広い部屋の中には1番奥に玉座があり、座る者の力を示している。
奥から、長方形の机が入口に向かってずらりと並び、その中には既に数名の神が座っていた。
その数名は、私の方を見た途端、目を見開いてボソボソと小声で話をし始めた。
「ご機嫌よう。お久し振りですね、皆様」
私がニコッと笑顔を見せると、全員が苦笑いにも近い笑顔を見せる。
……まぁ仕方ないわね。
エマ「何がご機嫌よう、よ……」
「ふふ、ごめんなさいね」
エマに一言詫びを入れると、私は玉座から1番近い席に腰を下ろす。
エマも、私に続いて隣に座る。
座る順は神格順で、位が高い者から順に、奥から手前に座っていくシステム。
まぁ、1番下の位でも、かなり高い位の者だけどね。
私が此処に初めて来た時はプレッシャーが物凄かったのを覚えているわ。
物思いに耽っていると、この部屋の扉が開く音がした。
皆の視線が、扉の方へと向かう。
?「……おや?まだあまり来てないんですね」
真っ黒な長い髪、真っ黒な目、真っ黒な角、真っ黒な翼……
黒だけで構成されたような者の名前は"アビス"。
私が、最も苦手とする神でもある。
アビス「っと……自分の世界に入り浸って職務を放棄するような神もいるみたいですね?」
「……それは、どういう意味かしら?」
アビス「そのままの意味ですが?ご自分でも理解してらっしゃるはずです」
くくく、と嫌な笑みを浮かべるアビス。
……はぁ、嫌味しか言わないから苦手なのよ。
私が言い返さないのを良いことに、私を滅茶苦茶弄んでくるようなタイプ。
「私の世界は忙しいの。そういう貴方も、私にそんなことを言う暇がある位なら、神格を高める努力をした方が良いのではなくて?」
アビス「なっ……!」
私が貶す意味での笑顔を見せると、アビスは顔を真っ赤にして自分の席へ座った。
あんな品も無いような者に構っている暇はなくてよ。
エマ「……貴女も悪いわねぇ、ふふ」
「だって苦手なんだもの」
隣で傍観していたエマが話しかけてきた。
本当のことよ。他者に嫌味ばかり言うような子は苦手なんだもの。
エマ「まぁ、私もアイツは大嫌いだけどね?」
私たちが談笑していると、また扉の開く音がした。
今度は誰かしら……と、思い部屋の入口へ視線を移す。
?「どうも〜」
一同『!!!』
……あぁ、あの子ね。
白銀色にサイドテール。
赤色を基調とした服。
それと……へカーティア以来出てきていなかった東方Projectの旧作キャラクター。
そう……
「神綺……」
神綺「あら、初めましての顔もいるわね」
神綺。
旧作は全く手を付けてなかったけど、大体はインターネットの画像で見たことがあるので、何となく思い出せた。
魔界を創造した神ね。
エマ「今更何をしに神界へ来たのかしら、神綺?」
神綺「酷いわね〜、そこにいるサボり神よりかはマシよ?私が会ったこと無い位、神界に戻ってないんでしょ?」
私に指をさす神綺に、一瞬キレかけたけど……何とか耐えられた。
まぁ、神界を放っておいたのは私が悪いし……
でも、言い方があるわよ!
「初めまして、神綺様?」
神綺「龍神様ね。初めまして……神綺で良いわよ」
「こちらこそ、闇で良いわ」
初めての会話がこんな風になるなんて、誰が予想したかしら?
そもそも神綺に会うと思ってなかったから……
神綺「そもそも、あの龍神王様がよくお許しになったわね。貴女が神界を放っておいたことを」
「どういうことかしら?」
神綺「そのままの意味よ。貴女は自分の世界に入り浸り、会議にも来ていないのでしょう?私も大概だけれど、貴女には劣るわ。むしろ劣ってよかった!」
はぁぁぁ?(|| ゚д゚)
貴女も言えないでしょう!!?
私は、そう言い返したくて堪らなかったけど、喉元まで来ていた言葉をグッと飲み込んだ。
「巫山戯るな!私には私の仕事がある。それを貴女に口出しされる謂れは無いの!」
神綺「なっ、何よ!?(゚皿゚#)」
あっ、言っちゃったわね。
後で反省かしら……
私が机をドンッと叩き、珍しく声を荒らげたことで、ビックリしている神々。
「さ、こんな巫山戯たお遊びは止めて、さっさと席へ戻りなさい。龍神王様がそろそろ来られる頃だと思うから」
私がそう言うと、コソコソ話をしていた周りの神々は途端に静かになった。
まぁ、私が言った言葉は嘘じゃないもの。そこは責められる所じゃないわよね?
?「待たせたな。退屈していたのではないか?」
『!!!』
突然開け放たれた扉に驚いた神々は、立ち上がって、一斉に深々と頭を下げた。
そう、この方こそ、この神界において最も位の高い神であり、我が主でもある……
「親愛なる我らが主……龍神王様、お待ちしておりました」
神琉「あぁ、待たせて悪かったな。そろそろ始めようか……今回の会議は、出席率がまぁまぁって所か?」
……龍神王様。
主様は、私たちに目を配らせ、出席率を把握する。
そして、最上位の上座へと歩いていって玉座へと腰掛ける。
神琉「まぁ、もう知っているとは思うが……上級神の夜刀神 闇が舞い戻ってきた。これで、しっかりとした会議が出来るはずだな?」
主様は、私をちらっと見ると、目を細めてお笑いになる。
あぁ〜!
お恥ずかしい……というより罪悪感が凄いのよ!
神琉「じゃあ、今期の全世界報告会議を始めるとしようか。まずは、宇宙界の報告からよろしく頼む」
「はい、承知致しました。宇宙界では……」
気を取り直して、世界の報告に入る。
神々は私の話に聞き入っており、時々相槌を打ったりしている。
私がデータ等を全員に見せるようにすると、所々から質問をするような声も上がる。
「そして……ご存知の方もいらっしゃると思いますが、宇宙界ではとある大きな問題に直面しております」
私は、牛鬼の顔を模したものを机の中心に浮かべる。
幾らかの神は驚いた様な顔をし、幾らかの神はなるほどといったような顔をする。
「白みが強い肌に真っ赤な目、大きな牙に漆黒の髪……そして、残酷な程なまでの美貌が特徴ですので、よく覚えておいて下さい。もしかすると、上級神である貴方がたの世界にも入り込んでくるのやも……」
私は緩み始めた世界の警備を正す為、少し強い口調で神々に伝える。
もう、宇宙界だけの問題ではない。
もし牛鬼が自分の世界に入り込んできた時、どうすれば良いのかを神々に伝えた。
牛鬼らしき者を発見した場合、私か主様に至急報告すること。
自分で太刀打ち出来ない場合、無理に戦おうとしないこと。
「……お分かり頂けましたね?」
『承知致しました』
私は、次の神に指示をすると、そっと自分の席に腰掛ける。
元々人前で発表等をするのが全く出来なかった私なのに……変わってしまったわね。
まぁ、何億年も生きていれば性格も変わるのは当たり前かしら?
指示をした神の報告が終わり、次から次へと神々の報告が進んでいく。
懐かしい。私が最後に参加したのは、いつだったかしら?
神琉「終わったか?なら、次の話題へと進めさせてもらうぞ」
主様が、私たちの前に書類の束を出現させる。
神琉「俺なりに色々と考えさせてもらった。これについて、次の会議までに検討しておいてくれ」
書類の束に1枚1枚目を通していくと、そこには各々の世界のことと、神界に住まう神々が全ての世界に自由に出入り出来るようにすること。
まだ決定したことではないが、私たちにとってどう思うのかとのことらしい。
私的には別に良いのでは無いかと思う。世界の見学をすることで、自身の神格を高めようとすることだって可能だから。
神琉「では、いつもより早いが……これにて会議は終了する。解散!」
主様は、足早に扉へと向かい、部屋を後にされた。
さて、私も帰るとしようかしら。
エマ「闇、これからどうするの?」
「私は宇宙界へ帰るわよ。貴女は?」
エマ「そう。私は全世界の情報の整理があるから、神界に留まるわ。貴女も元気でね」
「じゃあまたね」
私は、早く皆に会いたい気持ちでいっぱいだった。
勿論、神界が嫌いだと言うわけではないけど……
神々が次々に部屋を後にする中、私もつられるように部屋を後にした。