アニメ第4話の終わりから第5話にかけての部分になります。
亜希の内面や新登場の分析班の場面もあり今回は長めになります。
「これは貴方の宿命なのです」
白いドレスを着た長い金髪の少女が告げる。
「俺の宿命だと!?この戦いが俺の使命だと言うのか?」
少女のお告げを聞くのは剣を持つ少年だった。つい先ほどまで剣を交えた戦いをしていたせいか腕や足に頬に斬られた傷があり出血している。
戦いの修羅場を終えた直後のせいか気が立つ少年は荒い口調で少女のお告げに応える。
だが本心も素直に受け止めてはいなかった。
「だが俺が倒したのは同じ騎士団の仲間だ。これが俺の宿命なのか!?」
少年が剣を交えて倒したのは戦友となる筈だった肩を並べ背中を預ける事になる同じ騎士団の仲間達だ。
だが仲間と思っていた彼らは少年に襲いかかった。
「そうです。この宿命を乗り越えなければ貴方も私も、そしてこの国も明日はありません」
少女は毅然と言い放つ。
「俺の宿命って何だ?俺でなければならないのか?」
少年は少女へ噛みつくように問いかける。
「今はこれだけは言えます。貴方でなければ果たせない宿命なのです。そして私には貴方が必要なのです」
「俺でなければならないだと・・・」
少年は自分に背負われようとする宿命に背筋が震えた。
「今の私はこの少年かしら」
亜希は自分の住むマンションに帰る途上の地下鉄の車内で文庫本を読んでいた。
この本こそ亜希が被造物の事件に関わったきっかけになる。
タイトルは「ドグラーナ戦記」
サスペンス小説を主に書いていた作者が初めて書いたファンタジー小説で話題を呼んだ作品だ。
亜希はその作者のファンで今まで読んだ事が無いファンタジー小説を初めて読む作品となった。
ストーリーは中世ヨーロッパな世界観の架空の王国で陰謀により殺されそうになる姫が騎士の少年と共に困難を乗り越え王国の危機を救うと言う内容だ。
主人公である騎士の少年は姫を守るのを使命と定めた一族の出身で姫を守る宿命があったのだ。
生まれながらに背負っていた宿命によって過酷な戦いに挑む事になる主人公の少年と亜希は自分の立場を重ねていた。
もはや逃れられない立場と責務と言う意味で同じだと思えたのだ。
「ドラグラーナ戦記」の主人公は姫に他の仲間と共に数々の困難を乗り越えて行く。
亜希には事務局に部下や共に働く人たちが居る。
彼らを従え協力を得て困難を乗り越えねばならない。
だが力が足りないと思える。
「あのキャラ、いや人達を味方にできれば・・・」
セレジアやメテオラの顔が浮かぶ。
別世界から来た被造物と対するにはやはり被造物しかないと亜希は思っていた。
だからこそセレジアやメテオラを味方にしようと働きかけている。
それは「目には目を歯には歯を」と言う単純な論理でもあったが「ドラグラナーナ戦記」の影響もある。
中盤において敵と思えていた強い魔術師を主人公の少年と姫が説得して味方にできたストーリーを思い出したからだ。
「私はそなたらに組せぬ」
魔術師は主人公の少年を最初はそうあしらった。
「どうしても貴方の力が必要なのです」
姫も説得するが魔術師は首を縦に振らない。
「あの魔術師が敵に回ると厄介だ。いっそやってしまうか」
味方にならない魔術師に仲間から倒すべきだと意見がでる。
「俺は味方にしたい。あの人の力は絶対必要だ」
主人公の頑固とも言える考えによって説得が続く。
だが別の場所へ行かねばならず説得は中断する。
そしてまた戻って魔術師へ説得に向かった。
「そなたの振る舞いを見ていた。未熟だがそなたは紳士であるな。そなたと共に戦おう」
魔術師は主人公がどんな戦いや現地の人や仲間へ接するか見ていたのだ。その振る舞い方を魔術師は気に入ったのだ。
この場面を思い出し難しい相手でも説得でるのではと亜希は思うようになっていた。
「でも現実は話の通じない人が多いけどね・・・」
地下鉄を降り住んでいるマンションの近くにあるコンビニで晩飯となる弁当と共に晩酌となるチューハイをどれにしようか選びながら現実を思う。
ただため息しか出ない。
それでも被造物がどんな性格でも話が通じると信じたい。
「自治体から問い合わせがありまして。アニメかマンガに出てくる大きなロボットのようなモノが自治体が管理する野球場に置いてあるそうです」
特別事態対策会議事務局へ一本の電話があった。
それは総務省からの電話だった。
事の始まりは関東地方のある町で自治体が管理する野球場へ自治体職員が見回りに来ると球場の中に巨大なロボットのようなモノが立っているのを見た。
何か映画の撮影に使うセットなのかとその職員は思った。
「何か撮影のセットですかね?大きなアニメに出そうなロボットみたいなモノが球場にありましたよ」
その職員は役所へ戻ると上司へそう報告した。
何気ない会話だったが上司はある事を思い出した。
総務省に居る大学時代の先輩からアニメやマンガの格好をした珍妙な連中が出て来て暴れているらしいと聞いていた。
何か関係があると思いその上司は総務省の先輩へ連絡を入れたのだった。
「ロボットが?ロボットが出たか。公にして無いがそういうのに対応する部署があるんだ。そこへ連絡しておくよ」
こうして総務省から特別事態対策会議の事務局へ連絡が届いたのだ。
「まずは確認をしましょう。防衛省に連絡を」
聡美から総務省の問い合わせを聞いた亜希は荒井へ連絡を試みる。
「荒井さん。自衛隊で素早く偵察が出来る所はありますか?」
中乃鐘昌明は困惑していた。
その困惑している対象は自宅に居た。
ダイビングスーツのような全身に密着したグレーのスーツを着た少年がそれだ。
見知らぬ人間では無かった。
名前は鹿屋瑠偉、中乃鐘がよく知る少年だった。
何故なら中乃鐘が脚本担当として制作に関わっているアニメ「無限神機モノマギア」の主人公なのだから。
まさに自分が作ったキャラクターが自宅に居る不思議な状態を中乃鐘は体験している。
事の発端は中乃鐘が自宅のテレビで「モノマギア」を視聴中に映像が乱れ見知らぬ軍服の少女のキャラクターが出て危険を察したところから始まる。
危険の元と見たテレビを自宅から放り投げた瞬間だった。
テレビから巨大な物体が飛び出した。
これも中乃鐘にとっては見慣れたモノだった。
「モノマギア」に登場する巨大ロボット「ギガスマキナ」だった。そのギガスマキナのコクピットから出てきたのが鹿屋だった。
中乃鐘の自宅は周囲に隣家が無い地域なのでギガスマキナが出現して近所の迷惑になる事が無かったのが中乃鐘にとっては幸いだった。
ギガスマキナを近所の野球グラウンドに置いてもらい中乃鐘は鹿屋を自宅に招いた。
とりあえずコンビニで買った弁当を鹿屋に食べさせているがどうしたものか中乃鐘は悩む。
自分の作品のキャラクターが自宅に巨大ロボットと共にやって来た。
そんな事を相談しようにも非現実的過ぎて自分の精神状態を心配されるだろう。
それでも誰か相談できる人はいないか。
中乃鐘は作家である松原崇を相談相手に選んだ。
同じ架空世界を舞台にした創作を行う彼なら荒唐無稽な相談でも聞いてくれるだろう。中乃鐘は携帯電話を取り出し松原へ電話をかけるのだった。
1機のRFー4/EJ偵察機が東京近郊の空を飛行していた。航空自衛隊の偵察機が飛行しているのは訓練ではなく任務だ。
RFー4に乗るパイロットに与えられた任務はある地点の撮影だった。
撮影は機体の下部に装備したセンターラインポッドのカメラで行う。だが何を撮影するかは聞かされていない。
ただ指定された地点で撮影せよと言う奇妙な命令だった。
「こんな命令は初めてですね」
RF-4のコクピットでは乗っている二人のパイロットは自分達が行っている任務について話していた。
「そうだな。撮影でこんな命令は初めてだ。訓練名目でただ映して来いとは」
偵察機であるRF-4は災害派遣で被災地の状況を撮影する事が多い。
だが今回は被災地では無い異常が無いと思われる地域を訓練を名目に撮影せよと言うのだ。
そんな任務を与えられたパイロットは困惑しながらも遂行するしかない。
「そういえば、F-15に乗っている連中も実弾装備で夜間飛行訓練に出されたとか」
これは新宿で軍服の姫君と戦う警察の任務に介入しようとした時の事だ。
「何かおかしいですよね」
「ああ、おかしいな。有事が近いのかもしれん」
一抹の不安を抱きながらRFー4のパイロットは撮影の作業に入る。
人工密度が低い地域とはいえ低空での撮影は禁じられ高度3000mからの撮影となる。
パイロットは指定された地域に到達するとカメラを作動させ撮影を開始した。
彼らは何の為に撮影をしたのか分からないまま基地に帰還し教えられる事は無かった。
2時間後には海上自衛隊のOPー3C多用機が飛来し旋回しながらRFー4が撮影した地域を4時間撮影と監視を行った。
この空自と海自の偵察機が飛来したのは中乃鐘の自宅がある地域だ。
これは大月から亜希へもたらされた巨大ロボットの情報、つまりギガスマキナの情報を確認する為だ。
巨大なロボットとなれば国民の安全に関わるとしてRFー4による偵察が緊急で行われた。
RFー4が撮影した画像には野球グラウンドに巨大ロボットが鎮座している画像があった。
更なる詳細と監視にOPー3Cが岩国基地から厚木基地に展開して活動を開始した。
特別事態対策会議の事務局が特別事態調査室だった頃から「分析班」なる部署があった。
分析するのは出現した被造物だ。
被造物がどの作品のどのキャラクターなのかを分析するのだ。
分析できるのはアニメやマンガ・ゲームに精通した所謂オタクと呼ばれる人々だ。
その人々は密かに各省庁から探し出された。
とはいえ分析ができるほどにアニメ・マンガ・ライトノベル・ゲームに精通しているオタクを選抜するのは並大抵ではない。
そのオタクを選び出したのは分析班の班長である大森和子警部補だった。警視庁生活安全部少年育成課から出向した彼女は第105号事案が警察内部でX事案と呼ばれていた頃に被造物がマンガやアニメのキャラクターであると報告書をまとめたのも彼女だ。
その彼女が特別事態調査室分析班の班長に指名されると巡査部長から警部補に昇進する。
今では警察・防衛・経産省・文科省から出向したオタクな官僚達を束ねる班長となっている。
「大森さん。今回はロボットですよ」
聡美は防衛省から届いた画像のデータを入れたSDカードと画像を印刷した紙を分析班に持ち込む。
分析班という部署ではあるが常設ではない。
事務局が必要とした時の呼び出しと分析班が定めた日に分析班の面々は集まる。
今回は前者で大森をはじめ分析班は呼び出しを受けて事務局のある内閣府の庁舎にある会議室へ参集していた。
「ロボットは専門外だな」
大森は印刷されたRF-4が撮影した画像を睨みながら言う。
彼女の専門はゲームやマンガのキャラクターである。
「小野君分かる?」
大森は文科省の小野へ画像を見せる。
「これはギガスマキナですね」
小太りな小野はかけている眼鏡をクイっと指で押し上げながら答えた。
「詳しく言うとアニメ<無限神機モノマギア>に登場する主人公の乗るロボットなんですよ。これは」
「ストップ、とりあえずストップ」
大森は止まらない様子の小野を止めた。
「小野君、このロボットの武器は?」
呼吸する間を空けてから大森は小野へ再び尋ねた。
「ホーミング機能があるビーム砲に粒子加速砲があります。どれも強力なビーム兵器と見て間違いないですね。とはいえギガスマキナは格闘戦ができますが」
「ビームか・・・自衛隊じゃ厳しいだろうなあ」
防衛省からの出向者も居たが自衛隊の装備品や作戦には明るくない背広組だった。
「このロボットのパイロットは?」
すると今度は経産省の近田が小野より先に答える。
「パイロットは鹿屋瑠偉くんなんですよ」
「あ~近田さん。こういうの好きだっけ」
大森は理解した。
「鹿屋くんはですねえ~やんちゃな性格なんですけどかわいいんですよ」
「近田さん。官僚の自覚を」
大森は少し呆れながら言った。
「すみません。結構推しなキャラなんで取り乱しました」
近田は気分を落ち着かせる。
「鹿屋瑠偉は分かりやすく言うとキレやすい性格なんです」
「そんなに荒れた子なの?」
「ギガスマキナのパイロットとして戦う事を強いられた事もあって周囲へ反発するようになったのです。大人達から無理矢理戦えと言われて責任を負わされるんです思春期の少年なら荒れますよ」
「つまり気難しい子なんですかね?」
「無限神機モノマギア」についてあまり知らない聡美が尋ねる。
「確かに難しい子だけど根は良い子なんです。完全に心を閉ざしている訳でもありません」
「話はできるのですね」
「おそらく」
聡美は聞きたい事を聞いて納得する。
「高江さん。このロボットとパイロットを味方にするつもり?」
大森が聡美へ訊く。
「菊池原さんは被造物をできるだけ味方にしたいみたいです」
「当然ね。私でもそうする。常識外れの超人、いや人外だってありえる。そんなのが魔法まで使うんだし現実世界の武力なんて無力、同じ者同士ぶつけるのがベスト」
大森の考えに分析班の皆は同意の頷きをする。
「でも本当に味方になるかはまだ分からないですけど」
「セレジアとメテオラなら話せばすぐ味方になるんじゃない?」
聡美に大森は問いかける。
「その二人が一般人と一緒に居るんですよ。だから接触は慎重になっているんです」
「一緒に居る羨ましいのは誰よ?」
「原作者や原作のイラストレーターに事情は分かりませんが男子高校生です」
「原作者か、生みの親の所ねえ。接触し辛いのは男子高校生と言う未成年が居るからが大きそうね」
大森の推測に「そうなんですよ」と聡美は肯定する。
「国家の機密に関わる部分に未成年者を巻き込んでいいのかと事務局内でもまとまってないんですよ」
「ふーん。だけどこれがラノベやアニメならその男子高校生は主人公だよねえ」
「私もそれ思いました」
意見が合い大森と聡美が笑い合う。
「ねえ高江さん。分析班に来てよ適職なのになあ」
大森が冗談混じりに誘う。
「お誘いありがとうございます。けど今はこのオタクな事件をオタクじゃない上司が賢明にやっているんです。オタクな私が補佐しなければいけませんからね」
聡美は微笑みながら答えた。
数時間後に亜希は特別事態対策会議事務局の会議に出ていた。
亜希をはじめ関係者の手元にはギガスマキナと鹿屋について分析班が作成した資料が置かれている。
「巨大ロボットの観測は海自のOPー3Cに加えて本日から陸自の偵察部隊が無人偵察機を使い活動を開始します」
自衛隊の報告として荒井が連れて来た野沢二等陸尉が行う。
ギガスマキナへの監視は自衛隊が主に行っていた。それはギガスマキナが敵対行動または都市部へ向かい動き出した時に即座に対処する為だ。
「現在自衛隊は防衛大臣が発した治安出動待機命令による情報収集(自衛隊法79条の2「治安出動前の情報収集」)を展開中だ。だがあの巨大駆動体の突発的な動きに備えて実戦部隊の出動準備も治安出動待機命令として進めている」
荒井が報告する。
治安出動は日本の治安が警察では保てない場合の自衛隊出動を意味する。
ギガスマキナが警察では制圧できないであろうと判断してである。
「公安から報告します。「ギガスマキナ」と称するロボットもとい駆動体が登場するアニメ作品の制作に関わった人物がロボットの近くに住んでいる事が判明しました」
泰野が報告する。
自衛隊が撮影した画像で巨大ロボットがギガスマキナだと判明しギガスマキナが登場する作品も判明すると中乃鐘の存在が公安の捜査線上に浮かんだ。
「名前は中乃鐘昌明、巨大駆動体の登場する<無限神機モノマギア>では脚本を担当しているスタッフです。中乃鐘の自宅に駆動体を動かしている被造物など関係者が居ると思われます」
「事情聴取を行うか、家宅捜査で入るか」
所沢が中乃鐘への警察としての行動を考えた。
直に聞くか直に入って調べるかだ。
「出来るだけ穏便な接触を図りたいと考えています。分析によれば巨大駆動体のパイロットである被造物はかなり感情的な性格とあります。中乃鐘氏を連行または自宅への立ち入りが被造物の感情を刺激して駆動体が暴れる事態は避けたいです」
亜希は鹿屋の性格から穏便な方向性を示した。
だが異論がすぐに出る。荒井だ。
「統括官、のんびり家から出てくるのを待つ時間は無いと考える。ロボットのパイロットなり関係者がどんな意思を持っているのか不明だ。それにあの巨大な物体がいつまでも世間に知られない筈もない」
「では防衛省の考えは?」
「中乃鐘氏と被造物への接触とロボットの確保を行うべきだ。今すぐにでも」
荒井の意見に亜希は「しかし」と言いたかったが時間の猶予が無いのは事実だ。一般人の幾らかがギガスマキナの存在を知っているだろう。
もしも多くの人々に知れ渡れば見物人が押し寄せ警察や自衛隊による対処が難しくなる。
「公安としても防衛省の意見に賛成だ。荻窪署から作品の作者である一般人が拉致された件もある。中乃鐘氏が監禁または脅迫などの強要された状態に置かれている可能性もある。早急な行動が必要だと思います」
泰野は荒井に賛同する。
「報道関係も巨大ロボットの存在を知っているようだ。これ以上の長期化は報道規制が難しくなる」
総務省情報流通行政局長がマスコミの動向を述べる。
人口の少ない地域とはいえ急にあんな巨大な物体が出現したのだ。誰の目にも触れない訳がない。
「では事務局としては対策会議を召集し巨大駆動体及び搭乗者の確保を自衛隊を出動させ行うと上申します。よろしいですか?」
亜希は意見が出るのが収まると結論をまとめる。
反対意見は無い。
「では対策会議の召集を行います。事務局は会議の準備と関係機関の連絡に移ってください」
亜希は指示を出すと一時退出する。
ふうとため息を吐き亜希は右手を額に当てる。
「大丈夫ですか?」
聡美が亜希を心配する。
「大丈夫よ。ただこの後の事で頭が痛いだけ」
「自衛隊の出動で事態が大きくなる事ですか?」
聡美の推測に「そう」と亜希は答える。
「分析班の報告が確かなら自衛隊の出動で威圧をかければ被造物の鹿屋は逆上して暴れるかもしれない。そうなれば自衛隊は大規模な攻撃で制圧する事になる。もうこの事件は世に広まる」
「秘匿性が失われる危険性ですか?」
「それもあるわ。だけど大々的な報道をして被造物の存在が当たり前になれば被造物達は今より出てくるようになるかもしれない。そして超人的な能力で白昼の東京で何度も戦いを繰り返せば警察も自衛隊も抑えられない。治安秩序は崩壊する」
亜希の懸念に聡美は戦慄する。
亜希以上に被造物と称するアニメやマンガ・ゲームなどのキャラクターがどんな能力があるか知っている。
その能力を持つキャラクターが堂々と現れて東京の各地で暴れれば手がつけられない。
それは守るべき国民の犠牲が多く生じる事と国家の安定を崩す事も意味する。
「最悪の状況の一歩手前ですね」
「そうだと思うわ。米軍の介入や政府機能を東京から移転する事も視野に入れるべきかもしれない」
役人として為政者の補佐役である亜希は見える最悪の事態に頭を痛めていた。
(この困難に立ち向かうのが私の宿命なのかしら)
亜希はふと「ドラグラーナ戦記」の主人公を思い出していた。