fate/Grand order 妖都櫃夢   作:録音ソラ

2 / 3
遅くなってしまった


1話 ようこそ、アーカムシティへ

 レイシフト。

 それは物体を一度霊子化させ、過去や未来、様々な場所へと転移させる事ができる、カルデアにある、人理修復のための技術の一つである。

 そのレイシフトで俺たちはアーカムへと直接転移する筈だった。

 

 しかし、目の前にあるのはアーカム行きと書かれた看板のある無人の駅だった。

 

「………あれ?」

「変ですね。セイレムの時と同じようにアーカムの外へと転移したみたいです」

 

 どうやらアーカムに行けなかったのは全員のようだ。駅には自分の他にも何人か、いや、何体かのサーヴァントが辺りを見渡している。

 

「とりあえずダヴィンチちゃんと連絡を」

「急いで連絡を取ろう、マシュ。座標入力のミス、とかならいいんだけど」

 

 そうは言ったものの、恐らくその可能性は限りなく0に近い。カルデアにあるスタッフはみんな優秀な人達だ。それにダヴィンチちゃんがそんな初歩的なミスを見落とす筈もない。念入りに確認してからでなければレイシフトを行うことは出来ない。それほどにレイシフト自体安全なものではないのだ。

 

「センパイ!繋がりました!」

「やぁ、無事のようだね。こちらでも君達がアーカムにいないことを確認している」

 

 ダヴィンチちゃんと連絡が繋がった。が、その表情はいつもの明るい表情ではなく、かなり深刻そうな顔をしている。何かミスか、はたまたトラブルか。

 

「アーカムの外に転移したのは一体何故でしょうか?」

「原因は簡単さ。あの街にある結界が邪魔をしていた。厄介なことにアーカムに入る直前に霊子が弾かれたのを確認していてね。霊子化した状態では結界内に入ることさえ許されないってことさ。相当な守りだ。よっぽどとんでもないものを封じ込めているとしか考えられない」

「入れないなら入れないようにしているだけじゃ?」

 

 少し疑問に感じたから聞いてみる。結界は外からの侵入を拒んでいるからこそのものなのでは?封じ込めているのだとしたら中はとんでもないことになっている。目も当てられないくらいに異常に。

 

「外から入れないということは中からも出られないということさ。確かに侵入だけを拒む結界もあることにはあるが、街全体を覆うほどの大きさのものは大雑把で強力なものが一番だ。維持するだけでも相当な繊細さと魔力が必要になるからね」

「大雑把に強力…だとしても、魔力の維持は難しいのでは?」

「確かに。恐らくそれほどの魔力を維持するものか、それか地形を利用した結界だろう。日本には柱を立てて土地に五芒星を作り結界にしたっていう話もあるだろう?それと似たように土地の魔力を使うのさ。それなら、この地球の魔力が無くなるまでは永久に続く。最強の結界の完成さ」

 

 成る程、さっぱりだ。マシュは頷いて聞いているが正直よくわからない。もう少し他のサーヴァントから結界について詳しく聞いておくべきだったかな。最近はレオニダスと筋トレしかしてなかったからなぁ…!

 

「ほう、であれば相応の力を持たぬ英霊ではあの結界内部には入ることすらままならぬというわけか。ここに来た英霊ではまともに入る事ができるのは我ぐらいか」

「まぁ、ギルガメッシュ王ほどの神性持ちであれば恐らく入れるだろうね。それだけでも結界への影響力は違うだろう。その条件で入れるならあとはクー・フーリンも同じくだ。その二人だけなら入れる」

 

 今回の編成は、マシュ、術ギル、槍ニキ、小次郎とメディアさんだ。この中で神性持ちは確かにこの二人だ。ただ、組み合わせ的に心配しかないのが残念。

 

「アイツと組むのは真っ平御免だが、入れるのがそれだけなら仕方ねぇ。俺の槍で守ってやるよ、マスター」

「ハッ、当たらぬ槍で何を守るというのだ、駄犬。雑種は我が見張る。それだけで十分すぎるというものだ」

「ダヴィンチちゃん、チェンジ」

 

 心配というかもうダメな気がする。ダヴィンチちゃんにヘルプを出したがあっさり断られた。まぁ、神性持ちサーヴァントって確かカルデアにほとんどいなかったなぁ……

 

「何、気にすることはない、マスター。そこのランサーもアーチャーもいつも通りじゃれ合っているだけだろう。心配せずともいざという時は力も合わせ守ってくれる」

「エミヤ…」

「まぁ、力を合わせたところなど私は一度も見たことはないがな」

 

 おーい、エミヤさん。突然話に入って来たかと思えば不安の種ぶち巻いて颯爽と去って行くのやめません?貴方そういうキャラでした?

 

 そんなこんなしているうちに電車、というよりどこからどう見ても汽車という感じの汽車が来た。3両編成と短いものだが、意外とすぐに来てくれたのが良かった。

 

「汽車?アーカム行き?その辺りにはそんなものはないはずだが…恐らく何かある。気をつけて乗って行くほうがいい。それと、連絡手段は恐らく結界内では使えないだろうから、外で待つサーヴァントにでも渡しておくのが一番だ」

「連絡手段はまた中で探してみます。見つかればいいんですが…」

「まぁ、可能性は0に等しい。それよりも生き延びて、特異点を元に戻すことに集中して行ったほうがいい」

 

 これから特異点に向かうというのに、いつもよりも不安げな表情のダヴィンチちゃん、仲間割れというか喧嘩というか何やらしている王様と槍ニキ、霊子さえ弾いてしまうという強固な結界。これだけの不安要素があるからいつも以上に気を張っていかないと。

 

「ま、いつも通りでいいんだ。気なんて張らずにパパッと解決だぜ?さっ、レッツ聖杯探索」

「軽く言ってくれるなぁ、ダヴィンチちゃん…」

「俺と嬢ちゃんがいるんだ。安心しな、マスター」

「駄犬如きでは不安であろう。我が直々に雑種のお守りでもしてやろう」

 

 不安だらけの最期のレイシフトが今、始まる

 

 

 -----------

 

 

 あれから汽車に揺られながら、30分。目の前にアーカムが近づいて来た。周りは自然に囲まれながらも街の中はビルやら何やらが建っている。どう見ても違和感ありまくりな街並みだ。その中でも目立つのは時計塔。魔術師は時計塔が好きなのかな?ロンドンにも確か時計塔があって、孔明がそこで教師してるんだっけ。

 

 そんなことを考えながらアーカムを見ているうちに先程まで「駄犬」「過労死」などと言い合っていた二人の声が聞こえなくなっていた。気になり見てみれば、無言で臨戦態勢に入っているような顔つきになっている。アーカムはまだもう少し先だというのにどうしたのか。

 

「悪りぃ、マスター。ちょいと席を外させてもらうぜ」

「あと10分ぐらいすれば着きそうなのに?」

「あぁ、だからこそだ。最悪令呪を使ってでも身を守る羽目になるかもな」

 

 そう言い残して、前の車両へと移動するクー・フーリン。そんな彼とは違い、無言のままその場から動かずにアーカムを睨む王様。

 まるで、心底嫌いなものに対して嫌悪した目を向けるかのように。

 

「何かある?」

「気がつかぬか?あの街のあの結界からさえも漏れ出る異質な空気。いや、瘴気とでも言う方が正しいか。あの駄犬に何があろうとここから立つことなど考えるなよ。死ぬことになるぞ、雑種よ」

 

 王様がそこまで言うものなら、恐らく余程なのだろう。

 その言葉で少し心配になり、マシュの方を見てみる。マシュも何かを感じているのか、怯えたように身体を震わせ、固まっている。落ち着かせるように頭でも撫でようかと考えた時、初めて何かを感じ取った。感じ取ってはいけないと思えるほどの何かを。

 

 それを感じたと同時に、汽車は、アーカムへと足を踏み入れた。

 

 

 -----------

 

 

 汽車がアーカムへと足を踏み入れた。それは身体が感じ取った。結界へと触れた感覚がある。弾き飛ばされることもあり得たが、どうやら条件はクリアしていたようだ。しかし、この街は安心している暇を与えてくれるほど優しくはないようだ。

 

「この車両は俺の貸切だったはずなんだがな。何処から入り込んだ」

「余は元より此処にいた。貴公が気がつかなかったのは力不足。余の貸切車両に無断で足を踏み入れたのだ」

 

 ランサー、クー・フーリンが睨む先に一人の金髪の男がいた。その姿は見るものを全て魅了するかのような美しさと艶かしさを持ち、されどその奥に、その瞳の奥に獣の姿を感じさせる。人ではないと、彼の直感がそう告げる。

 

「そいつは悪かった。気がつかせねぇようにしていたアンタにも落ち度はあると思うがね。姿ぐらい初めから出していれば気がつけたんだがな」

「それが貴公の足りていない部分だ。そして、礼儀も欠けている。アイルランドの御子」

 

 お互いに睨み合い、言葉のみで牽制し合うように。しかし、金髪の男が放つ言葉一つ一つは彼の身体を蝕む瘴気が混ざり、交ざる。目の前の男の前に立っていることさえ不思議でならないほどに身体は恐怖を覚えていた。

 

「名乗らずとも分かっているようじゃねぇか」

「知っているとも。だが、人とはコミュニケーションと言うものが大事であろう。礼儀さえも知らないようであれば、貴公の親の程度が知れる」

「ったく、名乗ればいいんだろうが。サーヴァント、ランサー。クー・フーリンだ。槍のことやらは話す必要はないだろ」

 

 何とか距離を保ちつつ、話を続けようと試みるが、彼の足は根を張ったように動くことすら出来なくなっている。彼の目の奥から見える獣は、獣の如きクー・フーリンさえも恐怖で縛り付けるには十分すぎるものだったのだ。

 

「お目にかかれて光栄だ、光の御子。余はマスターテリオン。魔術の真理を求道する者なり」

 

 マスターテリオンと名乗る男は一歩、そしてまた一歩と距離を縮めていく。槍すら出せないクー・フーリンの元へと。

 

「そして、この特異点の黒幕でもある。余を打ち倒し、聖杯を回収すれば、特異点は焼却される。今であれば、余の心臓を貫き、全てを終わらすことも容易いぞ。光の御子よ」

「なら……お望み通り、呪いの朱槍を食らわせてやろう。スカサハ直伝ーー刺し穿つ死棘の槍(ゲイ・ボルク)!」

 

 殺気と瘴気。その全てが緩んだ一瞬で取り出した朱槍。それは彼の宝具。真名を解放すれば必ず当たる必中の槍。槍が当たったという結果を作った後に槍で突くという因果逆転の宝具。それをほぼ至近距離から放つ。回避などーー不可能

 

「ほう、これが心臓を穿つという因果逆転の呪いの槍か。だが、余のもとに届かなければ話にならない」

 

 かつて、此処ではない何処かの世界では、その槍はアイアスの盾すらも貫いたという。仕留め損ないはしたものの、英霊の盾を貫き手傷を負わせた程のもの。

 それほどの一撃だというのに、目の前の魔術師を名乗る何かはいともたやすく、顔色一つ変えることなく障壁ひとつで防ぎきっている。

 

「な…槍の呪いが…っ⁉︎いや、それよりなんで貫けねぇ…⁉」

「その程度が貴公の実力か。であれば、カルデアのマスターとやらも大したことがないか。では、此処で退場だ。

 余としたことが言い遅れてしまった。ようこそ、妖都アーカムシティへ。そして、さようならだ。光の御子よ」

 

 そう言い放つ彼の手が、言葉を失い目を見開いたまま、ただ呆然と立ち尽くすしか出来なくなったクー・フーリンの心臓を刺し穿ったーー




誤字脱字変なところは感想等で教えてね()
ひさびさに書いたけど3時間でこれだけとは……

次回はいつになるかなぁ!!!(やけくそ

2020/5/15 一部修正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。