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「今日もあっついなぁ・・・」
セカンドインパクト以前は春夏秋冬の四季が見られた日本は、
南極大陸に落ちた多質量隕石の落下に伴い地球の地軸が移動。
緯度が変わった影響で日本列島は年中夏になっていた。
「父さんかぁ・・・」
七年前、自分を捨てたという父が、自分に用があるのだと言う。
その事に戸惑いを隠せないでいた。
「シンジ、お父さんと会うのは嫌かい?」
「うーん・・・別に嫌じゃないんだけど・・・七年も会ってないし・・・物心がつく前だったから・・・」
「ははは、それもそうだな。」
「先生、ちょっとエアコンきつくするね。」
二月だというのに気温は二十七度を超え、車の外ではアブラゼミがジジジジジ・・・と鳴いていた。
「ああー・・・気持ちいい・・・」
エアコンの冷たい風を顔に浴び、建設中のマンションを見ながらシンジは自分に用とは何だろう。と考えていた。
「凄いなぁ・・・」
第三新東京市。
神奈川県の箱根付近に位置する日本の首都。
2015年に完成予定のこの都市は工事の真っ最中。
車の中からでもアスファルト舗装やマンション建設等の重機の音が聞こえていた。
「着いたよ。ちょっと早く着きすぎたかなぁ・・・」
現在時刻は午後二時。待ち合わせの時間より一時間近く早く着いていた。
「外で待つのも暑いし、店に入っておこうか。」
「そうですね。」
僕等は店に入り、店の奥の席に座った。
店の中はエアコンが効いており、暑くもなく寒くもない。ちょうどいい涼しさで、
昼過ぎの店には、平日なのも相まって人は居なかった。
「何か飲むかい?」
「えっと・・・オレンジジュースを。」
「すみません。ブラックコーヒーとオレンジジュースを一杯づつ。」
「かしこまりました。少々お待ちください。」
「緊張してるのかい?」
「まぁ、多少は・・・」
先生の問いに対して苦笑いで答える。
すると先生は、少し笑いながらながら言った。
「僕から言えることは一つだよ。」
「真摯に向き合うこと。これからシンジの親父さんに何を言われるか僕にはわからないが、しっかりと話を聞いて、゙自分自身゙がどう思ってるか。それをちゃんと言葉に出して言う。本心を言わないなんてことはダメだよ。」
「はい。先生。」
「それで良し!」
「先生。」
「どうしたんだい?」
「ありがとうございます。」
「どうしたんだい急に?」
先生は笑いながら聞いた。
「いえ、僕を預かってくれて、いつもお世話になっているから・・・」
「子供がそんなこと気にしなくていいんだよ。第一、僕が君を預かるって言いだしたんだしね。」
「そうなんですか?」
「ああ。僕と妻の間には子供ができなくてね・・・それで言い出したんだよ。」
「そうだとしても僕は感謝してますよ。先生。」
「そういってもらえると救われるよ。」
このあと三十分ほど雑談しているとメガネを掛けた男の人が入ってきた。
すると先生は立ち上がって、
「僕はちょっと散歩してくるよ。」
と言った。
「え?先生?」
「じゃ、暇になったら電話してきてくれ。」
「え?どういうことですか?」
僕の質問に答えずに、先生は言ってしまった。
すると、先ほど入ってきたメガネの男の人が僕の方に来て、言った。
「よく来たな。シンジ。」
「父さん・・・なの・・・?」
「ああ。そうだ。」
正直実感がわかなかった。『私ががあなたの父親です。』と言われてもわからなかった。
すると男の人は急に、
「済まなかった。」
そう言って頭を下げた。
続けて、こう言った。
「七年前、お前を捨てた事実は変えられない。だがお前が許してくれるなら、またやり直したい。本当に済まなかった。」
そう震える声で言った。
「正直、貴方を恨んでいないと言えば嘘になる。小学生一年の時、お父さんの仕事は何か学校の授業で聞かれたんだ。」
男の人が苦虫を噛み潰したような顔になった。
「僕は答えられなかった。その事がきっかけで僕にお父さんがいないことで皆に色々言われたんだよ。」
涙急に溢れてきて、何もかもぼやかした。
「その度に思った・・・『なんで自分にはお父さんが居ないんだろう。』ってね・・・」
「なんでっ・・・なんで僕を捨てたんだッッ!!!」
辛くて、悲しくて、何より寂しかった過去。僕は本心をさらけ出した。
「本当に・・・本当に済まなかったッ・・・!」
「今・・・今俺が何を言おうと只の言い訳にしかならないが・・・」
「八年前、ユイが死んだ・・・絶望だった・・・胸に穴でも開いたような喪失感と虚無感が俺を襲った・・・」
「あの時俺はユイが一番だった・・・ユイ以外の人の事を考えていなかった・・・」
「ユイに逢いたくて、ユイの温もりを感じたくて、ユイにまた逢える方法を探し、可能性がある方法を見つけた・・・」
「だが途中で気付いた。『そんなことをしても意味がないだろう』と。」
「息子一人まともに育てれず、ましてや捨てた奴になど、資格など無い。会いたくもないだろう。」
「そこでやっと自分の愚かさを知った。ユイが一番望んでいたのは、息子のお前に幸せになって欲しいということだけだった。」
「今までの自分の行動を悔い改め、今日ここに来ている。本当に済まなかった・・・」
「許さなくてもいい。それだけのことを俺はした・・・」
『この人は母さんをを本当に心から愛しているんだな・・・』
母さんが少し羨ましいと思った。
「本当に済まなかったっ・・・」
「もういいよ、父さん。顔を上げて。」
ゆっくりと顔を上げた父さんの顔は、涙と鼻水でしわくちゃになっていた。
「俺を・・・許してくれるのか・・・?」
「もちろん、ただで許すわけじゃないよ、父さん。」
僕は、泣いて赤くなった目で笑って言った。
「これまでの分、しっかりと父親らしい事してもらうよ?」
父さんは少し驚いていたけど、
「ああ。勿論だ。」
そう笑いながら言った。
12/29一部訂正