Fate/Grand Order 蔵馬の天狗ともう一人のマスター   作:たぬさん蕎麦

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プロローグ
第0話


俺の名は天野 狗楽(あまの くら)、しがない………なんだ、道場主ってのが一番近いか。

とは言っても現状、誰かに何かを教えているわけでもなし、貯金だけは無駄にあるから、半ばニート的に過ごしているわけだが。

今日も今日とて、竿を片手にとある廃倉庫の裏手に来て釣りをしている。

ここ、割と良く釣れる上に人もほとんど来ない穴場なんだよな。

だが、今日は朝の8時から今現在、15時まで釣り糸を垂らしているのに、一匹も掛からない。

いつもなら既に10匹の大台に乗ってるはずなんだが………俺の勘が囁いている。 こういう日には何かがあると。

そう考えていると、俺が背にしている廃倉庫の正面に車が止まった。

ドアが開き、降りたのは……足音からして大人の男が4人か……それに子供の泣き声だ。

この時点で良い予感はしないが、まだ、もしかしたら子供の教育のために親が連れて来たのかもしれない。

余所の家の事情に首を突っ込むわけにもいかないし、一応様子を見ておくか………。

連中が廃倉庫の中に入って、内側から鍵を掛けた。 俺は廃倉庫の鉄扉に耳をあて、聞き耳を立てる。

 

「チ、いい加減泣き止みやがれ糞ガキ!」

「おいおい、脅したら余計に泣きわめくだけだろうが。

コイツの親が身代金を持って来るまでは一緒に居るんだから、いつまでもギャアギャアウルセェのは勘弁して欲しいぜ。」

 

はい決定、こいつ等間違いなく誘拐犯だな。

ったく、いつの時代もこんなバカなマネをする奴は絶えないもんだな。

そんな事を考えつつ、拳を握って鉄扉を殴りつける。

同族の中じゃ、純粋な力だと大分劣る俺だが、それでもそこらの連中に比べれば何倍も力が強い。

一撃で扉に拳の型が付き、二撃、三撃と叩き込むと、扉がどんどん変形していき……ついには蝶番が壊れて扉が外れた。

ふむ、そっちが先に逝かれたか。 俺としては扉を粉砕するつもりだったんだが。

 

「な、何モンだテメェ!?」

 

ふむ、誘拐犯に問われたから、一応答えておくか。

 

「何モンねぇ……ま、通りすがりの釣り人さんってところかな。」

 

子供……赤毛の女の子の一番近くに居る男が他の奴に指示を出し、部下らしき三人が俺に鉄パイプを持って殴りかかってくる。

まぁ、扉をぶっ飛ばした俺に対して向かってくるのは大いに評価してやろうか。

だが、この程度だと遊びにもならないな。

俺が修業を付けてやる前の牛若……義経の方が数倍マシだ。

同時に掛かれば良いものを、一人ずつ順番に掛かってくるものだから、仕方ない、こちらも一人ずつに対応してやろう。

一人目、鉄パイプをまっすぐに振り下ろしてきた。

遅く鈍い一撃を片手で掴み、驚いた顔をしてる目の前の男の腹に一撃入れ、意識を刈り取る。

二人目、鉄パイプをまっすぐに突き出してくる。

剣術……じゃないな、剣道でもやってたのか、割とまともに来たのだが、軽く身体を逸らして躱し、脚を払って転がした後に頭を小突いて昏倒させる。

三人目、自棄を起こして鉄パイプを投げつけてきた。

一人目から奪った鉄パイプで打ち返し、それが顎を掠めて倒れる。

うん、一人も致命傷を与えずに無力化出来たな。

 

「こ、このガキがどうなっても良いのか!」

 

さて、どうせ逃げられないからと無視していた主犯格の男が、ナイフを手に女の子を捕らえている。

どうしたものか、この程度なら軽く鎮圧できるが、下手を打てばあの子の首に傷がつくだろう。

男なら勲章だと言い張る事も出来るだろうが、女の子にそれは酷だ。

 

「へ、へへ、このガキとの関係はしらねぇが、どうやら傷を付けられたくは無いみてぇだな。

よし、まずはその鉄パイプを足元に落として、手を頭の後ろで組みな。」

 

ここで無理に対抗しても女の子が傷つくだけか、言う通りにしておこう。

 

「ふぅ……よし、じゃあ次は後ろを向いて………ガァ!?」

 

あぁ、馬鹿な奴だな、この状況で気を抜くなんてよ。

足元の鉄パイプを蹴り飛ばし、主犯格の男のナイフを持つ手にぶつける。

ナイフは男の手元を離れ、男もその痛みに怯む。

あとは女の子から引きはがして意識を奪ってやれば終わりだ。

 

「これで良しと……お嬢ちゃん、大丈夫か?」

 

「う、うん………」

 

泣き止んだ……と言うより、俺が倉庫に入った直後に泣き止んでいた女の子に話しかける。

少し怖がっているようだが、それでもちゃんと受け答え出来るだけ冷静な子だな。

 

「ひとまず、君をお父さん、お母さんの所に連れて行くけど……名前と住所は言えるかな?」

 

「うん、藤丸立香、8歳です。 住所は………」

 

女の子……立香ちゃんの話によると、家は俺の家の近所らしい。

どれくらい近所かと言うと、徒歩で1分掛からないくらい……と言うか、お隣さんだった。

ここからは20Kmくらい離れているが、幸い俺は軽自動車でここに来ているし、送るのも問題無さそうだ。

 

「それじゃ、一緒に帰ろうか。 警察に連絡は………」

 

「えっと、ここに連れてこられる前に、こっそりしました。」

 

俺が携帯を取り出すと、立香ちゃんがそう言った。

 

「………すごいな。」

 

「そ、そうですか?」

 

つい漏らした言葉に立香ちゃんが反応して、恥ずかしそうにはにかむ。

いや、普通にすごいだろ。 俺が今まで教えてきた子供にも、そんな事が出来そうな奴なんて、それこそ牛若くらいだ。

まぁ良いか、と考えるのをやめて、俺の軽に釣り具を積み込む。

助手席に立香ちゃんを乗せ、シートベルトを締めたのを確認してから走り出す。

立香ちゃんは小学校の帰りに攫われたらしく、ランドセルも背負っていた。

今からだと……まぁ少し遅いくらいの帰りになるだろう、そうどうでも良い事を考えつつお隣さんのチャイムを鳴らすが、誰も出てこない。

 

「あの、お母さんもお父さんも、まだお仕事で……」

 

「共働きか……」

 

共働きをする程度にはお金に余裕のない家の子供を攫って、あの誘拐犯は身代金をどれだけ取れると思っていたのだろうか。

まぁそれはさておき、事件に遭ってすぐに家に一人で居させるのは、精神的によろしくないだろう。

…………

 

「ウチで休んでくか?」

 

「い、良いんですか……?」

 

つい口に出した提案だが、立香ちゃんは思いの外乗り気なようだ。

それなら特に問題も無いだろう、多分。

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