜間戦闘がネクストにとって、かなりのハンデになるのを知っているかのような動きだ。社内に内通者がいるのかと、疑いたくなるほどに、鴉の戦術は素晴らしいものだ。ネクストを相手に、地理や気候等の状況まで使い、5分5分までもってきている。

 

 こんな風に、ゲリラ戦のようなヒット&アウェイで確実に削ったり、教科書通りの引き撃ちを行ったり、はたまた地面を蹴り上げ、ネクストのメインカメラに雪を被せるなんていう芸当までしてくる。

 さすが、鴉の王。他の奴らと同じ様にはいかないらしい。

 なら、私も相手が予想できないような動きをするしかないだろう。企業からはやらないように、と釘を刺されているが、相手が相手なのだ。どうせ、後から報告書を普段の数倍出されるだけ。死ぬよりも、いい。

 

 モニターから、AMSのシステムを少々調整し、普段以上の感度を発揮できるようにする。これをすれば、私の精神負荷は高くなるが、機体の機動は今以上に思い通りになる。そして、幸運な事に、AMSシステムの適正が高い私は、元の精神負荷が低いため、これをしてもそこまで辛くはない。

 これでダメなら諦める他ない。全力で行くだけだ。

 

 イメージする。どうすれば、相手が現れるかを。

 考える。自分ならどこから相手を襲うかを。

 行動する。その考え通りに。

 

 鴉であっても、山猫であっても、戦場に立ったからには一人の戦士だ。

 考える事、戦術は大差がないはずだ。それを読めれば

 

「勝てる」

 

 横に移動。目立つようにQB。

 ミサイル攪乱用に装備している、フレアを展開。それの噴出炎を照明弾代わりに索敵を行う。視界を最大限にして探す。あらゆる動きを見逃さない。

 そして、鴉が羽根を落とす。フレアが放つ僅かな光を避けようと、少しではあるが、ブースターを使ったのだ。

 

 PAに使っているコジマ粒子を回収。粒子をプラズマ化し、エネルギーに変える。そうして生まれた莫大なエネルギーを用いて、メインブースターとは別の高出力ブースター、オーバードブースターを使う。一瞬で速度計に4桁が並び、移動時の衝撃波で地面が抉れる。

 そうして近づき、やっと、鴉を確認する事ができた。

 

「今までの授業料、払わせていただく」

 

 宙に浮く軽量機に、ライフルを何発も当てていく。装甲が削れ、肩などの脆い部分は破損しているのが見える。あちらの攻撃は殆どがPAで阻まれ、この機体にはダメージが全く入っていない。

 確実に勝てる。そう思っていたのだが、完全に失念していた。ACの装備は両手に持っているものだけではない。

 相手は背中に装備していたキャノン砲をこちらに向けた。しかも、ただのキャノン砲ではない。レーザーキャノンだった。何が不味いかと言えば、レーザーはACの装備する武器の中で、PAを貫通し得る数少ない武器であり、そうなれば元の装甲が薄いネクストは、簡単に撃破されかねない。

 だが、そもそも当たるつもりはない。無数にばら撒かれるマシンガンと違い、単発で撃ってくるのであれば、()()()()()()()()()()()()()()()()。それに、ACは背中に装備するキャノン系武装は、CPUの性能もあって、地上で、しかも命中率を上げるために構える必要があるという。ならば、その隙に攻撃する事も可能だ。現に、今までの鴉はそうやって撃破してきた。

 

 またロストするわけにもいかないため、リスクを承知で近づく。距離は80。射撃戦としては短い距離だが、アリーヤの得意な距離でもある。

 持前の射撃精度と運動性を両立した腕部を用い、ライフルを当て続ける。焦る心を落ち着かせ、時々地上に降りて撃ってくるレーザーを回避し、更に反撃をする。

 

「何かがおかしい」

 

 レーザーキャノンを使い始めてからというもの、鴉は模範的な動きしかしなくなった。

 模範的というのは、教科書通りという事で、これをしておけばとりあえず間違いないだろう動きである。が、それ故に読みやすいのだ。

 鴉の動きは、数分前の動きに比べ、各段に読みやすく、対処しやすい。ここまでくると罠を疑いたくもなるが、それはそれでいい。鴉がそんな事をする前に叩き潰す。

 

「そう、これは好機だ。一気にいく」

 

 レーザーキャノンを無視し、一直線に突っ込む。元々そこまで距離が離れていない事もあり、容易に至近距離まで近づく。そして、左腕に持っているライフルを構え、QBを使い、更に加速する。

 加速した状態で、その構えたライフルで、突く。

 元々空気抵抗の軽減のためにつけられた、この整流ブレードは、かなり頑丈に作られており、簡易的な近接装備としても利用可能なのだ。以前整備士から「近接装備では決してない」と言われたが、使えるものは使う主義な私としては正直言って、関係なかった。

 

 そして、ライフルによる突きは確かに命中した。流石にこの動きは予想できなかったのだろう。しかし、命中とは言っても、それは鴉がパージした武器に命中しただけで、実質的には彼は無傷だった。

 それどころか、パージしたのは余り使われていなかったショットガンで、それに物理的に衝撃を加えたのだから、結果は当然...弾薬に誘爆した。

 至近距離の爆発だったために、PAによる恩恵もまともに受けられず、装甲に少しではあるが、傷がついた。誘爆の要因になったライフルは、とりあえず射撃は可能だが、爆発の影響でバレルが曲がったのか、若干弾道が右に逸れる癖がついた。

 

 しかし、安堵する暇はなく、これをきっかけに、鴉の猛攻が始まった。

 まず、無くなったショットガンの代わりに、彼は格納しておいたレーザーブレードを装備し、先ほどと異なり、張り付くように私に接近してきた。

 なんどもQBで離れようとしても、次の瞬間には細かくOBを使用して追いかけてくる。

 レーザーブレードを回避して、安堵したと思ったら、何故か空中に浮かんだままレーザーキャノンを撃ってくる。他のレイヴンと違い、空中で撃てるというのは、どういう事なのかさっぱり分からないが、兎に角、『ネクストがノーマルに』押されているという事実だけは確かだった。

 

 だが、そんな彼にも誤算があった。

 それは、私のネクストが背部に装備したグレネードランチャーだった。有澤重工という会社が開発したこれは、かなりの高威力で、ネクストですら、直撃すれば大打撃を受けることが確実であった。

 そして、そのグレネードの爆発範囲こそが、彼の予想をはるかに超えるものだったのだ。

 グレネードは直撃こそしなかったものの、彼のACは駆動系に大打撃を受けたらしく、明らかに挙動がおかしくなっていた。その隙にライフルで何発か与え、今度こそライフルの突きで装甲を貫く。

 コアに突き刺したライフルの銃身には、噴き出したオイルが垂れている。

 

 余り褒められたことではないが、私はこういう時、当然のようにトドメを刺す。武士道精神を持っているアンジェや、貴族であるレオハルトなら別だろうが、私は軍人なのだ。

 もう一度、ライフルを両手にを構え、ロックオンする。その時、ACのパイロット、レイヴンから、オープンチャンネルで通信が入った。

 

『お前は...その力で、何を...望む?』

 

 咳き込み、掠れた声が聞こえる辺り、もう長くは持たないのだろう。だから、私は彼の死に際の言葉に対し、真摯に答えようと思う。

 望む事...それは、間違いなくあの計画の成功だろう。

 人類という種族を生かすための唯一の手段。企業がこの戦争以前に生み出した、負の遺産の一掃。それが私の望みといえばそうなのだろう。

 だが、それをそのまま言う事はできない。この機体に盗聴器が付けられていないとも限らないし、この鴉が万が一今ここで全世界に広めてくれても困るのだ。

 

 だから、このネクストという力が成すであろう事を言う。

 

「私は、この世界を変える」

 

 鴉の乗る機体が、笑った。そんな気がした。まるで、私が本当に思っている事を見透かしていて、知っているかのように、鴉が、笑っているような気がした。そんな気がした。

 これ以上鴉の目の前にいる事が、私は怖くなり、ライフルを構え直した。そして、コアに数発、叩き込み、念のため脚部と腕部を引きちぎっておく。

 そして、メアリー・シェリーとアンジェとの合流ポイントに向かうため、OBでそこを去ってしまった。

 

 だが、今考えれば私は大きなミスをしていた。

 あの鴉が死んだかどうか、確認をしていなかったのだ。

 私は死ぬまでそれを後悔するだろう。いや、むしろ、死ぬときには納得するのかもしれない。

 

『この鴉には勝てない』

 

 と。

 




次回こそ...次回こそフィオナさんを出すんだ...

あと、UA数が最後に見た時の二倍近くになっててビックリしました。ありがとうございます。
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