「ほぉ……」
私は、秋葉の試合を観戦していた。
秋葉の使う技が、前より高性能になっていたのだ。
呪いと炎の力を組み合わせた、
「マジカルリーフみたいな力ね。追いかけて相手を燃やしてしまう技……」
相手が避けても、炎を抹消しない限り、いつまでも追いかけてくる炎。
どんなに威力があっても、当たらないと意味を成さない。
秋葉の考えることは、歳を重ねている分、尊敬出来る部分がある。
「あら、あの一撃で倒れちゃったわね……相手が弱いのか、秋葉が強すぎるのか。どっちかしらね」
?「きっと、秋葉様がお強いのですわ」
「あら、どなた?」
私が座っていたスキマの隣に、とある少女が座ってきた。
巫女服に身を包み、紅白のリボンでポニーテールに結い上げている。
それに、秋葉に似てかなりの美形。
人間のようだけど……秋葉"様"と言っていたわね。どういった関係なのかしら。
「貴女は、秋葉の巫女?」
?「……龍神である夜刀神 闇様にご挨拶申し上げます。私は麗蘭 くずはと申します。貴女が仰った通り、私は秋葉様の巫女でございます」
久しぶりに純粋な人間と会った気がするわね。
天人であるアリシアたちも、龍の血を継ぐ一族だから……
「くずは、ね。よろしく」
くずは「よろしくお願い致します」
くずはは、私に頭を下げた。
私は、くずはのステータスを瞬時に確認する。
身長は161cm、体重は……
この操作にも慣れたわね。慣れちゃいけないかもだけど。
前世でこれをすると、セクハラで訴えられそうだわ(--;)
「貴女、バトルロワイヤルには参加しないのね」
くずは「私は、そういう分野では活躍出来ませんので。ですから、秋葉様のご威光をお守りしているのです」
「あら、あれだけ人間を避けていた秋葉にも、そう思ってくれる人間がいたのね」
くずは「秋葉様は、ご友人はおられますが、纏う妖気のせいで人間が寄り付かないのです。私は、強さを操る能力のおかげでお近付きになれましたが」
……強弱を付ける程度の能力。
この子の霊力はあまり多くはない。
どうして、秋葉はこの子を置いているのかしら?
失礼な言い方になるかもしれないけど、実際地味な能力だし……
くずは「秋葉様は、生贄として差し出された私を喰らわれることはなく、逃がそうとしてくれました」
「それで、傍にいようと思った理由は?」
くずは「単なるお礼のようなものです。何かお返しをしたかったので……傍にいようと思いました」
秋葉は、くずはから見て、畏れるべき犬神のはず。
細かいことを言うと、秋葉は種族的に言うと妖怪だけど。
人々から畏れられているから、結果的に神力を扱えるのよね。
「……あ、勝負が着いたみたいよ」
秋葉が、最後の一人を倒した。
すると、秋葉が、此方に気づいていたような素振りで、振り向いて小さく手を振った。
「秋葉は、少し休憩していて!次は2番目のチーム、中へ!」
秋葉が外へ出ると、2番目の妖怪たちがぞろぞろと入ってくる。
今回は、萃香とツクヨミがチームに入ってるのね、面白い試合になりそう……
「ツクヨミー!頑張りなさいねー!」
ツクヨミ「はい!お姉様の誇りにかけて頑張ります!」
ツクヨミが、眩しい笑顔を見せてくれる。
これはますます楽しみになってきたわね……
私は、くずはに何かを言いかけたが……
「くず…は?あれ、どこに行ったのかしら……ま、いいか。とりあえず、観戦といきましょうか!」
私は、コインを投げた。
コインが落ちると同時に、皆の戦闘が始まった。
いつの間にか消えていたくずはを気にすることも無く、私は、皆の戦闘に魅入る。
「さて、今回は誰が勝つかしら」
私は、2番目のチームに期待をすることにした。
❁❀✿✾
月読命side
「Moonlight beam」
私は、掌から光の束を放出する。
月の化身である私の神力と、月そのものの魔力を組み合わせた技。
……お姉様に期待されているのよ。鬼等に負ける訳にはいかないわ!
萃香「にゃははっ!アンタ、強いねぇ!流石神様だ。でも、避けられないものじゃないねぇ!」
「なっ……!?」
萃香とかいう鬼が突然消えたかと思えば、細かな大量の粒子が、私の頭上に現れた。
「何故、避けられるのです!?光の速度に勝てるはずがありませんよ!?」
萃香「……ある者は言った。鬼は強く遅い……だけど、その根拠は何処なんだろね?」
「!」
確かに。
鬼は並外れた怪力を持つ代わり、素早くは動けないとされている。
でも私は、今までに素早く動ける鬼に、出会ったことがなかった。
そもそも、鬼に出会ったことがない。伝聞でしか聞いたことがなかったのだ。
「ぐぅ……!」
萃香「おやおや?月の女神サマが、鬼に負けていていいのかい?」
上から降ってきた強烈な蹴りを、まともには受けていないが、掠めてしまった。
僅かな神力が奪われる。
「容赦しませんから……!」
私は、周りで戦っている妖怪たちを吹き飛ばしながら、様子を見る。
上ではお姉様が見守って下さっている。
「光の槍……Moonlight spear」
手に神力を集め、槍の形を作る。
元々、自分の武器を持っていなかった私。
すると、お姉様が「では、自分で作りなさい。武器となるものを」と助言して下さった。
「食らいなさい!」
周りに、金色の神々しい光を放ちながら、高速で飛んでいく光の槍。
どんなものでも貫く、1級品。
萃香「おっ……やるねぇ、アンタ!だが、私には効かないよ!」
私の攻撃を避けたように、飛んできた槍をいとも簡単に避ける。
まさか、鬼がここまで強いなんて。
「萃香さんの能力は、密度を操る能力……お姉様と同じ言い方をするならば、"密度を操る程度の能力"ですね?」
萃香「なななななっ何で分かったんだよ!?」
「反応が可愛いですね、ふふっ。鍛えたんですよ!お姉様に教えて頂いたりして、ね」
萃香「ひ、ひぇ……」
萃香さんの顔が、みるみるうちに強ばっていく。
力強いと評判の鬼であれ、そんな顔をするのね。
「ところで」
萃香「ん?何だ?」
「そんなに油断して、大丈夫ですか……?」
萃香「!」
少し油断していたようなので、教えてあげた。
萃香さんは、忘れていたようね……私の武器の存在に。
「神宝 Twinkle satellite」
私の上に、模倣月が浮かび上がる。
月の女神である、私に相応しいフィールドだと思うわね。
萃香「……」
萃香さんが、こちらを見上げて目を離さない。
その目は、私が初めてお姉様の姿を拝見した時とそっくりだった。
「美しいでしょう?さぁ、魅入られながら倒れなさい!」
美しい程の星の輝き。
神の如き美しさ。
月の力を与えられた女神、月読命。
私は、神界の上級神である。
勇儀「萃香っ!危ない……!」
萃香さんと一緒にいた、金髪の鬼が叫ぶ。
しかし、萃香さんにその声は届かない。
……これは、もう勝負は着いたも同然かしら?
萃香「ぐっ……!?」
萃香さんが、私の技に飲み込まれるところを、しっかりと見届けると、地上に降り立った。
妖怪は、神力に弱いのを知っていましたか?
「良い勝負でしたよ、萃香さん」
倒れている萃香さんに、手を差し伸べる。
妖怪と戦うのは、数え切れない位だけれど、これは本当に良い勝負だった。
萃香「ふっ、まさか神様に良い勝負だったと言われるとはね。光栄だよ、ツクヨミ様!」
「ふふ、拳を交えた仲なんですから、敬称は必要ありませんわ。どうか、呼び捨てでお願いします」
萃香「そうか。それじゃあ、ツクヨミ……またやり合おうな」
「えぇ、楽しみにしています」
私たちは、最後に握手を交わすと、結界の外へ出た。
勝負を終えた妖怪たちが、外で待っていた。
アマテラス「ツクヨミ、貴女は良くやったわ」
「ありがとう。お姉様も、太陽神としての力を見せつけるんですよ」
宇宙界最高峰の神、夜刀神 闇様に次ぐ最高神である、天照大御神。
一応、私より強い。
月の光は、太陽の光を反射して初めて放てるものなのだ。
「頼みますよ……」
私は、姉の健闘を祈ることにした。
1度皆に見放されようとも……実の姉であるから。
私は、大和の為に諏訪の国が無くなるのは、反対だった。
あの時、闇お姉様の介入が無かったなら、どうなっていたのだろう……
考えただけでも、ゾッとする。
そんな心配を他所に、放たれたコインは地に着いていた……