皆を連れて家に戻った私は、縁側に座ってぼうっと空を眺めていた。
あんな勝ち方、アリなの……?
……やっぱり納得なんて出来ないわ。
メリー「まぁ、そう気を落とす必要は無いと思いますよ?」
「あら、メリー。慰めてくれてるの?」
メリー「そうです、師匠の気分が落ち込むと同時に私もなんだか気が入らなくなるんですよ」
「それはいけないわね……」
私の気分と連動しているのかしら?
ま、ウダウダ気にしてても仕方が無いわね。
また今度お誘いしてみましょうか……その時は必ず納得のいく勝負にする!ってことで。
「主様は結局どういうつもりだったのかしら……?」
神琉「だから、純粋に闇の姿が見たかったんだって言ったじゃないか」
メリー「ひっ……失礼します!」
急に後ろから発せられた声に驚いてメリーはどこかに行ってしまった。
「本当にそうでしょうか?」
神琉「……それは、俺を信用出来ないということか?」
「いえ、私がまだ未熟なだけでございます。いらぬ心配をしたこと、どうかご容赦頂けますでしょうか……」
神琉「それは全く気にしてないから闇も気にするんじゃないぞ」
私の頭を撫でる主様。
大人の男性の、大きな手。
何故だか心地よく感じた。
神琉「最初は、なんてひ弱な女なんだと思った」
「……?」
神琉「それがまさか、こんなに強くなるなんてな?」
「ありがとうございます。ですが、まだ、完全には……なれません」
完全になれないことくらい分かっている。
元人間であるうえに、生きている存在である以上は完全になんてなれっこないわ。
それに、完全になるつもりなんてない。
完全にならなくたってこんなに恵まれてるもの。
それ以上に望むものなんてありはしない。
神琉「……それはそうと、闇に渡そうと思っていた物があったんだ」
「何でしょう?」
そう言って、私の左手を両手で包み込む主様。
一瞬光った後、主様は私から手を離した。
何事かと思うと、何やら自身の左手に違和感があるので、そちらに視線を移すと……
「指、輪……?」
左手薬指に、金がついている指輪がはめられていた。
指輪だけでも不思議だけど、それよりも驚いたのが指輪に込められた非常に膨大な量の神力。
私がこの量の神力をこんな小さな指輪に込めるのはまぁまぁ厳しい。
神琉「驚いただろう?」
「え、えぇ……でも、何故」
神琉「……気休めにしかならないかもしれないが、どうしても困った時はこれが助けてくれるだろう」
私が死にかけた時、だろうか?
……あ、何となく分かったかも。主様が私に指輪を渡した理由。
「もしや、牛鬼と
神琉「……あぁ、そうだ。それ以外にも、闇が窮地に立たされた時の逃げ道になってくれるだろうな」
「本当に感謝しかありません……ありがとうございます」
私は、座ったままであるが主様に深くお辞儀をした。
指輪なんてファッションとしての指輪でさえ、前世でも付けたことがない。
しかも、ファッションとして付ける指輪ではなく、特別な意味を持つ指輪だ。
左手を宙に翳して指輪を見つめる私を、主様は満足そうに見ていた。
神琉「……牛鬼が怖いか?」
「えっ?まぁ、そりゃあ……怖くないと言えば嘘にはなりますが、
神琉「はは、それは頼もしいな。これからも頼んだぞ」
「はい、お任せ下さい」
少し不安げな主様の笑顔が気になったけど、まぁ大丈夫だろう。
牛鬼に殺されかけたことはある。そして、主様の手を煩わせてしまったこともある。
しかし、私には守るべきものがここにいる。故にまだ命を賭ける時ではない。
メリー「お楽しみの所、失礼します」
振り向くと、襖を開けて正座しているメリーがいた。
「あら、どうしたの?」
メリー「……師匠にお会いしたいという方が、境内でお待ちです」
「分かったわ。いつもありがとうね、ご苦労様」
メリー「いえ、お礼には及びません」
師匠らしいことなんて何一つしてあげられてないけど、メリーは本当に何でもやってくれている。有難いことよ。
それにしても、私を訪ねる人なんているのかしら?気になる所だけど……
「では、少しの間失礼します」
神琉「あぁ、全然構わない」
そうして、私は縁側を飛び立ち、私を訪ねてきたお客様とやらが待つ境内に向かって駆け出した。
せっかく訪ねてきてくれたんだから、お待たせする訳にはいかないわよね。
「お待たせしました」
?「……っ!突然お呼び出ししてしまい、すみません。貴女が夜刀神 闇様ですね?」
「はい、私に何の用でしょうか?」
肩までの青い髪の毛に、私より頭1つ分位高い背。どこかで見たことがあるような白いジャケットを羽織っている彼女は、この時代では珍しいはずの服装をしていた。
それに、1番気になるのはその神力。
この子……本質は人間だ。なのに、普通の神を凌ぐ程の神力を持っている。
導「私……1997代目海神 ̄ ̄
「海、神……?」
……海神だなんて、何て突飛なことかしら。