※前回のと同じく、金木君が先天的に女体化しております。
前回よりはあからさまに轟君との恋愛描写を書きました。苦手な方はお気を付けください。
「カネキ、おはよう」
「カネキ、飯食い行くぞ」
「カネキ、次移動だ」
「カネキ、電車だろ?一緒に帰んぞ」
……あの後、轟君は以前にも増して馴れ馴れしくなった。
自分でもおかしな逃げ方をした自覚があるのだが、何が原因だろうと首を捻ると響香ちゃんのサムズアップ。察した。
ご覧の通りおはようからおやすみまで、轟君の提供でお送りしている訳である。
本当にどうしてこうなった。
だが、私もいい年して生娘のように照れてばかりいるわけではない。……生娘だけど。
思えば前世で顔だけはいい月山さんに言い寄られ、付きまとわれ、迫られていた経験だってある。(彼は別の意味で私を食べたがっていた訳だが)私も開き直って、友達として、
で、今日の話題な訳だが。
「……えっと、なんて?」
「?…普通は仲良くなったら名前で呼び合うんだろ?俺はお前の事下の名前で呼びてえから、お前も俺の事焦凍って呼んで欲しい」
「あ、うん。聞こえてた。そうじゃなくて…」
視線を感じてそちらを見ると、ニヤニヤとこちらを見る響香ちゃんと、困ったようでいてどこかわくわくした様子で私達の様子を窺う八百万さん。その他女子数名。
またあの子達か……!!
私はどうやら花の女子高生を舐めていたようだ。
彼女達の行動力は、時に予想の遥か上を行く。……まさか、私達をくっつけようとかしているんじゃ、無いよね……?
「で、どうなんだ」
「あっ、」
愕然として宙を見つめていると、轟君がどこか不安そうに私の顔を覗き込んでいて少し仰け反る。
えっと、名前呼びがどうとかって話だったか。
「あ、うん。別にいいんだけど……」
ここは適当にごまかしつつ、名前呼びに慣れないフリで自然にフェードアウトしようなどと考えている罰が当たったのか。
途端に轟君の顔(というより雰囲気)がパッと明るくなり、私は眩しさにうっと目を細める。
何だ?純粋な子供を騙しているようなこのばつが悪い気持ちは!?
私は諦めのやるせない気持ちをため息で押し出す。
「うん、分かったよ。……ショート君」
「!じゃあ俺も、」
「でも、…私は、あんまり自分の名前好きじゃないから……」
言外に下の名前で呼ぶのはやめて欲しいと伝えると、轟――焦凍君は不可解そうに首を傾げた。
「なんでだ?」
「なんでって…だって、男の子みたいな名前だし、それに」
「それに?」
「―――ううん。何でも」
顎を指で擦って言葉を濁すと、焦凍君はやはり不思議そうな顔をした。
――研、貴女の名前はお父さんが付けてくれたのよ。だから、大事にしなくちゃね――
――でもおかあさん、私あんまりこの名前好きじゃない。男の子みたいだし……――
――…なんてことを言うの、研!悪い子ね。貴女をそんなに親不孝者に育てたつもりは無いわ!――
――研、どうしておかあさんの言う事が聞けないの!――
――本当に悪い子ね、研!おかあさんは忙しいんだから、面倒を掛けないで頂戴!――
研、研、研けんケン―――
「そうか?別に変じゃねえだろ」
「えっ?」
「昔はそうだったかもしんねぇけど、今時は女でも男っぽい名前のやついるだろ」
「……そう、だね」
それだけじゃないんだけど…。
でも、焦凍君が気遣ってくれたその気持ちが嬉しくて、下手くそに笑った。
「それに、研ぎ澄ますって名前の漢字、俺は結構好きだぞ」
「へ!!?」
何も意識して無さそうな焦凍君の言葉に、ドギマギと目を白黒させる。
な、この子は本当に何も意識してないんだよね!?
この間の件といい、本当に恥ずかしい事を平気で言ってのける人だ。
す、好きって……、わわ私のこと…いや、名前か!
ふ、不覚だ。少なくとも精神は私の方が成熟しているというのに、こう、転がされているというか。
「まぁ、お前が苦手だって言うなら無理にとは言わねーけど……今は、な」
「あはは、ありがとう。……ん?」
何となく不穏な言葉が聞こえた気がして聞き返すと、なんでもないとのこと。ならいいけど。
それにしても、研ぎ澄ます…か。
ふふ、そう考えたらなんだか寧ろ名前負けしているような気がしてきた。
案外悪くないかも。なんて思ってしまう私は、単純なのでしょうか?
「なあ、あいつらって付き合ってないんだよな?」
「……少なくとも今のところはな」
「「……」」
「おはよう、
「ああ、カネキ。おはよ…!」
焦凍は私を見て……正確には、私の髪を見て息を飲んだ。
「ちょっと……イメチェン、みたいな。あはは…どう、かな?」
「……」
焦凍は未だに理解しきれていないのか、口をぱかっと開けてこちらを見ている。
イケメンでもこういう時は間抜けな顔になるらしい。
でも、流石に何の反応もないとこちらが不安になる。
背中の中ほどまであった髪を思い切って顎の辺りまでのショートボブにした時は、ちょっぴりの喪失感と一緒になんだか重たい気分も切り取った気持ちになったし、自分では似合っていると思ったのだが、似合わないだろうか。
視界の隅にある白い束を手持ち無沙汰にいじいじしていると、ようやく復活した焦凍が「あ、あ…」と声を発した。
「いや……似合ってる」
「!ふふ、そう?良かった」
暫く伸ばしっぱなしだったのに毛先が顎をくすぐる感覚が面白くて、小さく頭を振ってさらさらとした感触を楽しんでいると、焦凍の手が伸びてきてピタッと止まる。
焦凍は私の髪の指通りを楽しむように撫でると、視線を髪から私の顔に移した。
「っ!」
「思い切ったな。もったいねぇとか、思わないのか」
突然のスキンシップに固まる私は、その言葉に硬直から抜ける。
「あ…ああ、うん。でも前も手入れが面倒で伸ばしていただけだから…。それに、ちょっとした"決別"――みたいなのも込めてね」
ちょっとかっこつけた言い方をするとね。と言うと、焦凍は口角を上げた。
「前の方が良かった?」
「いや、俺はこっちのがいい」
「そ、そっか。ふふ、うん。そっか…」
焦凍が以外というか予想通りというか、ストレートに褒めるので、思わず頬が熱くなる。
口元がだらしなくニヨニヨするのを気合で引き締め、先程焦凍が触れたあたりの髪を直すように撫で付けた。
「……なぁ、本当に付き合ってないんだよな?」
「……まだのはずだぜ」
「轟もいい加減もっと大胆に押せばいいのに。カネキ、押しに弱そうだし」
俺と瀬呂が世の不条理について議論を始めそうな時、横で耳郎が爆弾を落とした。
そうか……金木はああ見えて押しに弱いのか…。
ほっこり、それはもう菩薩の気分になりかけたが、ふと思い至る。
あいつらがくっついたら、どうなるんだ?とかな。
「なんか、あいつらの子供って……凄そうだな、色々」
「あぁ~」
隣で瀬呂が、同意なんだか良く分からん声を出す。
さらにそういう話題には地獄耳の峰田が「バッキャロー!子供ってことはだな、男と女の~~」とか語りだすし、もう考えんのもめんどくさい。
……まあ、本人達が気付いてんだか知らねーけど、お互いに頬を染めつつ話してんのは初々しいし、傍目から見てもお似合いだとは思う。
だから、せいぜい末永くお幸せに爆発してくださいこの野郎。ってことだ。
長い髪と一緒に、前世への未練を断ち切ったカネ子。
時系列をあえて言うならば、雄英体育祭よりは後だと思います。
白カネ子化+轟がちょっぴりフレンドリー。
轟君って、ちょっと天然疑惑があるところも有馬さんに似てるかも。
さて、轟ルートはこれでひとまず終わりです。
続きはまたリクエストを頂いたら書こうと思います。