Fate/Grand Order 蔵馬の天狗ともう一人のマスター 作:たぬさん蕎麦
と言うわけで、立香ちゃんを我が家に招き入れた………いや、別に面白い物なんて無いが……精々道場くらいか。
あぁ、立香ちゃんの家にはちゃんと置手紙を残してきた。
立香ちゃんはウチで預かってるから、仕事から帰ってきたら引き取りに来るようにと言った内容だ。
ひとまず立香ちゃんを居間に入れて、紙コップに麦茶を注ぐ。
………いや、一人暮らしで自分のグラスしか無いだけだからな。
飲み物もスーパーで買えるティーパックの麦茶しか常備してないだけだからな。
とまぁ言い訳はさておき、立香ちゃんを観察してみると……ふむ、普通は有り得ない事だが、妖術の適正が見えるな。
妖術ってのは、所謂妖怪の類しか使えない技術で、人間が使うなら陰陽術や巫術と言った風になるのだが……彼女は間違いなく人間で、他種族の血など微塵も流れていないのに妖術の適正がある………気になる…いや、
まぁ、本人の許可も無くそれを教えるわけにもいかないし、やめておくか。
とは言ってもな、飲み物を出す以外に子供の興味を引けそうな物なんてウチには……いや、アレがあったな。
この間商店街の福引で当たったボーカロイドとか言うソフト、それを機にパソコンを買って色々やってみたが、多分音楽なら大丈夫だろう。
と言うわけで、部屋からギターを持ってきてみる。
簡単にチューニングをしていると、立夏ちゃんが興味持ったのかこっちによってきた。
さて、何を演奏してみようか………色々あって精神的に参ってるだろうし、何か元気づけるような曲……アレかな。
というわけで、明るい曲を何曲か、若干の妖力を乗せて奏で、歌って聞かせると、立香ちゃんも元気になってきた。
妖力や魔力を乗せて奏でる呪歌は、聞く者の精神に働きかけるからな。
やろうと思えば洗脳なんかにも使えるが……ってのは今は関係ないか、まぁ元気になったから良しとしよう。
時間は既に夕方6時、そろそろ夕飯の時間だな。
冷蔵庫の中身を確認すると………やっべ買い出ししてなかったか。
中には玉葱、ピーマン、卵、調味料くらいしか入ってなかった。
米は倉庫に三俵くらい残ってたし、問題は無いが………オムライスにでもするか。
立香ちゃんが、渡したキーボードに夢中になっている間にサクッと用意することにする。
玉葱とピーマンを刻んで炒め、米を投入、適当に炒めてからケチャップベースのソースを掛けて絡め、ケチャップライスの完成。
皿に移して形を整えておき、卵を焼く。
半熟のうちに丸め、皿のケチャップライスの上に乗せ、切れ込みを入れて割ってやれば、喫茶店で出るような半熟オムライスの完成だ。
「ほら、夕飯が出来たぞ?」
「え……わぁ…!」
うんうん、喜んでくれたようで何よりだな。
オムライスの上に、ケチャップで立香ちゃんの似顔絵を描いた甲斐もあったと言うものだ。
「食べて、良いんですか?」
「そのために二人分も作ったんだ、食べてもらわないと困るな。」
「あ…じゃあ、いただきます。」
そう言って一口食べると瞬く間に笑顔になって、どんどん食べ進めていく。
口にあったようで安心して、俺も自分の分を食べ始める。
「ご馳走様でした。」
「お粗末様でした。」
あっという間に完食し、手を合わせる立香ちゃん。
皿を洗って居間に戻ると、コクリコクリと船をこいでいた。
まぁ、色んな事があったんだ、眠くもなるだろう。
ソファーに寝かせ、タオルケットを掛けてやる。
キーボードやギターを片付けしばらく経ち、夜の9時頃になると、うちのチャイムが鳴った。
出てみると、そこに居たのは紫の長髪の女性だった。
「夜分遅くにすみません、うちの娘を預かっていただいて、ありがとうございます。
その、立香は何かご迷惑をお掛けしていませんか?」
「いや、こっちは何も問題はありませんでしたよ。
ただ、立香ちゃんは昼間に事件に巻き込まれて疲れているので、その辺りはケアをしてあげてください。
あぁそれと、夕飯は食べさせましたが、流石に風呂に入れるわけにもいかなかったので、帰ったら入れてあげてください。
じゃ、立香ちゃんを起こしてきますね。」
そう言ってソファーの立香ちゃんを起こそうと揺さぶってみたが……
「んぅ……やぁ……」
身じろぎするだけで、全然起きない。
仕方がないから、抱き上げて連れていく事にする。
「余程疲れているのか、全然起きそうになくて……明日も学校でしょうし、起きたらシャワーでも浴びさせてやってください。」
「まぁ……ご迷惑をお掛けしました。」
立香ちゃんのお母さんが頭を下げ、俺から立香ちゃんを受け取った。
これで、慌ただしい一日も無事に終わった……が、これは始まりにすぎなかった。