大月が亜希と会ったのは2年前になる。
「警察での女性の活躍について取材している」と亜希は上司と大月本人から聞いた。
亜希はそんな事もあるんだと取材に応じた。
大月は亜希に対して警察庁に勤める女性官僚はどんなものか質問した。
公安に関する機密は言わなかったが警察官僚をどうして志したか、普通の警官と何が違うかを正直に答えた。
その記事は警察について取材する週刊誌の連載記事に載り亜希は照れる思いをした。
1年後に再び大月と会う事になる。
公安の捜査で警察庁内と裏社会との繋がりが疑われる事があった。
状況証拠に過ぎないが裏社会の組織が警察庁の内情を知るにしては正確過ぎた。
警察庁内を洗う監査が行われる事になった。
亜希はその監査を行う立場だった。
何人か容疑者がリストアップされたが確証には至らなかった。
その際に亜希は大月の存在を思い出した。
裏社会と警察に人脈を持つ大月なら何か情報があるかもしれないと。
さすがに上司へフリーとはいえマスコミから情報を貰うとは言えなかった。
独断による依頼をしたのだ。
「あ~その繋がりですか。少し探ってみます」
亜希の要望を大月は快く引き受けた。
三日後に大月は裏社会と繋がる警察庁関係者について情報を与えた。
大月のネタは内部監査で疑惑を持つ人物の裏付ける事が出来た。亜希はこれを大月ではない協力者から得た情報として上司へ提出した。
亜希は協力者へ渡す資金から出された金を大月へ報酬として渡しに大月と会う。
「私はお金よりもネタが欲しいですねえ」
大月は金を受け取らなかった。
「ですが今は渡せるネタはありませんよ」
「今じゃなくていいです。今度私がお願いするときにです。記事に出来るネタは私にとって一番欲しい報酬ですから」
亜希は困ったが頑なに金を受け取らない大月にはどうしようもない。
「言える部分だけですよ」
亜希は大月にこうして借りを作ってしまっていた。
「よりによって105号事案を探っているなんて。言える事は何もないのに」
亜希は借りがある気まずさを感じつつ困っていた。
完全にシャットアウトして近づけない方法もある。だが人情として借りは返したい。
しかし大月に言える情報は何もない。
荒唐無稽過ぎる上に被造物に対して治安維持が難しくなっていると公表する事になる。世間へ言える訳がない。
「記者か。それは困ったな」
亜希は槙野へ相談した。
「必要なら逮捕させるがどうするかね?」
槙野は亜希が大月をどうしたいか尋ねる。
「まだ逮捕は早いでしょう。しかし動きは監視するべきです」
「では警視庁へ大月の監視を依頼しよう」
まだ接触しただけの大月をとりあえずは監視する事に決めた。
「監視は分かるようにした方が良いと思います。これ以上の取材をしてはならないと察してくれるように」
亜希はそう提案する。
「だが大月は記者だ。警察の監視ぐらいで取材を簡単には諦めないだろう」
「私もそう思います。止まらない場合は逮捕を要請します」
亜希は大月に対して借りはあるが治安を守る為の非情さは忘れて無かった。