闇side
目覚めてから数日経った今、私は居間で紫とお茶を飲んでいた。
あぁ、そういえば……チロルが、私が目覚めたことを知った時、紫と同じ反応をしていたのには少し笑ってしまった。
「そういえば、永琳や輝夜、それに妹紅は元気にしているの?」
紫「あの人たち、師匠が倒れたって聞いて大慌てで駆けつけてきたんですよ。本当に愛されているんですね」
あの永琳たちが?
まぁ、永琳に関しては原作キャラの中で1番初めに出会った人物でもあるからね……何かと思い入れがあるキャラの1人だ。
核によって滅ぼされる前の都市にいる時……私が地球に舞い降りて間も無い時位から、仲良くしてくれた数少ない友達。
「うん、本当に愛されてる。私じゃ勿体無い位の愛を受けている気がするわ……」
紫「そんなことありません!えっとその……私も、師匠を、その……あ、あ、愛していますから」
「あら、ありがとう!私も愛してるわよ」
私は、何故か赤面している紫を不思議に思いつつ、紫が淹れてくれたお茶を啜る。
うん、中々美味しいわ。
紫「あっ師匠!そういえば、師匠は目覚めてからどこへも行ってませんよね?」
「えぇ、そうね」
紫「せっかくだから、私とどこかに出かけませんか?」
「あら、良いわね。この後も特に用事は無いし……行きましょうか」
紫「やった……それなら、早く準備しないと!師匠、待ってて下さい!」
「あっ、まだどこに行くか聞いてな……い、って、行っちゃった」
足早に部屋を出ていってしまった紫を見送ると、私は溜息をついてお茶を飲み干した。
何か、紫って私が目覚めてから落ち着きが無くなったような気がするわね……気のせいかしら?
「私も準備しましょ」
私は、立ち上がって部屋を後にした。
準備するとは言ったが、何もすることがない。
とりあえず境内に向かった。
10分後
紫「ごめんなさい、遅くなっちゃいました……」
「そんなことないわ。今日の紫、いつもに増してとっても綺麗よ」
紫「あ、その……師匠も綺麗、です……」
「ありがとう!」
日傘を差して照れる紫は、まるで太陽に照らされた向日葵みたいで思わず見とれてしまった。
……って、どこのキザ男みたいなことを言っているのよ!私は!
「それで……行くあてはあるの?」
紫「勿論ですわ!一先ず着いてきて下さい!」
私は、先に行く紫の後を追う。
そういえば、今の紫の服どこかで見たことがあるなぁ……と思ってたら、道士服じゃない方の紫の服だった。
白い道士服じゃない、紫のドレスね。
やっぱり紫って凄く綺麗よね……(←自分もかなりの美少女だと気がついていない)
「やっぱり、この辺は変わってないのね。流石に5年位じゃ変わらないかしら……」
人間が現代より少ないからか、発展も遅い。
今が多分平安時代辺り?だとするなら、東方の原作が本格的に始まるのは……後1000年近く。
長い。でも、私が転生してから今までの方が遥かに長い。
長い……最早、"永い"の域だ。
紫「あっ!ほら、あそこです!」
紫が指をさしたその先にあったのは広大な花畑。
向日葵が大量に咲き乱れ、しかし無駄に咲いている訳じゃなく、ちゃんと手入れされている感じがある。
「うわぁ、凄く綺麗……」
紫「ふふ、実はあそこに私の新しい友達が住んでるんですよ……」
「あら、それは良いわね。どんな子かしら?」
私たちは、花畑の前に降り立った。
空から眺めている分には気づかなかったけど、この向日葵……随分立派に育っている。
私の背丈を優に超える程はある。
紫「せっかくだし、この花を見ながら少し歩きませんか?」
「良いわよ」
?「それは良い考えね」
紫「……あら、貴女もそう思う?」
突然空から降りてきた人物は、私の背後に立った。
私じゃなかったら怖くて振り向けないだろうな……と、私は目視でその姿を確認する。
紫「出かけていたのね?今日は私の師匠を連れてきたのよ」
?「あぁ、貴女がしょっちゅう言ってる……」
「……紫、貴女私のことをそんなに話してるの?」
?「会う度に何回も聞かされるわよ。流石に多い気はするけどね」
その人物は、白い日傘を差して私を見下ろしている。
黄緑の肩まである髪、妖怪を象徴する赤い目、チェックのロングスカートにベスト。
もう、お分かりだろう。後に幻想郷"最凶"と謳われることになる大妖怪……
紫「師匠、紹介します。こちらが私の友人の……」
幽香「
目を細めて笑う彼女は、流石に妖怪の風格が凄い。
初対面で私にこれだけ威圧をかけられるのは彼女位かもしれないわね。
紫「幽香!失礼よ、師匠に向かって……!」
「良いのよ、紫。貴女中々度胸があるわね……?」
戦闘狂の性格は、今から持っていたのね。
彼女のストレス発散に付き合ってあげられる人なんて、私と紫含めたらほとんどいないと思うわ。
だから、仕方ない……
「……また今度、お相手して差し上げるわね」
幽香「また今度?……分かったわ」
まるで今からでも戦いたいとでも言いたげな顔をするのね。
私としてはかかってこいって感じなんだけど、今は戦いに来た訳じゃないから。
紫とお出かけしているのよ。
幽香「じゃあ、貴女と随分話したいことがあるの。だから貴女たち、お茶していかないかしら?丁度パンを焼いていたのよ……」
紫「どうしますか?」
「貴女が良いなら私はどっちでも」
紫「じゃあ、お邪魔していくわ」
紫の承諾も得たし、ちょっと位良いわよね。
しかも、パン……そういえば、何か美味しそうな匂いがする気もするような。
私たちは、楽しみにしながら花畑の奥に見える家に向かった。
「幽香、貴女は花が好きなの?」
幽香「そうよ。能力も花を操る能力だから、こんなに沢山の花を愛でることが出来るの」
幽香は、花畑を眺めて嬉しそうに話した。
普通にしていればこんなに可愛いのに……どうして幽香はあんなに凶悪な顔をするのだろうか。
「貴女と同じ名前の友人がいるのだけどね」
幽香「あら、そうなの?」
「多分、漢字で書くと違うけど……その子も、大概の戦い好きよ。私とも戦ったことがあるけど、強さは本物だわ」
幽香「そう……!」
私の方を振り向きながら楽しそうに笑った。
そういえば、"優花"の方は元気にしているかしら……宴会以来だけれど。
"幽香"と"優花"を戦わせたら、本当に激しい戦闘になるでしょうね……見てみたい気もするけど。
幽香「でも、私は貴女と戦ってみたいわ。貴女、強いでしょ?」
「強いかもしれないけど、最強ではないわ」
幽香「そんなこと、私も分かってるわよ……でも、私が敵わなそうな相手を見るとワクワクしてしまうだけよ」
どこぞのアニメキャラみたいなことを言うのね、と心の中で溜息をつく。
でも、原作キャラの戦闘は見ていて飽きるものではないから。
美しい弾幕の中で感じるものは多い。
幽香「ほら、ここよ」
気がついたら、もう家まで来ていたみたい。
近くで見ると、そこまで大きな家ではないけど、普通に良さげな雰囲気の家だった。
「貴女1人で住んでたら広くないかしら?」
幽香「妖精がたまに来るから広いと感じたことはないわね。後、紫も来るし……ほら、座って」
妖精が来るのか……そういえば、原作キャラでいうとチルノにまだ会っていない。
いつか、生で"あたいったら最強ね"を聞いてみたいものね。
紫「貴女、妖精には優しいものね」
幽香「あら、貴女にも優しいじゃない」
紫「私が最初に花畑に来た時、容赦なく襲いかかってきたわよね?」
幽香「あら、そうだったかしら?そんな昔のことは忘れたわ」
紫「たった数年じゃない……」
どうやら、この2人の間で一悶着あったらしい。
美しいお姉様方2人が激しい戦闘をしている所なんて想像出来ないけど……
幽香「ほら、パンよ。後はお茶も。食べなさい」
私たちは幽香にお礼を言って、幽香が焼いてくれたパンを食む。
うん、こんがり焼けててとっても美味しい。
何も入ってないけど、焼きたてだったら何でも美味しく感じる。
幽香「貴女には敬語を使った方が良かったかしら」
「今更?敬語も要らないし呼び捨てで構わないわ」
幽香「あらそう。じゃあ、闇……これからよろしくね」
「えぇ」
……新たな友達がまた1人増えたみたい。