感じるのは、無。
私は、身の回りに感じる違和に目を覚ました。
「私は……何をしてたんだっけ」
虚空へ手を伸ばす。あるのは、無だ。光も、影も無い。唯々佇むのは、闇……無だ。
「私の名前……何だっけ」
「そういえば、自分の名前……忘れたんだっけ」
私は、目の前に広がる無の中、考えていた。
自分の名前、これからこの世界で生きていくのに必須なモノだ。
闇……無……闇……
「闇……夜刀神 闇、私の、名前……夜刀神、闇」
私の名前を、数回唱えてみる。……良い実感が感じられただろうか。
「こんな重い空気、私は慣れてないのよね」
一人、呟いた。
目覚めてから暫く経つのに、何一つ変化が無いのだ。とりあえず何か、行動を起こさないといけない。
「私の能力……なんだろう」
こういう時って、頭の中で考えていたら思い浮かぶやつだよね、と考えてみる。
ゼン……スベテノモノヲ……シハイ……スル…………ノウリョク
全てを支配する能力か……中々チートだねぇ……
私の能力は……そうだな、名付けがポイントよね。
後々、(あの時の私、ネーミングセンス終わってるじゃん)…………っておそらくなるだろうから。
……
…………
「よし、決めた。私の能力は…………全てを司る程度の能力だ!」
私は、虚空へ向かって叫ぶ。我ながら、良いネーミングセンスだと思わないか?
でも、流石に何も無いところで一生過ごすだなんてたまったもんじゃない。
「……とりあえず、宇宙創ってみようかしら」
とんでもないことを軽い気持ちで呟く。
創ると言っても、当たり前だが宇宙を創った事など無いので、感覚ではあるけれど。
目を瞑り、手を前に翳し、力を溜める様な感じ……心臓から巡る血液に力を乗せる感覚でやってみる。
「宇宙……創造……ビッグ・バン!!!」
私はそう叫び、前世で見た事がある宇宙の感じを思い出してみる。
目を開けると……
赤い大きな珠……太陽を中心に、様々な星が綺麗に並んでいた……勿論、地球も。
うおお……綺麗だ。
っていうか、アレ?ビッグバンが起きてから太陽系ができるまで何億年もかかったような気が……っていうか最初から地球はこんなに青くなかったような気が……
ま、いいか。本当のところはまだ現代でも分かってなかったぽいし。
「この目で見るのは初めてだな……やっぱり、図鑑や教科書で見るのとは大違い……ん?」
私は、自分の置かれている状況に違和感をもった。
「あれ……宇宙って、空気が無いんだったわよね?でも、宇宙でも呼吸が出来るって、これも神様スペックなのかしら……?」
ここで改めて、神……龍神の身体能力の凄さを実感した。
しかし……地球に生物が生まれるまでかなりの時間があるはず。それも、億の桁で。
それまで、龍神である私はどうすればいいのか……
「自分の家でも、作ってみようかしらね」
咄嗟に考えついたのが、その答えだ。現代人である……あった私は、自分の家……居場所が無いと、かなり厳しいと思うのだ。
……それでまぁ、作れたのだが。
「いやぁ……大きくし過ぎたな。主に図書館を」
そう、図書館を作ろうと思って作業と言う名の能力行使を続けてたら……あら不思議、目の前にはどデカイ建物が!……って、
「何やってんだ私……いくら何でも大きくし過ぎたね」
現世で見た、紅魔館にあるパチュリー・ノーレッジが管理するヴワル魔法図書館よりも確実に大きいであろう図書館。
……どのくらいの大きさだろうか?移動にかなり時間を要すると思うんだが……どうしよう、かなり端折ったな。
ま、いいっか。
とりあえず、地球に……宇宙に生物が生まれるまでここで時間を潰そう……
…………いや、自分以外に生き物などいる訳が。無い。というかそもそも私は生き物ですらないのでは?と、思っていた。
❁❀✿✾
あれから、数億年。
私は、かなり力を付けた。
元々の身体能力が高すぎて、伸び率が半端じゃ無い。
魔法の使い方もほぼ全て覚えたし、魔導書の数もかなりある。……常人が読むと死ぬ等ととても危険なのもあるのだが。
因みに、私の今の服は白い生地を主とした、夜空に三日月が描かれている、導師風の服を着ている。
転生して気付いた事なのだが、私の髪が銀髪になっていた。
「あ、内ポケットがある……ん?これは髪留め?」
これで縛れってこと?
そして、私の肌が色白になっていて、目は金色になっていた。
……まぁ、たまたまなのか私は主様の容姿と少し似ていた。
それは、喜んでいい事なのかどうなのか正直、私には分からないのだが。
「……む?」
図書館で本を読んでいた私は、図書館の扉の前に見た事も感じた事も無い力を感じた。
頭の中で力の元を辿り、その姿を確認した。
「これは……」
その姿は、現世で見た事のあるものだった。
例えるならば、東京とかにいそうな女子……東方projectに出てくる、最強と呼ばれし人物だ。それは……
「……へカーティア・ラピスラズリ」
そう、皆さんお察しの通り。地獄の女神様と呼ばれる、地球・月・異界でのそれぞれ別の姿を持つ、かの有名なへカーティアである。
それにしても、何故へカーティアがここに?
一応結界を張ってはいるけど、まだ結界の張り方が未熟だったのかしら?
でも、この世界に来てから誰とも交流を取ったことが無い私は、突然の原作キャラ登場に少しワクワクしてしまっていた。
「とりあえず……会いに行ってみる?行ってみる?」
もし、私が会いに行って、ヘカーティアはどんな反応をするかしら?
一応、宇宙を創ったのは私だけれど、宇宙が出来る前の地獄とか、他世界から来たのかな?わくわく……
ちなみに、私がいる所は図書館の最奥の部屋。部屋に篭っているのに何故扉が開いたか分かるかって?ふふふ、それも龍神スペックなんだよ。
「なんて声かけようかな〜、イキナリ攻撃されたら、今の私が勝てるかどうか……」
そ、原作キャラが強いのは分かってる。
私が実力を上げまくったのも事実なんだけど、基準が分かんないから、慎重に接しないと……いきなりちゅどーんされたらたまんないからね。
私からヘカーティアの方に近づくことにした。
どんどん、ヘカーティアとの距離が縮まるにつれて、興奮が高まっていく。
ヘカ「あ」
「あ」
ヘカーティアと出会った時の言葉とか行動とかを考えている内に、いつの間にかヘカーティアとご対面していた。
やっぱ、現世で見た感じのへカーティアだ。……ただ、少し服装が違う気がするような。
現世で見たへカーティアは、黒いTシャツに少し刺繍の入ったものと、三色に分けられたミニスカートだったはずなんだが……
なんか、このへカーティアは黒い生地のノースリーブみたいなワンピースに所々刺繍がされている位の服装だ。
首輪から鎖で繋がっている手に乗っけた2つのオブジェと、頭に乗っけてるオブジェは変わらないが。
へカ「……?」
さて、どう会話をしようかと考えていると……先手を切ったのはへカーティアだった。
へカ「あっ、初めまして。私、へカーティア・ラピスラズリです」
私は、ヘカーティアの確信づける言葉に少し驚いていた。
あぁ……私、本当に東方の世界に生まれ変わったのね。
「あぁ、ごめんなさいね。私は夜刀神 闇。私も、貴女と同じ神です」
改めてへカーティアの方に向き直ると、しっかりへカーティアに挨拶をした。
いきなり神だなんて名乗るやつのことを信用出来るのかって思ったけど、目の前のヘカーティアはニコニコしたままだ。
ヘカ「闇さんですね、よろしくお願いします!」
「えぇ、よろしく」
私は、生まれて初めて原作キャラと話しそして握手した。現世であれば、そんな事絶対に叶わないであろうな。
……まぁ、転生した私にそんな事を当て嵌めるのは違うと思うが。
そんなこんなで月日を過ごして、何年経ったか私でも分からなくなってきた。
ヘカーティアとは、友達を超えた……家族みたいなものかな?になっていた。
意外だね。友達になろうと思ってたのに、まさか家族だなんて。ビックリするよね……
ちなみに、へカーティアは図書館の司書的な存在になってる。私の手伝いもちゃんとしてくれるし、暇な時にたまに手合わせしたりもするし。
ヘカーティア、強い。でも、私にはまだまだ及ばないかな。
へカーティア……って呼ぶのはあれだから、ヘカって呼んでも良い?って聞いたら、良いよ!って言ってくれたんだよね。
ヘカとは、かなり親密した関係になってる。もう、私にべったりなんだよね。ヘカ、やみぃって呼ぶ関係。
お互い、種族があれだから食事をとる必要は無い。だけど、私が現代人なので習慣としてやってたらヘカ、真似してくるんだよね。
歯を磨く事も、お風呂も。ヘカってもしかして私の事好き?って聞いたら、大好きだよ!だってさ。もう、妹みたいな存在になっちゃって。
何かあった時に、どうしようって思える存在。お互いの事を大切に思い、お互いの事を本気で考える。前世の私では、そんな事あっただろうか……
「ヘカ、ちょっとこっちに来て」
私は、あるときへカを呼んだ。何故かって?
"地球"へ行く時が来た。
言い出しっぺの私でさえも、この途方もない時間の中で忘れそうになってたんだよね。
地球……古代の世界を旅し、見て感じて、愛していく。それを、へカと出会う前から決めていた事だ。
ヘカ「なに、やみぃ?」
へカが、私の横に現れる。へカには、どこにでも移動できるスキマを使えるようにしている。
「えっとね、私とヘカって、会ってからかなりの年月経つじゃない?」
ヘカ「えぇ、それがどうしたの?」
「だから、私……地球に出かけようと思うんだ」
ヘカ「えっ!?」
ヘカが、とてもびっくりしたような顔をする。
まぁ、驚かれないとは思ってなかったけど、そこまでびっくりするとは……
「だから、ヘカにはここを守ってもらおうかと……「嫌よ!!」えぇ……」
ヘカ「嫌、やみぃとずっと一緒にいるのよ!」
……困った、どうしよう。私とした事が、へカが私の出発を引き止めない訳が無いじゃないか……もっと、へカの事を考えておくべきだったな。
「あのねヘカ、こっちにも時々戻ってくるから……」
ヘカ「嫌!」
……なんか、へカが段々とキャラ崩壊していってるような……いや、私が原作キャラに介入したからなのだろうか。なんか、へカの将来が気になって仕方がないんだが……それよりも、このへカをなんとか説得しないとね。
 ̄ ̄数十分後
「だから、ね?たまに戻ってくるから……」
ヘカ「……約束よ?」
やっと、やっと説得できた……疲れた。
へカが、何と言ってもすがり付いてくるもんだから……旅に出るのに、少し時間がかかりそうになったよ。
へカには、時々この図書館に戻ってくる事を約束し、説得出来た。
それにしても……へカ、最初にあった時と大分変わったな。
❁❀✿✾
 ̄ ̄数日後
「それじゃあねヘカ、この家をよろしくたのむわね」
ヘカ「任せて!私が、この"異空間の間"を守っておくから!どんな敵が来てもヘッチャラよ!」
「あらあら、それは頼もしいわね……」
ヘカは、私の背を越し、少女になっている。言葉も女性らしくなり、でも何処か子供っぽさが残る。
そんなヘカに、私がへカーティア・ラピスラズリの服の記憶を辿って直接縫ってあげた服を、プレゼントしてみた。
まだ身長が私より低かった頃の、着てた黒のワンピースからあのへカーティア・ラピスラズリの服装に変わった。やっぱり、ヘカはそれが一番似合ってるよ。
「……さて、そろそろ行かないとね」
私は、服装を正して地球に向かう準備をした。
……服装を正すと言っても、異空間から出たら龍神の姿に戻るからあんまり意味無いけど。
大気圏に突入してから少女の姿になるつもりだ。
能力でパパッと地球に行くのも簡単だけど、それじゃつまんないし。だから、直接宇宙空間に飛び出す事にした。
ヘカ「……もう行くの?」
「うん、でもたまに戻ってくるから待っててよ?」
ヘカ「えぇ、やみぃの頼みだものね。やみぃがいつ戻ってきても良いように準備しておくわ!」
あははと笑い合う私たち。こんなにも誰かと笑い合ったのは、いつぶりだろうか……もう、何億年も前の事だ。
「……それじゃ、また何時か」
ヘカ「……えぇ、また何時か」
その言葉だけ残すと、私は異空間の扉を開け、そこに吸い込まれる様に入っていった。
……案外呆気なかったな、もっと引き留めるかと思ったのに。
まぁいいか。また今度戻ってくるしね……
目を開けると、いつの日か見た宇宙が広がっていた。
龍神補正なのか、普通なら絶対に見えないはずの太陽が遙か遠くに見える。
あぁ……綺麗だ、地球。私が育った地球に、今から行くのね。
そう思いながら、私は目を瞑り、体中に神力を巡らせる。
そうすると、私の体が徐々に変化していく。
顎には長く伸びた髭が生え、頭には天を突く様な角が伸びる。
胴体は銀色の大蛇の様に長く伸び、手足の先には鋭い爪が生える。
「GRAAAAAAAAAAAAAAAAAR!!!!!!!!!!!!」
そして、誰もいなくなった……あるのは宇宙の暗闇と星達の光だけ。
ご静観ありがとうございます。次話も、おたのしみに!