私と主様、そして、メリー、アリシア、チロルは海に来ていた。
まぁ、前回(メメタァ……)言っていた主様の「海へ行こう」発言が元になっているんだけど。
さて、ここまで来て私の気分が優れないのには少しばかり厄介な理由がある。
それは……
「うっ……何故、こんなことに……」
神琉「まぁ、そう言うなよ?」
主様からの要望により、勝負をすることになったから……相手は、勿論主様。
負ける気しかしないわ?いえ、負けてしまうのよ!
そんなの、傍から見ても分かるでしょう!?
メリー「師匠ー!頑張ってくださーい!」
アリシア「ご武運を」
チロル「頑張ってねー!」
私は、振り向いて皆に苦笑いをした。
そりゃ、苦笑いにもなるでしょ……
なんか最近戦うことが多いような気がするわね。
日傘を懐から取り出して、戦闘可能な状態にした。
神琉「そうだ……勝敗はともかく、何かを賭けるのはどうだ?」
「……賭けですか」
神琉「あぁ。俺は闇とのデートを取り付けようかな?」
「デートだなんて……言ってくださればいつでもお供致しますのに」
神琉「賭けるから面白いんだろう?」
「まぁ、反対する理由もありませんので構いませんが……」
私は何も言わないことにした。
何故なら、勝敗がもう分かっているから。
「では、早速始めましょう。勝敗の決定は、相手が降参するか、気絶させるかのどちらかで良いですね?」
神琉「構わない」
「いざ尋常に……」
私は、日傘を持つ手に力を入れる。
……いつでも戦える。
出せる力を全て出すのよ。
『勝負っ!!!』
私が放った妖力弾によって海の水が破裂し、ダイヤモンドの様に美しく舞う。
1粒1粒が太陽の光に照らされて乱反射し、目を奪われてしまいそうだ。
それらは、目の前の
神琉「なるほど、こういう戦い方もありだな……」
「ふふ、ありがとうございます」
主様が手を前に突き出したかと思うと、そこから熱気が発せられ、全ての水が蒸発した。
これ位であれば完全なる想定内。
このお方は強敵すぎる。だから……油断は大敵。
神琉「さて、俺の従者はこの永い時の中で何を学んだか、何を見てきたのか教えてもらうぞ?」
「えぇ、勿論です……わ!」
日傘の先から光を放ち、四方に分散させる。
これは、惑わせる目的で使用しているのもあるけど、本当の理由は"これ"。
……タネばくだんだ。
神琉「綺麗だな……闇の戦い方は特徴的なものが多いと感じるが、何かを意識しているのか?」
「いいえ、私が戦いたいと思った戦法ですわ。名付けるならば……"弾幕ごっこ"とでも言えるかもしれません」
神琉「弾幕ごっこ……か、良い名前だ」
前世での言葉……懐かしい。
私はいわゆる"厨二病"というやつだった。
東方Projectの二次創作なんて腐る程見てきたし、自分がその世界に放り込まれた様な想像ばかりしてきた。
神琉「その"弾幕ごっこ"とやらは、どういった戦法なんだ?」
「そうですね……"美しさ"がとても重要で、相手を殺してはならないルールがあります。私、個人的にとても好きな戦法ですわ」
神琉「ほぉ……中々良いじゃないか。俺も真似て良いか?」
「勿論……」
主様の瞳が、一瞬ギラっと光った様に感じた。
ふふ、まぁこっちも何もせずやられようとしてる訳じゃないから……
「主様……植物はお好きですか?」
神琉「急にどうした?まさか……」
「種を植え付けて差し上げますわ♪」
その瞬間、主様の全身が爆発した。
あっ、グロイ系じゃないから安心して……主様は、私の攻撃如きで壊れるお方じゃないから。
神琉「……はは、中々やるじゃないか?」
「戯言を……私如きに倒されるお方じゃないでしょう?」
神琉「それはどうかな?」
私の予想通り、五体満足でケロッとしている主様がそこにいた。
タネばくだんをアレンジして、同時にやどりぎのタネが発動するようにしていたんだけどね……
まぁ、こんなの序の口。
主様はもっと凄いものを見せて下さるから。
神琉「じゃあ、こっちの番だ」
「どこからでも……!」
すると、私の背中に大量の水飛沫が飛んできた。
何が起きたのか確認しようとしたが、それは叶わなかった。
何故なら……後ろの方を確認する前に私の体は海へ引きずり込まれてしまったから。
「(なっ、何が……)」
幸いなことに、私は息をする必要が無いようにしていたので、死ぬことはない。
だけど、物凄い勢いで海を進んでいるからか、少し苦しい。
ゆっくりと目を開けると、そこには……
私の腕にガッチリと噛みつき、海を駆け巡る"龍"がいた。
「(あー、成程……水で形どってるのね)」
水龍、とでも呼ぼうか。
噛みつかれているけど、痛くはないかな……
というか、水圧が凄い!
「(こんなものに戸惑っている暇は無いわね……えいっ!)」
私が神力を手に込め、思いっきり振り抜くと、意外にも簡単に水龍の形は崩れた。
そうして、急いで私は海面を飛び出した。
神琉「へぇー……意外にも早かったなぁ。合格だ」
「ありがとうございます」
ずぶ濡れで返事をする私の姿はさぞ滑稽だろう。
放っておいてもじきに乾くだろうけど、流石に濡れたままだと動きにくいので……瞬間乾燥する。
神琉「じゃあ……再開しようか?」
「えぇ……っ!」
右ストレートで主様の顔を狙う。
……が、勢い付けて振り抜いた拳は逆に掴まれ、グッと引き込まれる。
神琉「闇の力はこんなものじゃないだろう?」
「勿論です」
バックステップで後ろへ下がり、日傘を縦に思いっきり振り抜いた。
生じた斬撃は主様に向かっていき、あるところで弾けた。
まぁ、演出というものである。
弾けた斬撃は小さな刃となり、相手を切り刻むべく散乱する。
神琉「おぉ、細かいな」
「細かいだけじゃありませんわ」
斬撃一つ一つが威力を持つ、立派な凶器になりえますのよ?
このまま畳み掛けたいところだけど……そうはいかないのが、主様。
神琉「だと思った」
「っ!?」
と思ってたんだけど、まさかの主様は大量の斬撃を被弾してしまっていた。
かなり威力を持っていたとお分かりだったはずなのにどうして……?
神琉「……成長したな?闇よ」
「っ……お褒め頂き感謝致します」
服の所々は破れ、顔には多数の切り傷があった。
いくら主様とはいえ、多少は痛覚を持っているはず。
……本当に不思議なお方だ。
神琉「さて、ここまでにしておこうか」
「どうしてです!?私はまだ……!」
神琉「そもそも、この戦いを誘った理由は、闇の実力を見たかったからなんだよ。だから、もう良い。降参だ」
「そんな……そんな勝ち方、私は嫌です!」
握り締めた手から、血が滲む。
悔しい、悔しい、悔しい……!
せめて全力を尽くしてから負けたかった!!!
龍神として生まれ変わってから感じた久々の屈辱。
こんな勝ち方、全く嬉しくない……!
神琉「さ、皆を連れて帰ろうか?」
「むぅ……はい」
砂浜で待っている皆の元へ向かった。