んー……ここは……
あ、私……西行妖を取り込んで、それで封印して……
……あれ?そっから何があったんだっけ?
それに……私の中の力がほとんど抜け落ちている感覚がある。
神力も霊力も妖力も魔力も何も無い。
「××××××!!!」
声が、出ない。
それ以上に、倒れたまま、体を動かせない。
何にも力が出ない。
……まさか本当に死んでしまったのだろうか。
?「……よぉ」
「……!!!」
目の前に、今1番出会いたくない人が現れてしまった。
いや……人というか……妖怪?
牛鬼「久し振りだな……いつぶりだ?」
大妖怪どころか神さえ凌ぐ強大な力を持つ妖怪。
現実世界にいる牛鬼が私の夢の中に出てきているのか、牛鬼が力を使って私を呼び出しているのか。
どうでもいいが、何としてもこの状況から抜け出さなければまずい気がする。
牛鬼「おー、おー、そんなに暴れようとするなよ。何にもしないから安心しろ」
牛鬼は、私の腕を掴みながら言った。
そもそも全く動けないのでどうしたらいいのか分からなかったんだけど……
牛鬼「お前をこのまま亡き者にするのも面白いけど、やっぱり足掻こうとするお前を見てるのも最高だな、ははっ!」
真っ白な牙をチラッと見せて笑う牛鬼。
皮肉にもその表情は、それが牛鬼じゃなければ惚れる者が居たかもしれない位までに美しかった。
牛鬼「まぁ、次に会う時は……楽しみにしてるぞ?」
牛鬼は、私の手をそっと離し、足元からボロボロと欠片になって消えていった。
何だったんだ……本当に。
そして、私はそっと目を閉じた。
あぁ、早く目覚めてほしい……こんな夢。
そして、私が龍神として生まれ変わったのも夢なら、このまま目覚めないでほしい。
だって、今、物凄く幸せだから。
❁❀✿✾
次に目を開けた時、そこには見慣れた天井があった。
……いつもの神社だった。
「あー、あー。声は出るわね……って、ん?」
私の手が、誰かに握られている感覚がある。
起き上がり、横を見てみると……
「あ、チロル……」
私のすぐ隣で、すやすやと眠るチロルがいた。
握られていない片方の手で、チロルの頭を撫でる。
何だか髪質が変わったような気がするのだけど……気のせいかしら?
前はふわふわで、癖毛だった。今は凄くツヤツヤしていて、毛先がくるっと外側に跳ねている。
メリー「チロルー?もう昼ご飯出来たから一緒に……え」
「あら、メリー。ごめんなさい、西行妖っていう桜を封印しに行ってたら、自分も倒れちゃって……どの位寝てたか教えて欲しいのよ。それに、一緒にいたアリシアに多分迷惑かけちゃったから謝りたいの…………って、どうしたの?」
突然襖が開いて、心做しか大人びて見えるメリーが入ってきたかと思ったら……
その紫色の目から、大粒の涙が零れていった。
メリー「あっ……師匠……お目覚めに……」
「な、何で泣いてるの?ちょっと眠ってただけでそんなに泣くの?」
確かに、西行妖を取り込んで少し危なくなったかもしれないけど……そんなに?
あっ、よくよく考えてみると、私の中から西行妖の死の感覚は消えている。
あんなに膨大にあったのに……
「私……何かしちゃったかしらって、わっ!?」
メリーが私に抱きついてきた。
いや、まぁこれはご褒b……ゲフンゲフン何でもないわ。
とりあえず、何でこんなことで肩を震わすのか意味が分からない。
夢の中で宿敵である牛鬼が出てきたこと位しか覚えてない。
「ねぇ、私はどの位寝てた?もしかして割と長く寝ちゃってた感じ?」
メリー「うぅっ、ぐすっ…………5年ですわ」
「あぁ、そう、5年ね……5年!?」
だから、メリーの身長が伸びた感覚があったのか。そっかそっかー!……って、そうはなるかい!
私、どんだけ寝てんのよ!人間だった時でも最高は20時間だったわよ!(実話だけどそれはそれで凄いよねw)
「そう、私……そんなに迷惑かけちゃったのね。ごめんなさいメリー。まずは色んな人に謝らないといけない気がするわ」
メリー「えぇ、えぇ。私も同感ですわ……後、私の名前はもう人間だった頃の"マエリベリー・ハーン"ではありません」
「……どういうこと?」
紫「捨てたのです、名前と自分を。これからは、
思わず息を飲んだ。
そもそも、前からメリー……紫は、私が知っている"八雲 紫"の姿そのまんまだった。ファンの間でよく言われる胡散臭さは全く無かったが。
それがまさか、こんな形で本当に八雲 紫になってしまうなんて。
……現代の東方ファンの皆、まさか私が八雲 紫=マエリベリー・ハーン説を立証したわよ。
紫「そして、改名した者……いえ、改名というよりかは完全に元の名前を捨てた者が1人いますわ」
「えっ……誰?」
紫「恐らく、最も師匠に忠誠を誓っている者ですわ……そうでしょう?」
そう言った途端、紫の後ろから私のよく知る人物が現れた。
エメラルドグリーンの膝ほどまである美しい長髪。背の高さは変わらない。
そして、私の傍まで来て跪いたと思うと、私の手を取ってこう言った。
香織「西行妖の件、御先祖様をお守り出来なかったことを心よりお詫び申し上げます……そして、御先祖様がこうして戻ってきて下さること、元アリシア・サンチェスことこの
「ありがとう。私も貴女にまた会えてとても嬉しいわ……それに、私の方こそごめんなさい。貴女にも色々迷惑かけたでしょう?」
香織「そんなことはございません。こうして戻ってきて下さることが私にとって、何よりも幸せなのですから……」
よく見ると、香織の目に薄らと涙が浮かんでいる。
あぁ、こんなに愛されていると感じたことがあっただろうか。
牛鬼に殺されかけた時、主様とアリシア……当時の香織に死ぬほど心配されたことはあったけど。
私も、一生この子たちを愛し、守っていかなきゃいけないわね。
「さて、これから会いに行かなきゃいけない人がいるわ」
香織「……龍神王様でしたら、今は境内にいらっしゃいますよ」
「言ってないのに分かるのね?ふふ、流石だわ……」
何故境内?と思ったけど、たまたま来ているのだろう。
私は、よいしょ、と立ち上がる。
特に違和感無し。若干髪の毛が伸びているけど。
後は神力とかが全て通常通りに戻っている位?
「この子、ちょっと見ててね」
香織&紫「「畏まりました」」
私は、快く承諾してくれた香織たちを尻目に部屋を出た。
早く会いに行かなければ。というより、私が早くお会いしたかった相手だ。
急いで境内に向かうと、そこには見慣れた姿が。
「……」
神琉「……ようやく戻ってきたか」
「はい。西行妖に、思わず手間取ってしまいまして……申し訳ございません」
私は、即座に跪き、頭を垂れる。
正直何を言われても文句は言えない。
神琉「闇はいつも、無理をする」
「それは当然ですわ。自分で創った世界なのだから、責任を取るのは当然……それに、いつでも命を賭ける覚悟は出来ております故」
神琉「……まだ分からないのか?」
「……?」
振り向いた主様の顔を見て、私は何とも言えない気持ちになってしまった。
いつも澄ました顔をして、常に優しい顔を崩さなかったあの方が。
……怒っているような、悲しんでいるような、そんな顔をするなんて、誰が予想出来ただろうか。
主様は、私と同じ目線になるよう屈み、私の手を掴んでこう言った。
神琉「……今度、こんな無茶をしたらこの世界は取り壊し、永遠に神界で暮らしてもらう」
「そっ……それは!」
神琉「本気にするな、冗談だ。それにそれがそんなに嫌ならもっと自分や他の奴らのことも考えてやってくれ」
「……畏まりました」
あんなに冷徹だった主様が、こんなことでお怒りになるなんて思わなかった。
というより、今の主様の発言は何故か、冗談じゃなく本気で言っているように聞こえたんだけど……
エマや他の神には悪いけど、何っにも無い空間で一生過ごせだなんて、死んだ方がマシな気がするわね。
神琉「この5年で色々と変わったことがある」
「……はい」
神琉「まず、闇が封印した西行妖を管理する屋敷の主についてだ」
「あぁ、西行寺 幽々子ですか?」
神琉「そうだ。あの人間は、闇が眠った後暫くして亡くなった」
なっ……!?
私が見た限りでは、あの時点ではまだ大丈夫だったのに!
やっぱり、あの能力が原因だったのかしら……
神琉「驚いた顔をしているな。だが、俺にとってはあの人間の死は妥当だと思うんだ」
「……なぜそうお思いに?」
神琉「あれだけの能力を人間が保有しておいて、只事で済むはずがないだろう?」
「……確かに、そう……ですね」
原作キャラが死んでしまったことに悲しみを覚える。
あの時、私が眠ってなかったら……死を止められたかしら?
神琉「闇が気に病む必要はない。そもそも、生死に間違いなど無いのだからな」
「あっ……ありがとうございます」
主様は、優しい手つきで私の頭を撫でる。
いきなりだったが全く嫌な気はしなかった。
私のせいじゃない、か……生死に間違いはない、か。
……その言葉だけで、少し救われた気がした。
❁❀✿✾
 ̄ ̄闇が神社に戻ってきた頃
紫(メリー)side
師匠が変わり果てた姿で帰ってきた。
"西行妖"なんていう妖怪と戦っていたらしい。アリシアから聞いた。
アリシアも傍にいたそうだけど、師匠に「手出しするな」と言われていたらしい。
……また、私は力になれなかった。
「どうして」
なんて、言うまでもない。
私の力等無くてもやっていけるからだ。
ましてや、私の存在なんて無かった方が仕事の邪魔にならずに済むのでは?
なら、私は何の為に妖怪になったんだろう?
神琉「お前は、マエリベリー・ハーンと言ったな」
「うっ……はい」
師匠の主こと龍神王様が、私に話しかけてきた。
正直、私はこの人のことが苦手だ。近寄り難い雰囲気があるから。
神琉「ではマエリベリー。奥の部屋へは誰も近づかないようこの家の住人に言っておいてくれるか?」
「……どうしてかお聞きしても良いですか?」
神琉「それは、
その言葉は、闇のことを1番に考えている為に出た言葉ではあるが、私にとってはこの家の住人のことを全く信用していない為に出た言葉のようにも聞こえた。
私を見下ろす闇と同じ金色の目がとても恐ろしく見えて仕方がない。
「失礼ですが、龍神王様が師匠の面倒を見られるのですか?」
神琉「当たり前だ。主なのだから」
「では面倒を見るその役、私たちにやらせて貰えませんか?」
神琉「……何?」
龍神王様の耳がピクッと反応する。
私は、これだけは譲りたくないと思ってしまった。
神琉「……理由を聞かせろ」
「私もチロルもアリシアも、この家の住人ですし。何より……師匠ご自身が望んで傍に置いて下さるのです。ですから、私が師匠の面倒を見るのが妥当かと思いますが」
神琉「この俺に意見をするとは……中々肝が座ってるな。流石、闇が選んだ者だ。良いだろう、その役、やってみるがいい」
何とか許可をしてくれた。
これで拒否されても、力ずくでやらせてもらうつもりだったんだけど。まぁ無理か。
それに……
「それに、男性である龍神王様に、女性である師匠の面倒を見させる訳にはいきませんので」
神琉「……」
龍神王様は、ぽかんとした顔をする。
師匠と同じ女性が師匠の面倒を見るのが妥当だろう。
後、この男を師匠と2人きりにさせたくないっていう個人的な我儘でもあるんだけど……
龍神王様は、腹を抱えて笑った。
神琉「くっ……はははっ!俺が闇に何かするとでも思ったのか?」
「そうではありません。とにかく、私含めこの家の住人が面倒を見るってことで良いですね?」
神琉「あぁ」
龍神王様と目が会う度にビクッとしていたが、今回ばかりは引けなかった。
……引きたくなかった。
闇が尊敬する方だってことは知ってるけど、やっぱり私はこの方への苦手意識は拭えない。
やっぱり怖いものは怖いから……
神琉「あぁ、言い忘れていたことがあった」
「……何ですか?」
まだあるのか。
そう言いたかった言葉をぐっと飲み込む。
神琉「闇が目覚めるまでは、俺はこの家に滞在させてもらう」
「っ!……構いませんが」
神琉「おぉ、そうか。ありがとうな!」
龍神王様は、わざとらしい笑顔を見せる。
私が断れない立場ってことを分かって言ってるのだとしたら、まぁまぁ意地悪な神様だ。
……この邪神、いつか仕返してやりたい位よ。
神琉「俺のことをどう思おうが勝手だが、闇への礼儀を忘れるんじゃないぞ。まぁ、お前なら大丈夫かもしれないが……」
「……はい」
この邪神、心を読んでるな……と思った。
まぁ、全世界の最高神ならば出来る芸当なんだろうけど。
神琉「じゃあ、俺は少し出かけるから……ここのことは任せるぞ」
一生戻ってくんなって言いかけたけどそんなこと言ったら不味い。
私は、スキマのような空間に入っていく龍神王様を苦虫を噛み潰したような目線でそっと見送った。
読んでてわかるかもしれませんが、紫(メリー)は龍神王(神琉)が嫌いですねw
で、龍神王(神琉)はツンデレ気質な所がある気がします。
そして、紫(メリー)は闇ちゃんのことが大好きです。
ていうか、ほぼほぼ全員に好かれてます。
オリジナル展開多いですがお許しを……
キャラブレしやすいランキング
1位夜刀神 神琉
2位夜刀神 神琉
3位夜刀神 神琉