カネキヒーロー IF・番外編   作:ゆきん子

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※タイトルで察せるとは思いますが、金木研が前世から女体化しています。生まれた時から。
※先天性にょたカネキはきっともっと荒んでるし、ネガティヴ。多分有馬さんはお互いを理解できる唯一の存在だった。


轟→(?)カネ子→有馬

 

 

 

 

轟焦凍と私は、中学から何かと縁があった。

クラスが三年間一緒だった時は彼に対して有名人だという認識以外に興味が無かった事もあって大して驚きもしなかったが、流石に雄英に入ってまで同じクラスになるとは思わなかった。

普通は問題児は同じクラスに入れないんじゃないのか。

ヒーロー科に入っておいておかしな事を言うが、自分の個性がヒーローに向いていない事は分かってる。この身体でも人の肉の方が優秀な栄養源であるし、そもそも個性を使ったら目が黒白反転どころか片目だけ黒に赤という嫌悪感を持たない方がおかしい見た目だ。赫子だって殺傷力が高すぎて使い方を工夫しなければ人に対して使う事は出来ない。

自分の性格がひねくれている事も、ヒーローに向いていない事も分かっていた。

轟焦凍も授業態度こそいいが、"協力"なんて知らない、要らないみたいな顔をしてるし最初の戦闘訓練で、「レベルが違いすぎた」と一つも申し訳無く思っていないだろう顔で謝ったのを私はオールマイトのインカムから漏れた音で知っていた。……まあ私も人のことは言えないが。

 

私の観察する視線に気付いた轟君は、こちらを胡乱げな目で見てきた。

私は曖昧に笑って視線を黒板に戻すが、左側からの視線は暫く突き刺さっていた。

 

視線を感じなくなった頃、もう一度チラッと隣の彼を盗み見る。

やはり似てる……気がする。

彼と隣の席になった事は初めてだが、右側から見る彼はかつて私を殺した男によく似ていた。…此方の方がハッキリした目立つ顔立ちではあるが。

 

意識がぐちゃぐちゃに交じり合う中、私は彼が「綺麗だ」という声を聞いた。

直前に私が口にした詩のことかと思った私は「白秋です」と答えた。

その認識が合っていたのかは分からないが死神は何故か納得した様子で私の名前を口にした。

でも、私にとって驚きだったのは私の名前を死神――有馬貴将が知っていた事よりも、彼が綺麗だと口にした事実だった。

 

だって、私も彼に対して同じ感想を抱いていたから。

正気……に戻ったといって良いのか分からないが、ようやくまともに話せるようになった私はそれに少し笑うと、改めて自己紹介をした。

研という名前は男みたいで好きじゃなかった。幼い頃に母にそういうと、顔を真っ赤に染めた母が私を厳しく叱った事もそれに拍車をかけたのかもしれない。

なのに、有馬貴将に名を呼ばれるのは不思議と不快じゃなかった。

訂正するとまるで小さな子供の様にあのヒゲ面でしょんぼりされる四方さん以外は、親友であるヒデにも、数少ない(寧ろ唯一の)同性である友達のトーカちゃんにすら名字で呼ぶように頼んでいたというのに、初対面の男に名を呼ばれるのを私は拒まなかった。

 

それから私達は少し話をした。

天気の事などなんて事ない話だが、だからこそ異様な光景だった。

直前まで殺し合いをしていたし、そして会話が終わったら私達はまた殺し合いを再開することが決まっていたから。

彼は私の大切な人たちを殺す任務を与えられていたし、私も簡単にその場を譲る事は出来なかった。

 

最強の喰種捜査官である有馬貴将と、元人間であり今は討伐対象の喰種である私を繋ぐのは、殺し合いの中に咲く同族意識という名の枯れかけた一輪の絆だった。

私は彼が抱えている孤独を知ったし、彼もまた私の孤独を察した。

いつだったか月山さんが持ってきた、死神は喰種と会話しないという噂は噂でしかなかったのか。それとも死神は私に何かを感じていたのか。

真実はもう知る事はできないが、ぽつぽつと交わされた会話は長いようで一瞬だった。

お互いに名残惜しく感じながら再開した殺し合い。私は自分の敗北を悟っていたし、有馬さんは自分の勝利を疑わなかった。

一撃も入れられなかった私に有馬さんはおなかをクインケで優しくかき混ぜ、両目を潰した。

 

 私は死神の腕の中で、優しい眠気に身を任せた。

 

もし、私が人だったら。

もし、彼も喰種だったら。

そしたら、きっと私達はもっと深い仲になっていたのかもしれない。

それは友人かも知れないし、恋人かもしれないと考える私は、自分を殺した男に恋をしたのだろう。

もう二度と敵わない初恋である。

 

ふうと息を吐いた私はいつの間にか終わっていた授業にノートを閉じる。…前に、落書きを見つけた。

有馬さんの名前が余白にやけに丁寧に書かれていて、我ながらキモイなと思った。でも許して欲しい。こちとら敵う事のない恋を拗らせてしまっているんだ。

 

「カネキ、飯食いに行くぞ」

「あ……えと、うん」

 

これだ。

何を思ったのか、最近轟君は移動やご飯の時私を誘うようになった。

中学に入るまで一緒に食事を取るどころか事務的なこと意外碌な会話もした事がない。こんな風に誘われるのは高校に入ってから……もっと詳しく言うと、戦闘訓練の後くらいからだった気がする。

一人暮らしが許されず、店から学校に通う私は時々通学の電車内で彼を見かける程度だったのが、駅のホームから彼が自然と近くにいることが多くなったり……。

察するに、私の実力に興味を持ったものの、今まで人付き合いをしてこなかったツケが回ってこんな気まずい感じになっているのだろう。人のことを言えた口ではないが。

 

 

 

タッパーに詰め込んだ肉達を周囲に変な顔で見られるのにも慣れた。

轟君は人の食事にどうこう言ってこないし、私も彼の食事が冷たい蕎麦の割合が多すぎると思うが何も言わない。関係ないし。

ただ居心地は悪くないと思っている。

そんな事を考えていると、前に座る轟君が徐に口を開いた。

 

「…有馬貴将」

「!」

「って、誰だ?」

 

びっくり、した。

思わず肩を跳ねさせた私を無表情でじっと見ている轟君に、途端に居心地が悪くなる。ノートを見られたのだろう。

一瞬周囲の音が消える錯覚に陥るが、一度深呼吸してすぐに平静を取り戻して、言葉を選びつつも答えるべく口の中身を飲み込んだ。

味なんて付けていないはずなのに、砂を噛んだような不味さな気がする。

 

「私の、初恋の人……かな?」

「は」

「凄く強くて、ヒーローみたいな職業だったけど、敵からも味方からも恐れられてた。強すぎて、誰からも理解されなかった――孤独で、可哀そうな人」

「……」

「轟君に少し似てるかも」

 

彼の左側に対してはなんとも思わない(強いて言えば火傷が痛々しいなというくらい)が、彼の右側はその少し伸びた白い髪といい、どこか寂寥を宿す灰色の目だとか……。

ただ、()()()()()という事が、私の胸をまるで雑巾でも絞っているかのように締め付けた。

 

「……やめろ」

「え?」

 

懐古に宙を泳がせていた視線を轟君に戻すと、彼は眉を顰めて不快そうな顔をしていた。

 

「俺はそいつじゃない」

「うん。知ってるよ…」

 

言ってからあ、と思った。

当たり前だ。求めていない人から好意を向けられるのは、人によっては嬉しいかもしれないが不快に感じる人だって勿論居る。

彼は私が「似てる」と言ったせいで、私が轟君に好意を持っていると思って不快になったのだろう。

 

「あの、ごめんね。似てるからって轟君が好きとかじゃないから。ただ轟君を見るとちょっと懐かしくなるだけ」

 

私がそう弁解をすると、彼はそれはそれで不服だという顔をした。

どういう意味か分かりかねるが、これ以上何を言えば良いのか分からないのでもう一度謝ると首を振ってもういいと言われてしまった。

 

「あの、不快になったんじゃ」

「別に……じゃあ、さっき授業中に見てたのもそのせいか」

「え?あっ」

 

さっきの私の視線は気付かれている事を思い出すと、私の顔がカアッと熱くなる。

今の私の話は、もしかしてさっきの思考をそのまま説明したようなものではなかろうか。

そう考えると、とても恥ずかしい事をした。

 

昔、かっこいいなと思っていた男子についてヒデにからかわれた事を思い出した。

私が好意に気付かれる事を苦手に思っている事を知った上で、あいつは器用にも"ここまでは大丈夫"だというラインを見極めてからかってきたっけ。

決してそのラインを踏み越える事がなかったからこそ、私はヒデと親友と呼べる仲になったんだ。

 

顔が赤いままに過去のことを思い返して微笑むと、轟君は声を掛けてきた。

 

「おい、次の授業ヒーロー基礎だ。早く食って着替えんぞ」

「あ、うん。ごめん」

 

どうやらちんたらすんなと怒られたようだ。

急かすくらいだったら先に行けばいいのにと思うけど、もともとノーと言えない典型的な日本人である私は複雑な心情を抱えつつ頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

「なあ、女子のヒーロースーツどう思う?」

 

隣で着替えてた峰田が不意にそう口にした。

俺は一も二も無く答えた。

 

「パツパツ系こそ至高」

「上鳴、お前って奴は……」

 

俺らは頷き合うと互いの手を硬く握りしめあった。

話はじゃあ誰のヒーロースーツがいいかという流れになり、峰田は断然八百万押し、俺は決めかねるが芦戸あたりも良いパツパツだと思う。

 

「確かにヤオモモは露出度高めでいいよな」

「……」

「?峰田、どした」

「金木……」

「っ!」

 

そうだ、俺とした事が……パツパツ女王(クイーン)を忘れていた…!

 

「金木の腰!」

「ふともも!」

「「カネキチっぱい!!」」

 

男子更衣室が静まり返った。

だが分かる。何人か唾を飲み込んだ奴、居るだろ?

俺が顎に手を当てフッと笑っていると、パタンとロッカーを閉める音。着替えの終わった轟だった。

 

「……」

「……」

 

轟はこっちを何を考えてんだかわかんねぇ無表情で見た後、結局何も言わずに背を向ける。

俺は助かったと詰まった息を吐いたが、空気に耐え切れなかった峰田が一番振っちゃいけない奴に話を振った。

 

「な、なんだよ。お前らだって性癖ぐらいあるだろ!?なあ轟さんよぉ、クールぶってるけど最近金木といっつも一緒にいるよなァ!?お前も金木のヒーロースーツ良いなとか思ってんだろ?」

 

俺はこのアホな友人(峰田)を止めるべきなのか、それとも好奇心に従って轟の回答を待つべきなのか分からなかった。

しかし、俺がアワアワしているうちに振り返った轟がまるで「変な事を聞くな」とでも言いたげに首を傾げた。

 

「?そうだな」

 

「(あれー?轟さん!?)」

 

「ただ、肌とか髪とか白すぎてそれが黒い衣装で強調されるから、ちゃんと外出てんのか心配になる」

 

「(しかも意外とじっくり細かいとこまで見てるー!?)」

 

みんなの心の声が揃った瞬間だったと思う。

轟が出て行った後、俺はそっと皆の顔を見回す。

あの爆豪まで口をあんぐり開けて驚いていた。相当な出来事…悲惨な事件だった。

 

俺的には、轟がエロい目で女子を見ていたことが未だに信じられない。あいつも男だってことか…。

いや、というかむしろ体調心配してなかった?そういう風に捉えちゃう俺らの心が汚いのでは?

 

「もうわっかんねえや……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ちょ、金木さん!?大丈夫?」

 

耳まで赤くなっているであろう私を麗日さんが心配そうに覗き込む。

 

「そっとしておいてやって」

 

響香ちゃんがポンと私の肩を叩いた。

気付かなかったが、多分私が真っ赤になってかたまった時に私の個性から察して彼女も個性を使って隣の会話を聞いたのだろう。

私の場合、聞いたというより聞こえてしまったという方が正しいが、友達の響香ちゃんにも聞かれてしまったとは、恥ずかしさで煮えそうだ。

 

実は響香ちゃんには、トーカちゃんと似た点が沢山あって勝手に苦手意識を持っていたのだが、そんなことも彼女の人柄を知れば考える事すらバカらしくなってしまった。

響香ちゃんならからかったりしないだろうと、安心して顔を上げた私が見たのは、面白いものを見つけたとニヤニヤと笑う響香ちゃんの顔だった。

 

「ちょ、響香ちゃ」

「まさか轟があんなふうに言うとはねー……ま、確かに露出は意外と多いかもね」

 

彼女の視線が腰辺りに向かったのを肌で感じ、慌てて畳もうと持ったままにしていたブラウスで遮った。

 

「でも、これは……個性のせいでやむを得ずというか…仕方なくというか…」

「ふ、知ってるよ。からかってごめん」

 

ムニャムニャと話す私に響香ちゃんが謝ってこの話はここでおしまいになった。

着替えが終わって更衣室を出た私達は想像していなかった人物にかち合ってしまった。

 

「カネキ」

「なっと、とど、とどろっ」

「着替え終わったのか」

「!!?」

 

そういった彼の言葉に過剰反応してしまう。

そして一度意識すると彼に腰だとか足だとか……むね、だとかを見られているような気がして、今までなんとも思っていなかったヒーロースーツが恥ずかしくなった。

 

「さっ先行きます!」

 

叫ぶようにして走ってそのまま逃げる。

最悪だ!もう、月山さんのバカ!変態!変態紳士!

 

 

 

 

 

 

「どうしたんだ、カネキ」

「……アンタほんとに分かってないの?」

「何がだ?」

「はぁ。…ま、噂話はもっと小さい声で話せってこと」

 

 

 

 




本当に大丈夫でしょうかこれ……。(特に男子更衣室のくだり…!)
なんか、そういう団体から苦情来たりしませんよね?大丈夫ですよね?
セッ、セーフだセーフ。落ち着け…。
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