数十年前
「居たか!?」
「いや居ない!だがそう遠くに行っていない。探し出せ!!」
数人の男達が血眼になって探していた
その手には剣や斧などの武器を所持している
境内を散策していると二つの人影が男達の目を盗み、抜け出す
「行くわよ朱乃」
一人の女性が子供を連れ、外へ飛び出す
しかし子供の方はもう体力はなく、少しの段差につまずいて転んでしまう
「朱乃!」
女性が声を上げ、子供に近づく
するとその声に反応したのか、男達は女性と子供を取り囲む
「やっと見つけたぞ。手間を取らせてくれたな」
「さぁ、その穢れた血を持つ娘を渡せ!」
一人の男が剣を突きつけながら脅す
「いや!朱乃は絶対に渡さない!」
しかし女性は子供を抱きしめ、大声で言う
男は突きつけた剣を振り上げる
「これが最後だ……渡せ!」
「渡さない!!」
「そうか…ならばお前からだ!!」
男の剣が女性めがけ振り下ろされる
女性は必死で子供を抱きしめ、目を閉じる
ヒュ~~~ズゴォォォン!!
「ぐべぇ!?」
どこからか落ちる音が聞こえると、剣を振り下ろす男の上から何かが落ちる
男は落ちてきた何かの下敷きになり気絶する
男達は予想外の出来事に混乱していると
「くそっ!やっぱ最近使ってないから故障か?」
気絶した男の側から聞こえる他者の声
むくりと起き上がると姿を現す。短パンに『老若男女は正直言いにくい』という文字が入ったTシャツにサンダル
そして、一際目立つフルフェイスの赤いメット
一発で不審者とも言える姿である
「な、なんだ貴様は!?」
男達の中から一人が、戸惑いながら聞く
「あ゛ぁ゛?なんだテメェら」
「っち!…まぁいい。どっちにしろ目撃者は生かして返すな!!」
男達は一斉に武器や魔法で赤いメットに攻撃する
赤いメットは一歩も動かず、短パンのポケットに手を突っ込む
そして……
「だーかーらー。テメェら誰だって聞いてんだよぉ!!」
ドスッ!バキッ!ゴツッ!ドゴンッ!バシッ!
男達の攻撃は無意味に終わり、赤いメットにボコボコにされるのであった
そして数分後、男達は意識がなくズタボロにされた時
「朱璃!朱乃!無事か!?」
一人の堕天使が来る
堕天使は男達のズタボロ具合を見て驚き、それをやった赤いメットを睨みつけ、光の槍を出す
「貴様、何者だ!?」
「貴方、彼は私達の恩人なのよ!」
「そ、そうだったのか」
事情を知った堕天使は光の槍を消す
「すまない。手荒な真似をして」
「別にかまわねーよ。俺が勝手に落ちたんだからよ」
赤いメットがタバコを一本咥え、ライターを出そうとするが
ポケットを漁ってもライターが出てこなかった
「どっかにライター落としたか……はぁ、帰るか」
「あっ!待ってくれ!!」
堕天使の呼び声にも答えず
赤いメットは溜め息を付きながら帰って行く
残された女性が子供を連れ、堕天使に近づく
「行ってしまったの?」
「あぁ…せめてお礼を言いたかったが」
「……母様、コレ」
子供が小さく声を掛ける
女性と堕天使がそれを気づき、子供を見ると手に何か持ってることに気づく
手の中には『火の用心。マッチ一本、劫火の元』という文字が彫られたライターを持っていた
「それは、彼のライターか?」
「随分と変わったライターね」
女性が彫られた文字を見て苦笑いする
子供は少し頬を赤くし、ライターを大事そうに持つ
「……コレ大事に持ってる。あの人に返したい」
「あらあら。まさか彼の事気になってるの?」
「な、なんだと!?いかんいかん!どこの者か知らない奴に娘を」
「あ~な~た~」
「……はい」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「あの時の事は、ハッキリと覚えてます。そして、いつか必ずコレを返したいと」
そう言って朱乃は、部屋の襖から木箱を取り出す
そして、蓋を開けると落としたライターが入っていた
「…これは貴方のですね?」
「………さぁな」
「ここまで来てシラを切るつもりですか」
「なんで俺がそんなしてるって分かるんだよ」
「何故って…そのシャツが証拠ですわ」
朱乃は、炎魔の後姿しか見えないが
さっきTシャツの文字を見たからである
『老若男女は正直言いにくい』という文字を
「貴方が何故私に隠してるのは分かります……貴方の気に入らない堕天使、イッセー君やアーシアちゃんを一度殺し、この町を破壊しようとした堕天使にいい思いを…」
「おい」
朱乃の話を途中で止める炎魔
タバコを携帯型灰皿に入れ、振り返る。その顔はいつもと違い真剣な顔だった
そして、徐々に朱乃の近づき両手を肩に置く
朱乃は急に近づかれるのと手を置かれたことで、ビクッっとなったが嫌ではなく、炎魔の真剣な眼差しをずっとみつめていた
炎魔はそんなこと気にせず、肩に置いた手を少しずつ顔の方に持っていき
こめかみの辺りで握り拳を作り、そのままぐりぐりとする
「ッッッッ~~~~!!?」
「お前はアレか、そんな暗い話するだけしか考えないのか、この脳は?」
朱乃は声すら上げられない悲鳴を上げるが、それでも炎魔はやめない
「大体、お前は気にしすぎなんだよ。もっと気楽やることは出来ないのかよ」
しばらくグリグリするのをやめ、朱乃を解放する
朱乃は痛みで頭を抑えて、その場で縮こまる
「それによ……いつからお前の事嫌いになったって言った?」
「えぇ…?」
「相手が誰でだって関係ねーよ。アン時は、ただ助けてやりたいと思って助けただけだ」
「…そうではなくて、私は堕天使の血を」
「だから何だってんだよ。そんなん一々気にしてたら体が持たねーよ……俺はこんなんだから誰も英雄なんてしたわれないけどよ。『例え英雄じゃなくても、倒すべきは敵は炎魔さんだけです。人間じゃなくても炎魔さんは炎魔さんです』ってミュウの奴に散々言われてるんだよ。あいつ等、悪の組織なのにな」
炎魔は膝を付き、朱乃と同じ視線まで腰を落とす
「だからよ、もう自分の事を言うのはやめろ。愚痴ぐらいは付きやってやるし、また困った時は、偶に助けてやる。寂しい時は側にいてやる。ずっとって訳じゃねーけど」
炎魔の言葉を聞き、朱乃は涙を流す
しかし、微笑を浮けべ、涙を拭う
「……殺し文句、言われちゃいましたわね。……そんな事言われたら、本当の本当に本気になっちゃうじゃないの…」
「あぁ?何言って……」
朱乃は立ち上がると炎魔に抱きつい来る
「ちょっ!何やってんだ!?」
テンパル炎魔の耳に朱乃が囁く
「決めましたわ。私、決めました。エンマさん、リアスのこと、好き?」
「はぁ!?……ま、まぁ彼女だから好き…だけどよ」
「……そうよね。ねぇ、エンマさん」
「な、なんだよ」
「私は二番目で構いませんわ。何より浮気って感じで燃えますし」
「浮気ってなんだよ!?俺はそんな…!?」
炎魔が反論しようとするが朱乃はうるうるしながら涙目で見つめている
「寂しかった側にいるって言ったのに…それは嘘ですか?」
「こ、こいつ」
痛いところを突かれ、言葉を詰まる炎魔
「……エンマ」
「今度は何だ……」
炎魔が言う直前に朱乃が口を塞ぐ。もちろん口で
そう、キスである。炎魔は驚きのあまり目を見開く
「何してんだお前!?」
「ふふっ…なんだか良いですわねこの気分。エンマさん、二人っきりの『朱乃』って呼んでくれますか」
「だ、だから俺にはリアスが「やっぱり嘘だったんですか?」あぁーーー!!分かったから泣くな!!」
朱乃は再び涙目になるが、炎魔はすぐにやめさせる
そして恥ずかしながら呟く
「……朱乃」
「……うれしい。エンマ」
朱乃はギュっと抱きしめる
炎魔はもう諦めたのか抵抗しない
「何してるの、エンマ?」
その時、場を凍りつくような声がする
炎魔は体を起こし、振り返ると仁王立ちしているリアスの姿があった
「リ、リアス」
「もう、油断もすきもないわね……」
リアスは炎魔の近づき、襟を掴み引っ張る
「イッセーに剣を渡したの?」
「あ、あぁ。剣渡した後、ミカエルの奴も帰った」
「なら、ここにもう用はないわ!帰るわよ」
「って引っ張るな!シャツ伸びるだろ!聞いてんのか!?」
リアスは炎魔の襟を引っ張って部屋を出て行く
「一番のリアス部長が羨ましい限りですわ」
「あら、もう彼は帰ったの?」
部屋に残された朱乃の元に一人の巫女が入ってくる
その巫女は朱乃に少し似ていた
「はい。忘れた物もちゃんと返せました」
「それは良かったわ……朱乃、ライバルが多いけど頑張りなさい」
「はい、お母様!」
「………」
「おい、いい加減機嫌直せって」
コツコツコツコツッ!!
神社の石階段を下る炎魔とリアス
リアスの方は未だに機嫌が悪く、炎魔は機嫌取りをしている
「あれは、おいつが急にやった事で俺からやった訳じゃねーって」
「……キスしたのに?」
「だ、だから不意打ちなんだよ!つーか人の話し聞いてんのか!?」
「……っふん」
リアスは炎魔の話を聞かず、先に行ってしまう
炎魔は頭を掻きながら考えていると
「……あぁっくそ」
リアスが階段を降り切った時、炎魔は階段を早く降り切り、リアスの片手を取る
「っ!?…エンマ?」
「……悪かったって。だからこれで機嫌直せ」
炎魔は顔を赤くしながらそっぽを向き、リアスの手を握り締める
リアスも手を握られ、顔を赤くする
「…う、うん」
「…さっさと帰るぞ」
炎魔はリアスの引っ張るように手を繋いで歩く
二人の帰る姿に夕日が光が照らされる