Fate/Grand Order 蔵馬の天狗ともう一人のマスター 作:たぬさん蕎麦
『ふむ、未だに生き残りが居るとはな。』
目の前に、黒い柱が出現する。
柱には無数の目がついており、その全てが俺を見つめている。
「黒幕………いや、違うな、黒幕の遣いか。」
『いかにも、我が名はベリアル。魔神柱ベリアルである。』
「ベリアル………ゴエティアにおける68番目か。 となると、黒幕は………」
あぁ、そういうことか。
72柱の悪魔を従えたアレであれば、英霊となっていればこんな真似も可能だろう。
動機も何もわからないが、アレが黒幕であればまだ納得は出来る。
「なるほどな、詳細はわからんが、倒すべき相手は見えてきた。
情報提供に感謝する、そして」
右手に集めるのはその量によって視認できる程の妖力の塊。
それを、魔術の要領で練り上げ、最も己の手に馴染む得物を投影する。
「消えろ!」
随分と昔、牛若に与えた一振りの刀、薄緑。
俺が人に紛れて打ったコイツは、俺が一番良く知っている。
妖怪の力を浴びながら打たれたコイツは相応の神秘を秘めており、幻想種にすら通用する業物だ。
そんな刀による斬撃を幾度も受けたベリアルであったが、全身を細切れにされ………数秒の後に再生しきってしまった。
「今のは大分自信があったんだが、これでびくともしないか………」
『この程度で我を滅そうと考えていたのであれば、笑止である。』
参ったな、今の手札の中じゃ、今のが間違いなく一番火力を出せる攻撃だった。
そもそも妖力と言うのは、妖怪種における生命力の余剰であり、全部使い切るような事をすれば最低限の生命力まで燃やし尽くして間違いなく死んでしまうようなものだ。
その妖力を1割も使って投影したコイツが通じないのであれば、今の再生力から見ても、俺に勝ちの目は薄い。
これが敵の親玉ではなく、その遣いが相手なのだから、これではいくらなんでも……それこそ、自分を作り替えるくらいしなければ、黒幕には勝てないだろう。
さて、相手は悪魔……じゃない、魔神柱とか言ったか。
どうやら地に根を張っているようにも見えるし、巨体からしても移動は出来ないか遅いかだろう。
だったら、だ。
「勝てないなら、勝てる戦力を探すまで、だよな。」
どこかには、俺以外にも生き残りが居るだろう
普段は完全に隠している、背の翼を広げる。
投影魔術で煙玉を創り出し、付与魔術で魔力隠蔽と持続強化。
「あばよ!」
煙玉を地面に叩き付け、黒い煙が辺りを覆う。
俺はその煙に合わせて翼を羽ばたき、空に舞い上がる。
目指すは……そうだな、アメリカの方にでも行ってみるか。
間違っても立香の居る筈の場所まで行って、後を付けられるわけには行かない。
加速に加速を重ね、音速を超えて飛び。
突如地面から何かが……先ほど撒いたはずの魔神柱が飛び出してきた。
二体、三体、四体、俺を囲むように複数の魔神柱が飛び出し、まるで檻のように組み合わされ、閉じ込められた。
『あの程度で我々から逃げられると思っていたのであれば、実に愚かだ。
しかし、その様ではもう逃げる事は出来ないだろう。
今、この場で仕留めてくれる。』
あぁ、間違いないな、もう逃げられない。
自由な飛行も出来ず、敵は各上の相手が合計八体。
逃げられず、勝つ事も出来ない。
あぁ、仕方ないな。
「投影開始………」
これだけはしたくなかったが。
俺もそれなり以上に色々とやらかしてきたんだ、死んだら英霊の座に登録されるだろうさ。
投影した小太刀を、自分の心臓に向ける。
俺の死因は自殺だ、間違っても魔神柱とやらに殺されてたまるものか。
「あばよ、クソ野郎」
鋭利な刃が、俺の心臓を貫いた。