繋がる十の世界   作:橘翡翠

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繋がった乾陽炎の世界

俺は只々人生を謳歌しているつもりだった。

それなのに今、俺は一体の怪人と対峙している。

今の俺は、俺であって俺ではない。

漆黒の身体。銀(しろがね)の鎧。深紅のライン。黄金色の瞳。

果たして俺は『何物』なのだろう。

 

俺の名前は『乾 陽炎』。

誰もいないのに自己紹介してるくらいにはどうしようもない19歳だ。

売れないイタリア料理店でバイトしているので稼ぎは少ない。

いや、正確にはしていた。

先日、店長の脱税がバレて、遂に店がブッ潰れやがった。

だから俺は、こうして新たなバイト先を探しているのだ。

「クソ!また落ちやがった!」

道端のゴミ袋を蹴り飛ばしながら叫ぶ。

中に缶でも入っていたのか、金属音がそこらで木霊する。

生まれつき口が悪いので、急に敬語なんて使えばボロが出ないわけがない。

なので今回のクリーニング店の面接でも暴言を吐き、即座に落とされてしまった。

次の面接がある喫茶店を目指し河川敷を歩き出したところで俺は目を疑った。

人間が青い炎を纏いながら、灰と化したのだ。

その灰の前には一体の怪人。

よく見れば怪人はアルマジロによく似た姿をしている。

しかし、アルマジロなんて可愛らしいものではなく、全身を鎧で覆った人型。全身は灰色に近い色をしている。鋭く尖った目。片手には大剣、もう片方の手には大きな盾が握られていた。

俺はその怪人が何か知っている。

小さい頃、夢中になって見ていたヒーロー番組の敵に酷似している。

俺の記憶が正しければ、そいつの名前は…

「『アルマジロオルフェノク』…」

俺は逃げようとしたが、恐怖で足が動いてくれない。

ようやく動いたかと思えば俺はオルフェノクに向かって走り出していた。

「オォォォォォォォ!」

叫び声をあげながらオルフェノクに殴りかかる。

…馬鹿野郎。人間如きが敵う相手じゃねえだろ。相手は武器と防具を持っていて、それでいて全身を鎧で固めてんだぞ。現に1人死んでんだ。

脳味噌では理解していても、もう間に合わない。が、振りかざした拳は虚空を切った。

「…?」

見れば、少し離れたところでオルフェノクがよろめいている。

原因は俺の目前まで飛んできた物体だろう。

ベルトのバックルのように見えるが、やや大きめだし、形状が可笑しい。全体は白く、真ん中に赤い円がある。円の周りにはマークが9つついている。吹き出してしまうほど、馬鹿げた造形だ。だが、これもまた見覚えがあった。

俺はそれを手に取り、腰に当てる。

するとバックルからベルトが出現し、ベルトの右側に本のようなものが接続されている。

俺はその本のようなものを開き、中のカードを引き出す。

バックルの左右に付いている、トリガーを掴み引っ張ると、機械的音声が鳴り、バックルが90度回転する。

上を向いたバックルにある隙間に、カードを挿入する。

『カメンライド』

電子音が響く。

腕を天高く掲げ、男なら一度は叫んだであろう言葉と共にトリガーを押す。

「変身!!!」

『ファイズ!』

もう一度バックルが回転し、電子音を鳴らす。

機械音と共に紅い線が俺の体を包み込む。

やがて俺の姿は見たこともない姿へ変貌を遂げる。否、『変身』だ!

今の俺は、俺であって俺ではない。

漆黒の身体。銀の鎧。深紅のライン。黄金色の瞳。

人類の未来の為に闘う黒き戦士!

「『仮面ライダーファイズ』!!」

 

…やっちまった。何をいい年こいて変身!だの仮面ライダー!だの叫んでんだ、恥ずかしい。とも言ってられないのが現状だ。

ようやくよろめきが治ったオルフェノクが大剣を振り回しながら向かってくる。

おお振りの一撃をかわし、腹に拳を突き刺す。

後退した相手にすかさず蹴りを入れる。

頭と右肩に蹴りが入り、オルフェノクが吹き飛ぶ。

その隙に本のようなもの『ライドブッカー』から1枚カードを取り出しバックルに挿入する。

『アタックライド!ファイズエッジ!』

俺の右手にあたかもガン○ムに出てきそうな剣が現れる。

血の如く紅く輝く光剣『ファイズエッジ』を振り回しながらオルフェノクに向かって走り出す。

相手は盾で防ごうとするが、ファイズエッジによって真っ二つに裂ける。

そのまま3回斬りつけ、左肩へブッ刺す。

悶絶するオルフェノクの肩から剣を引き抜き、顔面に正拳突き!

ライドブッカーから黄色のカードを引き抜きバックルへ挿入。

『ファイナルアタックライド!ファファファファイズ!』

右足にポインターが出現し、オルフェノクに向けることでマーカーを発射する。

マーカーは円錐状に広がり、オルフェノクの動きを封じる。

俺は天高く跳び上がり、跳び蹴りの態勢を作る。

身を紅(くれない)に包み相手を貫く一撃必殺!

「『クリムゾンスマッシュ』‼︎‼︎‼︎」

アルマジロオルフェノクを貫き、地面に着地。

オルフェノクの背後からギリシャ文字の『φ』をかたどった紋章が現れる。

アルマジロオルフェノクは青い炎を巻き上げながら灰化し消滅する。

 

バックルもとい『ディケイドライバー』からカードを取り出し、変身を解除する。

灰を眺めていると、ふとある事を思い出す。

慌てて時計を確認し、青ざめる。

「面接遅れる!」

面接まであと3分。現在地から喫茶店までは走っても4分はかかる。

マズイ。絶対間に合うわけがない。

「あ…」

たった今思いついた。1つだけ間に合う方法がある。

ライドブッカーからカードを取り出しディケイドライバーに挿入。

『アタックライド!オートバジン!』

白いカーテンのような靄からバイクが出現する。

ご丁寧にヘルメット付きだ。

念のため中型二輪の免許取っといて正解だった。

バイクにまたがり、エンジンを蒸かす。

法に触れないレベルの全速力で走り出す。

目指すは喫茶店!

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