デート・ア・イート 〜Law of the Spirit Jungle〜 作:rockzero21
またクリスマスということで2017年12月25日の零時から夕方まで放置していた艦これの小説を公開します。宜しい続けろ、と言われたら再公開、連載と致します。其方も宜しくお願いします。
second/sék(ə)nd,sék(ə)nt/ adj.
第二の、二回目の
2018-6/29-19:57:00…数箇所訂正
私は何時の間にか白い部屋の中にいた。いや、意識はしっかりと保っていたし、何時の間にかと言っては多少の誤謬がある。正確に言えば、私はあの空間震の現場で攻撃に構えていた。すると一瞬浮遊感を感じ、すぐいつも通りの重量加速がかかってきた。さて今の状況をどう捉えるべきか。現時点では、敵に捕まった線が濃厚で、其の次に何かに、例えば謎の少女による何かに巻き込まれた、といったところか。ともすれば、まずは脱出を考えなければ……と、扉が開き目の端に隈を浮かべた女性が入ってきた。服装は一般的な軍服の其れだが何故か胸のポケットには継ぎ接ぎの熊が入っている。推測するに此の施設?の関係者だろう。私は即座に身構えた、いや、身構え直した。
「待った、そう身構えないで欲しい。少なくとも私たちは君の味方だ。」
「そう言っておいて結局捕まったということもあるじゃないですか。」
「そうだな、素直についてきてくれるというなら別に拘束する気はない。あと自己紹介でもしておこうか。私の名は、村雨令音、此処で解析官をやっている。上からの指令で簡単な看護ができるように配置したらしいが、其の様子を見るにどうやら大丈夫らしいな。」
「上の指令……ね。本人に会わせて貰えないかしら。」
「勿論だ。元々其のつもりだったのだし。」
拘束がないのなら行ったとして不利になることは何もない。私は彼女についていくことにした。然し此の村雨という人物はかなりの寝不足のようで、幾度となく倒れかけ、物にぶつかっていた。
そういえば先に此処を施設と称したが其れも少し不可解な点がある。転送のシステムがどういうものかは知らないが、恐らく距離には限界があることだろう。然し乍ら私を的確に運べたというのは、此処が移動要塞のような物ととらえるほかない。其れはあまりに信じ難いことも理解しているが、そうしてみないと辻褄が会わない。
そうこうしているうち、私は如何にも司令室といった広場に出た。
「…連れてきました。」
「ご苦労様。」
此の広場を艦橋に例えるとすれば其の艦長席、其の隣にいた長身の男性が彼女に向かって会釈をする。彼は私に向き直り、自己紹介をした。
「初めまして、此処の副司令の神無月恭平と言います。以後お見知り置きを。」
「……はい……」
彼の礼儀正しい態度に少々気持ちを許すも、少なくとも緊張は保っておいた。そして恐らく総司令の少女が此方に体を見せる。
「ーーようこそ、『ラタトスク』へ。」
其の姿はまさしく
「失礼、貴女の名前を伺いたいのですが。」
「あら、五河士織。妹の事を忘れたのかしら。認知症の老人ホームでも予約しておくべきだったかしら。」
「貴女の言う妹が赤髪ツインテなお姉ちゃんっ子の料理も一人でまともにできない癖昼飯にデラックスキッズプレートを頼み、あげく空間震央に居た五河琴里を指しているんだったらよく覚えているわ。」
「じゃあ私が誰だかぐらいわかるんじゃないの。」
「信じていいって言うんだったら。」
「う……」
先に折れたのは琴里の方だった。
「ええそうよ。私は五河琴里、貴女のよく知った妹よ。昼ごはんにデラックスキッズプレートを頼んだ挙句、ちょうど空間震が起こってしまいボツになった其の人物であってるわ。何ならもっと情報を出してもいいけど。」
「私は琴里の姉よ。其れぐらい分かるわ。尤も信じるには少し根拠が足りなかったけど其れはさっきの問答で十分満たされたからね。」
「ならいいわ。それじゃあ今度はこっちからね。」
其の言葉とともに先程の戦闘シーンの一部が切り取って表示された。其処からの解説は多少のオカルトでも信じるような私にとってすら度肝を抜かれるような内容だった。
曰く、あの場で人々を迎え撃った少女は『精霊』と呼ばれる存在であり、彼女等が別世界より現界する際に空間震が起こる。そして其の精霊とやらを倒すためにいるのが、鳶一等『
「まあこんなところかしら。でも士織、よくあんな空間震の中で無事でいられたわね。」
「悪運が強いのはいつもの事でしょ。」
「でも何で出てきちゃったのかしら。」
「GPSを確認しろって結構言われているからね。」
「やば、切り忘れていた。」
「いや、何でファミレスのところにいて琴里は空間震を……いや突拍子もないけどもしかして、此処は空中要塞だったりする?」
「流石ね、ほぼ満点。此の『フラクシナス』は空中艦よ。」
其の言葉とともに壁に天宮の上空が映し出される。いや、寧ろ透けているというべきかもしれない。構造上カメラは別の位置にあるはずだが其のパノラマは曲面な壁、さらに天井や床にも同様に映し出されている事であたかも空に自分自身が浮いているようだ。
「まあ此んな訳で、此れからは対策を打っておく必要があるわね。いや精々グラム単位で毛ガニに負ける脳みそには必要ないかしら。」
「なら其れより頭の弱いASTの連中を制圧すべきだね。」
すると琴里は神無月を呼び寄せ、其の目にキャンディーの、朝食べていたばかりなのにもう二本目になっている、其の棒を突き出した。彼は非常に満足した面持ちだが、彼のマゾ体質はまだしも食べ物で遊ぶな。
「さて、以上わからない事はあるかしら。」
「そうね、ない……と言いたいところだけれど一つ重大なポイントが抜けてるわ。『どうして』精霊を倒すに至ったのか、其れを教えてくれないかな。」
「あら、さっきの話で分からなかった? 精霊が空間震の元なんだから其れをなくせば空間震はなくなるわ。」
私の頭がイカれているのか、其れともただ正常なだけか、其れは分からない。然し間違っていると私は信じた。其れを実証するには不確定な要素ばかりだが、此処で問題なのは『相手を言いくるめた』事ではなく『反論を翻した』事だ。
「一つ、飽くまで精霊は空間震を其の意にかかわらず起こしており、本人とは無関係である。其れを正当とするのは二酸化炭素の排出の原因となるから全生物を皆殺しにするようなものだ。」
周囲は私の話を肯定するでもなく、抗議するでもなく、静かに聞いている。私は続けた。
「二つ、先の戦闘を見る限り其のASTとやらが実際に効果をあげている描写は見られない。そんな事するくらいなら顕現装置の力を空間震の被害者の救助の方により充てるべきだ。」
そして、議論には不利な点であるものの、できるだけ感情を込めてこう告げる
「最後、私は彼女等をどうしても守らなければいけない。其れが私が信じる道であり、『私』の意思だから。」
其の儘右腕の腕輪に手をかけ臨戦体制をとる。
「もし何がなんでも私の意思を変え精霊に対して兵力を投入するようなら……此の場にいる人間は全て、皆殺しにする。」
其の瞬間あたりは静寂に包まれ、私しか喋っていないから当然の事だが、そして拍手が巻き起こった。あまりにも突然の事すぎて先程の調子は尻すぼみとなった。然し想像してほしい。クラスの異物扱いが至極まっとうな意見を述べた、其れだけで表彰されたならいったい何事かと思いたくなるのは決して私だけではないだろう。何より、其の後の発言は私にとって予想外なものだった。
「そう、なら手伝ってあげる。」
「手伝ってあげるって……どういう……」
「そうね、言い忘れていたわ。我がラタトスクは『精霊を保護する為の組織』なのよ。」
精霊を保護する……其の言葉に私は若干の疑問を抱えながらも納得していた。解析官の台詞も丁度当てはまるし、精霊との戦いを静観しているのにも理屈がつく。然し神出鬼没な精霊をどうやって保護するというのか、然も相手は見境なく攻撃を放ってくる。其れ等が解決されたとしてASTが攻撃を仕掛けてくるんだからどうしろというのだ。其のような私の考え方を汲み取ったように琴里は解説を始めた。
「精霊を攻略する術は二つほどあるわ。まず一つ、此れが武力によって制圧するという方法。幸いこっちには顕現装置があるから武力は備わっているわ。」
「其れで結果が此の状と。ASTは其の分の血税を復興に当てた方がいいんじゃない?」
「尤もよ。其処で第二の策、デートしてデレさせるの。」
須臾の間を置いたのち、私は我が耳を疑った。
私は其処まで差別主義な訳ではない。幾ら其の人物に多数派との違いがあったとして其れは単なる個性でしかない。逆に自分が総てに於いて多数派だという人がいるのなら一度見てみたいーー若し本当なら空間震なんかより恐ろしいことだ。とはいえ、自分だって多少個性はあれど思想はは平均的である、少なくとも性別的にはLGBTTQQIAAPの内の
「精霊と百合百合するの……」
「ええ。」
やっぱりな。いや、納得している場合じゃない。何故私なの⁉︎ 別に私はどうとも言わないけど相手が納得するかどうか分からないのに……
「其れって……男の人じゃ駄目なの……?」
「あら、士織ってば差別主義なんだー。」
「いや、私は別にどうとは言わないわよ。でも、私は良くても精霊が惚れるかどうか分からないわ。男の娘と言うんなら、若しくは相手がレズだっていうんなら話は別だけど。」
「必要なのは女の子じゃないわ。『五河士織』よ。まあ、種明かしは後々やるわ。」
……はぁ、まあ其れでいいっていうんなら断る必要もないし……
「……乗った。精霊を誑かせばいいんでしょ。」
「『誑かす』じゃないわ、『惚れさせる』よ。其れじゃああっちに行って書類に必要事項を書いたら帰っていいわよ。あ、昼ごはんは既に食べたわ。あと明日から訓練よ、覚悟しておきなさい。」
陸上自衛隊・天宮駐屯地、精霊〈プリンセス〉の戦闘よりASTの面々が帰還していた。元々何も対抗できないような精霊であるからして怪我人も多くなる。然し今回は明らかに異常だった。怪我をしていない鳶一はワイヤリングスーツを脱ぎ待機状態へと戻ったがそんな中でも次々と担架が運ばれていった。鳶一は先にあった戦闘を反芻していた。
自分のパートナーである士織、彼女が戦闘に巻き込まれていたのだ。彼女は自分とは違って一般人、そう関わるものじゃない。然し驚愕の理由はそれだけではない。彼女はあろうことか『自分たちの敵である精霊に味方し、此方側を攻撃』していた。何故自分のパートナーである士織が私を裏切っている、鳶一にはありえないように思われた。
鳶一の名を呼ぶ声がして振り返ると隊長の日下部燎子一尉がいた。そのまま鳶一の隣に座ると勝手に話し始めた、尤も鳶一としては特に不満を感じる要素もないが。
「しっかし大変だったわね〜、まさか一般人に乱入されるなんて。」
「いや、一般人に対抗できない私たちもどうかと思う」
「何よあんたにしては。あんたはウチのエースなんだから。」
「違う、私は精霊を倒さなければ何にもならない」
「またそんなこといって……私たちは災害から市民を守るのが使命なのよ。」
そう言われて鳶一も納得せざるを得ない。大災害の仇を取るためにASTに入ったのだが其の本来の仕事は日下部の言うとおりである。其の辺り自分は未熟だ。そう考えつつ鳶一は部屋を出て行った。
「訓練ってゲームかよ! 騙された!」
翌日、卯月の十一日、訓練ということで私は村雨解析官、いや此処では村雨教諭というべきだろう、と琴里(授業は終わった)により物理準備室で訓練を行うことになった(因みに今まで此の部屋を休息の場としていた長曽我部教諭はいない。合唱)。さて此れは訓練が始まった時の第一声である。
「そりゃあ男ならまだしも女を口説ける訳じゃないでしょ。安心して、此れはかなりリアルに作ってあるわ。」
琴里に続いて令音さんも説明を始める。
「此れは我が機関が総力を挙げて作り上げた『恋してマイ・リトル・シオリ』だ。実際に起こる事象を詰めた、十五禁ゲームだ。」
「語呂が悪い! あと十五禁なの⁉︎」
「ひょっとして十八禁がやりたかったの? うわ最低、こんなのが姉なんて思いたくないわ。えっちいのはいけないと思うわ。」
「だったら全年齢対象でいいじゃないか……」
「ふうん……」
そういうと琴里はいきなり私の頭を令音さんの胸に押し付けた。
女っていうのはいい香りがするらしい。自分自身のものは慣れ過ぎていてもはや無臭に近いものになっているが、一人称ズやら友人やらで其れがあながち間違いでないのは理解している。殿町からは(私の香りが)人間を洗脳するとか言っているのも此の関係だろう(但し言った本人ですら洗脳されてないが)。そんな匂いが忽ち呼吸器の中に入ってきた。然もDかEかというほどのでかい胸に包まれている。どうやら洗脳されるというのは本当らしい……といったところで目が覚めた。
「なななななな、何するのよっ!」
「そういうところよ。初心な子には十五禁くらいでやらないと訓練にならないのよ。知ってる? 二十二までに女性と交際できなかったら半数以上が童貞なのよ。」
「私女の子だから! あと五年あるから!」
「そういうのをニートって言うらしいわ。ちゃんと女性への対応に慣れてもらわないと、精霊の保護なんて夢のまた夢よ。」
そう琴里が言う横で令音さんは腕組みをしているのだが、何というか、もう胸が『乗って』いる。女子だってこんな胸に押し付けられたらドギマギするに決まっている。因みに私も此のポーズをやったことがあるが、πが『滴る』というか『溢れる』というか、そんな感じになる珍事態が発生した。参考までに、身長や四肢は男子の平均ほどとなっている。
「分かった、適当にやっとくわ。」
そう答えると琴里は何やらノートを……何であれを持ってるの!
「そうね、若し失敗したら此の士織が若かりし頃に作ったポエム・『腐食した世界に捧ぐエチュード』を誰かの靴箱に入れるわ。」
うぅ……何だか目の前が霞んで見えるし空調の風が妙に生暖かい。とりあえず始めようか。
『「おはよう、お兄ちゃん! 今日もいい天気だね!」』
主人公の妹キャラであろう少女が、パンツ丸見えで主人公を踏んでいた。そして次に硬い床に投げつけられたと思われるゲームコントローラーが見えた。
「リアルって何よ!」
「……どうしたんだシン。問題でも?」
「何故妹が主人公を踏むような突拍子もない場面から始まっているんです⁉︎ 主人公は女じゃなかったんですか⁉︎ あと私は士織です!」
そう言いながらも私は既視感を感じていた。なんなんだろうな……
「済まない、兄になっているのは単純な書き換え忘れだ。取り敢えず先へ進めてくれ。」
やっぱりパクリじゃないの……と次のシーンへ進む。選択肢が出てきた。
「此の何れかを選んで高感度を上げるの。」
「はいはいっと。」
『①「おはよう。今日も愛してるよリリコ。」愛を込めて妹を抱きしめる
②「起きたよ。ていうか思わずおっきしちゃったよ。」妹をベッドに引きずり込む
③「かかったな、アホが!」踏んでいる妹の足を取り、アキレス腱固めをかける』
だ、ダ○アーさん⁉︎ とやっぱりどっかから持ってきたもんだろ此れ。何故かCGだけは女だが。あとやっぱり現実の皮を被った非現実じゃないか。何れを選べばいいんだ?
「あ、其れ制限時間付きよ。」
「マジか。」
下の方にタイマーが見える。切れる前に回答しろってことか。此れだったら……
『「かかったな、アホが!」
私は妹の足をひねり上げ、アキレス腱固めをかけーーようとした。
が、
「甘い。」
妹が身体をねじり、こちらの手から逃れると、そのまま私の背に回り、足を搦め捕って見事なサソリ固めをかけてきた。』
そして下半身不随になった主人公のエンディングが流れるが、私は寧ろ其れ以降の台詞が姉仕様だったことの方が何より心に響いた。
「なぁにしみじみとしてんのよ!」
途端琴里がサソリ固めをかけてくる。
「何処で覚えたのこんな技!」
「此れくらいレディーの嗜みよ。」
何其れ、暁ちゃん? 兎も角此処から脱出する必要がある。現在技はうまく決められており脚・腹・胸は固定されている。然も肺を圧迫されており呼吸も儘ならない。ならば、と私は片手で床を押さえ上半身を上げ、できた隙間にもう片方の手を滑り込ませて前方に半回転する。
レディーの嗜みとやらにはこんな法はないらしい、琴里は何をするでもなくされるがままになっている、おそらくまごついているのだろう。そして一転攻勢した私は仰向けになった琴里に向かって拳を振り下ろした。琴里には間一髪で買わされたものの床にはちょっとしたクレーターができており中心部は赤熱化、液体化している部分もある。そして逃げようとする琴里の顔を今度こそ捕らえ、床に押さえつけようとして……
「シン、兄弟喧嘩なら家でやってくれ。」
ハッと我に帰ると令音さんが呆れた顔をして立っていた。そして彼女は床の調子でも見るのだろう、部屋を出て行った。彼女なりの好意なんだろう、ゲームはスタート画面にセッティングされていた。手がもぞもぞとするので見てみたら琴里がすっかり怯えた顔をしていた。ただ其れも少しの間だけですぐにいつもの調子に戻った。
「あんたこそ何処で習ったの。」
「此の世界は弱肉強食。私は喰らう為に鍛えたわ。」
「だいぶ偏った思想ね、此のDV野郎。」
「私は女、野郎じゃないわ。其れにさっきだってあんたがサソリ固めかけてきたんだから正当防衛よ。」
「あんな下手したら死ぬようなの、絶対かじょ「サソリ固めを素人にかけると場合によっては呼吸困難から酸欠、場合によっては意識不明の重体や死亡するわ。と、さっきので大体覚えたよ。ノーコンティニューでクリアしてやるわ!」
「ふーん、そんな大口叩いちゃって、説明書も読んでないくせに。」
「リファレンスは読まない質なんでね。」
そう言ってゲームを進める。先の選択肢に到達した、と其処で私はコントローラーを置く。そして制限時間が3、2、1、0…
『「んー……あと十分……」
「ダメ! ちゃんと起きるの!」』
やっぱりな、制限時間の事が頭に引っかかってたんでやってみたら成功した。
そして数十分後……私は全ルートをクリアした。憤怒、やっぱりクソゲーじゃないか。koty-eに出せないのが辛いところだ。何とか黒歴史暴露は最初の一回で防がれたらしい。此れでもう一つの方もやられたら比喩じゃなく死亡するところだ。其れに冷凍保存されたり殺処分されたりしないだけよかった。
「さて次だけど、もう生身の女性に行ってしまいましょう。」
「大丈夫かね?」
「別に失敗しても失われるのは士織の社会的信用だけよ。」
本当なら怒りたいところだが、コンクリートに埋められるよりもと対比して多少無理にだが納得させた。
「まずはそうね……あの子なんかどう?」
琴里が指差した先には、げ、先日ASTとして戦ってた鳶一さんか。ま、まあASTを此方側へ引き込めば楽なのはあるが、どうも生理的に、ね……まあ言われたなら仕方ない、と私が鳶一さんに呼びかけようとすると、
「へっ?」
逆に彼女の方から手を引いてきた。もっと言えばエスコートされた。そして彼女はなされるがままの私を屋上への階段へ連れて行く。
「ええっと、何……かな……」
自分の声が妙に響く。聞きなれた自分の声なのに恰も催眠音声のように脳に、心に直接語りかけられたようで、とても居心地が悪かった。やがて彼女は唐突に口を開いた。
「昨日、何故あんなところにいたの」
「なんか妹が丁度あの辺りにいたようで……」
「妹さんは見つかった?」
「うん、何処も悪くなかった。」
「そう……」
完全に会話の主導権を彼方に握られている。然し乍ら此方もどういう返答をすべきか分からない。結果、黙っておくしかなかった。彼女は話を続ける。
「ーー昨日、私は貴女を見た」
「……う、うん。」
「誰にも口外しないで」
鳶一さんは無表情ながら強い口調で警告してきた。然し、私とて蛇に睨まれただけで黙りこくるような柔にはできていない。
「分かったけど……何か言われたくないようなことでもあるの?」
然し彼女は私の話を無視し、話を続ける。
「あと其処で起こったこともーー全てを忘れた方がいい。」
「無理に決まってるよ。」
今度はしっかり、強い口調で言い返して見せた。
「いきなり世界がえぐり取られて、女の子が現れて、みんなが攻撃を仕掛けてきて……そんなの忘れろって言われた方が無理があるよ……」
「其れが、貴女の為」
「だったらとんでもない見当違いだね。私にとっては知らないことの方がより嫌だな。特にあの女の子、理屈なんてものはないけど私はあの子を守らなきゃいけない気がする。」
すると鳶一さんは以前にも増して強い口調で答える。当然、私の方も自然と強くなる。
「あれは、精霊。私が倒さなければいけないもの」
「何で、彼女はあの武装した人たちが攻撃してきたから剣を抜いたまでで何もしてないわ。景気が悪くなったからと言って売れ行きの悪い会社に抗議するようなものよ。」
「私の両親は、五年前、精霊の所為で死んだ。だから他の人に同じ思いをさせたくない」
「成る程よく分かった。でも其れって『無差別殺人』と同じじゃない。」
「何処が? 精霊は死ぬべき生命体、人間とは違う」
「人間も、いや『人』というべきかしら、だって自分勝手で時によっては血を引くものでさえ虐げる対象として見る。正当防衛しかやっていない精霊に比べたら此方こそ悪魔よ。」
其れっきり会話は途絶え、そして鳶一さんは「既に貴女には忠告した」と言って去っていった。
思想の違いとは面倒なものだ。確かに精霊が限界するほど人間は死んでいく、が其れは精霊の所為ではない。さらに私は謂わば『お告げ』のようなものまで聞いたときた。例を挙げるならユダヤ教徒の中に一人だけいるキリストといったところか。寝転がって空を見ると比較的雲が多くなってるが寧ろ其の分放射冷却が抑えられて暖かい。さらにそよ風も吹いており、混濁した心の中を整理するのには丁度いいかもしれない。
然し至福の時間はすぐに終わる。空間震警報が発令され急いで耳に先ほど渡された補聴器型のヘッドホンをつける。
『精霊よ、出現予測地点は……来禅高校、士織あんた二重で運がいいわ! 拾うから場所を教えなさい。』
「大丈夫、自分の足で行くわ。其れで運がいいって?」
『予測地点は屋内、ASTも自由に動けないわ。あと無茶はしないで。』
「OK。サポート頼んだよ。」
『安心しなさい。我がフラクシナスのメンバーがついてるわ。』
余計不安になってきた。別に信頼していないわけじゃないが、
そう考えているうちに衝撃波が発生、其の方向から相手先の場所を割り出し、フラクシナスの助けもあってだいぶ早く着いた。コードネーム〈プリンセス〉の少女は目ざとく私を見つけ、私も教室に入ろうとする。が少女の手から放たれた物質が私の体を貫くような起動で飛んでいく。精密性に欠けていたのか精々私に少し被る程度、尤も避ければどうということはないのだが、然し延長線上にあった校舎は跡形もなく消えていた。其れでも進む私へ彼女は「止まれ」という声とともに足元に光線を走らせる。然し乍ら私だって止まる訳にはいかない。そのまま進み、やっと手が届くか届かないかの所で停止、対面した。少女は私の体を舐めるように観察し、口を開いた。
「お前は、何者だ。」
「私は『待ちなさい。』
急に琴里が横槍を入れていた。
フラクシナスではギャルゲーのような画面に今の映像が映し出され、三つの選択肢が出ていた。
『①「私は五河士織。君を救いに来た!」
②「通りすがりの一般人ですやめて殺さないで。」
③「人に名を訊ねる時はまず自分から名告れ。」』
以上がフラクシナスのAIが判断した選択だ。艦内の票は③に多く集まる。此れは殆ど③で決定だろう。琴里は士織に指示した。
「駄目ね。」
フラクシナスの精一杯の努力は私の一言で不活性ガスへと化したようだ。まあ理由付けだってある。
「前回の遭遇時、彼女は名前がないと言っていた。此の場で其れは禁句だよ。」
『じゃあ①、「私は五河士織。君を救いに来た!」で。』
「了解。」
私は再び彼女に向き直り、先の台詞を復唱した。
「嘘だな、油断させておいて攻撃するつもりだろう。」
人間不信か、まああれぐらいさせられればこうなるだろう。まあいいさ、あんたがどう思おうが今の時点では関係ない。私は助けるだけだ。然し此奴、以外と天然っぽいな。
「お前、前に一度会ったことがあるな……」
「ご名答、覚えていてもらえて光栄だよ。」
「成る程……」
かなりの好感度と見えた。事態はいい方へ急展開を見せているんじゃないか? 然し其の考えは虚しく私の髪と一緒に引っ張られた。
「殺すつもりはないとかほざいていたが、見据えた真似を。言え、何が狙いだ。」
「おっと、そんな事しても私の口からは『君を守る』くらいしか出てこないんだけどな。あと降ろして、髪は女の命なの。」
「ふん、お前に免じて降ろしてやろう。然し私の攻撃可能圏内にいる事を忘れるな。」
ふう、助かった。というかあれだけ警戒しておいてあっさり降ろすんですね。私が少女を見直すと今度は来た目的を尋ねた。さてどんな選択肢になる事やら。
『①「其れは勿論、君に会うためさ。」
②「何でもいいでしょ、そんな事。」
③「唯の偶然だよ偶然。」』
『出たわ士織、『其れは勿論、君に会うためさ。」
「私に? 何の為に?」
再び選択肢が現れる。
『①「君に興味があるんだ。」
②「君と、愛し合うためだよ。」
③「君に聞きたい事があるの。」』
スピーカーの向こうでああだこうだ議論している。仕方ない、此処は独断で進もう。選択は②
「君と、愛し合うっていうのじゃあ、ダメ……かな……」
其の瞬間、剣が横に薙ぎ払われ、髪が数本切り取られる。嗚呼、貴重な髪が……
「……冗談はいらない。」
ひどく憂鬱な、此の世界に絶望したようなそんな顔だった。あの時と同じ、私と同じ、全てを信じなくなった顔で私は其れが大嫌いだった。私は思った、彼女は絶対に私が救ってみせる! 一方で賭けが成功したのもまた気付いていた。先に比べて太刀筋が甘い、動揺している証拠だろう。さらに押してみよう。
「私は貴女と話をする為に此処に来た。貴女の為の話よ。此の世界は悪意ってのがゴロゴロと其処ら中に転がっている。当然お前を傷つけようとする奴もいる。だが其れは私だって同じよ! 私だって此の悪意ばかりの世界で生きてきた。そして思ったわ、此処が自分のいるべき場所だって、悪意がある分善意だって其処ら中にあるって。だから私は貴女に私を、此の世界を好きになって欲しい! そりゃあ、貴女を虐げる人は沢山いるわ。だけど。少なくとも私は。貴女を。此の世界の遺物になんかしない! 貴女を否定したりなんかしない!」
半ば衝動的に此の言葉を肺から出していた。もう周りの声など聞こえてはいなかっただろう。然し陰っていた太陽が顔を出し少女を照らすと、其の顔は以前よりも明るく目は光を反射して輝いていた。
「本当に否定しないのか。」
「勿論よ。」
「本当の本当に?」
「いい、全ては信じる事から始まるの。仲間と信頼を築くのも、裏切られて敗走するのも、一回信じてみないと起こらないの。」
「ふん、ならば此の世界の情報を知る為に少し利用してやる。飽くまで情報の為だからな。うむ、大事、情報超大事。」
素直じゃないな。まあ此れが第一歩といったところか。琴里からも会話を進めるよう指示がかかっている。
「何か分からない事があったら聞いてね。」
「じゃあ……シオリといったな。此処は一体何なんだ。」
「此処は学校。此の部屋の中に四十人くらいの人たちが入って、一緒に教養を身につけるの。内容や年齢で小学校、中学校、高校、大学、専門学校、高専、大学校みたいな区別がついていて斯く言う私も此の学校の高校生よ。貴女も丁度其のくらいの年じゃないかしら。」
「四十人か、かなりの密度だな。其れと……そうだ、話をするには名前が必要だろう。私には名前がない、どうにかつけてくれないか。」
其れと一緒にフラクシナスも黙る。そして其れは瞬く間に喧騒へと変わった。よし、此処は私が出よう。」
「
名前とは神道の観点から見ればものに宿る神を示すものだ。五河士織という名から現在の私ができたわけだし、逆にコンクリートというのは固まる性質から
「さて、十香。」私は彼女の名を改めて呼ぶ。十香は嬉しそうに顔をあげた。私は続ける。
「デート……してくれないかな。」
「でぇと……とは何だ。」
「そうだね……秘密かな。明日此処に来てくれるんだったら教えてあげる。」
「明日か……」
「さて返事をーーひゃっ」
突然二人の間を銃弾が掠める。いや、一発だけではない、機関銃の如く連続して壁に穴を開けながら狙ってくる。十香は全く問題ない、前に見せたシールドで傷一つついていない。対する私もバールであるものは叩き落とし、またあるものは別のに当て、弾が降り注ぐことはなかった。
「むっ、メカメカ団か。」
「ああ、そうらしい。然しメカメカ団なんて奴らにぴったりな名前ね。」
「シオリよ、同胞に撃たれるぞ。」
「此処で十香を見捨てたら其れこそ約束を破ったことになるじゃない。」
そう言う間も私たちは必死に、という程緊迫している訳ではないが弾を避ける。
『ASTが動いてる!今すぐやってしまいなさい。』
「分かった。ねえ十香、さっきの返事、教えてくれない。」
「そんなもの……良いに決まってるではないか!」
「ありがとう。それじゃあ明日も宜しくね。」
と、其の瞬間メカメカ団(十香命名、なかなか滑稽でお似合いだ)が突入、然も何の因果か相手は鳶一さん。あまり此の手は使いたくなかったが、彼女の刃に思い切りバールを投げつけた。そしてバールを拾うと十香が既にいないことを確認、離脱した。嗚呼^多分明日は休校だな。
四糸乃「ダディで分かった人いるんですかねぇ。絶版はともかく。」
筆者「そりゃあ読んでる人にだけわかるように書いたんだからわかんなくて正解だろ。連想に次ぐ連想で作ったし。」
士道「まあ其れは兎も角、俺チートすぎない?」
筆者「アマゾンですもん。というかあんたもじゃないか。」
士道「自分の変化ってなかなか意識しないものなんだな。」
四糸乃「私もいつの間にか自分の店を構えるまでになってしまいましたね。ところで途中から出てきた。バールですけど……とある邪神の方を参考に?」
筆者「いや、バールって先が薄くなってて二股で、途中から折れているからいろんな用途に使えるなーて思って。元はアマゾンサイズを変形させて刃物としても鈍器としても使えるようにしたらバールっぽくなって、其れで邪神さんの出番な訳ですよ。因みにサイズから発展させたのはなんか先っちょで肉とか目とかつついて見たかったから。あと言っておくとあれは強化してあるだけで完全にバールです。」
士道「そんな話を此処でするな。と、そういえば俺たちの紹介もまだだったな。俺は五河士道。原作の人物の未来みたいなもんだ。尤も此処は原作とも本編とも通じない世界だが。」
筆者「筆者、読んで字のごとくです。」
四糸乃「このバーのママ、四糸乃です。誰が何と言おうとバーです。本編でもそのうち……」
よしのん『バーテンダーのよしのんだよ。二重鍵になってる理由は本編を待て、若しくは原作をご覧の程!」
筆者「以上あとがきのメンバーです。あと本編や後書きの四糸乃はちょっとヤンデレっぽい(四糸乃:そうですかね……)傾向です。飽くまでガチじゃないから。其れにどちらかといえば独占というより自分を愛してくれれば一番じゃなくたって、浮気したっていい感じだからやっぱりヤンデレではないのかな?」
よしのん『おい筆者、漢字統一しろ。』
筆者「ことえり君に言え!」
四糸乃「まあこんな感じで」
士道「今後とも宜しくお願いします。」