Fate/Grand Order 蔵馬の天狗ともう一人のマスター 作:たぬさん蕎麦
第1話 第一節
~立香side~
無事カルデアに着いて、他のマスター候補生の人たちとも少しだけ話しつつ、ついにレイシフト実験が始まった。
と思った矢先、実験中に謎の爆発が発生、とっさに防御術式を起動して事なきを得たけれど………これは、私以外のマスター候補生は全滅かなぁ……
私の場合は、狗楽さんが持たせてくれたブレスレットに仕込まれた術式も相まってほとんど無傷だけれど、そもそもこの事故に対応出来てないのか、他に術式が起動した気配も無かったし。
………あぁいや、確か一般枠の男の子は実験に参加してなかった筈だから、マスター候補生の中でまともに動けるのは二人だけ、かぁ。
『コフィン内マスターのバイタル 基準値に達していません。』
館内アナウンス?の声が聞こえる……って、あれ?………あぁ、私が入ってたコフィンはさっきの爆発でダメになったんだ。
『レイシフト 定員に達していません。
該当マスターを検索中………発見しました。
適応番号13番 藤丸立香
適応番号48番
久慈川大地……一般枠の……無事だった……と言うか、こっちに来ちゃったんだ。
『アンサモンプログラム スタート
霊子変換を開始します
霊子変換まで あと3 2 1
全工程
ファーストオーダー 実証を開始します。
視界が光に包まれた。
目を覚ますと、そこは………
「冬木市……?」
冬木市、郊外の森だったはず……辺り一面炎に包まれていてわかりにくいけど、うん、きっとそうだ。
あとおかしいところは………うん、骸骨がたくさん居るって事かな。
ひぃふぅ………剣持ち、槍持ち、弓持ちが各10体くらいかぁ………まだサーヴァントの召喚も出来てないのに、気が早い事で。
ともかく応戦しないと………まずは槍持ちを倒して、槍を奪うところからかな!
「ガンド!」
秒間5発、フィンの一撃と言える程度には威力のある呪いの弾丸が槍持ちの骸骨の頭部を砕く。
こういったエネミーは、頭部か胸部に力の核があるから、そこを砕けば動かなくなる……うん、狗楽さんの言ってた通りだ。
上手いこと私の足元に転がってきた槍を蹴り上げて掴み、強化魔術を施しつつ構える。
放たれる矢をガンドと槍で弾きつつ、近くの骸骨から攻撃していく。
眼孔や肋骨に槍を突き入れ、中の核を砕く。
弾く、砕く、切り払う、砕く、弾く、弾く、砕く………
途中骸骨がどこからか増援にやってきたけど、同じことを繰り返していくだけで殲滅は終わった。
うん、狗楽さんの修行が実になってるのがわかって嬉しいかな。
………ひとまず、ここが冬木市だと言うなら、まずは狗楽さんの家に行ってみよう。
街中こんな有様だとしても、狗楽さんまでやられてるって事は無いだ「■■■■■■■■■■■!!!」ろ………し………!?
背後で突然響いた、獣のような雄叫び。
振り向くと、そこには身長2mを優に超える大男………間違いなくサーヴァント!
狗楽さんが言うには、自分がサーヴァントを連れている時は相手の真名を探ることを最優先にする。
連れていない場合は…………
「全力で……逃げないと!」
咄嗟に自分の背後に置換魔術のゲートを作り出し、そこに飛び込む。
すると、そのまま私は目の前のサーヴァントの背後に出現した。
自分の視界内、それもあまり長距離は跳べないけど、これを繰り返して、まずは逃げる!
家は反対方向だから、目指すは森の古城!
あぁもうなんで最初に家の方に向きを変えなかったんだろ!
二回、三回、四回………十一回、十二回………!
「ハッ、ハァッ、ハッ!」
魔術回路が悲鳴をあげ始めたのと、体力が底を付きそうだったから一度止まって休憩する。
魔術の連続使用、ガンドならともかくとして、大分体力を使うんだよね。
って、もう追いかけてきたのか、大きな足音が聞こえる。
多分クラスはバーサーカーだけど、真名もわからないから無理は出来ないし………仕方ない。
ここで、英霊を召喚しよう。
詠唱は全部頭に入ってる、魔法陣はブレスレットに仕込まれてる。
魔力は………多分大丈夫!
「素に銀と鉄。礎に良石と契約の大公。祖には我が大師シュバインオーグ。
降り立つ風には壁を。四方の門は閉じ、王冠より出で、王国に至る三叉路は循環せよ。
閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。閉じよ。
繰り返す都度に五度。ただ、満たされる刻を破却する。
告げる。
汝の身は我が下に、我が命運は汝の剣に。
聖杯の寄るべに従い、この意、この理に従うならば応えよ。
誓いを此処に。
我は常世総ての善となる者。
我は常世総ての悪を敷く者。
汝三大の言霊を纏う七天、抑止の輪より来たれ、天秤の守り手よ!」
ブレスレットが輝き、空中に魔法陣を描き出す。
魔法陣が更に光を放ち………
「問う………までもないか、立香。」
~立香side end~
自決し、次に目を覚ましたら、そこは火の海でしたってか。
「問う………までもないか、立香。」
「嘘………なんで………」
「サーヴァント、真名は鞍馬天狗。
ま、お前には天野狗楽って言ったほうがわかりやすいな?
悪い、ちっとどうしようもなくなってな、死んじまった。」
「待っててくれるって言ったのに………!」
「ま、其の辺は追々な……適当に聖杯戦争に乱入して受肉しちまえばなんとでもなる。
それよりも………だ。」
響いていた足音が止まる。
どうやら、立香を追っていた何かが追いついたようだ。
「サーヴァント……バーサーカー、ヘラクレスか。
魔力の流れを見るに、宝具は一切使えないようだな。」
「すぅ……はぁ……よし、言い合いは後回し、だね。
狗楽さん、ヘラクレスって言ってたけど………勝てる?」
「任せろ、日本と言う地における天狗の知名度、そもそも俺が有する神秘。
宝具もロクに使えないヘラクレスなぞ、負ける要素は無い。」
つっても、宝具まで使って短期決戦を仕掛けたほうが良いな。
俺が勝ってるパラメータは敏捷だけのはずだ。
「それじゃあ、令呪をもって………」
「令呪は切るな、勿体無い。
宝具で一気に霊核を打ち抜くから、魔力だけ回せ。」
「うん、わかった……じゃあ、お願い!」
会話が終わると同時にヘラクレスが高速で振り下ろす斧。
その腹を全力で蹴り飛ばす事によって僅かに軌道をずらし、もう片方の足に立香から回された魔力を集中させる。
「さて、650万年の重み、その一端を味わいな。
宝具解放……
多量の魔力を纏った一本下駄が、ヘラクレスの身体を貫き、その霊核を粉砕する。
その一撃によってヘラクレスは顕界を保てなくなり、身体を粒子へと変じさせ、消え去った。
「っと、一丁上がり。 立香、怪我はないな?」
「うん………狗楽さん、こんなに強かったんだ………
いや、強いのは知ってたけど、ここまでなんて………」
「現代にゃ必要ない力だったからな、下駄も蓑も葉団扇も全部仕舞いこんでてよ。
ほとんど丸腰で敵の幹部級に追われてこのざまだ。
ま、それで立香を守れたんだから、結果オーライって事にして………と。
で、ここに来てるのは立香一人なのか?」
「うぅん、もう一人マスター候補が来てるはず。
私はここに来て骸骨を殲滅したあとサーヴァントに追われて、まだ合流できてないけど………。」
「じゃ、まずは合流だな。
今の状況について何か知ってるかもしれねぇ。」
「それじゃあ、街中に行ってみよ?
多分向こうもドンパチしてると思うし………」
「そうだな………いや、わざわざ探す必要も無さそうだな。」
街の方を見ると、巨大な炎の巨人が暴れていた。
恐らくもう一人の方もサーヴァントを手にし、戦闘に入っているんだろう。
あの炎の巨人はウィッカーマン、ドルイド魔術の儀式だから、敵か味方にケルトのキャスターが居るんだろうな。