オススメBGM
ロシア民謡「カチューシャ」
「お客様、少し宜しいでしょうか?」
そう言って『水橋 ぱる』だと思われる女性に声をかける。
話しかけた途端ビクゥ!?という感じに飛び上がっている。
「ふぁっふぁい、何でしょう?」
冷や汗をだらだら流し、目は泳ぎまくって、声は上ずっている。
本当に分かりやすいというかなんというか不思議な人である。
「いえ、先ほどのお客様(?)の探し人にお客様がよく似ていらっしゃるので・・・お話をと思いまして」
そこまで言って一旦口を閉じる。
相手はこちらに目を会わせるどころか顔すらこちらに向けれず冷や汗を流している。
きっとこちらからは見えない顔は焦りを体現しているだろう。
「ちょっと奥来て貰えますか?」
勿論はい、いいえは聞かない。
奥に来いと言って腕を引っ張って行くだけである。
「え?あっ、ちょっと!?」
ズルズルと引っ張っられて奥に連れ込まれるのを周りのお客様は止めもしない。
精々驚いた顔とまたやってるぜなどの顔位しかない。
うちのお客様は変わり者が多いですね。
仮眠室の前を通り過ぎ、一番奥の扉を開けて中にあるソファーに相手を座らせる。
いきなり状況が二転三転として目を白黒させている相手に話を切り出す。
「えーっと貴女は水橋ぱるでいいんですね?」
まずは身元確認からということで名前から聞いていく。
そんなときスピーカーから露西亜民謡のカチューシャが流れ出す。
歌う二人の女性シンガーの透き通る歌声が響いてこの部屋の温度を少し下げる。
その透き通る歌声はまるで氷のようで鋭利で冷たい。
しかし、民謡の暖かさが残っている良い曲だった。
「えぇ、そうですが・・・」
曲の冷たさが混乱していた頭を冷まさしたのか、声に落ち着きが戻る。
「なんで追われていたんですか?」
冷静になってくれたようなので質問を続けていく。
「いえ、一寸したいさかいですよ。お小遣いの値上げをするかどうかっていうね」
本当にチョッとした事だった。
それも果てしなくどうでもいい、いさかいだった。
「うちは駆け込み寺じゃないんですから気を付けて下さいね!」
一応叱りつけては置くがきっとこれからも駆け込まれる気がする・・・。
私の一応ではあるがお叱りを受け、もとの席に帰るぱるさん。
しかし、誠に残念なことながら安宅丸がこめかみをヒクツかせながら元々ぱるさんが座っていた席に座っていた。
「はーい師匠、ちょっと裏路地いこうね~♪」
そう言われてぱるさんは飲食代を出して裏路地に行ってしまった。
顔が青ざめていたのは気のせいだと思いたい。
なお、この後少しの間ドゴンと言う鈍い音が数十回鳴っていたが私には関係のないことだろう。
まぁ常連が増えて良かった良かった。