Fate/abundant colors   作:パンda

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片手でストーリーをプレイしながら、何とか書いている今日この頃です。




特異点F 炎上汚染都市 冬木
プロローグ(上)


人理継続保障機関フィニス・カルデア。

 

標高6000mの雪山に設置されたその施設には、人理を継続すべく、あらゆる技術の粋が集められています。

時計塔の貴族、アニムスフィア家の管理のもと、あなたたちには人理継続の任を受けました。

あなたたちはこの探索の使命を持った魔術師。

 

どうか、よい戦いを。

 

選ばれしマスターとして、共に人理を守るのです。

 

 

ではまず、ここカルデアの歴史をご紹介しましょう。

第一に紹介するのが、1950年に発明された、事象記録電脳魔・ラプラス。

これは未知の情報を観測する使い魔であり、レイシフトにおいて―――

 

   ◇     ◇

 

「うむ、さっぱりわからん」

 

パンフレットを閉じ、窓から下にある件の「カルデア」という施設に目を向ける。

 

ここは標高6000mの雪山――の上空を飛んでいるヘリコプターの中である。

 

聞けば、ここら一帯の地域は天候が非常に移ろいやすく、今回のように空からの移動はなかなかできることではない、との事で。

 

じゃあなんでこんなとこにでかい施設なんて建てたんだよと突っ込みたい。

 

でも、今日のように天気が良くなった際は、景色がとても良いとスタッフの人は言っていた。

 

ヘリの窓から空を見上げ、成る程、と思う。

 

 

空には辺り一面の青。

 

景色が遠くなるにつれ、薄くなっていくグラデーション。

 

高々と掲げられる太陽の光が、真下にある雪に反射しきらきらと七色に輝く。

 

「――――――」

 

その色彩の鮮やかさに、自然とため息が出た。

 

そこ光景はとても神秘的で―――

 

とても尊いもののように、俺には見えた。

 

   ◇     ◇

 

「――――――魔術?」

「そう、魔術」

 

コーヒーを一口啜り、目の前にいるその人、ハリー・茜沢・アンダーソンさんはカップを置いた。

 

「魔術って……えっと、その…スプーン曲げたり、カードを透視したりっていう、あの……?」

「いやいや、それはどちらかというと超能力。ESPだネ。

私が言っているのは、ライターなしに火をつけたり、風を起こしたりするというアレだよ」

「……」

「信じられないっていう顔だね。

まぁ、いきなりこんな話をされても無理もないって思うけどさ…」

そう言うと、目の前の彼はぶつぶつと何かを呟き、手をかざした。

「これで、どうかな?」

「……うわ」

 

その手の中では、火がひとりでに浮かび上がる。

 

「どう? 信じる?」

こくこくと首を縦に振る。

「あの……魔術があるっていうのは分かりましたけど、俺に何をしろと?」

「うん。単刀直入に言うと私と共に海外に来て、仕事を手伝ってほしい」

「はい?」

「ほら、君、昨日献血を受けただろう? あれね、実はあるプロジェクトの適性検査を調べるものであってさ。君はそれに対する適合率が、非常に高い結果を出したんだよ」

「はぁ」

「一般枠なんて、存在しないようなものだと思ったんだけどねぇ…。で、どうかな? 来てくれないかい?

というか、是非来てくれ! ちゃんとアルバイト代は出すし、海外なんて、そうそういくことなんてないだろう?

君にとっても、いい経験になるかもしれないよ?」

「…嫌に押してきますね」

「だって、日本に来てようやく見つけた1人目の適正者だよ?

…このまま手ぶらで帰ったら、また給料が引かれちゃうんだよ…。

これじゃあ寺巡りにも行けないし、新車も買えないのさ…」

がっくしとアンダーソンさんはうなだれる。

「……まぁ、無理にとは言わないさ。でも断るのだったら、この会話は無かったことにさせてもらうよ。

具体的には、この忘却術式のスクロールでこの会話の記憶を消させてもらう」

「……」

「で、どうかな? 私と共に、人理継続保障機関カルデアに来る気は無いかい?」

目の前のコーヒーを一口で全部飲み込み、大きく鼻で息を吐く。

そうして、口を開いた。

「―――――俺は、」

 

   ◇     ◇

 

―――頬をぺろりと舐められ、意識が覚醒する。

 

―――夢を、見ていたようだ。

 

「フォウ! フー、フォーウ!」

 

「……?」

 

何か、変な鳴き声が聞こえたような……?

 

「ん…」

 

ゆっくりと、体を起こす。

どうやら、床で居眠りをしていたようだ。

だいぶ頭がぼーっとしている。

眼に刺さる人工的な光を、太陽の光と勘違いし、

「……朝かな」

とつぶやく。

「いえ、朝でもなければ夜でもないので、起きてください、先輩」

「へ?」

顔を上げると、目の前に一人の少女がいた。

 

   ◇     ◇

 

彼女の名前は、マシュ・キリエライト。

2年前から配属されたカルデアのスタッフで、つまり俺の先輩にあたる人だ。(俺より年下になるのだろうが)

 

………しかし、

 

「先輩は、東洋出身の方なのですか?」

「うん。日本から来たんだ」

「ニホン…。極東にある島国のことですね。知ってます! あそこは四季の移り変わりが色濃く、春はたいへん桜が綺麗に咲くとか!」

「んー、まぁそうなのかな? このカルデア辺りは雪が積もってたど、もしかしてずっとそうなの?」

「はい、ここは一年中雪が降ってまして……。

晴れになるのも珍しいそうです」

「…よくそんなところで働く気になったね。辛くないの?」

「? 辛い…ですか? いえ、私にとってはこれが普通ですが。

私を働かせてくれた所長には感謝してます」

「………」

大丈夫かなぁ、この子。ちょっと感性がズレているというか。

なぜか来たばかりの俺のこと先輩って呼ぶし。

 

先ほどここを通りかかった青年、レフ・ライノール教授によると、『マシュにとって君ぐらいの年齢の人は、皆先輩』なんだとか。

 

『所長の挨拶まで少し時間がある。外の世界の人と話すのも、君にとってためになるだろう』

 

ということで、今俺とマシュは休憩所で話している最中だ。

 

「フォウ、フォーウキュウ」

「おっと」

 

俺の肩に乗りかかってきた生物はフォウくん。

カルデアにいつの間にか存在していた、ペットのような存在だとか。

 

マシュはリスのような生物と言っているが、俺にはネコかイヌのように見えるな。

 

「おーよしよし、このあたりがいいのか? ん?」

「キュウ、キュウ!」

「ふふ……珍しいですね。フォウさんがなつく相手がいるとは。

おめでとうございます。カルデアで二人目の、フォウさんのお世話係の誕生ですね」

喜べばいいのかな? それは。

 

それから。

 

俺とマシュは、時間の許す限り話をした。

 

何のことは無い、他愛のない話。

日本の話。学校の話。勉強の話。家族の話。

どんな色が好きか、どんな食べ物が好きか。好きな動物は何か。

 

我ながら口下手な話し方ではあったが、彼女はどの話にも、きらきらと目を輝かせながら聞いてくれた。

 

「えっと……こんな話でよかったの?」

「はい! 先輩の話は素晴らしいものばかりですね!」

「そう? 楽しんでくれたら俺も嬉しいけど」

 

「あの、先輩。……私からも、ひとつ聞いていいですか?」

「うん。何?」

「先輩は、なぜカルデアに来たのですか?」

「? なぜって…?」

「あ、言い方を間違えてしまいましたか?

ええと…先輩は確か、一般枠のマスターでしたよね?

 

魔術のことも、スカウトされた際に初めて聞いたとか。

……私は、魔術というものは生まれた時から知っています。

魔術は神秘たるものとして、秘匿するもの。

普通に生きている人には、特に知る必要のない、交わることのないものです。怖くはなかったのですか? それとも、魔術という非現実の言葉に、刺激を求めた、とか。

…と、最初はそう思ったんですが、どうも先輩を見ていると、そういった理由では無いように感じられます」

 

「それは、どうして?」

「そうですね……なんというか、先輩はとても人間らしい、というか。

脅威を感じないのです」

 

「……ううむ」

それって、俺は頼りない奴と思われているということだろうか?

 

「………」

「………」

「いや、ここに来たのにそんな深い理由はないよ」

「と、言いますと?」

「魔術とか、非現実的なものがあったっていうのは驚きだったけどさ……、そういった事情がもし無かったとしても、俺はここに来てたんじゃあないのかな」

「?」

「ほら、世の中にはさ、すっごい偉業をなした偉人とか、英雄とかっているでしょ?

でも彼らだって、生まれた時から事を成せたわけじゃあない。誰かと出会って、別れてを繰り返して、積み上げてできていったのが、その人なんだと思うんだ。

 

だから、俺も同じ。特別な理由なんて特にない。

でも誰かと出会って、俺自身、いい出会いだったなって思いたいから、ここに来た。

理由はそれだけ。

ほら、深い理由なんてないでしょ?」

 

「―――――」

マシュは目を見開いてこちらを見た。

 

少し、沈黙していたのだろうか。

「……あの、ではもし、そのような出会いが無かったとしたら?」

「その時はその時でしょ。ろくでもない出会い。会いたくもないことって結構多いよ?」

 

寧ろ、そっちの方か多いのかもしれない。

…以前バイトで働いたブラック店長とか。

…近所でばったり出会う悪ガキとか。

 

「でも、無意味ではないと思うんだ。そういう奴もいるんだなってことで。

無駄ではあっても、無価値ではないんじゃないかな」

「………」

マシュは少し、じっと考えるように俯いた。

「…そうですね。先輩の言う通りですね。出会いはいくつもあるもの、ですから」

「それにさ、早速カルデアに来て良かったって思えることができたからね」

「そうなのですか? 因みにそれはどのような…?」

「あー…えっと、それはその」

それはもう、マシュみたいな可愛い女の子と出会えたからさ!

なんて、歯の浮くセリフが出かかったが、流石に自重しよう。

 

「もしもーし、お二人さん? 甘ーいピロートークもそこまでにしておいた方がいいぜ?

こっちが胸焼け起こしちゃうからさ」

 

「へ?」

声の方向へと目を向けると、一人の美女がそばに立っていた。

 

第一印象は、絵画に出てきたかのような美女。

その端正な顔立ちに思わず見とれてしまう。

「えっと、貴方は…」

マシュも会ったことがない人物なのだろうか、慎重な様子で彼女に話しかけた。

「おっと、私の自己紹介はまた後で。そろそろ挨拶が始まるからさ。呼びに行けってレフが言ってたよ?」

「ああ、もうそんな時間ですね…。不思議です。こんなにも時間があっという間に過ぎてしまうなんて。

 

では先輩。これから所長からの説明会がありますので、向かいましょう」

 

   ◇     ◇

 

結論から言おう。

追い出されました。

 

マシュと話している間は、眠気はなんとか抑えられたものの、カルデアの所長、オルガマリー氏の話を聞いていると、再び睡魔が襲いかかってきた。

 

「大丈夫ですか? 先輩」

「うん、何とか……」

いい具合に平手打ちを食らったからか、眠気はすっかりと消えてしまった。

「取り敢えずは、呼び出しがあるまで自室で待機、ということになります」

「参ったな…来て早々、解雇かなぁ…」

「その辺りは大丈夫かと。所長はああ見えても優しい所がありますので。

 

あ、ここですね、先輩お部屋は」

 

「うん。マシュ、案内ありがとう」

「はい! それでは先輩、また後ほど!」

 

たっ、と彼女は廊下を走って行く。

 

「……あの、先輩」

 

くるりと、マシュはこちらを向き話してきた。

 

「どうしたの? マシュ?」

 

「その、ええっとですね……」

 

マシュは少し悩んだ素振りを見せて、

 

 

「今度、また、お話ししてもいいですか?」

 

 

そんなことを言ってきた。

 

 

「―――うん。勿論」

 

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